本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ

本を読むことは、心と体に栄養を与えること。読むと元気が出る、そして役に立つ、ビタミンたっぷりの“おいしい”本をご紹介していきます。

【書評】『感情を整える片づけ』(種市勝覺)

 お薦めの本の紹介です。
 種市勝覺さんの『感情を整える片づけ』です。

 種市勝覺(たねいち・しょうがく)さんは、密教カウンセラー・風水コンサルタントです。
 15年間の修業を重ね、空海密教阿闍梨となられました。
 風水学と密教思想を軸に、2000件以上の住居・オフィス選びや鑑定、リフォーム監修などを手掛けられています。

「感情」と「環境」はつながっている

 散らかすつもりがないのに、散らかってしまう。
 いつも部屋の中がものであふれて、足の踏み場もない。

 もちろん、すべて自分がやったことの結果ではあります。
 けれど、意図してやったことではありません。

 望んでいないのに、散らかる。

 種市さんは、それはあなたが意識的におこなったことではなく、無意識のうちにものを置いたり、動かしている結果だからだと指摘します。

 無意識とは、ご存知のとおり、自分の意識で捉えられない領域のことです。
 人の意識と無意識の比率は1対9やそれ以上ともいわれ、じつは、人の心の動きのうち、無意識の方が圧倒的な大きさを占めています。
 食べものを咀嚼して飲み込んだり、手足を動かして歩く、言葉をつなげて発するなど、習慣化されているものは全て無意識のうちにおこなっています。このしようと意図せずとも発動する思考や感情のパターンも、無意識による反応です。
「無意識に部屋やデスクを散らかしてるということは、無意識に発動する思考や感情も整っていない、ということ!?」

 はい、残念ながら、そのとおりかもしれません・・・・・。
 感情が乱れていると、無意識のうちに自分の周りの環境、すなわち住んでいる家や部屋、職場のデスク回りにも乱れが出ます。環境は自分の心の動きの現れ――環境と感情はつながっているのです。
 逆に言えば、わたしたちがもし自分の感情や思考、環境をも左右する無意識に関与できたとしたら、人生を簡単に、かつ劇的に変えることができるはずです。なにしろ、心の動きの9割を占めているのですから。

 ところが、わたしたちは「自分を変えたい」「もっと良くしたい」と思ったとき、1割しかない意識の方ばかり変えようとします。自己啓発の本を読んだり、セルフマネジメントについて学んだり・・・・・。
 しかし、1割の意識よりも、9割を占める無意識に着手した方が、圧倒的かつ確実に自分を変えることができるわけです。
 先ほどもお伝えしたように、そのときの感情は、無意識に環境に現れます。その逆もしかりで、環境から感情に働き掛けることも可能なのです。つまり、環境を整えれば、感情も整うということ。
 9割の無意識を変える、そして感情を整えるためには、環境を変えるのがいちばん効率的で効果的なのです。
 そして、それを可能にする技術が、中国から伝来した古くから伝わる「風水」の技術です。
(中略)
 では、中国伝来の風水とはどんなものなのでしょうか。
 風水とは、環境を味方にする法、自然エネルギーを目的のために活用する法――つまり、情報伝達しやすいまちづくりや地形を活かした攻め込まれにくい城づくり、また、強さや威厳を示すための美しい建築やレイアウトなどをまとめた伝承科学です。そこに「方位学」や「氣の流れを読む法」、「住環境と心身の関係」を解読したものです。

『感情を整える片づけ』 プロローグ より 種市勝覺:著 アチーブメント出版:刊

 種市さんは、風水の考えに基づいて身の回りの環境を整えれば、思考や感情のパターン、行動をも変えることができると述べています。

 本書は、「密教」と「風水」をベースに、無意識に働き掛けることで感情を整える方法をまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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環境を変えると芽生える思考や感情も変わる

