本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ

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【書評】『高城 剛と考える 21世紀、10の転換点』(高城剛)

 お薦めの本の紹介です。
 高城剛さんの『高城 剛と考える 21世紀、10の転換点』です。

 高城剛(たかしろ・つよし)さんは、ライター、クリエイターです。
 多くの有名ブランドのCMやアニメーション映像制作を手がけられ、ソニーのAIBOなどの話題の商品の立ち上げにも数多く関わられています。
 現在は、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたってご活躍中です。

「個人の時代」が到来し、人類史上最大の変化が訪れる

 高城さんは現在、年間30カ国以上で仕事をしながら旅をして、さまざまな知見や最先端の商品やサービスに触れる生活を送っています。
 自ら未来が進んでいく方向を、いつも身をもって見定めて、行動しているつもりと語るように、つねに時代の先頭に身をおいて未来の変化を感じ取っている数少ない日本人の一人です。

 財政危機やさまざまな外交上の問題などを抱え、日本だけでなく、世界的にも「国家」という枠組みに綻(ほころ)びが見られるようになり、機能不全に陥っています。

 国家の力が落ちるのと対照的に、増大しているのが「個人のパワー」です。
 スマートフォンやパーソナルコンピュータなどの情報端末が全世界的に普及し、SNSやツイッターなど一個人が情報を発信できる素地が整ってきたことなどから、人類史上初といえるほど個人の力が増しています。

 高城さんは、良くも悪くも、これから個人の時代になっていくことは、間違いないと指摘し、この「個人革命」の時代は、あらゆる人に訪れると強調します。
「個人革命」は、具体的にどのような変化をもたらし、私たちはどんな対策をとるべきなのか。

 本書は、「今後大きな変化をもたらす」10分野を取り上げ、それぞれの未来像を解説した一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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混迷の時代にサバイブできる仕事のスタイルとは?

 高城さんは、日本はいまもなお優れた経済力を誇ってはいるが、過去の遺産を担保にしているだけにしかすぎないと指摘しています。

 致命的な問題が、「労働人口の低下」です。

 日本は少子化が続き、2030年には人口が1200万人ほど減るといわれています。
 なかでも重要なのが「生産年齢人口」と呼ばれる15〜64歳の人口比率です。

 1995年をピークに減り続け、2025年には、高齢者1人を労働人口1.8人で支えなくてはならない社会が訪れるとのこと。
 また、テクノロジーの進化により、製造業を中心に、特定の技能やセンス、長年の経験、多くの人員という要素を必要としていた仕事がどんどん自動化されています。

 高城さんは、世の中にある99%の仕事は、機械やテクノロジーに置き換わる可能性が高いと感じていると述べています。

 では、これからの時代、仕事はどうしていくべきなのか?
 それは、二つ以上の仕事に取り組むというほかない。
 あらゆる仕事は、機械やテクノロジーに置き換えられる危険がある。そして、変化の激しい時代に、危険の予兆を感知できないまま、まるで嵐に襲われるように突然仕事を失ってしまうこともありえる。「どうも将来が見通せない」「取引先が減ってきた」という変化を感じることもなく、わずか数年、いや数ヶ月でいきなり仕事がすべてなくなってしまうかもしれない。
 最近の日本では公務員が人気だというが、これが安定的な仕事かといえば大いに疑問である。デスクワークは内容的にも機械やテクノロジーに置き換わりやすく、【個人の時代】の到来によって国や自治体は役割を大きく変えていくことになる。2013年にはアメリカ政府の一部機能か停止し、職員は自宅待機になった。今後は日本でも多くの都市が財政破綻に直面して、公務員の首切りが発生するであろう。これは、どこかで避けられない問題になる。
 安定した仕事など、もはや空想の産物といえる。
 この点をあらゆる人は忘れてはならない。収入源を確保していくには、ひとつの仕事を失ってもサバイブしていけるような複数の職に手を付けておくことが重要である。
(中略)
「こだわり」という言葉は、企業のマーケティングによって「物事に真摯(しんし)に取り組んだ行為」として好意的に受け入れられているが、もともとは「ひとつの物事に拘泥(こうでい)する」という、ネガティブな言葉であった。生み出すモノやサービスにこだわりをもつことは結構かも知れないが、特定の仕事そのものを続けていくことにこだわってしまっては、今後はあやうい。

