本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ

本を読むことは、心と体に栄養を与えること。読むと元気が出る、そして役に立つ、ビタミンたっぷりの“おいしい”本をご紹介していきます。

【書評】『スピリチュアルと物理学』(柊木匠)

 お薦めの本の紹介です。
 柊木匠さんの『物理学者のセラピスト”がやさしく教える スピリチュアルと物理学』です。

 柊木匠(ひいらぎ・たくみ)さんは、素粒子・原子核物理学者です。
 物理学の他に、東洋哲学や代替医療、スピリチュアルなどに造詣が深く、現在、アロマセラピスト、レイキティーチャー、手相リーディングカウンセラーとしてご活躍中です。

「物理学」と「スピリチュアル」は、根底でつながっている

「物理学は、難しくて苦手」

 そう感じる人は、多いのではないでしょうか。

 物理学には、難解な記号や方程式が多いです。

 一方、極めて哲学的であり、時には詩的であるのが物理学の面白いところです。

 物理学とは、この世のしくみや成り立ちを論じる学問です。

 ギリシャ時代、物理学は哲学と同じ学問でした。

 柊さんは、この世の始まりや終わり、世界と宇宙の成り立ちなどを突き詰めて行くと、哲学的な世界になっていくと指摘します。

 物理学は、考え方が多角的で、あらゆる角度から様々な可能性を持って議論をします。ミクロな素粒子の世界から、はたまた広大な宇宙までを論じてゆく学問です。想像力を駆使して、理論と実験で新たなものを創造していきます。

 現代物理学は「量子論」や「相対性理論」を基本としていますが、その“ミクロな領域”つまり、“ものの根源”を論じる「量子論」からは、
 “全ての現実は、選択という思考の結果である”
 “全ての根源は、時間も空間も越えて繋がりあっている”

 ・・・というひとつの解釈、帰結が得られます。

 これだけを聞いたら、スピリチュアルや精神世界の話だと思われるかもしれませんが、「量子論」から来る結果のひとつの捉え方なのです。

 また、ものの見方や角度、使う言葉が違うだけで同じ事象を言っているものも数多くあります。従って、スピリチュアルや精神世界の話を、決して非科学的だと断言することはできないのですね。

 スピリチュアルや精神世界、哲学や心理学、そして物理学を含めて、その根底にあるものは、
 “この世界って何だろう、人って何だろう・・・ そして、私って誰だろう・・・”
という古代からの人が想いを馳せている、純粋でそして極めて素朴な疑問なのですね。

 物理学の理論では、高次元世界や異次元世界といったまるでSFのような話も数多く出て来ますが、それらは実験で確かめて、はじめて“真実”のものとなります。
 つまり、真実には“観測可能”なものが要求されるのですね。

 残念ながらこころや想いといったものは観測できないので仮説の領域を出ません。
 しかしながら、「量子論」や「相対性理論」、様々な「宇宙論」などから類推することは可能です。“物質”という、世界のある断面を見て、非物質的なものやスピリチュアルな世界観を推察することはできるのですね。

『スピリチュアルと物理学』 はじめのことば より 柊木匠:著 BABジャパン:刊

 本書は、物理学、特に「量子論」や「相対性理論」、「宇宙論」という視点で、スピリチュアルや精神世界をわかりやすく解説した一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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物質は、変化する!

 素粒子や原子核といったミクロな世界の振る舞いを記述したものに「量子論」(量子力学)があります。

 その「量子論」によれば、素粒子や原子核等のミクロの世界では、

 ”物質は波動でもあり粒子でもある”

 というふたつの面を持った【二重性】を持っています。

 つまり、素粒子や原子核を観測しようとすると、それまで波動だったものが瞬時にして粒子となって観測されます。

図1 物質の二重性 スピリチュアルと物理学 1限目
図1.物質の二重性
(『スピリチュアルと物理学』 1限目 より抜粋)

 観測されるまでは、何処にいるのか、どのような状態にいるのかは解りません。

 逆に言えば、誰にも見られていない時には波になっているのですね。しかも、何処にいるのか解らない住所不定状態なのです。

 また、【不確定性原理】によると、速度を確定させれば位置が決まらず、位置を確定させれば今度は速度が決まらないということになります。
 同じことが、時間とエネルギーの関係でも言えます。

 物質は、人が見ていない時には、住所不定の波なんて・・・。
 非常に不思議な振る舞いをしますね。

 これは、自然をあるがままの状態で観測することはできないということを意味します。つまり、

”自然の本質の意味”
 ・・・なのです。
 本来は絶対的なことや確定的なことを嫌うのが自然の姿だと言えます。
 それまで語られていた、「未来は自然の法則に基づいてただひとつ決まっている」という世界観を全面的に否定するものです。

 自然は整然としたシンプルなものでも、予測可能で規則正しい機械仕掛けのようなものでもないのですね。

 また、人が観測することで自然の状態が決まるという考え方は、人は自然の一部であるという東洋思想の「一元論」に近いものです。
 観測によって自然に影響を及ぼしてしまうのです。従って、

