【書評】『When 完璧なタイミングを科学する』(ダニエル・ピンク)

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 お薦めの本の紹介です。
 ダニエル・ピンクさんの『When 完璧なタイミングを科学する』です。

 ダニエル・ピンク(Danel H Pink)さんは、米国の作家・文筆家です。

タイミングは「科学」である!


 私たちの人生は、「いつ」という決断を、際限なく突きつけてきます。

 いつ、転職すべきか。
 いつ、結婚すべきか。
 いつ、引っ越すべきか。

 人生が好転するか、暗転するかは、この「いつ」にかかっている。
 そう言っても過言ではありません。

 タイミングとは実は科学であることを、わたしは本書で伝えるつもりだ。人間の状態に関する新たな見識と、賢い働き方やより良い生き方について役立つ指針を授ける、多面的で学際的な研究が、次々と登場している。書店や図書館に行けば、さまざまな事柄について“やり方を手引きする”本があふれている。友だちを作る方法、他人に影響を与える方法、1ヵ月でタガログ語を話す方法、などなど。その数たるや膨大なので、今では1つのカテゴリーでくくられているほどだ――いわゆる“How To“本である。一方、本書はまったく新たなジャンルの本だと考えてもらいたい――“いつすべきか手引きする“本、つまり“When To“本だ。
 過去2年間、怖いもの知らずの著者と2人のリサーチャーは、まだ広く知られていないタイミングの科学について明らかにするために、経済学、麻酔学、人類学、内分泌学、時間生物学、社会心理学などの分野の700を超える文献を読んだ。本書はその研究を用いて、人間の経験に大いに影響するのにわたしたちの視界から隠れがちな問題について、数百ページにわたり検証する。なぜ始まりが――素早いスタートであれ誤ったスタートであれ――これほど重要なのか? なぜわたしたちは途中で――プロジェクトやゲーム、人生の途中でさえも――ときに意欲を失い、またときに奮起したりするのだろうか? 物事の終わりを迎えようとするとき、なぜわたしたちは終着点にたどりつこうとしてさらに頑張るのか、あるいはペースを落として意味を見つけようとするのだろうか? ソフトウェアの設計であれ合唱であれ、どのようにして他者とタイミングを合わせるのか? 学習を妨げる時間割がある一方で、なぜある種の休憩時間が生徒のテスト結果を向上させるのだろうか? 過去について考えたときと、未来について考えたときでは、人のふるまいが変わるのはなぜだろうか? つまるところ、タイミングという目に見えない力を考慮し、マイルス・デイヴィスいわく、重要どころかタイミングがすべてというほどの力を認めて、組織や学校や人生をどのように築いたらよいのだろうか?

『When 完璧なタイミングを科学する』 はじめに より ダニエル・ピンク:著 勝間和代:訳 講談社:刊

 本書は、最新の科学的見地から「タイミング」を分析し、そこから得られた知見を活かすためのノウハウについてまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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人間に組み込まれた「感情のパターン」


 膨大な量のデータを、短時間で処理する「ビッグデータ」技術の発達。
 それにより人間の感情パターンを、これまでとはまったく違ったアプローチから解析できるようになりました。

 ピンクさんは、その一例として以下のような研究を紹介しています。

図1 LIWCの測定によるポジティブな感情 When 第1章
図1.LIWCの測定によるポジティブな感情
(『When 完璧なタイミングを科学する』 第1章 より抜粋)

 数年前、コーネル大学の2人の社会学者、マイケル・メイシーとスコット・ゴールダーが84カ国240万人のユーザーが2年間に投稿した、5億件以上のツイート分析した。2人はこの宝の山を用いて人間の感情を測定したいと考えた。とりわけ、「ポジティブな情態」「情熱、自信、機敏さなどの感情)と「ネガティブな情態」(怒り、無気力、罪悪感などの感情)が、時間とともにどのように変化するのか突き止めようとした。2人はこの5億件のツイートを1つ1つ読んだわけではない。この投稿を、LIWC(Linguistic Inquiry and Word Count:言語調査と言葉のカウント)という、強力かつ広く利用されているテキスト解析プログラムに読み込ませ、それぞれの言葉が伝える感情を評価したのだ。
 メイシーとゴールダーは、人々の覚醒中に驚くほど一貫性のあるパターンが存在することを発見し、高名な『サイエンス』誌にその結果を発表した。ポジティブな情態――つまり、投稿者が活動的でエネルギーにあふれ、希望に満ちていることが現れている言葉、――は、概ね午前中に高まりを見せ、午後に急に落ち込み、夕方になると再び高まった。ツイッター利用者がアメリカ人でもアジア人でも、ムスリムでもアスリートでも、黒人でも白人でもその他有色人種でも、関係なかった。「時間が影響を与えるパターンは、異質な文化でも地理的に離れた場所でも、同じように現れた」と2人は発表した。つぶやいたのが月曜日でも木曜日でも関係なかった。平日のパターンは基本的に同じだった。週末には少々異なるパターンが見られた。土曜日と日曜日には、ポジティブな感情が平日よりも少し高めだった――それに午前中のピークは、平日よりも2時間遅かった――が、全体的な流れは平日と同じだった。アメリカのように広大で多様性に富む国家でも、アラブ首長国連邦のように国土が狭く均質性の高い国家でも、日々のパターンは奇妙なほど一致していた。それをグラフに表すと上のようになる(上の図1を参照)。
 大陸も時差も関係なく、潮の満ち引きが規則的にくり返されるように、1日における変動、――ピーク、谷、回復――は同じだった。わたしたちの日常生活の背後には、隠れたパターンがある。このパターンは重要かつ思いもよらないものであり、ここから明らかになることがある。

