【書評】『最高の疲労回復法』(杉岡充爾)

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 お薦めの本の紹介です。
 杉岡充爾さんの『毎日のカラダが楽になる 最高の疲労回復法』です。

 杉岡充爾(すぎおか・じゅうじ)さんは、循環器内科がご専門の医師です。

自律神経の乱れに隠れた「重要なホルモン」


「このところ、疲れがたまっているな」
「寝ても起きても、まったく疲れがとれない」

 そんな悩みを抱えている人は、多いです。

 杉岡さんは、「疲れたぁ〜」と感じているときに起こっている現象は、あなたが考えているほど、決して軽い問題ではないと指摘します。

「疲れ」とは、心身が危険な状態になっていることを知らせるサインとのこと。

 疲労は時として、人の生死にさえ関わってくるほどの重大事なのです。
 私は、約20年にわたり救急医療の医師として、働き盛りの人がある日、突然バッタリと倒れる、というケースを嫌になるほど目にしてきました。
 その中には残念ながら助けられずに、いわば「疲労死」で亡くなる人もいらっしゃいました。
「多くの人がこんな状態にまで疲れをためる前に、何とかしなければ」
 そのような思いから、私は現在、循環器内科の専門医として、「疲労死」に至る前の段階の患者さんを診ています。また、働き盛りの世代や個人事業主向けに予防医学のセミナーも開いています。

 もちろん「疲労死」という病名はありません。
 多くの突然死の、直接的死因は「心臓発作」となります。
 しかし、救急医療に携わってきた身から長年考え続け、世界の最新の研究報告を踏まえた結果、その心臓発作の発端は、隠れた「小さな疲労」なのです。
 人間は仕事やプライベートでのストレスで疲れると、心身が緊張します。
 それは自律神経が大きく関わっていることです。
 通常、緊張時は「交感神経」、リラックス時は「副交感神経」と、自律神経は二系統で身体の血流やホルモンバランスを整えています。
 しかし、疲労が重なってくると、緊張状態が続き、血流もホルモンバランスもどんどん崩れていってしまいます。
 すると、心臓の血管が極度に緊張してしまった状態となり、突然血管が詰まる。
 これが「疲労による心臓発作」のプロセスです。
(中略)
 ですが、その陰に隠れてしまっている大きな問題があります。
 それは、ある重要なホルモンの存在です。
 それこそが、「コルチゾール」と呼ばれ、疲労回復に大きな役割を担っている抗ストレスホルモンです。
 人間の体の中には、この抗ストレスホルモンを貯蔵する“タンク”が存在します。
 それは、腎臓の上に小さく乗っている「副腎(ふくじん)」という臓器。
 そして、疲労が蓄積している人は、その“ホルモンタンク”が枯渇(こかつ)しかかっているのです。
 この“ホルモンタンク”が減っていると、どんなに寝ても、ストレスはたまるばかり。疲労が蓄積され、場合によっては心を病んでしまったり、最悪、心臓病など命の危険さえも招きます。

『最高の疲労回復法』 はじめに より 杉岡充爾:著 大和書房:刊

 逆をいえば、“ホルモンタンク”を浪費せず、抗ストレスホルモンをうまく補充・分泌できれば、疲労もなくなり、ひいては身も心も軽くなっていきます。

 本書は、頭や体の「疲れ」から回復し、“ホルモンタンク”を枯渇させないための方法をまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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人の生活に「夜型」はあり得ない


 抗ストレスホルモン(コルチゾール」は、「副腎」という器官から血液を通し、体中に運ばれていきます。

「抜けない疲れ」の正体。
 それは、過度なストレスで“ホルモンタンク”が酷使され続け、ついに副腎が抗ストレスホルモンをつくれなくなり、「タンク」が空になった状態です。

