【書評】『【図解】いちばんやさしい相対性理論の本』(三澤信也)

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お薦めの本の紹介です。
三澤信也さんの『図解いちばんやさしい相対性理論の本』です。

三澤信也(みさわ・しんや)さんは、長野県の中学、高校で物理を教えられている理科の先生です。

現代物理学の基礎「相対性理論」とは?

「相対性理論」といえば、天才物理学者・アインシュタインが発見した有名な法則です。

一般の人には馴染みのない数式がたくさん出てくることもあり、相対性理論の理解をあきらめてしまう人は多いでしょう。

 確かに、相対性理論を完全に理解するのは難しいです。
「物理の法則や数式なんて、お手上げだ」と思ってしまうのも無理はありません。
まして、知らないままでも生きていくのには困らないのですから、仕方のない判断なのかもしれません。

しかし一方で、「それはとてももったいない!」とも思うのです。
なぜなら、相対性理論はとても面白いからです。「ブラックホールはどうやってできるの?」「タイムマシンは作れるの?」といった疑問が、ひとつの理論をもとにすっきり解決するのです。
また、重力波など、未来を先取りする最新のトピックスの理解にもつながっていきます。

最初からすべてのを理解仕様などと思う必要はありません。エッセンスが分かるだけでも、楽しさを味わうことできます。
そこで本書では、基本的に数式を使わず、代わりにイメージしやすい具体例を多く取り入れながら相対性理論を味わえるようにしました。
「自分は理科系の勉強が苦手」「物理なんてまともに勉強したことない」といった方にも、気楽に相対性理論の世界を味わっていただけるはずです。

『【図解】いちばんやさしい相対性理論の本』 はじめに より 三澤信也:著 彩図社:刊

相対性理論には、2つの種類があります。
「特殊相対性理論」「一般相対性理論」です。

アインシュタインが先に発表したのは「特殊相対性理論」の方です。
「特殊相対性理論」の後に「一般相対性理論」に進むことことで、どちらもスムーズに理解できます。

本書は、「特殊相対性理論」を中心に、図を多用して、イメージ的にわかりやすく解説した一冊です。
その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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そもそも「相対」とは何なのか?

そもそも、相対性理論の「相対」とは、どういう意味でしょう?

三澤さんは、対義語を考えると理解しやすいと述べています。

「相対」の対義語は「絶対」です。「絶対」というのは、「それだけが正しい」という意味です。例えば「絶対的な基準」と言ったら、その基準だけが正しく他は間違っているということになります。
この対義語が「相対」ですから、「相対」というのは「どちらも正しい」という意味になるわけです。
では、相対性理論は何が「どちらも正しい」と言っているのでしょう?

時間の進み方は、世界のどこでも一様ですよね?
時計が日本にあろうがアメリカにあろうが、月面にあろうが宇宙空間にあろうが、どこに置いても同じ速さで時を刻んでいくはずです。もちろん、時計が狂わなければの話ですが。
さらに、例えば車の中の時計は車が止まっていようが走っていようが、同じように時を刻みますよね?
このように、この世のどんな場所でも同じように時間が進んでいく、これが常識的な感覚だと思います。
この誰にとっても同じように流れていく時間のことを「絶対時間」と呼びます。
また、空間についても同様です。
例えば、あるトンネルの長さをゆっくり歩きながら測った場合と高速で移動ながら測った場合とで値が変わる、などということもないですよ? どんな人が測ろうが、トンネルの長さは同じであるはずです。
何ものからも影響を受けず、過去から未来まで変化することなく存在する空間を「絶対空間」と呼びます。
「絶対時間」「絶対空間」という考え方は、現在の私たちでも容易に受け入れられる考え方だと思います。
逆に、車が走り出すと時間の進み方が変わるとか、移動の速さによってトンネルの長さの測定値が変わる聞いたら、その方が非常識だと感じますよね。
しかし、アインシュタインはこの考え方に疑問を持ったのです。「『絶対時間』とか『絶対空間』というものは、本当は存在しないのではないだろか?」と考えたのです。

『【図解】いちばんやさしい相対性理論の本』 第1章 より 三澤信也:著 彩図社:刊

誰もが同じように感じていると思われていた「時間」や「空間」。
それらは、状況によって変わる「相対的」なものなのではないか。

その奇想天外の発想は、アインシュタインでなければ生み出すことはできなかったでしょう。

光速で動いたら、目の前の鏡に自分の顔は映るのか?

