【書評】『内臓脂肪を最速で落とす 』(奥田昌子)

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 お薦めの本の紹介です。
 奥田昌子さんの『内臓脂肪を最速で落とす 日本人最大の体質的弱点とその克服法』です。

 奥田昌子(おくだ・まさこ)さんは、内科医です。

「中年太り」は、なぜ健康に悪いのか?


 歳を重ねると、お腹回りが目立つ人が増えてきます。
 いわゆる「中年太り」ですね。

 最近、この中年太りが、見た目だけでなく、健康にも悪影響を与えることが、いたるところで叫ばれるようになってきました。

 おなかが、そんなに問題なのか! よけいなお世話だ、と思う一方で、そういえば、テレビや雑誌で内臓脂肪がどうのと、よく言ってるな。メタボってやつか。あまり見ないようにしてきたけど、よほどまずいことがあるのかな。そんな不安もよぎります。
 その通り。まずいのです。
 高血圧、脂質異常症、糖尿病、心臓病に脳卒中などの生活習慣病だけでなく、肝硬変や肝臓がん、このところ多い大腸がんや、有名人が発症して話題になった乳がんが、そのおなかと関係しているとしたらどうでしょう。さらには、おなかに脂肪が付いていると認知症になりやすく、その進行が速まるとしたら?
 内臓脂肪は、ただたまっているだけでなく、ある種の物質を活発に分泌しています。この物質が血圧を上げ、血糖値を上げ、動脈硬化を進行させ、血管の中で血を固まらせて脳梗塞を招きます。認知症についても、やはり内臓脂肪から出る物質が脳の神経細胞を破壊するという論文が発表されました。こういうことが最近どんどん明らかになってきています。
 私は内科医として多くの患者さんを診察し、検診センターで20年にわたり、のべ20万人以上の人間ドックならびに健康診断を行ってきました。そんななかで実感するのは、データに異常値があらわれるより先に内臓脂肪の蓄積が始まること、ほとんどの人が自分はまだ大丈夫と思いこんでいること、そして内臓脂肪を取らない限り、病期の進行を止められないことです。

『内臓脂肪を最速で落とす』 はじめに より 奥田昌子:著 幻冬舎:刊

 奥田さんは、内臓脂肪は、そんなにストイックにならなくても落とすことができると強調します。
 最初から「無理だ」と諦めてしまうのは、もったいないですね。

 本書は、内臓脂肪の問題と、最速で落とす方法について、最新の医学的知見をもとに、わかりやすく解説した一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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内臓脂肪は「どこ」につく?


 内臓脂肪は、文字どおり、おなかの奥の内臓に付く脂肪のことです。
 では、具体的に、どのような状態で付いているのでしょうか。

 内臓脂肪はとくに男性に多い脂肪で、おなかを中心に胸や肩など上半身にたっぷり付きます。男性は少しおなかがでているほうが着物が似合うというように、男性らしい貫禄とか、落ち着きを感じさせるのがこの脂肪です。
 これに対し皮下脂肪は、おもに女性の腰から太ももにかけて付きます。縄文時代の土偶に象徴されるように、女性らしい柔らかなシルエットのもとになっています。皮下脂肪も指でぎゅっとつまむことができますが、おなかの脂肪ほど厚くありません。
 医学分野では、内臓脂肪と皮下脂肪が作る体のラインをリンゴと洋ナシになぞらえて、内臓脂肪による肥満を「リンゴ型肥満」、皮下脂肪主体の肥満を「洋ナシ型肥満」と呼ぶことがあります。図1に後ろ姿のイラストで示しました(下の図1を参照)。ただし、男性にも皮下脂肪は付きますし、女性も閉経をむかえると内臓脂肪が増えてきます。
 自分がリンゴ型か洋ナシ型か気になる人は、ウエストのサイズをヒップのサイズで割ってみてください。これで体の形がわかります。この数値が男性で1.0以上、女性で0.8以上なら、おそらくリンゴ型肥満で内臓脂肪が付いています。
 そして三つ目の体脂肪は、内臓脂肪と皮下脂肪を合わせた脂肪全体を指す言葉です。つまり通常の体脂肪計は、内臓脂肪と皮下脂肪を区別せずに、体の中で脂肪が占める割合を見ていることになります。
 さて、内臓脂肪はおなかのどこに付くのでしょうか。体を縦に切って見てみましょう。図2は、おへそを通る線で体を真っ二つににして、右側から見たものです。こうするとよくわかりますね(下の図2を参照)。
 おなかの皮膚のすぐ下に皮下脂肪が合って、その下に腹筋があり、そのもっと奥、内臓をおおうように内臓脂肪がたまります。この絵で大きな固まりが詰まっているように見えますが、実際は少し違います。
 おなかの中は大きな空洞になっていて、空洞の壁から腸間膜(ちょうかんまく)という、複雑に重なったカーテンのような膜がおりています。図3をご覧ください。この絵は正面から見たところで、腸間膜がよくわかるように皮膚と皮下脂肪、腹筋を取り除き、じゃまな臓器を途中で切ってあります(下の図3を参照)。
 腸間膜は小腸や大腸を包むようにつないで、おなかの中で内臓をつり下げる働きをしています。そして、この膜の中を血管、神経、リンパ管が放射状に走り、内臓に酸素と栄養を運んでいます。内臓脂肪はこの腸間膜に付くのです。
 内臓脂肪が増えるにつれて腸間膜は厚みを増し、肝臓や膵臓(すいぞう)のまわり、太い血管の周囲、内臓と内臓のすきまが徐々に脂肪で埋まっていきます。こうして、おなかの中にいたるところに脂肪がぎっしりと付くと、立派な太鼓腹ができあがります。