「環境が人の心に影響を与える」

 種市さんは、これを以下のように説明しています。

 環境が人の心に影響を与える――言い換えれば、思考や感情は、環境から生まれるということです。
 思考や感情の発生源は、何かを見たり聞いたり、さわったりしたときの五感の反応から頭の中に浮かぶ、さまざまなイメージです。
 たとえば、薄暗くて窓のない部屋に1人で通されて「この部屋はなんか氣味が悪いな」と思ったとき、過去の恐怖体験のイメージが頭の中に浮かびます。
 その映像に意識がフォーカスして「ここでは油断しないで用心しよう」という思考や感情が生まれるわけです。

 このように、過去に出会った悪いイメージは、現在のマイナスの思考や感情の喚起につながります。
 逆に、いい記憶やいい出来事は、いいイメージを増やします。いいイメージが増えると、思考や感情もポジティブな内容に変わっていきます。すると、わたしたちの心の動きの9割を占める「無意識」に対しても、ポジティブな変化が及ぶようになるのです。

 人の頭の中にはいつも意識的、もしくは無意識的に何らかのイメージが浮かんでいます。
 とてもいい映画を見たら、2、3日のあいだは「あの作品はほんとうに面白かったなぁ〜」と思い出しては、脳裏に映像がよみがえりますよね。旅行先で見たきれいな景色は、もっと長いあいだ脳裏にとどまることでしょう。
 デートや旅行の計画など、先々に楽しい計画や約束を入れることも、楽しいイメージが増えますよね。楽しい予定は、未来にあるにもかかわらず、今の氣分を上げてくれます。
 快の氣分は、プラスをもたらす「生氣」です。
 楽しみとは逆に、嫌いなことを避けたい一新で頑張るエネルギーも大きな原動力になりますが、それで生じるのはマイナスの氣をもたらす「殺氣」のみ。殺氣のエネルギーでは、物事が早く進むというメリットがあっても、幸福感は得られません。

 本書のカギとなるのが、この2つの「氣」の存在です。
 生氣は先にもお伝えしたとおり、喜び、幸せ、楽しみ、満足感といったエネルギーです。
 対して殺氣は、苦労や恐怖、犠牲といったエネルギー。
 本書は風水の知恵を基に部屋を片づけて生氣と殺氣のバランスを整え、自分自身の感情も整えることを目的としています。

『感情を整える片づけ』 第1章 より 種市勝覺:著 アチーブメント出版:刊

 環境を整えることは、「氣」を整えること。
 氣が整えば、私たちの感情も、自然と整うということです。

 環境の影響は、多くの時間を過ごす場所ほど、大きくなります。
 そう考えると、やはり、家という最も身近な環境を良い状態にすることが、非常に重要です。

 自分の家や部屋を生氣のエネルギーで満たすこと。
 それが風水の基本原理であり、運氣を好転させるポイントになります。

「捨てられない自分」を認める

 ものを捨てられない人は、捨てるという決断を先送りにしている人です。

「捨てられない」

 この言葉は、自分の意思はなく、ものに支配されている心理状態を表します。

 種市さんは、実際は、捨てないことを自ら決断しているので、そのことに氣づかないと、ずっと「捨てられない」ままだと指摘します。

 では、その捨てない決断がどこからやってきたのかというと――発生源は、「捨てることへの恐怖」です。もっと言えば、捨てた「過去」とその後の「未来」に対する恐怖心です。
 1「こないだ捨てたのは間違いだったんじゃないか」→過去への恐怖心
 2「もしかしたら、捨てたあとに必要になるかもしれない」→未来への恐怖心
 3「捨てたことを後悔するのはいやだ・・・・・」→捨てられない!
 となるわけです。
 今、ものを捨てて得られる「すっきり!」という氣持ちよさよりも、恐怖心を優先しているんですね。