 抗ストレスホルモンは、朝にたくさん、分泌されます(下の図1を参照)。

 つまり、「朝型」よりも「夜型」の生活の方が、“ホルモンタンク”に負荷がかかるということ。

図1 1日の抗ストレスホルモン分泌量の推移 最高の疲労回復法 第1章
図1.1日の抗ストレスホルモン分泌量の推移
(『最高の疲労回復法』 第1章 より抜粋)

 杉岡さんは、“ホルモンタンク”が枯渇する副腎疲労の兆候が出ている人を見ても、やはり生活の中心が、午前より午後にシフトしている人が圧倒的に多いと指摘します。

 そうした夜型生活だと、いったい何が問題なのか。
 もちろん、何度も言っているように抗ストレスホルモンの分泌サイクルに反するのは間違いありません。
 しかし、夜の街には、さらに疲労をためる要素が増えるからなのです。
 それは「ジャンク・ライト」と呼ばれる、蛍光灯やLEDなどの人工的な明かりです。近年、アメリカを中心に注目を浴び始めたものです。
 これは「ジャンク・フード」と同じように、体に悪い光のこと。
 浴びるのはよくないということで、アメリカでは最近、遠赤外線を使ったライトが増えてきているようです。
 電灯の明かりのほか、パソコンやスマホの光も、やはり「ジャンク・ライト」の一種です。
 そしてこうした人工の光が、私たちの疲労を蓄積させているといわれています。
 2017年には、フランスのロスチャイルド基金病院の研究チームは、思春期にエレクトリックメディアを多用することが、睡眠障害や疲労、昼間の眠気、行動障害、成績低下につながっていることを明らかにしています。
 また、同年、イスラエルのハイファ大学によれば、19名を対象者に夜9時から11時までスクリーンのライトを見てもらう調査を行ったところ、睡眠障害と昼間の眠気が明らかに増えたということです。

 太陽の光はホルモンバランスに関係しています。
 それが、いまや朝起きた瞬間から就寝直前までずっとジャンク・ライトを浴び続けているとすれば、とんでもないことです。
 就寝のリズムは乱れ、抗ストレスホルモンの分泌サイクルは大きく乱れます。
 太陽と人工的な明かりでは、色も強さも明確に違います。
 とくに都会で生活をしていると、人によっては「閉め切った部屋から地下鉄で通勤し、オフィスから一歩も出ずに、暗くなるまでデスクワーク」と、ほとんど日光の下に出ないこともあります。
 せっかく運動をしようとしても、場所はジムなどで夜になってから・・・・・と、自然を感じる機会がまったくないわけです。
 このような現代人の生活が、疲労を増幅させているのです。
 それを防ぐためにも、特に眠る2時間前には、つける電球を減らすなど光量を落とし、可能なら暖色のライト中心にしましょう。

『最高の疲労回復法』 第1章 より 杉岡充爾:著 大和書房:刊

 日が沈んだら眠り、日が昇ったら起きる。
 太古の昔から、人類が営んできた生活のサイクルです。

 結局のところ、それが健康に最もいいことが、科学的に証明されたということです。

 生活スタイルを、少しでも「朝型」に変えるよう、意識したいですね。

すべての疲労は「肌」が教えてくれる!


 疲れは、「肌」にダイレクトに現れます。

 “ホルモンタンク”が枯渇し、ストレスをため込むと、見た目よりずっと老けて見えてしまいます。

 根本さんは、肌のハリは、疲労の蓄積度がわかるバロメータの役割を果たしていると述べています。

 肌の色つやは、医学の世界では「血色」という言葉でよく言われています。
 血色がいい状態というのは、毛細血管がしっかり開いて、血液の流れがいい状態です。
 ところが疲労がたまってくると、老廃物が血液の中に多くなり、真っすぐの毛細血管が曲がったりしてくるのです。
 これはBスキャンという専門機器で毛細血管を肌の上から検査するだけで、すぐにわかります。
 毛細血管が曲がってくると、血管は一部分が太くなったり、また逆に一部細くなったりと、大きく蛇行(だこう)するようになります。
 すると、血液が滞りやすくなり、次第に血管も茶色く変色してきます。
 最終的には、皮膚をつくる細胞の1つひとつに、血液を通して運ばれる酸素や栄養が足りなくなり、やがて肌がくすんでくるわけです。
 “ホルモンタンク”が足りていないことは、こうした肌のサインでわかります。
 
