【書評】『エメラルド・オーシャンな働き方』(石崎絢一)
お薦めの本の紹介です。
石崎絢一さんの『エメラルド・オーシャンな働き方』です。
石崎絢一さんは、40種類以上のビジネスを立ち上げてきたビジネスデベロッパーです。
現在は、新規事業立ち上げ支援業、輸入貿易商社、エステサロン、コインランドリーなど複数のビジネスのオーナーを務められています。
「レッド」でも「ブルー」でもないビジネスへ
世界中のほとんどの国が不景気で、モノやサービスが売れない時代。
国もあてにならず老後の生活も不安な世の中です。
ちょっとでも儲けのネタがあれば、誰もがすぐにそれに飛びつこうと狙っています。
誰もが、そんな生き馬の目を抜くような厳しい状況にうんざりしているのが現状です。
石崎さんも、同じような思いを抱いていました。
しかし、ビジネスや人生の本質に気づいたことで、この不毛なビジネスゲームから抜け出すことに成功しました。
人生を切り開くための秘訣は、世の中の本質を理解し、潮流を読むこと
。
そうすれば、どんな困難な時代でも自分流で生きることができます。
石崎さんは、多くのビジネスを立ち上げてきた経験を生かして、自らの成功哲学を「エメラルド・オーシャンビジネス」という一つの体系にしました。
本書は、「エメラルド・オーシャン」という新しいビジネスの領域を体系的にまとめた一冊です。
その中からいくつかピックアップしてご紹介します。
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「レッド」や「ブルー」の彼岸に希望があった!
「エメラルド・オーシャン」とは、どのような領域のことをいうのでしょうか。
石崎さんは、以下のように説明しています。
「エメラルド・オーシャンビジネス」は、誰かに勝とうとか、出し抜こうとか、戦略・戦術を張り巡らせたり、ハウツーやマーケティングを駆使して仕掛けたり、つかみ取ろうとかいった概念から解放された、極めて優位性の高いものや自分の心や思いをビジネスのブースターとしているビジネスのあり方なのです。
この中でもとくに大切にしているのが、「他人のエネルギーを奪わない」「ワクワク、ドキドキできる」ビジネスであるということです。なぜなら、その方法で効率的に稼げるかといって、明らかに他人のエネルギーを奪うビジネスやゼロサムゲーム(誰かの損が自分の利益になるような性質のもの)のようなビジネスで稼ぐことは心から楽しいでしょうか。
僕がこうした考え方に至るようになったのには理由があります。
実態のないものへの投資や出資、あとから詐欺だと知った話に乗って他人からエネルギーを奪われたこともあるし、僕が知らずに他人からエネルギーを奪ったケースもあったと思います。
後味も悪いし、不快で根深い恨みのエネルギーの影響を受けなくなるまでには長い時間を要してしまうことも多いものです。
そこまでのものでなくても、たとえばあなたが今日、トレードをして稼いだお金は、誰かの念のこもったお金が飛んだ(失った)代償であってはなりません。ビジネスでお金を得るということは、その先には必ずお客様の喜びがあり、評価されての結果でありたいものです。
豊かなビジネスとは、それを行うものも受け取る人も、「感謝」「ワクワク、ドキドキ」のエネルギーを交換し合える、「エメラルドグリーンの海」のような領域で行う美しいビジネスのことをいうのです。
つまり、エメラルド・オーシャンビジネスとは、「マーケット規模に縛られず、低価格も厭(いと)わない、従来のニッチ戦略からの発展系」といっていい、ブルー・オーシャン戦略に対し、「自分の世界観に人が自然に吸い寄せられてくる」という、まったく別次元のビジネスマインドだと思っていただけるとイメージしやすいと思います。『エメラルド・オーシャンな働き方』 第2章 より 石崎絢一:著 フォレスト出版:刊
相手にしたことは、それと同じことが自分にも跳ね返ってくる。
これはビジネスについても当てはまるということ。
他人からエネルギーを奪って儲けても、いずれ自分も同じ目に遭います。
逆に、相手が喜ぶビジネスであれば、相手の喜びが自分の喜びを生み出す好循環が生れます。
地獄に落ちても成功者になりたい?