『When 完璧なタイミングを科学する』 第1章 より ダニエル・ピンク:著 勝間和代:訳 講談社:刊

「夜に書いた手紙は、翌朝、もう一度読み直したほうがいい」

 よく言われることですが、それを証明する研究結果ですね。

 人間を含め、すべての生物には「体内時計」が組み込まれているといいます。

 自然の摂理を把握して、上手に利用すること。
 それがベストなタイミングを導く秘訣です。

「注意力を高める休止」の効力


 午後は、多くの人にとって、集中力が途切れがちな時間帯です。

 実際、病院などでの医療ミスが起こる可能性は、午後の時間帯が大きくなる統計データもあります。

 ピンクさんは、その課題を解決した、ある取り組みを取り上げています。

 手術台の上には、顎がひどく砕かれた、20代の男性がいる。近くの壁には大画面テレビがあり、手術着姿で手術台を取り囲むほかの5人――看護師、医師、臨床検査技師――の名前が表示されている。その一番上に、青い画面に黄色い文字で、患者の名前があった。真剣な面持ちをした、細身で30代の外科医は、早く手術を始めたくてうずうずしていた。だが、3キロ離れたクライスラー・センターでバスケットボールの試合をしている大学チームのように、彼らはタイムアウトをとる。
 いつのまにか、彼らは一歩後ろに下がっていた。次に、大画面と、腰にぶら下げた小さな名刺大のカードを見て、互いにファーストネームを名乗り合い、9ステップの「麻酔導入前の確認」をチェックリストに従って進める。これは、患者を取り違えていないか確認し、患者の状態とアレルギーを頭に入れ、麻酔科医が使用する麻酔薬を理解し、必要となる特別な機器などを点検するリストだ。全員の紹介が終わり、すべての質問に答えたら――このプロセスにかかる時間は3分ほどだ――タイムアウトは終了し、麻酔科の若い研修医が、すでに鎮静剤を投与されていた患者を完全に眠らせるために、密封された袋を開けて器具を取り出す。今回の麻酔は簡単ではなかった。患者の顎がひどい状態なので、厄介なことに、研修医は口からではなく鼻孔から喉へと管を通していく。まもなく患者は意識を失い、バイタルサインが安定し、手術を開始できるようになった。
 すると、チームは再び手術台から一歩後ろに下がった。
 各自が「切開前のタイムアウト」カードのステップを再点検し、全員の準備が整ったことを確認する。そうして、彼らは個人としても全体としても再び集中する。その状態になってようやく、全員がまた手術台に歩み寄り、外科医は顎の修復手術に取りかかる。
 わたしはこのようなタイムアウトを、「注意力を高める休止」と呼んでいる。危険性の高い作業に取り組む前に、指示を見直してミスを防ぐために、しばし立ち止まる。「注意力を高める休止」は、ミシガン大学医療センターが、午後の谷の時間帯に悲惨病院と化すのを防ぐうえで、大いに役立ってきた。トレンパー医師がこの制度を導入してからというもの、看護の質は高まり、合併症は減少し、医師にも患者にも落ち着きが見られるようになった。

『When 完璧なタイミングを科学する』 第2章 より ダニエル・ピンク:著 勝間和代:訳 講談社:刊

図2 麻酔導入前の確認 カードと 切開前のタイムアウト カード When 第2章
図2.「麻酔導入前の確認」カードと「切開前のタイムアウト」カード
(『When 完璧なタイミングを科学する』 第2章 より抜粋)