アインシュタインは、どのようなきっかけで「絶対時間」「絶対空間」に疑問を持ったのでしょうか。

それは「光速で動いたら、目の前の鏡に自分の顔は映るのか?」という疑問です。

 読者の方はどう思われますか?
「鏡かあるのなら顔が見えるのが当たり前じゃないか」と思われるかもしれませんね。しかし、実はそれは当たり前のことではないのです。そのことを、説明してみたいと思います。

例えば、時速100キロメートルで走っている電車があるとします。
道に立っている人がこれを見れば、そのまま時速100キロメートルで走っているように見えます(下の図1上を参照)。
しかし、電車と同じ向きに時速50キロメートルで走っている車に乗っている人がこれを見たらどうでしょう?
この場合は、電車は時速50キロメートルで走っているように見えますね(下の図1下を参照)。
では、車が電車と同じ時速100キロメートルで走ったらどうなるでしょう?
この場合は、車に乗っている人からは電車は止まっていて動かないように見えることになります(下の図2を参照)。
このように、観測者が動くとものの速さの見え方も変わることが理解できます。

では、光の場合はどうなるでしょう?
光はものすごい速さで進んでいる、というのは容易に実感できると思います。
例えば、遠くで雷が発生したとき、「ゴロゴロ」という音が伝わってくるのには時間がかかりますが、電光は一瞬で届きますよね。打ち上げ花火でも同じように、光は音が伝わるのよりずっと早く観測できます。
光は、秒速約30万キロメートルで進みます。地球一周の距離は約4万キロメートルですから、30万キロメートルというのは地球7周半に相当する距離です。
光はたった1秒で地球を7周半もするのです。光はこのような速さで、空間中を進んでいきます。
それでは、このような速さで進む光を、光と同じ速さで動きながら追いかけたらどうなるでしょう? 光はどのように見えるのでしょうか?

電車と車の場合と同じように考えると、光は止まって見えることになります(下の図3を参照)。
でも、光が止まって見えるなんて何だか変な感じがしませんか? 光が止まって見えるなどということが、本当に起こるのでしょうか?
もしも光が止まって見えることになるのなら、目の前に鏡があってもそこへ光が届かないことになります。そのため、鏡から反射してくる光もありません。その結果、鏡をのぞいても自分の顔は見えないということになります。逆に、光が止まらないのであれば、光が反射してきますから鏡に自分の顔が映って見えることになるのです(下の図4を参照)。
結論から言うと、「光と同じ速さで動くロケットから見ても、光は秒速30万キロメートルで動いて見える」というのが正解となります。
ということは、光速で動くロケットの中でもちゃんと鏡に顔が写って見えるというわけです。

『【図解】いちばんやさしい相対性理論の本』 第1章 より 三澤信也:著 彩図社:刊

図1 道に立っている人から見た電車の速さ いちばんやさしい相対性理論の本 第1章

図1.道に立っている人から見た電車の速さ
(『【図解】いちばんやさしい相対性理論の本』 第1章 より抜粋)


図2 車に乗っている人から見た電車の速さ いちばんやさしい相対性理論の本 第1章

図2.車に乗っている人から見た電車の速さ
(『【図解】いちばんやさしい相対性理論の本』 第1章 より抜粋)


図3 同じ速度で動くロケットから光を見ると いちばんやさしい相対性理論の本 第1章

図3.同じ速度で動くロケットから光を見ると・・・
(『【図解】いちばんやさしい相対性理論の本』 第1章 より抜粋)