 また、余談ですが、シワというのも実は疲労によって起こります。
 もちろんシワは肌の老化によって生じるものですが、その原因には日光が関係しています。
 日光はもちろん身体的にも精神的にも健康に欠かせない要素ですが、肌が日光に当たると、紫外線によって活性酸素が生じます。
 つまり、日光はある意味、肌へのストレスとも言えます。
 増えた活性酸素を除去するのにも抗ストレスホルモンが使われます。
 これが、“ホルモンタンク”がすっからかんだと、対処できなくなります。
 そして、肌には活性酸素が残り、やがてシワができる。
 肌の色つやが悪くなり、くすみやシワができていく・・・・・。
 こんな血液循環の負のスパイラルを生み出すのが、“ホルモンタンク”の枯渇なのです。

『最高の疲労回復法』 第2章 より 杉岡充爾:著 大和書房:刊

図2 正常な毛細血管 と 血流が悪い毛細血管 最高の疲労回復法 第2章
図2.「正常な毛細血管」と「血流が悪い毛細血管」
(『最高の疲労回復法』 第2章 より抜粋)

 たかが、疲れ。
 されど、疲れ、です。

「少しくらいだから」

 そう我慢し続けていると、自分でも気がつかないうちに、体に大きなダメージを与えてしまいます。

血流上昇の秘密は「冷やした後」にある


 杉岡さんは、冷たい水を肌に浴びせたほうが、肌の血流を高める効果が大きいと述べています。

 米国では、近年、手軽な健康法として、「コールドシャワー」という方法が注目されています。

 冷たい水を浴びたあとで、温かいお湯で体を温めるのです。
 水のシャワーを10〜20秒浴びたあと、温度を上げて、普通のお湯を浴びる。
 あるいはお風呂に入ったときに冷たい水を体にかけ、そのあと温かい湯船に入ってもいいでしょう。

 なぜ、冷たい水と温かいお湯を交互に浴びるのか。
 冷たい水を浴びると、毛細血管はキュッと締まります。
 そのあとで温かいお湯をかけると、血管はパッと開きます。
 この意図的に起こす急な変化が、血液中の老廃物を押し流すわけです。
 よく血圧を測るときに、腕のところをギューッと締め付けます。その後、巻いたベルトを外すと血液がサーッと流れます。
 このとき、血管からも血液拡張作用のある一酸化窒素(NO)が出されて、血流が増すのです。
 2014年には、中国の潘陽軍区総医院が、肌に冷たい刺激を与えることで一酸化窒素が増えたという研究を発表しています。
 こうしたことから、おなじことを「冷たい水→温かいお湯」を肌に当てることは有効といえます。

 しかし、正直にいえば、こうした冷たい水を使うコールドシャワーは身体的にも精神的にもつらいものがあります。
 気持ちよく実践できないことがストレスになり、“ホルモンタンク”を消費するのは、疲労をいたずらに増やすだけです。
 そこで、提案したいのが「顔だけを冷たい水にさらす」というもの。
 さすがに全身の効果は得られないものの、それでも一部分に擬似コールドシャワーをすることで、血流を高めることが期待できます。
 たとえば、洗面器に水を張って、そこに顔を10秒ほどつけるだけでもいいでしょう。
 あるいは、お風呂やシャワーで、頭だけに水をかけるだけでも十分です。
 慣れてきたら、顔に限らず、ふくらはぎや腕などにかけてみましょう。