 『高城剛と考える 21世紀、10の転換点』 No 001 仕事 より 高城剛:著 宝島社:刊

「こだわり」は度が過ぎると「執着」になり、自分の身を危うくする恐れがあります。
 変わらないことが安定である時代は、とっくの昔に終わっています。
 時代の変化は、これからますます激しくなっていくのでしょう。

 時代の変化に対応する力をつけること。
 こだわりを捨てて、環境に自らを適応させていく実力を身につける必要がありますね。

DNA情報によって自分に合った健康法を見つける

 高城さんは、健康も個人の時代がやってくる。すなわち、自分の健康は自分で管理しろ、ということだと述べています。

 今後、急速に増える高齢者人口に比例して、医療費や介護費は右肩上がりになるでしょう。
 それらを公的な保険でカバーしようというのは、不可能に近いです。

 高城さんは、そのような状況に対して多くの人ができることは、いかに病の発現を事前に防ぐかということに尽きると述べています。

 病気の予防という観点から、より重要となるもののひとつが「DNA」です。
 2003年、人間の全DNA配列が明らかになりました。
 DNAの情報からは、瞳や髪、肌の色、身長の伸び具合などの肉体的特徴だけでなく、記憶力といった個人の能力なども導き出すことができます。
 罹(かか)った病気の種類と患者のDNAに合わせた薬を処方する「オーダーメイド医療」という新分野にも注目が集まっています。

 高城さんは、さらに重要なのは、DNA情報がわかることで自分にどのような健康リスクがあるのか、事前に理解できることだと指摘しています。

 いろいろな病の一部も、DNAレベルで発現しやすさが決まっている。たとえば糖尿病になるリスクが80%という体質を持つ人もいるであろう。そうした場合は、積極的に糖質の摂取を制限などに努め、発病を回避するのが大事となる。
 理解してほしいのは、検査で得られたDNA情報は、基本的に不変だということである(検査の精度の甘さによる不正確性や骨髄移植による免疫系細胞の遺伝子治療を行った場合はのぞく)。つまり、砂糖を摂ると一般の人より太りやすく、糖尿病にかかるリスクが高いという結果か出た場合、いまからどれだけ努力をしたところで、DNAが生み出したあなたの体質は絶対に変わることはない。この意味で「体質改善」は嘘である。しかし、自分自身の体質を理解できれば、健康維持においてこの上ない利益となる。糖尿病になるリスクが人より高いから人一倍気を使うべきことを、絶対の事実として理解して行動に移せるからである。
 特定個人のDNA情報を解析するのに、2000年代では何ヶ月もかかってしまっていたため費用は莫大(ばくだい)で、難病患者や一部の富裕層しか受けることができなかった。しかし、次世代シーケンサーと呼ばれる高性能マシーンが登場したことで、DNAの解析スピードは大幅に向上し、一人分を一日で解析できるようになった。これによってDNA検査は活動領域を拡大し、民間企業も次々と参入。健康情報を含むトータルな検査から、ダイエットや美容、薄毛、アルコールといった特定分野だけを検査するものまで、一般向けサービスが拡大している。

 『高城剛と考える 21世紀、10の転換点』 No 003 健康 より 高城剛:著 宝島社:刊

 病気を治すことより、罹らないようにすること。
 これからは対処療法より予防療法がもてはやされる時代になります。

 勝負の鉄則は、「自分を知り、相手を知ること」です。
 それは、病気に対してもいえること。

 特定個人のDNA情報を生かした医療サービスは、これから拡大していくことは間違いありません。

日本への帰属意識は次第に薄くなっていく

 高城さんは、これまで日本人にとって当たり前だったマイホーム志向も、今後一層希薄なものになるだろう、と述べています。
 それに加えて、さらにこれから多くの人たちは、国に対する帰属意識がどんどんと希薄になっていくのではないかと予想します。

