【書評】『「10年先の自分」をつくる』(工藤公康)

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 お薦めの本の紹介です。
 工藤公康さんの『「10年先の自分」をつくる』です。

 工藤公康(くどう・きみやす)さんは、元プロ野球投手です。
 現在はテレビニュースのキャスターやスポーツ新聞での評論家としてご活躍中です。

なぜ、30代以降も結果を出し続けられたか?


 プロ野球は、厳しい「弱肉強食」の世界。
 選手の在籍期間平均が10年弱、多くが実働6〜7年でユニフォームを脱ぐといいます。

 工藤さんは、そんな過酷な環境の中、実働29年間で224勝を挙げました。
 シーズンMVPに二度輝くなど数々のタイトルも獲得しています。

 また、生涯勝ち星の半分の111勝を、ダイエーホークス(現ソフトバンクホークス)に移籍した32歳以降に挙げ、“中年の星”として輝き続けました。

 30代以降も20代と変わらない成績を残し、47歳まで現役を続けた工藤さん。
 長く現役生活を続けられた理由は、「自ら考え、自ら動いてきた」からです。 

 つねに「10年後の自分」を見据えていたとのこと。
 他の人が手を出さないようなことも、積極的に取り組んできたといいます。

 本書は、長く第一線で活躍して結果を残し続けるための心構えや考え方を解説した一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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「練習量」を変えない人は強い


 工藤さんは、30代の選手から、現役生活を長く続ける秘訣を問われることがあります。
 そんなときは、「若い頃と同じ練習量をこなしなさい」と答えるとのこと。

 長く野球選手を続けるためには、パフォーマンスが若いときと比べて落ちていないことが大事。パフォーマンスを落とさない方法を見つけ出すために動いたり、「若い奴に負けない」「自分を高めてやろう」という自分を突き動かす想いがなければ続かないと思います。
 だから、私は「毎日腹筋を2000回やってみよう!」と提案しています。多くの人が「そんなことできません」と答えます。その言葉の裏には「年齢を重ね、経験を重ねれば“楽”ができる」という思いがあると思います。でも、その発想が野球を長く続けられない理由です。

 長く結果を出し続けた人は、「練習量」を変えていませんでした。20代のころに3時間でできた練習量がこなせないから、5時間、6時間かけてやればいいのです。若い頃と同じように体が動かないなら時間をかければいいのです。

 マウンドに登れば、年齢は関係ありません。だからこそ、若いときのパフォーマンスを維持するために、どうすればいいのか――を考える。私はその最短距離が「同じ練習量をこなすこと」だと思っています。ベテランが“楽”を覚えてしまえば、身体は元に戻ることはできなくなります。それこそが、引退への道を歩ませるのです。

 『「10年先の自分」をつくる』 第1章 より 工藤公康:著 中経出版:刊

 何ごとも、経験を重ねるごとにコツを掴んでいきます。
 繰り返すうちに、同じことでも、少ない労力でできるようになります。

 ただ、それにあぐらをかいて、手を抜いてしまう。
 それでは、蓄えた「貯金」を使ってしまうことでもあります。

 いくつになっても、つねに上を目指して鍛錬を重ねていきたいものです。

他人の評価が自己イメージを正す


 自分の頭の中に描く「理想の自分」。
 チーム事情や監督やピッチングコーチが描いているイメージ。

 その二つが異なって、希望通りのポジションにつけない場合もあります。
 工藤さんは、そのような場合、監督やコーチに直接聞くべきだと述べています。

 一番よくないのは、自分の理想と食い違っている理由を、自分だけで解釈することです。なぜなら、他人が見ている自分をしっかりと認識しない限り、自己イメージを正しく修正することができず、まったく進歩がないからです。
 だからこそ、自分の意見をはっきりと伝えるべきですし、自分の希望をかなえるためにはどうしたらいいのか聞く必要があると思うのです。そして、監督やコーチから「理想の自分」と「現実の自分」のギャップをしっかり教えてもらう必要があると思います。
 プロ野球では、たったボール半個分のコントロールという微妙な差異で勝負が決まってしまう厳しい世界。であるからこそ、チームが求める自分の理想が、どこが一致し、どこが食い違っているか――をお互いがコミュニケーションをとって確認しておく必要があります。
 解説者になってからも同様で、テレビ局の人には「何を求められているのか」を聞き、「自分ができること」を言うようにしています。
 
 私は、他人の客観的なアドバイスを聞くことは、自分自身の技術を磨くとともに、チームに貢献する自分のイメージを膨らませるために最も大事なことだと思っています。だからこそ、ある一定の年齢になり、相手が構えて「本音」を言わないことも増えてきてからが重要です。自分が相手の言葉を受け入れるつもりでいるだけでなく、「自分から聞く」。これが大切なことになります。