図4 光速で動く観測者が鏡を見たらどうなる いちばんやさしい相対性理論の本 第1章

図4.光速で動く観測者が鏡を見たらどうなる?
(『【図解】いちばんやさしい相対性理論の本』 第1章 より抜粋)


図5 ロケットからでも止まっている人でも光の速度は変わらない いちばんやさしい相対性理論の本 第1章

図5.ロケットからでも止まっている人でも光の速度は変わらない
(『【図解】いちばんやさしい相対性理論の本』 第1章 より抜粋)

絶対的なのは、時間でも空間でもなく「光の速度」だった。
なかなかの衝撃的な真実ですね。

光の速度が、どんなときでも一定であることは、実験で確かめられています。
ただ、思考実験のみで、この結論を導き出したアインシュタインは、まさに天才といえますね。

「光速度一定」で、時間や空間はどうなる?

では、「光速度一定」を原則とすることで、どのように時間や空間の変化を導き出されるのでしょうか。
まずは、「時間」の変化についてです。

アインシュタインが考えたのは、以下のような思考実験です。

図6 走っている電車のちょうど真ん中から前後に光を発したら いちばんやさしい相対性理論の本 第1章

図6.走っている電車のちょうど真ん中から前後に光を発したら・・・
(『【図解】いちばんやさしい相対性理論の本』 第1章 より抜粋)

 いきなりこの問題を考えるのは難しいので、少し簡単にしたパターンで考えてみます。
上図(上の図6を参照)のように、電車の真ん中から光を発するのではなく、2つのボールを同じ速さで投げ出すとします(下の図7を参照)。
この場合はどうなるでしょう? この問題を考える場合、2つの視点があります。1つは電車に乗っている人の視点、もう1つは電車に乗らず地上にいる人の視点です(下の図8を参照)。
まずは電車に乗っている人の視点Aで考えてみましょう(下の図9を参照)。 電車に乗っている人は電車と一緒に動いていきます。ですので、この視点から見ると電車の前方、後方までの距離はずっと等しいままになります。
そして、2つのボールは同じ速さで動いていくので、同じ距離を進むのにかかる時間は等しくなります。
次に、電車に乗らず地上にいる人Bの視点で考えてみます(下の図10を参照)。
この場合、ボールがスタートした場所から電車の前方、後方へぶつかるまでに進む距離が等しくならないことに注意が必要です。
では、前方へぶつかるまでの距離の方が長くなるのなら、前方にぶつかるまでの時間のほうが後方へぶつかるまでの時間より長くなるのでしょうか?
そんなことがあったら変ですよね? 電車の中で見れば同時なのに、地上から見ると同時でないなどということはなさそうです。
実は、地上から見るとボールの進む距離が前後で異なるだけでなく、ボールの進む速さも違って見えるのです。
ボールは、投げ出される前から電車と一緒に動いています。電車と一緒に動いているということは、電車と同じ速さを持っているということです。
この状態から2つのボールを前後に投げ出すのですから、最初の速度に投げ出すときの速度が加わることになるのです。すると、2つのボールの速度は、地上から左下の図のように見えることになります(下の図11を参照)。
つまり、地上から見た場合は前方へ進むボールの方が移動距離、速度ともに大きくなるのですが、結果的にぶつかるまでにかかる時間は前方、後方で等しくなるのです。