『内臓脂肪を最速で落とす』 第1章 より 奥田昌子:著 幻冬舎:刊

図1 リンゴ型肥満と洋ナシ型肥満 内臓脂肪を最速で落とす 第1章
図1.リンゴ型肥満と洋ナシ型肥満

図2 内臓脂肪はお腹のどこに付く 内臓脂肪を最速で落とす 第1章
図2.内臓脂肪はお腹のどこに付く?
図3 おなかの中の腸間膜 内臓脂肪を最速で落とす 第1章
図3.おなかの中の腸間膜
(『内臓脂肪を最速で落とす』 第1章 より抜粋)

 内臓脂肪は、臓器に直接くっついているのではなく、臓器を覆う腸間膜に張り付いているのですね。

 メタボを防ぐには、まず、余分な内臓脂肪を減らすことが重要です。

「インスリンの暴走」が病気を引き起こす


 最近の研究において、肥満の人は高血圧に2.3倍なりやすいことが明らかになっています。

 脂肪が付くことで、血圧が上がる。
 その大きな原因の一つに「インスリン」が関わっています。

 脂肪細胞が分泌する物質には、インスリンの効き目を悪くする悪玉物質と、インスリンの働きをよくする善玉物質の両方がありました。内臓脂肪が増えると悪玉物質の分泌が高まり、善玉物質の代表であるアディポネクチンの分泌が低下します。つまり、内臓脂肪が増加するとインスリンの効き目が悪くなるのです(図10のa)。
 さて、食事をすると、食べものに含まれる炭水化物が分解されてブドウ糖になり、腸で吸収されて血液に入ります。インスリンの仕事は、全身の細胞が血液中のブドウ糖を取り込んでエネルギー源にするのを助けています。そのため、インスリンがきちんと働くとブドウ糖が血液から細胞の内部に移動して、血液のブドウ糖の濃度、すなわち血糖値が下がります。
 では、インスリンの効き目が悪くなるとどうなるでしょうか?血糖値が下がらないだけでなく、細胞がエネルギーを作ることができず、活動できなくなってしまいます(図10のb)。
 さあ、困りました。インスリンの代わりがつとまる物質は存在しません。何とかせねばと脳が思いついた作戦がこちらです。インスリンの効き目が悪いなら、インスリンをたくさん分泌して量で勝負すればいいんじゃないか?・・・・・こうして脳は膵臓に指示を出し、インスリンをどんどん作らせます(図10のc)。
 これで解決かと思いきや、とんだ落とし穴が待っていました。高い濃度のインスリンには困った性質があり、なんと血圧を上げるのです。
 インスリンは、体が余分な塩分を排出するのをさまたげるとともに、交感神経を刺激して血管を収縮させるため血圧が高くなります。そのうえ中性脂肪の合成を促し、動脈の壁を厚くすることで動脈硬化を進行させ、長期的にも血圧を押し上げます。
(中略)
 では、減量して内臓脂肪を落とすと血圧が下がるのでしょうか。
 減塩、減量など、生活習慣を一つだけ変えてもらって、血圧がどのくらい下がるかを比較した研究があります。減塩グループは塩分摂取量を現在の半分近くまで減らし、減量グループは平均40キログラム体重を落としました。すると、どちらのグループも同じくらい血圧が下がったのです。
 実際に、血圧の治療を受けながらしっかり減量したことで、血圧を下げる薬を飲まなくてよくなる人がときどきいます。塩分の摂取量を今の半分にすることの大変さに比べたら、体重を4キログラム減らすくらい、何とかなりそうな気がしませんか?

