【書評】『誰についていくべきか?』(加藤秀視)
お薦めの本の紹介です。
加藤秀視さんの『誰についていくべきか?』です。
加藤秀視(かとう・しゅうし)さんは、元暴走族の異端児教育評論家、人材育成アーティストです。
誰もが「リーダー学」を学ぶべき理由とは?
今の日本には、優秀なリーダーが決定的に不足している。
そんな危機感を覚える加藤さんが、力を入れて開発を進めているのが「リーダー学」です。
リーダー学は、リーダーとして必ず身に付けておかなければならない普遍的要件を抽出し、体系化
して、誰でもリーダーになれるプログラム
です。
「リーダー学? 将来のリーダーを目指すための学問? 私には必要ない。だって、私はリーダーになんかなるつもりはないのだから」
いえいえ、決してそのようなことはありません。
先ほどもお話したように、私たちの「リーダー学」は、リーダーになるための必須条件を分析抽出したものです。その必須条件を身に付ければ、誰もがリーダーになれます。
かつてのように、カリスマ性のある人、声の大きい人、お金持ちの子息、高学歴の人など、一部の人間がリーダーになる時代は終わりました。
リーダーに必要な要素を後天的に身に付けさえすれば、誰でもリーダーになることができるのです。とはいえ、あなたはそれを望んでいないかもしれません。もちろん、それでもかまいません。
実は、私たちの「リーダー学」には、リーダーになること以外にも用途があります。
自分の上司やリーダーが、良いリーダー(ついていくべきリーダー)なのか、それともダメなリーダー(ついていってはいけないリーダー)なのか、見極めるツールとして利用できるのです。
なぜ、自分の上司やリーダーを見極める必要があるのか。それは、どんなリーダーについていくかによって、あなたの人生が大きく変わっていくからです。
良いリーダーについていけば、あなたの人生はいまよりももっと良くなるでしょう。
ダメなリーダーについていったら、最悪、人生を棒に振ることになるかもしれません。事実、ダメなリーダーについていったために数々の悲しい出来事が起こっています。ついていくべきリーダーが見極められるようになると、いくつものメリットがあります。仕事がうまくいく。やりがいが見つかる。人間関係が良くなる。収入が増える。キャリアアップができる。夢が叶えられる。仕事や人間関係のストレスが減る。
これからお話する「ついていくべきリーダー」を見極める方法は、さまざまな組織やチームで利用できます。しかも、仕事以外の幅広い分野でも役立ちます。
たとえば、学校や教育機関、部活やクラブなどのスポーツチーム、親子や夫婦などの家族関係、パートやアルバイト先――。
複数の人が関係する場であればどこでも使用できます。
なぜなら、私たちは誰もが一人以上の誰かについていって人生を送っているからです。『誰についていくべきか?』 より 加藤秀視:著 すばる舎:刊
加藤さんは、私たちの人生は、どんなリーダーの下にいるか、誰についていくかで決ま
ると指摘します。
本書は、誰もが身につけられる「リーダー学」や「ついていくべきリーダー」を見分けるためのノウハウをまとめた一冊です。
その中からいくつかピックアップしてご紹介します。
[ad#kiji-naka-1]
「即断即決」できるか?
「ついていくべきリーダー」が見つけづらい。
加藤さんは、その一番の理由は多くの人がついていくべきリーダーの見極め方を知らない
からだと述べています。
では、「ついていくべきリーダー」とは、どのような人物なのでしょうか。
加藤さんは、その判断材料のひとつに「即断即決できるか」を挙げています。
上司に対する不満でトップに来る一つが「決められないこと」です。
決められないリーダーは、意識決定はリーダーにしかできないことを知らないのでしょうか。それとも単なる職務怠慢? あるいは、もしものときのリスクを負いたくないから?
いずれにしろ、決定権を握っているのはリーダーしかいません。
部下からの提案に対して、良い悪いの判断をできないリーダーは、リーダーとしての存在価値はありません。なぜなら、リーダーが決断をして方向性を決めてあげないと、部下は仕事を進められないからです。
ところが、そこをわかっていないリーダーが世の中に大勢いるようです。
部下からあがってきた企画が不十分なら、そのことを伝えて課題を与えばいい。自分の一存では決められない案件なら、すぐに上に企画をあげて判断を求めればいい。
決断を先延ばしにする理由はどこにも見当たりません。
でも、決められないリーダーは決められないのですよね。
もちろん、そのようなリーダーについていくのはやめましょう。時間の無駄です。
ついていくべきリーダーは意思決定ができる人です。しかも、決断が早い。
リーダーの決断が早いと、部下も仕事をスムーズに進められので、成果も出しやすくなります。
決断の早いリーダーは、万が一のときに全責任を負う覚悟があります。仮にうまくいかなかったとしても全力でサポートしてくれることでしょう。
(中略)
意思決定の早いリーダーほど、判断の質や選択の質も高いものです。
あなたのリーダーはどうですか?