 『「10年先の自分」をつくる』 第2章 より 工藤公康:著 中経出版:刊

 人は、自分が思っているほど、自分自身のことを理解していないものです。

 相手との意見が食違ったとき、「自分のほうが正しい」と突っぱねないこと。
 自分自身のことについては、とくに、ですね。

 他人の客観的なアドバイスには、しっかり耳を傾ける習慣を身につけたいですね。

一つの“負け”でも、負けに慣れることへ導く


 工藤さんは、“負け癖”がついたチームは、最もよくない組織だと述べています。
 負けに慣れること、すなわち負けが長く続くと、どうしても諦めが早くなる。勝負への執着心が薄れ、言葉や行動にも現れてくるとのこと。

 人間の根っこには「楽をしたい」という気持ちがある。これは誰しもそうだと思います。たとえば、現状のままでも同じ給料がもらえるなら、現状維持の方が“楽”だと考えても不思議ではありません。現状を変えることはとてもパワーがいることですし、厳しいトレーニングが必要になるからです。
 また、負け続けていると、目標がなくなり、思考が働かなくなります。そして、日々、目の前の仕事をこなすだけの毎日になる。たとえば、リーグ優勝や日本一に対する意識が低くなると、シーズン当初で負けが続くだけでも「今年も無理かな」というムードがチームに蔓延(まんえん)してくる。

「負けから学ぶこともある」――。
 これは正しいと思います。負けには必ず理由があり、そこから学ぶことは間違いなくある。ただ、それはあくまで「勝ち」を追求してこそです。負け癖がついたチームにとって、負けはいつもの負けに過ぎなくなってしまう。

 つまり、「負けたときにどう思うのか」が重要なのです。たった一つの負けでも「あ〜あ、負けちゃった」になれば、負けた理由を探さなくなる。そこから“負け癖”につながることだってあるのです。
 だからこそ、私は「負けても学ぶことはある」と最初から逃げることは間違いだと思うのです。プロ野球は「勝ち負け」の世界であり、やはり「勝つこと」から得られるものは大きいのです。

 『「10年先の自分」をつくる』 第3章 より 工藤公康:著 中経出版:刊

 負け癖をつけないためには、負けたときに「なぜ負けたのか」を徹底的に検証すること。
 そして、二度と同じ間違いをしないようにすることです。

 スポーツの世界だけでなく、ビジネスの世界でも同じですね。

 仕事で失敗をしたときに「仕方ないか」とか「運が悪かった」と考える。
 それは負け癖がついてしまった証拠です。

 どんなときでも、勝ちにこだわる姿勢は、忘れずにいたいですね。

「伸びる人」と「伸びない人」の差とは?


「伸びる選手と、伸びない選手の違いは?」

 この質問に対し、工藤さんは、「自分が今やっていることを信じているか否か」だと答えています。

 伸びる人、長く結果を出し続ける人は、「新しい挑戦」を好む人たちだと思います。私自身も毎年、いろいろなことを試しました。それは40代になっても同様です。どんな些細(ささい)なことであっても「これいいかも」「あの人はこれでうまくいっているらしい」「こうすれば身体がうまく動くようになる」というように、自分なりにいろいろ挑戦しました。
 もちろん、これらすべてが身につくわけではありません。ただ、変わるために試みることができるかどうかが重要なのです。あとは自分に合っているもの、必要なものを組み合わせて、試行錯誤していけばいいのです。
 私は伸びる人は、自分とプロの世界としっかり向き合い、その中で生き残るために何をすればいいかをしっかり考えて、動ける人です。育てるという意味では、しっかり自分に向き合うためのきっかけを与えること――だと思います。

 『「10年先の自分」をつくる』 第4章 より 工藤公康:著 中経出版:刊

 結果が出ていても、いつかそのやり方が通用しなくなるときは来ます。
 そのときに、あわてて新しいやり方を始めても遅すぎますね。

 自分が「いい」と思ったことは、何でもすぐに試してみることが大事。
 その中で、自分にあっているものを取り入れていけばいいということです。

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 工藤さんが、長く現役で結果を残し続けた秘訣。
 そのひとつに、“大きな深呼吸”を挙げられています。

 普段の練習や試合の中で苦しいときに大きな深呼吸をする。
 そうしてリセットする時間をつくることで、気分が変えたそうです。

「10年先の自分」を見据えて、つねに最大限の努力をする。

 でも、苦しいときは無理をせずに、立ち止まって一休み。
 気分を入れ替えてリフレッシュしてから、新たな挑戦を始める。

 工藤さんの現役時代の投球さながら、緩急をつけたメリハリのある人生を送りたいですね。


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