ということで、2つのボールは電車の中から見ても地上から見ても、同時にぶつかることが分かりました。
ではいよいよ、ボールではなく光が前後に同時に発せられたらどうなるのか、考えてみましょう(下の図12を参照)。
ボールの場合と同様に、2つの視点で考えます。
電車に乗った人から見た場合、光が進む距離に差はできませんでした。
また、光の速さは一定です。ですので、この場合もやはり2つの光は同時にぶつかることになります。
では、地上から見た場合はどうなるでしょう?(下の図13上を参照)
地上から見ると、ボールの場合と同じように、光がぶつかるまでに電車が動く分、前後で距離に差ができます。
でも、ボールの場合と同じように前方へ進む光の方が速く、後方へ進む光の方が遅く見えるから、結局ぶつかるまでの時間は等しくなるのだろう、と思いますよね?
しかし、ここには1つ落とし穴があります。
それが、アインシュタインが相対性理論を構築する上での根本となった「光速度一定」という大原則なのです。
光の速さはボールの速さなどと違って、動いている人、止まっている人、どんな観測者から見ても必ず一定になるのでした。ですので、この場合も地上から見ても前後に進む光の速さは同じになるのです。
よって、左の図のようになり、後方に進む光の方が先にぶつかることになるのです(下の図13下を参照)。
でも、この結論はおかしくありませんか?
というのは、先ほど電車に乗った人の視点で考えたときには、2つの光は前後に同時にぶつかるのでした。
ところが、地上から見ると後方に進んだ光が先にぶつかり、前方に進んだ光は遅れてぶつかるというのです。
まったく同じものを見ているのに、見る人によって違って見える、そんなことがあり得るのでしょうか?
実は、相対性理論ではそのようなことを認めています。
つまり、「ある2つの出来事が、ある人にとっては同時に起こっているように見えるけれども、別の人には時間がずれて起こっているように見える」ということがあり得るのだ、というのです。
「そんな馬鹿な」と思うかもしれません。いや、それが常識的な考え方だと思います。「2つの出来事が同時に起こった」というのが正しいのであれば、「2つの出来事が時間がずれて起こった」というのは間違いだというのが当然ですよね。
でも、アインシュタインは「どちらも正しい」と言ったのです。
これが、時間は相対的なものだということなのです。時間の流れそのものが、立場によって違うのです。時間の流れ方そのものが、立場によって違うのです。まさに「相対性」理論ですね。

『【図解】いちばんやさしい相対性理論の本』 第1章 より 三澤信也:著 彩図社:刊

図7 走っている電車のちょうど真ん中から前後にボールを投げたら いちばんやさしい相対性理論の本 第1章
図7.走っている電車のちょうど真ん中から前後にボールを投げたら・・・
(『【図解】いちばんやさしい相対性理論の本』 第1章 より抜粋)



図8 電車に乗っている人の視点と地上にいる人の視点から見たボールの動き いちばんやさしい相対性理論の本 第1章

図8.電車に乗っている人の視点と地上にいる人の視点から見たボールの動き
(『【図解】いちばんやさしい相対性理論の本』 第1章 より抜粋)


図9 ボールがぶつかるまでの間に電車が動く分 距離に差ができる いちばんやさしい相対性理論の本 第1章

図9.ボールがぶつかるまでの間に電車が動く分、距離に差ができる
(『【図解】いちばんやさしい相対性理論の本』 第1章 より抜粋)
図10 地上にいる人の視点から見たボールの動き いちばんやさしい相対性理論の本 第1章

図10.地上にいる人の視点から見たボールの動き
(『【図解】いちばんやさしい相対性理論の本』 第1章 より抜粋)


図11 前方に投げたボールと後方に投げたボールの速度の違い いちばんやさしい相対性理論の本 第1章

図11.前方に投げたボールと後方に投げたボールの速度の違い
(『【図解】いちばんやさしい相対性理論の本』 第1章 より抜粋)


図12 電車に乗った人から見た光の動き いちばんやさしい相対性理論の本 第1章

図12.電車に乗った人から見た光の動き
(『【図解】いちばんやさしい相対性理論の本』 第1章 より抜粋)


図13−1 地上にいる人から見た光の動き① いちばんやさしい相対性理論の本 第1章
図13−2 地上にいる人から見た光の動き② いちばんやさしい相対性理論の本 第1章
図13.地上にいる人から見た光の動き
(『【図解】いちばんやさしい相対性理論の本』 第1章 より抜粋)


「光の速度が一定である」

そう考えると、「絶対的な時間」という概念と矛盾が生じてしまいます。
そこであきらめずに「時間は相対的なもの」つまり「時間は立場によって進み方が違う」という結論にたどり着いたのが、この理論のすごいところです。