決められないは問題外。すぐに決められて、なおかつ質の高い判断や選択ができる人がついていくべきリーダーです。
リーダーの判断や選択の質は、これまでに手掛けてきたプロジェクトの結果や成果を見ればわかります。
過去にどれだけの成果を出してきたのか。そこを見れば、この先にどのぐらいの成功をおさめるか、ある程度予測できるでしょう。
もっともそれ以前に、普段接していて、自分のリーダーが「使えるリーダー」なのか「使えないリーダー」なのか、うすうす気づいていることでしょう。
これまでに何度かヒットを出してきたリーダーは、将来、大ヒットを放つ可能性があります。
一方で、これまでにヒットをほとんど出していない、凡打ばかりのリーダーは、この先も大ヒットを望むのは難しいかもしれません。
すぐに決められない、決めても質が低い。
そのようなリーダーについていっても、あなたが期待するような成果は得られないでしょう。ついていくのは危険です。『誰についていくべきか?』 第2章 より 加藤秀視:著 すばる舎:刊
決断力は、何より経験によって培われるものです。
それまで上司の指示通りに仕事をこなして、自分で判断することを逃げてきた。
そんな人がリーダーになったからといって、急に決断できるようになるわけがありません。
変化の激しい今の時代、少しの決断の遅れ、判断ミスが命取りになります。
乗り込む船は、船長のリーダー適性を見極めてからにしたいものです。
「時間」と「お金」を何に使っているか?
「時間」と「お金」の使い方には、その人の生き方や価値観が現れます。
ついていくべきリーダーを見抜く際にも、この2つは重要な要素となります。
限りある人生において、時間とお金は非常に重要なものです。命にさえかかわる大切なエネルギーです。
ついていくべきリーダーはそのことをよく理解しているので、夢や願望を実現するためなら時間とお金を惜しみません。
これまでに私の本を何冊もプロデュースしてくれている編集者のNさんは、本を売ることにたくさんの時間とお金を注ぎ込んでいます。命をかけているといってもいいぐらい、本を作る、本を売ることに精力を傾けています。だから私は安心してNさんにまかせられます。
あなたのリーダーは、何にお金と時間を使っていますか。時間とお金の使い方を見れば、あなたのリーダーの仕事に対する向き合い方もわかります。
もし時間やお金の使い方に共感できないようなら、それはついていってはいけないリーダーです。
(中略)
ついていくべきリーダーは、優先順位がはっきりとしています。
いまやるべきことがわかっているので、その言動にはブレがありません。めったにぶれないので部下たちも安心してついていくことができます。
ついていってはいけないリーダーは、優先順位が曖昧で、「昨日と今日で話が違う」というのは日常茶飯事です。
仕事を頼まれた部下たちが、「いったいどっちを優先して進めたらいいの?」と頭を悩ませることもしばしばです。しかも、優先順位が明確でないリーダーは、そのことに気がつきません。目の前のことしか見ていないからです。
ついていくべきリーダーは、目標やビジョンを持ち、それにしたがって優先順位を決めています。
また、自分が何を一番欲しているのかを熟知していて、それを満たせるように日々の計画を立てています。そのおかげで高いモチベーションを維持し、最良のパフォーマンスを発揮することができるのです。
私たちは食欲、物欲、金銭欲、出世欲、成長欲、名誉欲、睡眠欲、性欲など、さまざまな欲求を持っています。
ついていくべきリーダーは、これらの欲求に関して優先順位が明確です。
たとえば、食欲が一番だとしたら、仕事がどれだけ忙しくても、1日に1回はおいしい食事を摂って自分を満足させるようにしている。たとえば、睡眠欲が一番だとしたら、何をおいても睡眠時間だけはしっかりと確保するようにしている。
こうして常に最高の状態でいられるよう自分をコントロールしているのです。『誰についていくべきか?』 第3章 より 加藤秀視:著 すばる舎:刊
優先順位がはっきりしている。
つまり、考え方がわかりやすいことも、リーダーを選ぶ際のポイントになりますね。
会社や部下の貴重な時間やお金を、最大限に有効活用する。
そんなリーダーは、いつの時代も求められています。
「愚痴」や「文句」を言わないか?