 人間の集中力は、意外と続かないものです。
 とくに、調子に乗りかけたところに、「油断」という落とし穴があります。

 勢いが出てきたところで、あえて立ち止まる。

「注意力を高める休止」は、1日のなかでバミューダ・トライアングルである、午後の時間帯を乗り切る、とても有効な手段といえます。

「社会的ランドマーク」と「個人的ランドマーク」


 タイミングを制するうえで、何よりも重要なのが「スタート」です。

 ピンクさんは、スタートはわたしたちがコントロールできる領域であり、したがってコントロールすべき領域だと指摘します。

 一度挫折して再スタートを図る。
 そんなとき、私たちがよく用いるのが「時間的ランドマーク」です。

 時間的ランドマークには、「社会的ランドマーク」「個人的ランドマーク」の2種類があります。

 社会的ランドマークは、月曜日、朔日(ついたち)(月の1日目)、国民の祝日など、誰もが知っている日です。
 個人的ランドマークは、1人1人異なり、誕生日や記念日、転職の機会などです。

 時間的ランドマークを利用する利点は、以下の2点です。

 1つ目は、年度末に企業が決算して新年度の新たな台帳を開くように、このランドマークにより、「新たな心理的取引」が始められることだ。この新たな段階は、それまでの自分自身を過去に追いやることで、再スタートを切るチャンスを授ける。かつての過ちや欠陥からわたしたちを切り離し、新たな、優れた自己に自信を持たせてくれる。その自信に強化されて、わたしたちは「過去よりも優れたふるまいをし願望を達成しようといっそう熱を込めて努力する」。広告主が1月によく使うフレーズは、「新しい年、新しい自分」だ。時間的ランドマークを用いるときにわたしたちの頭の中で起きていることである。「以前のわたしはデンタルフロスしていなかった。でも、新しいわたしは、夏休みが終わった次の日に生まれ変わって、口腔衛生マニアになる」といった具合に。
 2つ目の目的は、わたしたちを木から振り落として、森をちらりとでも見られるようにすることだ。「時間的ランドマークは、日々の些末事から注意をそらし、人生の全体像をとらえさせて、目標の達成に集中させる」。空間的なランドマークについてもう一度考えてみよう。何キロも走っている間、外の景色をほとんど気に留めなかったのに、煌々と輝く角のシェル石油のスタンドが、あなたの注意を引く。新たなスタートをきるのもこれと同じである。ダニエル・カーネマンは、速い思考(本能に基づいた、認識の偏りで歪められた判断をすること)と、遅い思考(理性に基づいた、慎重な検討に導かれた判断をすること)を区別した。時間的ランドマークはわたしたちをゆっくり思考させて、高い水準で熟考してより優れた判断ができるようにする。
 新スタート効果の意味合いは、それを促進する力のように、やはり個人的であり社会的である。新しい仕事で、重要なプロジェクトで、健康を改善しようとして、よろめきながらスタートを切る人でも、時間的ランドマークを利用して再スタートし、コースを変えることができる。ウォートン校の研究者たちが述べるように、人間は「人生における転換点を戦略的に[創造]できるのだ。

『When 完璧なタイミングを科学する』 第3章 より ダニエル・ピンク:著 勝間和代:訳 講談社:刊

「一年の計は元旦にあり」

 日本のことわざにもあります。

 何ごとも、自分が始めようと決めたときがスタート地点です。
 決意を高めるための“号砲”として、2つの時間的ランドマークを活用したいですね。

中間地点でのモチベーションを呼び覚ます「5つの方法」


「中だるみ」という言葉もあるように、私たちは中間地点で手を抜いたり、やる気をなくしたりしがちです。

 ピンクさんは、プロジェクトや任務の中間地点に達したとき、スランプから脱出するための具体的な方法を以下に挙げています。

1.中間目標を設定する
 モチベーションを維持し、さらには再活性化するためには、大きなプロジェクトを小さなステップに分けるといい。減量やレースに取り組む人、無料航空券入手のためにマイレージを貯めている人を調査した結果、モチベーションはその過程の最初と最後に高まるが、「中盤で停滞する」ことが判明した。たとえば、2万5000マイル貯めようとしているとき、マイルが4000か2万1000のときには一生懸命貯めようとする。ところが、1万2000マイル貯まったときは、あまり熱心ではなかった。こうした中だるみを解消するには、中間を異なる視点で見るといい。2万5000マイルを考えるのではなく、1万2000マイル時点で下位目標(サブゴール)を設定し、1万5000マイルを貯めることに集中する。レースの場合、それが文字通りのレースであれ、比喩的なレースであれ、ゴールまでの距離を思い描くのではなく、次のマイル標識にたどり着くことに集中するのだ。