 つまり、あなたは恐怖心から、捨てないことを選んで一時の安心を得たわけです。捨てないことでいつでも好きなときに手にとれますし、それが必要で困っている人がいたら、貸してあげることもできますよね。
 そう、捨てないことは悪いことばかりではありません。
 得てして、多くの人が「捨てられない自分」を責め、自分にダメ出しをしてしまいます。一度そんな自分を否定せずに、認めてみてください。捨てないことも、自分が選んだことであれば肯定してあげましょう。
「捨てないことを選んでいるわたしはすばらしい!」。それで良し!です(笑)。
 何事も、自分の選択を肯定しないと、前に進むことができないものです。もし、自分の氣持ちを無視して捨てたとしても、のちのち捨てたことをひどく後悔して、捨てた選択をした自分を否定し始めます。
 結果、「やっぱり捨ててはダメなんだ」「捨てるとつらい思いをするんだ」と、捨てられない自分に戻るだけです。
 不思議なもので、一度、捨てない自分を肯定して受け入れることができると、「あれ? なんでわたしは捨てられないんだろう?」と考え始めます。すると、「ものが捨てられない」という、ものに支配された状態から解放されて、「わたしがものが捨てられない」といった、自分が主体の思考に変わります。
 その段階を経て、初めて「わたしがものを捨てる」といった選択について、無理なく考えられるのです。
「捨てない安心感よりも、捨てるすっきり感もアリかもしれない」
 と感じ始めたら、それは片づけの第1歩。執着から自由になって、捨てることがストレスなく始められる、心の準備ができたということです。

『感情を整える片づけ』 第2章 より 種市勝覺:著 アチーブメント出版:刊

 ものの「捨てる」「捨てない」を判断するコツ。
 それは、「今の自分にとって必要か? 不要か?」だけです。

 密教では、「今現在を幸せにする」ことを重視します。

「これは、まだ使えるから取っておこう」

 そんな未練は、この際すべて断ち切って「断捨離」してしまうのも手ですね。

最も簡単な風水術は「空氣の入れ替え」

 密教や風水では、「建物は生き物」、つまり建物を生命体として捉えています。

 種市さんは、日ごろお世話になっているお礼として、人に接するのと同じようにリスペクトの氣持ちをもって手掛ける――すなわち、掃除や片づけをすることが大切だと述べています。

 誰でもできるいちばん簡単な風水のテクニックが、「空氣の入れ替え」です。

 風水の「風」は空氣を、「水」は水質を意味します。
 したがって、風水的な好立地条件は空氣と水質の良い所になり、室内における風水も「自然を感じられるような心地良さ」が基本になります。

 じつは、病氣、トラブル、不運は「不自然」に感じることや不快さの中に潜んでいます。
 もし、毎日窓を閉めきって、よどんだ空氣の中で生活していたら・・・・・。
 体調や氣分が悪くなったり、家庭の雰囲氣も悪くなったり、仕事のパフォーマンスが落ちてミスをすることも想像できますよね。

 風水においては、氣の流れがいい状態のことを「運がいい」、氣が滞っている状態のことを「不運」、と言い換えることもできるのです。

 そこで、ぜひ習慣にしてほしいのが、空氣の入れ替えなのです。
 空氣の入れ替えは最も簡単な風水術で、おすすめの時間帯は「辰(たつ)の刻」といわれる朝7時から9時です。
 これは「ドラゴンタイム」と呼ばれる時間帯で、古くから氣が最もよく動くときといわれています。

 風水では、氣が吹き出る場所を「龍穴(りゅうけつ)」、氣の流れを「龍脈(りゅうみゃく)」といい、「龍」イコール「氣」と解釈します。
 ドラゴンタイムは「龍の時間帯」であり、氣が集まり、氣が最も流れるタイミングのことです。このときに空氣の入れ替えをすることで、夜の「陰の氣」と朝の「陽の氣」がスムーズに入れ替わり、氣が循環して、自宅やオフィスが活性化します。
 陰は「沈静」、陽は「活性」のエネルギーを意味します。
 夜の陰の時間に必要なのは「沈静」なので、窓を閉めて照度を落とすのが休息睡眠に吉となります。反対に、朝や昼間の陽の時間に必要なのは「活力」なので、窓を開き、光や風の動きを活用することで良い運氣を引き寄せるのです。