愚痴や文句が多いリーダーは、何かを変えるために自分から率先して動こうとしません。
ついていってはいけないリーダーの典型といえますね。
愚痴や文句が多いリーダーやその集団とは距離をおきましょう。そこにあなたを成長させてくれる要素はありません。
ついていくべきリーダーは、まず愚痴や文句を口にしません。
不平や不満を感じていないわけではないでしょう。人一倍気がつくリーダーですから、いまの状況を認識はしているものの、それを愚痴や文句として口にしていないだけ。このままではいけないと感じ、改善の機会をうかがっているはずです。
現状維持を良しとしているリーダーにも注意が必要です。
「現状維持」は、耳障りのいい言葉ですか、裏を返してみれば「今がマックス」という意味。いまが最高だとしたら、この先は落ちていくばかりです。そのような考えのリーダーについていっても今よりも良くなることはないでしょう。
(中略)
「あとは君に任せるよ」と言っておきながら、うまくいかなかったら人のせいにする。仕事を丸投げした自分にも、責任の一端があるとは少しも思っていない。
それどころか「だから言っただろう」とか「なんで早く私に相談しないんだ」と自分にはまったく責任がないかのように振る舞う。
こうした、部下の失敗やトラブルを人のせいにしようとするリーダーには、ついていってはいけません。仮に部下の独断でしたことが原因だったとしても、それを含めて責任をかぶろうとするのがリーダーたるものでしょう。
何でも人のせいにしようとするリーダーには、リーダーとしての自覚が欠けています。リーダーとしての責任感や自覚を持っていない人についていってもよいことはありません。それこそ「失敗は部下のせい、成功はリーダーのおかげ」といいとこどりされてしまうのがオチでしょう。
同じように、言い訳が多いリーダーも要注意です。
こうしたタイプのリーダーは、くり返し同じような対応を取ります。
なぜかといえば、いつも人のあら捜しばかりをしているからです。人の良い部分よりも悪い部分を見つけることに時間とエネルギーを使っているからです。
まわりの人はそのことに気づき、いつ自分に火の粉が降りかかってこないかと戦々恐々としています。これでは、チームの生産性は上がりません。
ついていくべきリーダーは、リーダーとしての自覚と責任をわきまえています。部下が問題を起こしたらしっかりと叱り、フォローすべきところはフォローする。
決して部下だけのせいにはしません。
だから、部下たちも安心して新しい仕事にチャレンジすることができるのです。『誰についていくべきか?』 第4章 より 加藤秀視:著 すばる舎:刊
部下の失敗は、自分の責任。
すべてを呑み込める度量の大きさが、「ついていくべきリーダー」に求められます。
普段の言動を見ていれば、すぐに気づくので、わかりやすい指標といえます。
頭の片隅に入れておきたいですね。
「自己愛」があるか?
加藤さんは、「ついていくべきリーダー」の重要な要素のひとつに「自己愛」を挙げています。
自己愛の強い人は、どんなことがあっても自分のことをあきらめたり、見捨てたりはしません。自分のことを途中で手放してしまったら、自分が自分でなくなってしまうことがわかっているからです。
ついていくべきリーダーは、いくつになっても自己成長欲を失わず、絶えず自分の可能性を追求し続けている人です。
自己愛というと、「自分を大好きな人」とか「自分を愛している人」といった簡単な説明で片づけられることが多いのですが、その本質にあるのは「絶え間ない自己探究心」です。つねに成長し続けるという強い欲求です。
自分を探求し続ける人は、総じて自分に厳しい人です。
あなたのリーダーはどうでしょうか。
自分に厳しい人ですか。それとも甘い人ですか。
自分を愛しているからこそ、自分に課題を与えられます。
自分を愛しているからこそ、自分をもっと向上させようとします。
もし自分のことが嫌だったら、そのようなことを自分にさせるでしょうか。
人は、愛する人にはがんばってほしいと願うものです。
それは何も自分だけではなく、他人についてもそうです。
ついていくべきリーダーは愛にあふれた人です。自分を愛し、仲間を愛する。
自分や他人へ期待を失ったリーダーは、愛を手放してしまった人です。そのようなリーダーにはついていってはいけません。
愛のない世界に成果や成長は望めないでしょう。『誰についていくべきか?』 第6章 より 加藤秀視:著 すばる舎:刊
自己愛の強い人。
つまり、自分を大事に扱っている人は、周りの人に対しても同様に接することができます。
部下を見捨てることもないし、リスクの高い自滅的な戦略を採用することもありません。
自分と同様に、組織も部下も愛せること。
それも優れたリーダーには欠かせない資質といえます。
[ad#kiji-shita-1]
☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆
加藤さんは、「ついていくべきリーダー」が見つけられれば、その瞬間からあなたの人生は好転していく
はずだとおっしゃっています。
「ついていくべきリーダー」のもとにいれば、その人のマインド、考え方、行動などに接することができます。
そこから意識的に学び、身につけようとすることで、自分が「ついていくべきリーダー」になるチャンスも得ることができます。
組織の形態や時代によらず、リーダーに求められる能力や資質は普遍的なものです。
「ついていくべきリーダー」を見極める能力は、リーダーになるならない関わらず必須といえます。
価値観が多様化し、求められるリーダー像がぼやけつつある今の時代。
だからこそ、本書に述べられている「リーダー学」が、より輝きを放つのでしょう。
(←気に入ってもらえたら、左のボタンを押して頂けると嬉しいです)
【書評】『嫌われない男のエチケットとマナー』(根本千春) 【書評】『When 完璧なタイミングを科学する』(ダニエル・ピンク)