「動くものの時間」は遅れて進む

「光速度一定」から導き出せる「時間は相対的なもの」という結論。

「相対的な時間」とは、動いているか止まっているかによって時間の進み方が変わるという意味です。

三澤さんは、これを以下のような「光時計」(下の図14を参照)という装置を使った思考実験で説明しています。

図14 光時計 いちばんやさしい相対性理論の本 第1章

図14.光時計
(【図解】いちばんやさしい相対性理論の本』 第1章 より抜粋)

 長さ15万キロメートル(こんなに長いものが作れるのか? ということはこの際考えないでください。これは、あくまでも頭の中での思考実験です)の円筒の上側に鏡があります。
下側から上側に向けて光が発射され、鏡で反射されて再び下側へ戻ってきます。光速は秒速30万キロメートルですので、ちょうど1秒かけて光は往復します。
そして、光が往復して戻ってくると、下側にあるセンサーがそれを感知し、「1秒」をカウントするようになっています。
さて、この光時計を電車に乗せてみます(ここでも、そんな大きな電車があるのか? ということは考えないでくださいね)。
そして、光時計の中で光を往復させるのですが、これを電車に乗っている人と地上にいる人がそれぞれどのように観測するかを考えてみます。

まずは、電車に乗っている人の視点で考えます(下の図15を参照)。
電車に乗っている人は電車と一緒に動きますので、光時計は止まって見えます。
ですので、光が発射されて鏡で反射して戻ってきて、「1秒」がカウントされます。まあ、これは当たり前といえば当たり前の話です。
では、これを地上にいる人が見たらどうなるでしょう?(下の図16を参照)
光が発射されてから鏡に届くまでの間に、電車はわずかに移動しています。そのときに鏡は発射地点の真上から少しずれた位置にあるので、地上から見ると光はななめに進むように見えます。
鏡で反射したあとも同じです。発射地点へ戻るまでの間に、やはり電車はわずかに移動していますので、このときも光はななめに進むように見えるわけです。
さて、このとき光が往復するのにどれだけの時間がかかるでしょう?
光はまっすぐ上下した場合、往復で30万キロメートル進むのでした。しかし、この場合は光はななめに進むので、それより長い距離を進むことになります。
一方で、この場合もやはり光速度は一定です。ということは、光が往復するのにかかる時間は1秒より長くなるわけです。
このことは何を意味しているのでしょう?
光が往復したとき、地上の人にとっては「1秒以上時間がたっている」のです。一方で、その間に電車内では1秒しかたっていません。
これは、地上に比べて電車内の方が時間がゆっくり進んでいることを意味します。静止している人から見ると、動いているものの時間の進み方が遅れている、というわけです。
これが、時間の進み方が、動いているのか止まっているのかという立場によって変わってしまうのです。
なんとも奇妙に思えますが、光速度一定という原則に基づいて考えると、このような結果論が得られるのです。

『【図解】いちばんやさしい相対性理論の本』 第1章 より 三澤信也:著 彩図社:刊

図15 電車に乗っている人から見た光時計の動き いちばんやさしい相対性理論の本 第1章

図15.電車に乗っている人から見た光時計の動き
(『【図解】いちばんやさしい相対性理論の本』 第1章 より抜粋)


図16 地上にいる人から見た光時計の動き いちばんやさしい相対性理論の本 第1章

図16.地上にいる人から見た光時計の動き
(【図解】いちばんやさしい相対性理論の本』 第1章 より抜粋)

同じ現象でも、観測する視点(観測者の速度)によって進む時間が変わる。

私たちの感覚からいうと、少し奇妙な感じがしますね。
しかし、「光速度一定」の原則から考えると、そうでないと、つじつまが合わないことが理解できます。

「空間は相対的」とは、どういうことか?