 ドラゴンタイムにあたる朝の7時から9時までの2時間、ずっと窓を開けておく必要はありません。感覚的に、空氣が入れ替わったことが感じ取れるくらいの時間で十分です。

『感情を整える片づけ』 第3章 より 種市勝覺:著 アチーブメント出版:刊

 朝起きたら、いちばんに窓を開けて「空氣の入れ替え」をする。

 部屋の中のよどんだ空氣を一掃する。
 それだけでなく、自分自身もお日様や新鮮な外の空氣に接して、リフレッシュできる効果もあります。

 毎朝欠かさない習慣としたいですね。

「掃除」を率先する人は影響力が高まる

 掃除や片づけは、空間の「手入れ」です。
 密教や風水では、手を入れることは「氣を入れる」こととイコールと考えます。

 自宅同様、デスク回りも、「3K(暗い・臭い・汚い)」状態を避け、「3S(整理・整頓・清潔)」の状態に整えることが大前提です。

 種市さんは、氣を新たに入れることで、「氣のマンネリ(殺気)」を防ぐことにもつながり、オフィスに適度な活氣を生じさせて、仕事運を向上させると述べています。

 毎日3分でもいいので、掃除や片づけを日々のルーティン業務としましょう。
 机回りだけでなく、「風」が入ってくる玄関、入り口、窓、そして「水」を扱う水回りの手入れもおこなってください。文字どおり「風水」が整えられ、仕事の運氣アップにより効果が表れます。

 習慣化しやすいのは、始業時か終業時です。始業時なら「今日もよろしくお願いします」、終業時なら「今日もありがとうございました」という、場に対する感謝の氣持ちをこめておこなうと、生氣が生じて、より良く整います。掃除や片づけの前後に合掌するのもいいでしょう。
 ただし、神経質になるほど徹底してやり過ぎると、殺氣が生じるのでNGです。毎回範囲を決めて「今日はいちばん上の引き出しだけを片づけようか・・・・・」など、無理なく続けられるペースがいいでしょう。

 同じように、掃除や片づけをいやいややったり、義務だから仕方ないという、ネガティブな氣持ちでおこなうこともNGです。
 その氣持ちが掃除を雑にして殺氣を生むため、せっかくの掃除が悪い氣を引き寄せることに。1人で掃除するのが大変な場合は、生氣をもたらす「喜んでやってくれる人」に協力してもらうのがおすすめです。繰り返しますが、場に対する感謝の氣持ちを忘れずにおこないましょう。

 会社の掃除は、可能な限りその会社の社員全員でおこなうことをおすすめします。みんなで掃除をすることで、社員の心が1つになる、というメリットも感じられるためです。

 行動の質は、氣持ち1つで変わります。
 そして、上質な行動をとる人の存在感は自然と増すため、日ごろからの発言の影響力も大きくなっていくものです。オフィスで意見が通るようになりたい、存在感を強くしたいと願うなら、まずは、身の回りだけでなく「共用スペース」の掃除や手入れを率先しておこなってみてください。

 オフィスの環境を整える人は、その場で働く人の心を整える力も獲得するのです。

『感情を整える片づけ』 第4章 より 種市勝覺:著 アチーブメント出版:刊

 デスク回りの状態は、「頭の中の状態」を表している。
 よく言われることですが、風水的にも裏づけられるということです。

 出社したら、最初にデスク回りを掃除する。

 頭と心の整理をして、仕事の効率がグッとアップ。
 生氣あふれる、職場での影響力が大きな存在を目指したいですね。

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 風水は、「環境を味方につける技術」です。

 種市さんは、味方につけるとは、「目的と環境情報」がマッチングしている」状態にすることだとおっしゃっています。

 心穏やかな生活を送りたいなら、生活環境を、自分が「落ち着く」と感じるように変える。
 刺激的な生活を送りたいなら、生活環境を、自分が「刺激的だ」と感じるように変える。

 それが人生を好転させる秘訣だということです。

 少し遠回りな気がしますが、「急がば回れ」です。

 意識の奥深く、無意識に働きかけて、いつの間にか運氣がアップすること間違いなしです。

 本書はまさに、そのためのガイド役として、うってつけの一冊です。

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