人=自然の一部
 ・・・なのですね。
 そして、
”未来は確定などしておらず幾らでも創造できる”
 ・・・ということであり、物事に絶対はないと言えるのではないでしょうか。

 物事は、ある程度の「ゆらぎ」の幅を持って、
”良い加減”
 ・・・な感じが、丁度”良い塩梅(あんばい)”なのだと思います。

『スピリチュアルと物理学』 1限目 より 柊木匠:著 BABジャパン:刊

 この世の中には、「絶対」は存在しない。
「確実な未来」など、ありえない。

 それを理論的に証明しているのが、「不確定性原理」です。

 自然の本性は、変化し続けること。
 もちろん、人間も自然の一部ですから、それから逃れることはできません。

 変化を受け入れ、それを楽しみたいですね。

存在するすべては「エネルギー」

 現代を代表する物理学者のひとり、アルバート・アインシュタイン。
 時間と空間の性質を解明した「特殊相対性理論」などが知られていますね。

 アインシュタインが残した、もっとも有名な式。
 それが「エネルギー質量等価原理」を示した式です。

 物体は運動の速度が光の速度に近づくに連れて質量が増加します。
 これは、運動のエネルギーが質量に変換されているということです。
 宇宙船は光の速度に近づくとドンドン重くなるのですね。

 式で書くと、
エネルギー=質量×(光の速度)2乗
 ・・・というものになります。
 これを応用した代表選手に原子力を使ったエネルギーがあります。

 大きな原子核が分裂すると、分裂してできたものの質量の和は元の原子核の質量よりも小さくなります。
 欠けた質量分がエネルギーに変換されて放出されたのですね。
 ウランやプルトニュウムは分裂する際に欠けた質量分の膨大なエネルギーが出ますが、これを利用したものが原子爆弾や原子力エネルギーです。

 アインシュタインが理論的に示したことになりますが、広島や長崎の原爆投下後、式を作ったことを非常に後悔し、それ以後、平和運動に取り組んで行ったのですね。

 この式から質量とエネルギーは同じ、つまり等価であると言えます。
 言い換えれば、「質量はエネルギーのひとつのカタチ」であるとなります。
 エネルギーが姿を変えたものとして、質量(物質)があるということです。
「量子論」で物質が波であったように、
物質=波動=エネルギー
 ・・・の関係が成り立ちます。

 密度の大きいものが物質であって、波動の性質が小さくなっている。
 私たちは、密度の大小で物質的なものと波動的なものの区別をしているだけなのですね。

 私たちが知覚できる物質は、密度が大きくて波長が極めてゼロに近い波ということです。また、様々なものの間には万能引力などのチカラが働きますが、これはエネルギーの交換でもあるのですね。
 エネルギーの干渉が何らかの影響を及ぼしています。

「意識もエネルギーのひとつのカタチ、形態」であって、もの凄く強い感情やいわゆる”念”はそれ自体が独立してエネルギーとして存在できるものかもしれませんね。

『スピリチュアルと物理学』 2限目 より 柊木匠:著 BABジャパン:刊

「潜在意識で強く思うことは、必ず実現する」

 スピリチュアルの世界では、それが常識となっています。

 精神世界(エネルギー)と物質世界(質量)をつなぐもの。
 それが、このアインシュタインの式です。

 “目に見えるもの”だけではダメ。
 “目に見えないもの”も含めて、トータルで考える必要がありますね。

この世界のすべては「ひもの音」!?

「この世界は、どうなっているのか」
「宇宙は、どこから来て、どこに行くのか」

 科学や哲学は、そんな普遍的な疑問に答えるために発展してきました。

 今も、素粒子などのミクロの世界や、宇宙を支配する基本的な力の源を探る試みが、世界中でなされています。

 その中のひとつに「超ひも理論」があります。
 超ひも理論は、極めて小さな”ひも”が、あらゆる物質の基礎単位であるとする考え方です。

 全てはひもで構成されており、素粒子などの物質は、その振動の種類によって決まるというものです。
 つまり、
全てはひもの振動である ・・・ということです。

 物質は、ひもの振動、つまり、”弦(ストリング)”が奏でる音なのですね。
 ひも理論とは、物質は、小さなひもから音楽の様に紡ぎ出される、目には見えない色々な音が物質を生み出しているという説なのです。

 古代インドの『ヴェーダ聖典』で言う「始まりの音」も、「人は音の人」というのも何か頷けますね。

 この理論は、重力のチカラの小ささや、様々な粒子を導き出し得る大きな自由度を持っています。「万物の理論」に成り得る可能性を持っており、それを元に様々なモデルが提案されています。

 また、ひもを拡張して「膜」を基本単位とする「膜宇宙論」というものがあります。
 今度はひもがゴムシートのような膜になったものと理解することができます。
 私たちか認識できる世界は、縦・横・高さの3次元空間と、時間を加えた4次元空間です。
 ところが、「超ひも理論」では、10次元、「膜宇宙論」では11次元という時空間が必要とされます。
 4次元を超えた次元は極ミクロなレベルで巻き上げられていて、小さなエネルギーでは観測できないとされています。