相対性理論では、時間だけでなく、空間も相対的となります。
空間が相対的とは、「動くものは縮んで見える」と説明できます。

図17 動いているものの長さは縮んで見える いちばんやさしい相対性理論の本 第1章

図17.動いているものの長さは縮んで見える
(【図解】いちばんやさしい相対性理論の本』 第1章 より抜粋)

 例えば、時速100キロメートルで走っている電車の場合、車両1両(長さ20メートルとします)の長さが1兆分の86ミリメートルだけ縮むという感じです。
この変化にはとても気づきませんが、もしも電車の速さが光速の半分(秒速15キロメートル)となったら、20メートルの車両の長さはおよそ2.68メートルも縮みます。
そして、光速の90%(秒速27キロメートル)なら、11.3メートルほども(つまり半分以上も)縮んでしまう計算になるのです。
ということで、時間の場合と同じように、私たちが認識できるような長さの縮みは光速に近い速さで動いているものの場合に起こるのだと分かります。
なお、上の図で示したように、長さの縮みは物体の進行方向でのみ起こります(上の図17を参照)。この列車は左向きに動いているので、左右方向の長さだけが縮み、上下方向の長さは縮みません。
それでは、動くものの長さが縮む仕組みについて相対性理論ではどのように明らかにしているのか、光速近くで動くものの例を通して説明したいと思います(下の図18を参照)。

自動車がとてつもなく長いトンネルに入りました。トンネルの全長は40万キロメートルです。
これは地球を10周する長さになりますが、秒速24万キロメートル(光速の80%)というとてつもない速さで走っているため、あっという間にトンネルを通過してしまいます。
それでは、この自動車がトンネルを通過するまでにかかる時間を考えましょう。
もちろん、単純に考えれば、「40万キロメートル÷秒速24万キロメートル」で、およそ1.67秒で通過するように思えます。
ところが、相対性理論をもとに考えるとこうはならないのですね。
動くものの時間は遅れて進むことを説明しました。この場合、自動車は光速の80%もの速さで動いているので時間の遅れが大きく、地上にいる人から見ると、地上で1秒進む間に自動車の中では0.6秒しか経過しません。
すると、トンネルの通過時間も変わってきます。地上で「40万キロメートル÷秒速24万キロメートル」でおよそ1.67秒だけ経過するとき、自動車の中では「(40万キロメートル÷秒速24万キロメートル)×0.6」で、1秒しか経過しないように、地上にいる人からは見えるのです。つまり、地上の人から見ると自動車内でちょうど1秒たったときに自動車がトンネルを通過するというわけです。
それでは、自動車に乗っている人からはどのように見えるでしょうか?

ここで気をつけなければいけないのが、“地上の人から見ると”動いている自動車の中の時間の進み方が遅れる、ということです。
つまり、自動車に乗った人には自分か動いているのでなく地上にいる人の方が動いているように見えるので、自分の時間は遅れず地上にいる人の時間が遅れて見えるわけです。
というわけで、自動車に乗った人からは「40万キロメートル÷秒速24万キロメートル」で、およそ1.67秒でトンネルを通過するように見えることになります。
しかし、地上にいる人からは自動車内で1秒たったときに自動車はトンネルを通過して見えるのですから、自動車内から見ても同じことが起こるはずです。
ということで、自動車内から見ても時間の遅れとは別の何らかの変化が起きたはずなのです。これがトンネルの長さの縮みなのです(下の図19を参照)。

『【図解】いちばんやさしい相対性理論の本』 第1章 より 三澤信也:著 彩図社:刊

図18 自動車に乗った人からはトンネルは縮んで見える いちばんやさしい相対性理論の本 第1章

図18.自動車に乗った人からはトンネルは縮んで見える
(『【図解】いちばんやさしい相対性理論の本』 第1章 より抜粋)


図19 物体の長さは本当に縮む いちばんやさしい相対性理論の本 第1章

図19.物体の長さは本当に縮む
(『【図解】いちばんやさしい相対性理論の本』 第1章 より抜粋)