「成功者」と「失敗者」、「勝ち組」と「負け組」、「お金持ち」と「貧乏人」。
石原さんは、そのような区別の前に「天国を生きる人」と「地獄を生きる人」に分けられると述べています。
天国を生きる人は、「いつも安心している」「感謝している」「満たされている」「笑っている」「比べない」などといった特徴を持っています。
一方、地獄を生きる人は、「いつも不平不満」「手に入れても不足」「さらに上に上にとせわしない」「不機嫌」「怒っている」などといった特徴があります。
「成功者」「稼いでいる」「勝ち組」と世間でいわれている人でも、地獄を生きるかぎり、どれだけ成功しても、お金を稼いでも決して満足することはなく、つねに心が渇いた状態の「餓鬼(がき)」と化してしまうのです。
この状態にいるかぎり、ビジネスゲーム、マネーゲームの奴隷であり、人生のほんとうの成功者とはいえませんよね。まずは天国を生きる人を目指さなければなりません。この前提条件を忘れている人がたくさんいます。先述したとおり、僕はいま、「海外貿易」を通じて、大好きな海外と関わりながら仕事をしています。扱う商品はすべて、日本での独占販売権(輸入総代理権)をいただいています。
「この商品は素晴らしい」「美しい」「逸品だな」と思って手がけたものを、僕の感性と合った人が見つけて購入してくれています。
(中略)
規模や額でいえば、僕より効率的に稼ぐ人はたくさんいますし、何億、何十億といった大金を稼ぎだす人もいます。また、なにもしないでお金がドンドン入ってくる人もいるでしょう。
しかし、「心の中のワクワク度やドキドキ度」は、誰とも比べるものではありませんし、もし勝ち負けをつけるとしても負けていないと思います。
なぜならば、僕はいま、自分にとってのエメラルド・オーシャンにいるからです。あなたもエメラルド・オーシャンを見つけ、地獄ではなく、天国を生きる人になってください。
『エメラルド・オーシャンな働き方』 第3章 より 石崎絢一:著 フォレスト出版:刊
お金というものは、いくら稼いでもそれ以上に欲しくなってしまうもの。
何のためにお金が必要なのか。
お金を稼ぐ目的を見失うと、単なる「お金の奴隷」になり果ててしまいます。
あくまでも「ワクワク」「ドキドキ」をビジネスの中心に据えること。
それが「天国を生きる人」になるための秘訣です。
レッド・オーシャンの中の「エメラルド・オーシャン」
石崎さんは、エメラルド・オーシャンビジネスでいちばんたいせつなのは「ハート」
だと述べています。
自分の心(魂)が力強く燃え、心の奥底から本当に充実し、ワクワク、ドキドキしながら、社会に提供できること、貢献できることをやっていけば、いずれ何がしかの分野や仕事で「根っこを押さえる」「風上に立てる」ようになる
からです。
「好き」「興味あること」で需要やマーケットを見つけ出す。
そのためには、どうしたらいいのでしょうか。
石崎さんは、そのための一つの手段として、「自分の今までのおおまかな人生の動きを、良い状態と悪い状態を時系列で表すこと」を勧めています。
人生の流れをグラフにして眺めてみる。
すると、自分がいろいろと経験をし、学んできたことに気づきます。
その『経験や学びに自分の長所(スキル)を照らし合わせることにより、閃(ひらめ)いた「何か」が、自分がやっていくべきこと、つまり「エメラルド・オーシャン」である可能性が高い』
です。
「好き」や「興味あること」であっても、そこに「需要」や「マーケット」がなければ稼ぐことはできないとお伝えしましたが、きっとあなたが閃き、やろうとしているビジネスは、社会や誰かに貢献できること、必要とされていること、喜んでいただけること、不安や生涯を取り除いてあげられるもののいずれかだと思います。
世の中が成熟し、しかもデフレ経済の中では、そうカンタンに成功したり、稼ぎつづけることはできないのはわかります。
それじゃあ・・・・と、最新のテクニックで「仕掛けたり」「つかみ取ろうとしたり」「中身がスカスカな状態でセルフブランディングをしてみたり」といったものに安易に流されても、本当の果実は手に入るものではありません。いま、「スイーツ」がブームですが、ケーキや洋菓子をつくれる人はたくさんいますし、どの街にも何軒ものスイーツのお店はあるので、スイーツビジネス自体はレッド・オーシャンです。