『内臓脂肪を最速で落とす』 第2章 より 奥田昌子:著 幻冬舎:刊

図10 内臓脂肪がたまるとインスリンが増える 内臓脂肪を最速で落とす 第2章
図10.内臓脂肪がたまるとインスリンが増える
(『内臓脂肪を最速で落とす』 第2章 より抜粋)

 奥田さんは、すべての生活習慣病は、内臓脂肪の蓄積からスタートして、動脈硬化という共通のゴールに向かって進むと指摘します。

 日本人は、インスリンの分泌量が欧米白人の半分から4分の1しかありません。
 内臓脂肪には、余計に気をつけないと、糖尿病などのリスクが高いということです。

「以前より、腹囲が大きくなったな」

 そう自覚する人は、早めにダイエットを始めたほうがよさそうですね。

基本は収入と支出のバランス


 内臓脂肪を落とすには、まず、日々の食習慣を改善する必要があります。

 脂肪、コレステロールを抑えた食事をし、1日に摂取するカロリー量を減らす。
 それが基本となります。

 とはいえ、何をどれくらい食べると、何カロリーになるのか、よくわからない場合も多いですね。

 奥田さんは、摂取した脂肪の量やカロリーを体で感じられるようになることが重要だと述べています。

 内臓脂肪、皮下脂肪をとわず、脂肪は脂肪細胞が集まってできています。1個1個の細胞の中に中性脂肪の形でエネルギーがたくわえられており、内臓脂肪がたまると腹囲が大きくなります。このとき次の式が成り立ちます。

 腹囲1センチ=内臓脂肪1キログラム=7000キロカロリー

 7000キロカロリーといわれてもピンとこないかもしれませんが、カツ丼一杯が1000キロカロリーちょっとですから、カツ丼を7回食べると内臓脂肪が1キログラム以上付いて、腹囲が1センチ大きくなるわけです。
 そんなにカツ丼ばっかり食べないよと言うかもしれませんね。でも、そこに落とし穴があります。たとえば、毎日ほんの少し、80キロカロリー多く摂取するとしましょう。お茶碗に普通盛りのご飯が約250キロカロリーで、これを大盛りにすると約330キロカロリーになり、ちょうど80キロカロリーよけいに食べることになります。
 さて、こんな生活を続けるとどうなるでしょうか。この人が過剰摂取するカロリーは1年でこれだけになります。

 80(キロカロリー)×365(日)=2万9200キロカロリー

 これを先ほどの式に当てはめると、内臓脂肪が4.2キログラム、腹囲が4.2センチ増えることになります。4.2キログラムですよ! おなかにこれだけの荷物をくくりつけて生活すると考えてみてください。この習慣を10年続けたら、計算上は内臓脂肪が42キログラム増えることになります。ささやかな喜びがこんなおそろしいことになるのです。
 しかし、裏を返せば、摂取カロリーをちょっと減らすだけで、1年後に内臓脂肪をごっそり落とすこともできるわけです。先ほどの計算式にそって考えると、7000キロカロリーを消費すれば、内臓脂肪が1キログラム落ちて腹囲が1センチ小さくなります。
 ということは、逆に、多めによそっていたご飯を普通盛りにする、もしくは、普通盛りのご飯を小盛りにすれば、1年後には内臓脂肪が4.2キログラム、腹囲が4.2センチ減る計算です。これだけのことで、おなかまわりがこんなにすっきりするのです。
 幽霊の正体見たり枯れ尾花。おそろしい病気を次々に生み出すおなかの脂肪も、落ち着いて正体を確かめると意外にたいしたことがないものです。4枚切りのトーストと6枚切りのトーストも一枚あたりのカロリーがちょうど80キロカロリー違うため、4枚切りを6枚切りにするのでもかまいません。