『最高の疲労回復法』 第3章 より 杉岡充爾:著 大和書房:刊

 血管は、冷えると収縮し、温めると拡張する。
 その仕組みを上手に利用した、手軽な健康法です。

 毎日のお風呂での、血流をよくする一工夫。
 ぜひ、習慣にしたいですね。

「単純作業」が脳を休ませる


 杉岡さんは、ストレスを少なくするための習慣として、「後悔から目をそらせていく」クセづくりを勧めています。

 後悔から目をそらせるには、『「今」に集中すること』のが一番。

 そのための具体的な方法のひとつが、「水を飲むこと」に集中するトレーニングです。

 まずコップ一杯の水を用意し、ひと口を口に入れる。このとき「口の中に水が入っている」ということを、神経を集中させて感じます。
 それから、ゴックンと、水を飲み込む。今度は、口の中の水がのどを通って流れていくのを、神経を集中させて感じるのです。
 次のひと口も、その次のひと口も同じようにやってみる。
 30秒くらいで構いませんから、こうしてただ「水を飲む」という“今、自分がやっていること”だけに意識を集中します。
 他のことは一切考えません。
 たったこれだけのことで意識は切り替わり、余計なストレスを感じず、脳疲労の予防にもなるのです。
「今に集中する」ということであれば、先に述べた料理だったり、あるいは掃除をするようなことでもいいでしょう。
 好きな音楽を聴くのでもいいし、疲れない範囲であれば、ジョギングやウォーキングでもいいでしょう。
 ようは「今やっているそのこと」だけに、集中する時間が脳の疲れをほぐすには必要なのです。

 こうしたマインドフルネスが必要な背景として、現代社会が多くの情報が入り乱れ、それに対処するために気づかぬうちに「マルチタスク」をしている人が多いからでしょう。
 たえずスマホやパソコンから情報が入り、仕事でも常にいくつもの案件を頭に置いて仕事をしなければなりません。
 けれども人間は、同時に2つ以上のことを決断することはできないのです。
 意思決定に関わる脳の部位は、前頭葉。
 マルチタスクをしている人は、ここに絶えず新しい情報を送り込んでは、判断や決断を連続的にやらせているわけです。
 当然、前頭葉には持続時間も容量にも限りがあります。
 そうすると、だんだんとストレスがたまり、判断力も決定力も集中力も、どんどん落ちていってしまうでしょう。
 こうした前頭葉の使い過ぎは、確実に脳疲労の原因になるのです。
 また最悪、疲労が進めば、ひどい副腎疲労で、うつと同じ徴候があらわれることになってしまいます。
 脳を疲れさないためには、意図的に「シングルタスク」の時間をつくりましょう。
 オフィスで簡単なのは、気分転換に机の整理整頓をすること。
 また、あえてコピー取りのような雑務をやってみることもいいでしょう。
 単純作業こそ、脳を休ませるチャンスになるのです。

『最高の疲労回復法』 第4章 より 杉岡充爾:著 大和書房:刊

「今」目の前のことに集中する。
 その間は、「過去」を悔やむことも、「未来」を憂えることもできません。

 つまり、ストレスから解放されるということです。

 つねに仕事に追われ、考えごとに事欠かない現代人。
 だからこそ、余計に「単純作業に没頭する」ことが、脳のリフレッシュにつながりますね。

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「疲れている人ほど、太りやすくなる」

 多くの人が指摘する、この現象も、「副腎疲労」から説明できます。

 副腎疲労のひどい人は、脳がほとんどガス欠の状態ですから、糖や炭水化物を取らないと、倒れ込んでしまうようなギリギリの状態にあります。

 だから、無意識に甘いものを口にしたくなるのですね。
 そのような状態で、いくらダイエットしても、うまくいくわけありません。

 私たちが抱えている慢性的な病気や不調のほとんどは、「疲れ」が原因である。
 そして、疲れの原因は、「副腎」という“ホルモンタンク”の枯渇によって引き起こされる。

 目立たないけれど、健康を考えるうえで、欠かすことのできない“黒子”のような存在。
 本書は、そんな副腎の大切さを知るうえで、欠かすことができない一冊です。

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