『スピリチュアルと物理学』 3限目 より 柊木匠:著 BABジャパン:刊

 10次元や11次元とは、一体どんな世界なのでしょうか。
 まるで想像もつかない世界ですね。

 柊さんは、紙みたいな平面に住んでいる住人が、立体の世界を想像できないのと同じように、立体の世界の住人は、それより高い次元は想像できないと述べています。

 科学や哲学は、私たちが体感できない“次元の謎”を解明することができるのでしょうか。
 興味深いですね。

人=物質・見えない物質・見えないエネルギー

 私たちの体は、「目に見える部分」だけで成り立っているのではありません。
「目に見えない部分」も存在し、大きな役割を担っています。

 古くから、人はエネルギー的に様々な階層で成り立っているという考え方があります。

 柊さんは、それらは以下のような幾つかの違った振動数から形成されていると説明しています。

●人を形づくるエネルギー(下の図2を参照)
①エーテル体:からだと結合して、エネルギーを供給し安定させる準物質的なもの。
②アストラル体:感情や欲望等を発するもの
③メンタル体:自己表現や知力等を発揮するもの
④コーザル体:全体的な概念等、個を超えたもの/下の図2を参照

 この中で、物質的なものは肉体とエーテル体であり、それ以降のものはエネルギーそのものといった感じですね。このエネルギー体の幾つかを捉えて、「オーラ」と呼ぶ場合もあるでしょう。
 従って、この考え方によれば、ダークマターがエーテル体に反応し、それ以降がダークエネルギーに対応することになります。
 数字で言うと、肉体が4%でエーテル体が22%、それ以降が74%となります。
 これからすると、からだを取り巻く構造も、肉体に比べて目に見えないものの方がはるかに大きいということになりますね。
 これらの階層の外側から、順にエネルギーが人に流れ込んで各器官や機能に働きかけています。そのエネルギーを肉体で受けるものが、中医学では経絡などであり、インドではチャクラと呼ばれているものなのです。

 エネルギー(ダークなもの)の受け口が、経絡やチャクラということになります。
 つまり、
人=エネルギーの集合体であり多様な振動体
 ・・・であると言えます。

 ホリスティック医療で、人は、こころやからだ、魂・スピリットといったものの有機的な統合体と捉えたように、物質やエネルギーの観点で捉えたら、

人=物質・見えない物質・見えないエネルギー
 ・・・の三位一体と見なすことができます。
 人は、機械ではなくて、”微細なエネルギーが基となっている”という考えなのです。
 だとしたら、いろんなことでエネルギーが揺らいだり、他の人や周りの環境とエネルギー的に相互作用したりして偏りなども生じて来ます。

 その揺らぎや偏りを整えるものが、食であったり各種の癒しであったりします。
 おそらく、エネルギーを整えられるものは、自然の中に多くあるのだと思います。
 それぞれのエネルギー体が違った振動数を持つので、それに対応する振動数を持つものを作用させていけば良いものと考えられます。

 例えば、通常の薬では肉体領域しか作用が届かないことが多いのですが、アロマやフラワーエッセンス、ホメオパシーなどは、エネルギー的に人体に作用するのですね。レイキなどの様々なエネルギーヒーリングも、これに該当するものと思われます。

『スピリチュアルと物理学』 4限目 より 柊木匠:著 BABジャパン:刊

図2 体を取り巻くエネルギー オーラ スピリチュアルと物理学 4限目
図2.体を取り巻くエネルギー(オーラ)
(『スピリチュアルと物理学』 4限目 より抜粋)

 人間には、目に見える部分よりはるかに大きな、目に見えない部分が存在するということですね。

 人間を、目に見えない部分も含めたトータルの「エネルギー体」として考える。
 そうすることで、現在の医学水準では、治せない難病の治療法が見つかるかもしれませんね。

 これまで脇役の存在だった、ホリスティック医療。
 それらを西洋医療に取り込むことで、新たな可能性が広がる可能性は、十分にありますね。

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「スピリチュアル」とは、柊さんにとって一言で言うと、“いのちの探求です。

 生きるとは、どういうことか。
 それを精神や魂などの「目に見えない部分」からアプローチしたのが、スピリチュアルです。

 一方、「物理学」は、それを自然法則などの「目に見える部分」から解き明かすことを目的として発展してきました。

 これまで、まったく別物として捉えられてきた「スピリチュアル」と「物理学」。
 それが相対性理論や量子力学などによってシンクロし、別々に議論することが難しくなりつつある。

 それが、今、私たちが生きている時代です。

「目に見えるもの」と「目に見えないもの」の境界線は、今後、ますます曖昧になることでしょう。

「スピリチュアル」と「物理学」は、同じ目的地を違うルートで目指しているにすぎない。
 本書は、その事実を明白に、わかりやすく私たちに示してくれます。

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