同じ現象でも、観測する視点(観測者の速度)によって、物体の長さまで変わってくる。
これも「光速度一定」の原則から考えると、必然の結論です。

ただ、頭では理解できても、日常的な感覚では、信じるのは難しいですね。

空間のゆがみが「重力」を生む

私たちがいつも重力を感じているのは、地球という巨大な物体があるからです。
つまり、重力は、物体によって生み出されるということです。

図20 物体があると その周りの空間がゆがみ 重力が生まれる いちばんやさしい相対性理論の本 第3章

図20.物体があると、その周りの空間がゆがみ、重力が生まれる
(『【図解】いちばんやさしい相対性理論の本』 第3章 より抜粋)

 では、どのようにして物体は重力を生み出すのでしょう。
相対性理論では、「物体があるとその周りの空間がゆがみ、重力が生まれる」のだと説明しています。どういうことか、詳しく説明します。
左上の図のように、ゴムシートが平らになるように張られているとします(上の図20上を参照)。これは、物体が何もない空間を表しています。もともとの空間は平らなのですね。
では、ここに物体が登場するとどうなるでしょう。
図のように、物体を乗せたところのゴムシートは凹みますね(上の図20下を参照)。このように、もともと平らだったところに物体が存在するようになると、その周りが凹みます。これが、「空間のゆがみ」です。
そして、ここにさらにもう1つの物体が登場すると、左の図のように、2つの物体は近づいていき、そしてくっつきます(下の図21を参照)。
これは、物体の間に重力(引力)が働き、物体同士が近づいていく様子を表しているわけです。
以上が、相対性理論による重力が働く仕組みの説明です。
つまり、物体があると周りの空間がゆがみ、そのために物体同士はお互いに近づいていく、というのが重力なのですね。
もちろん、実際の空間ではゆがんだ状態を目で見ることはできません。この説明は、目に見えない空間のゆがみをイメージしやすくしたものです。

『【図解】いちばんやさしい相対性理論の本』 第3章 より 三澤信也:著 彩図社:刊

図21 2つの物体があると 空間のゆがみによってお互いに近づいていく いちばんやさしい相対性理論の本 第3章

図21.2つの物体があると、空間のゆがみによってお互いに近づいていく
(『【図解】いちばんやさしい相対性理論の本』 第3章 より抜粋)

とらえどころのない「重力」も、ゴムシートに例えた図を使って説明すると、感覚的にわかりますね。

空間のゆがみ=重力

これも、アインシュタインが相対性理論の中で導き出した真理の一つです。

地上とずれるGPS衛星の時間の進み方

物体があると、その周りの空間がゆがみ、重力が生まれます。

ただ、物体によってゆがめられるのは「空間」だけではありません。
「時間」もゆがめられます。

 では、時間がゆがむとはどういうことでしょう。
それは、「時間の進み方が遅くなる」ということなのです。つまり、物体が存在することによって周りの時間の進み方が遅くなるのです。
そして、このことは「重力が働くと時間の進み方が遅くなる」と表現することもできます。物体が生み出す重力が、時間の進み方を遅らせているのです。
さらに、「重力が大きいほど時間はより遅れて進むようになる」ということも相対性理論は明らかにしているのです。
この「時間の遅れ」を身近なところで実感できるのが、第1章で登場したGPS衛星です。第1章でも簡単に説明しましたが、ここであらためて、GPS衛星での時間の進み方について説明したいと思います。

地上約2万キロメートルの軌道を周回するGPS衛星では、地上に比べて重力が約17分の1に小さくなります。
「重力が大きいほど時間はより遅れて進む」のですから、GPS衛星より地上の方が時間の進み方が遅くなります。逆に言えば、GPS衛星では地上より時間が速く進むのです。
重力の違いが原因の地上とGPS衛星での時間の進み方の差は、1日あたり100万分の45.7秒です。この差を補正しないと、GPSは正しく機能せず、正確な位置を知ることができないのでしたね。
このように、一般相対性理論は私たちの生活に大きな影響を与えているのです(下の図22を参照)。

『【図解】いちばんやさしい相対性理論の本』 第3章 より 三澤信也:著 彩図社:刊

図22 GPS衛星では地上より時間が速く進む いちばんやさしい相対性理論の本 第3章

図22.GPS衛星では地上より時間が速く進む
(『【図解】いちばんやさしい相対性理論の本』 第3章 より抜粋)