 それは、固有の土地に固執(こしゅう)しないといい換えることもできる。これは国家というより、国家を運営する仕組みに辟易(へきえき)する人が増えるであろうということも含まれる。むしろ、国自体を愛する人は、内外を問わずグローバリゼーションの反動のように増えることであろう。そして、ますます【個人の時代】が強まり、自分一人でできること、やらなくてはならないことが時代の変化とともに増えていくことで、同じ国、同じ場所だけに一生住み続ける意味は揺らいでいる。
 冷静に考えれば、これからも日本には地震という高リスクが存在し続けている。2003年3月にミュンヘン再保険会社が公表した「世界大都市の自然災害リスク指数」によれば、東京は世界主要都市の中で、リスクが格段に高いとされている。ニューヨークのリスク指数が42、ロンドンが30、香港が41なのに対し、東京は710のリスク指数があり、それは2011年の東日本大震災で現実のものとなった。また、今日でも東京の災害リスク指数は高いままである。
 住居を購入したところで、今後30年の間にいつか崩れる、もしくは液状化して資産価値が突如暴落する建物は、首都圏にかなり多く存在している。資産としての不動産は、冷静に考えれば考えるほど疑問が多いが、現行の日本の政治システムはコンクリ至上主義経済なので、制度としても優遇され、この問題をマスメディアで真摯(しんし)に話す人はいなくなる。
 また、一度国家への帰属意識を喪失しはじめると、反対に「出る杭は打たれる」ような周囲からは村八分にされることや、冷たい空気にさらされるようになることもあろう。また、個人が力を獲得していく一方で、日本という国はこれまでよりも相互監視社会化を強め、あらゆる手段で「人と違ったことはできない」空気を作り上げていくと思われる。こうした状況から逃れ「ほんとうに自分のやりたいことをやる」人は、一時的にせよ日本を出るという選択肢も生まれてくるであろう。もしくは、ふたつの地点をうまく往復するような暮らしを送ることになる。

 『高城剛と考える 21世紀、10の転換点』 No 005 住居 より 高城剛:著 宝島社:刊

 マイホームを資産として計算しにくい現状を考慮すると、固有の土地や長期のローンに縛られることは、もはやリスクでしかないと考える人が増えてきても不思議ではありません。

 国についても同様です。
 インターネットや高速交通ネットワークが広がった今、ひとつの国にこだわる必要性はありません。

 世界的な大企業の中でも、実質的な「無国籍企業」の会社が存在感を増しています。
 グーグルやアップルなどがそれに該当しますね。

 国に帰属するよりも、国の束縛から距離をおいたほうがリスクが少なく、メリットが大きい。
 そんな事情を反映する時代の流れですね。

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 日本はかつてないほど大きな変化のうねりの中にいます。
 高城さんは、大きな渦潮に巻き込まれ、飲み込まれそうになったときは、とにかく一度、どうにかしてその渦潮から距離をとり、冷静に潮目を見直すべきだとおっしゃっています。

 乗っている船がいくら大きくても、巨大な渦潮に巻き込まれれば、身動きがとれなくなります。
 最悪の場合、沈没することもあるかもしれません。

「危ない」と思ったら、勇気を出して乗っている船を離れて状況を眺めることも、ときには大切です。

「他の人と一緒だから安心」
 そう考えて誰かの後ろをついていけばよかった時代は、すでに終わりを迎えています。
 進むべき方向を自分で決めるべき時代が、ついにやってきたということですね。

 これから本格的に始まる「個人の時代」に進むべき方向性を示してくれる“羅針盤”として、すべての日本人にとって一読の価値のある一冊といえます。

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