2.中間目標を公約する。
 下位目標を設定したら、公約の力に頼る。誰かに対して責任を果たさなくてはならない場合、目標達成の可能性は格段に高まる。スランプを克服する方法の1つは、いつ、どのようにそれを成し遂げるか、誰かに宣言することである。論文執筆、またはカリキュラムや組織の戦略計画の作成の途中だとしよう。今取り組んでいる箇所を、ある期日までに仕上げると、ツイートするかフェイスブックにアップしよう。その日になったら自分の進捗を確認してほしいとフォロワーに頼む。多くの人が約束の実行を期待している以上、下位目標を達成させようと努力するだろうし、公衆で恥をかくことは避けたいと思うはずだ。

3.中途半端なままで文章を終える
 アーネスト・ヘミングウェイは生前、15冊の本を出版した。彼がよく使っていた効率を上げるテクニックは、わたしもよく使っている(本書の執筆にも)。彼は、節や段落の終わりではなく、よく文章の途中で執筆をやめることがあった。未完成の感覚を抱くことにより、中間地点の効果が発生し、翌日はただちに、勢いよく執筆活動に取りかかることができた。ヘミングウェイのテクニックが功を奏する理由の1つに、ツァイガルニク効果がある。人は完了した課題よりも未完了の課題のほうを覚えている傾向がある、という現象のことだ。プロジェクトの途中で、次のステップが明確な作業を中断し、1日を終えるという実験をしてみるといい。日々のモチベーション・アップにつながるかもしれない。

4.鎖を断ち切らないこと(サインフェルドのテクニック)
 コメディのジェリー・サインフェルドは、毎日ジョークを作ることを日課にしている。ジョークがひらめいた日だけではなく。365日毎日だ。集中を欠かさないために、365日の日付が書かれたカレンダーを用意する。ジョークを書いた日に、大きく赤字で×印をつける。「数日たつと、鎖ができる」と、サインフェルドはソフトウェア開発業者のブラッド・アイザックに話した。「それを続けていくと、鎖はどんどん長くなる。やがて、数週間も達成すると、その鎖を眺めるのが楽しみになる。次にやらなくてはいけないのは、その鎖を断ち切らないようにすることなんだ」。途中でスランプに陥ったとき、30個も、50個も、100個もつながったその×印を見る場面を想像するといい。サインフェルドと同じように、あなたもうまく対処できるようになるだろう。

5.自分の仕事がその人の役に立つ、という人を1人思い浮かべる。
 ヘミングウェイやサインフェルドのような、中間地点のモチベーション・アップの名人に、アダム・グラントも加えよう。ペンシルベニア大学ウォートン校の教授で、『ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」ができる時代』【原題“Originals” 三笠書房】や、『GIVE &TAKE「与える人」こそ成功する時代』【原題“Give and Take” 三笠書房】の著者でもある。難題に直面したとき、自分のしていることがほかの人たちにどのように役立つか自問して、彼はやる気を出す。「どうしたら続けられるか」と不振に陥っていても、「どのように役立つか」を考えれば刺激が生まれる。プロジェクトの半ばで行き詰まりを感じたとき、あなたの努力によって利益を得られる人を1人思い浮かべるといい。その人のために仕事に打ち込めば、一層献身的に仕事に打ち込めるようになるだろう。

『When 完璧なタイミングを科学する』 第4章 より ダニエル・ピンク:著 勝間和代:訳 講談社:刊

 始めることは大変ですが、それよりも難しいのが「続ける」ことです。

 何があっても気持ちを切らさず、日々の習慣になるまで継続する。
 それが、目標達成において最も重要です。

 ピンクさんが挙げた方法も参考にして、自分なりのモチベーション維持の方法を見つけたいですね。

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 ピンクさんは、以前は、タイミングがすべてだと思っていた。今では、すべてがタイミング次第だと思っているとおっしゃっています。

 それほどに大切なタイミングですが、多くの人はそれに気づかないばかりか、無視しがちです。

 ビジネス書でも、「何をするか」「どうやるか」という本は数多くあります。
 しかし、「いつやるか」に関して体系的にまとめた本は、ほとんどありませんでした。

 すべてはタイミング次第。

 人類の過去の偉業や国家の興亡などをひもといても、うなずけます。

 タイミングを制することは、時間を制すること。
 時間を制することは、人生を制すること。

 本書には、自分の意志をコントロールし、思いどおりの道を進むためのノウハウがぎっしり詰め込まれています。

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