しかし、時折マスコミに登場する有名パティシエにとっては、お客様に選ばれ、自然に他人からの応援が入り、信用され、さらにレバレッジが効いてくるため、毎日、ワクワク、ドキドキしながら楽しくビジネスができる「エメラルド・オーシャンビジネス」なのです。あなたが感じたこと、やろうと思ったことが、競合がひしめくレッド・オーシャンの分野であっても、あなたの揺ぎない信念と情熱、そしてエネルギーを注ぎ込もうという気持ちさえあれば、その分野でも十分に「エメラルド・オーシャンビジネス」になり得るのです。
『エメラルド・オーシャンな働き方』 第4章 より 石崎絢一:著 フォレスト出版:刊
これまでの人生に起こった出来事の中で、必要のないことなどありません。
すべてが貴重な経験です。
まったく同じ経験をした人は、二人といません。
それを考えれば、どんなビジネスでも「自分らしさ」を出すことは可能です。
宝の山は自分自身の中にある。
つまり、人の数だけ「エメラルド・オーシャン」は存在します。
自分を束縛する鎖を引きちぎれ!
石崎さんは、これまでにいろいろな人と会って、面白いことを発見しました。
それは、頭がキレる人、顔の広い人、口が達者な人ほど形になっていかないこと
です。
彼らは、モノゴトへの批評・批判能力は高いです。
しかし、腹を括る能力と実行力に欠けているケースが多いです。
その姿は、まるで「ロダンの考える人」のようです。
一方、いい意味での「バカ」や素直な人。
彼らは、あまり考え過ぎないため、痛い目に遭いながらも、いつの間にか何かを形にしていく人も多い
とす。
僕の経験では稼いだり、成功するには、それほど頭の良さは必要ないと思うし、学歴もあまり関係ありません。
事実、学生時代に悪かったヤツが成功している例は多い。
連中はおしなべて気が強いし、理不尽に耐える訓練もできている。そして何事も恐れない勇気を持っている。でないと、暴力が支配する厳しい縦社会ではやっていけなかったわけです。
夢を見たならば、それを実行に移す「勇気」が必要です。ロダンの彫刻のように、いつまでも座り込んで考えている場合じゃないんです。
「明日、エサが食べられないのではないか・・・・」と憂鬱(ゆううつ)になっている猫はいない。
「あの獲物を捕まえることができるのかな?」と考え込んで身動きしないライオンもいません。
人間だけが動物で唯一、過去の経験や知識、取り巻く環境に意識を引きずられて、考え込んでいたり、「人生、こんなもんさ」と冷めた心で自分の夢を見ることも、追いかけることもしなくなる。
エメラルド・オーシャンでプカプカ浮かびたいならば、頭で考えこむのではなく、大海へ漕ぎ出す勇気を持たなければなりません。『エメラルド・オーシャンな働き方』 第5章 より 石崎絢一:著 フォレスト出版:刊
いくら立派な構想を練っても、実行しなければ意味がありません。
まさに「絵に描いた餅」ですね。
行動すれば、失敗したとしてもそれを教訓にしてさらに成長することができます。
不安を恐れず、夢を実行に移す「勇気」を、つねに持ち合わせていたいものです。
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☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆
石崎さんは、「これからの時代は『心』の時代」だとおっしゃっています。
経済やビジネスも『お金』を中心ではなく、『心』を中心に考える時代だということです。
石崎さんは、自分の人生やビジネスを輝かせるためには、自分がアーティストとなって生き方をプロデュースしていくことが必要
だと強調されています。
「ワクワク」や「ドキドキ」が人を動かし、ビジネスを動かす。
そして、自分以外が入り込めない「エメラルド・オーシャン」の領域を創り出す。
誰もが自らの個性を売り物に、それこそ、アーティストのように活躍する時代。
本書は、そんな時代が本当に始まっているのだな、と改めて実感させてくれます。
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