『内臓脂肪を最速で落とす』 第3章 より 奥田昌子:著 幻冬舎:刊

 ご飯を大盛りから普通盛りにすれば、80キロカロリー減る。
 4枚切りのトーストから6枚切りのトーストにすれば、80キロカロリー減る。

 そんなことが頭に入っていれば、イメージがつかみやすいです。
 続けてみようかな、という気にもなりますね。

 奥田さんは、まずは現実的な目標として、内臓脂肪を2キログラム、腹囲を2センチ減らすことを勧めています。

「善は急げ」です。
 早速、トライしたいですね。

あと「3000歩」多く歩けば、脂肪が落ちる


 食事とともに、内臓脂肪を落とすための有効な手段が「運動」です。

 では、具体的に、どのような運動が内臓脂肪を減らすのに最も効果的なのでしょうか。

 体を動かす習慣が、高血圧、糖尿病などの生活習慣病の予防と改善に役立つことを示す研究は無数にあります。とくに有酸素運動は行えば行うほど内臓脂肪が減少するため、厚生労働省は以下のいずれかの方法で有酸素運動を実施するよう、すすめています。

  • 息がはずむ程度の運動を30分間、週に5日以上行う。
  • 1日の歩数をそれまでより3000歩増やす。これは、おおむね30分の歩行に相当する。
 どちらかにこだわる必要はなく、運動できない日は遠回りして歩いて帰る、というふうに、柔軟に実施すればよいのです。大切なのは続けることです。日本高血圧学会、日本糖尿病学会、日本動脈硬化学会も、これと同程度の有酸素運動がそれぞれの病気に有効だとしています。
 健康ブームのなかで、有酸素運動という言葉はすっかり有名になりました。ここでおさらいしておくと、有酸素運動とは、酸素を十分取り入れながら、あまり強くない運動をじっくり行うことをいいます。
 その代表がウォーキングとかジョギング、サイクリング、水泳です。ウォーキングといってものんびり散歩するくらいではいけません。厚生労働省の提案に「息がはずむ程度の運動」とあるように、かなり速足で汗ばむくらいの速度で歩いてください。一緒に歩いている人と、かろうじて笑いながら話ができるスピードです。
 では、この運動でカロリーをどのくらい消費するのでしょうか。体重60キロの人が有酸素運動を30分間行うと90キロカロリー使います。普通盛りのご飯を小盛りにするのと同じくらいですね。
 運動によって消費するエネルギーはその人の体重によって変わり、同じ運動をしても、重い人ほどカロリーを使います。それだけの荷物を背負っているのと同じなので、その分、エネルギーが必要だからです。
 これに加えて、脂肪をひかえ、炭水化物を摂り過ぎないようにして、食事からの摂取カロリーを1日110キロカロリー減らしたとしましょう。運動による消費カロリーと合わせると200キロカロリーの減少になります。なんと大きなバナナ2本分です。
 これを10ヶ月続けると、カロリー消費は60000キロカロリーに達します。あの公式を思い出してください。

 腹囲1センチ=内臓脂肪1キログラム=7000キロカロリー

 これに当てはめて計算すると、10ヶ月で内臓脂肪が約8.6キログラム取れて、腹囲が8.6センチ小さくなります。これはもう、やるしかないでしょう。

『内臓脂肪を最速で落とす』 第4章 より 奥田昌子:著 幻冬舎:刊

 3000歩の速めのウォーキングで、90キロカロリー消費する。
 続ければ、たった3ヶ月で、内臓脂肪が1キログラム以上減る計算になります。

 ウォーキングを続けるモチベーションとしては、十分ですね。

 食習慣も、運動も、とにかく続けることが大事。

 自分が無理なくできるところから、一歩ずつ着実に取り組みましょう。

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 奥田さんがご指摘のとおり、日本人の体質が持つ最大の弱点は、内臓脂肪がたまりやすいことです。

 内臓脂肪が引き起こすのは、高血圧や糖尿病だけではありません。
 大腸がん、乳がん、腰痛、さらには認知症を招くリスクが高くなります。

 気づかないうちに、いつの間にか増えているのが、内臓脂肪の恐ろしいところです。

 ただ、増えるのが簡単ということは、減らすのも簡単ということ。
 これまでの生活習慣を、ほんの少し変えるだけで、想像以上の変化をもたらすことができます。

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