私たちに身近なGPSも、相対性理論なしには、あり得ないということですね。

空間の究極的なゆがみが「ブラックホール」を作る

重力による空間のゆがみは、大きな質量が狭い範囲に集中しているほど大きくなります。
空間が究極的にゆがんだ状態、光の速度で進んでも脱出できないほど空間がゆがむとできるのが、「ブラックホール」です。

図23 半径0 9cmの球に押しつぶされた地球 いちばんやさしい相対性理論の本 第4章

図23.半径0.9cmの球に押しつぶされた地球
(『【図解】いちばんやさしい相対性理論の本』 第4章 より抜粋)

 地球は球形をしていますが、私たちのスケールからするととても巨大です。そのため、昔は地平線は平らなままずっと続いているのではないかと思われていたほどです。
地球の半径は約6400キロメートルです。ですので、トータルの質量は約6000000000兆トンというとてつもない大きさです。これだけ質量が大きいため、周囲の空間がゆがんで重力が発生しています。
巨大な地球ですが、もしもその質量が狭いエリアに押し込まれたらどうなるでしょう。
先に説明したように、狭いエリアに質量が集中するほど、その周りの空間のゆがみは大きくなるのです。
そして、もしもこの地球が半径0.9センチメートルという手のひらにも乗ってしまうほど小さな球にまで押しつぶされたら、周囲の空間は究極的にゆがんでしまいます(上の図23を参照)。

「究極的にゆがむ」と表現しましたが、これは「光でも脱出できないほどゆがむ」という意味です。
光は秒速30万キロメートルで進みます。それほどの速さでも、空間があまりにゆがんでいるため脱出できないのです。
そして、この世に光より速く進むものはないことも、相対性理論は明らかにしていました。
つまり、光でさえも脱出できないのなら、他のどんなものも半径0.9センチメートルに縮められた地球から脱出することはできないのです。

ここまで説明したように、質量がものすごく小さな範囲にギュッと押し縮められると、そこからはどんなものも脱出できなくなります。
地球の場合は半径0.9センチメートルの球ですが、半径約70万メートルと地球よりずっと巨大で質量も大きい太陽であれば、半径3キロメートルの球にまで押し縮めることでそのような状態になります(下の図24を参照)。
そして、これこそがブラックホールの正体なのです。
つまり、ブラックホールというのは質量がものすごく狭い範囲に集中することで周囲の空間が究極的にゆがみ、光でさえも脱出できなくなったもののことなのです。
ブラックホールの存在は、相対性理論をもとに予言されました。
重力の正体が空間のゆがみであることを明らかにした相対性理論をもとに考えれば、空間のゆがみが大きくなっていったらやがて光でさえも脱出できなくなってしまうのではないか、と考えられたわけですね。

『【図解】いちばんやさしい相対性理論の本』 第4章 より 三澤信也:著 彩図社:刊

図24 太陽がブラックホールになるとすると いちばんやさしい相対性理論の本 第4章

図24.太陽がブラックホールになるとすると・・・
(『【図解】いちばんやさしい相対性理論の本』 第4章 より抜粋)

三澤さんは、実際にブラックホールになるには少なくとも太陽の十数倍の質量が必要だと述べています。

光の速度でも脱出できないほどの空間のゆがみ。
とても信じられないですが、この広い宇宙空間には、たしかに存在しているのですね。

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「光速で動いたら、目の前の鏡に自分の顔は映るのか?」

そんなとてつもなく奇想天外な疑問から、「相対性理論」は生まれました。

光の速度は常に一定で、空間や時間は状況によって変わってくる。
独力でその真理に気づき、さらに理論を深めていったアインシュタインの凄さは、驚異的です。

量子力学とともに現代物理学の柱となっている「相対性理論」。
本書は、その重要性を知り、エッセンスを学ぶには、最適な一冊といえます。
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