【書評】『世界中のエリートの働き方を1冊にまとめてみた』(ムーギー・キム)

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 お薦めの本の紹介です。
 ムーギー・キムさんの『世界中のエリートの働き方を1冊にまとめてみた』です。

 ムーギー・キムさんは、投資家です。
 大学卒業後、外資系金融機関の投資銀行部門にて、日本企業の上場および資金調達に従事、その後、外資系資産運用会社のバイサイド・アナリストやプライベート・エクイティ投資業務などのご経験を積まれています。

世界中で活躍するエリートの「働き方」とは?


 投資銀行から始まり、戦略コンサルティングファーム、資産運用会社、プライベート・エクイティ。

 世界中の一流MBAホルダーがこぞって志望する業界で、計12年にわたって一流のトップエリートの「働き方」をつぶさに見てきた、というキムさん。

「トップエリート」とは、一流のMBAプログラムを「ベイカースカラー」(ハーバード・ビジネス・スクールを上位5%で卒業)や「ディスティンクション」(上位10%で卒業)のトップクラスで卒業したようなエリート中のエリートのこと。
グローバルコンサルティングファームや金融機関でたんに働いているだけでなく、同期でもトップで出世競争を勝ち上がったような人たちです。

 トップエリートの仕事というと、「あまりにレベルが高過ぎて、普通の会社員には参考にならないのではないか」と思ってしまいますが、そうではありません。

 キムさんは、仕事に限らず、日々のコミュニケーションや人間関係など、公私のさまざまな局面で参考にできる要素も多々あり、彼らの「働き方」や「生き方」に私たちが学べることは多いと指摘しています。

 本書は、様々の業界のグローバルエリートの仕事術を、ユーモアを交えながら解説した一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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若手時代は目の前の仕事に全力投球


 業界を問わず、トップエリートたちには、「共通している特徴」があります。
 その中のひとつが、「つまらない仕事も完璧にこなすこと」です。

 30代半ばで大手金融機関の東京支社長にまでなった元上司のオーストラリア人やイギリス人に、「とくに投資銀行の若手アナリストの場合、つまらない仕事が大量にふってくるが、それをどうやって乗り越えたのか?」と何度か尋ねてみた。すると彼らは異口同音に次のように答えた。
「とにかくつまらない仕事でも絶対にミスがないよう、120%の力で極力早く正確にこなした。たえずベストクオリティを心がけ、周囲から信頼と評判を得ることに注力した」
 よく、「会社や上司が責任のある大きな仕事を任せてくれない」とこぼす人がいる。
 しかし、はたしてそういう人は、自分がいま任されている目の前の小さな仕事を完璧にこなしていると証明できているだろうか。
 目の前の小さな仕事を完璧にこなせていないのに、もっと「大きな仕事を任せろ」といわれても、上司や会社の立場からすれば危なっかしくて仕方がない。そんな若手に、とうてい大きな仕事を任せることはできないのだ。
 これは自戒を込めて申し上げるが、世の中のほとんどの仕事では、目の前のつまらない小さな仕事を完璧にスピーディーにこなせてはじめて、より大きな、面白い、責任のある仕事を任せてもらえるようになる。「自分だからこそできる面白い仕事を」とばかりいっていても、そんな仕事がいきなり自分に舞い込んでくるはずがないのだ。
「どうせ誰かがやらなくてはいけない仕事だから、自分がさっさと終わらせる」という、学校でみんながさぼりがちの掃除当番をテキパキこなしていまうようなタイプが、結局のところ仕事でも大活躍し、さっさと出世していくのである。

 『世界中のエリートの働き方を1冊にまとめてみた』 序章 より ムーギー・キム:著 東洋経済新報社:刊

 できる人は「つまらない仕事だから後回しにする」ではなく、「つまらない仕事だからこそ先に片付ける」で上司の信頼を勝ち取ります。
 誰でもできる仕事、突発的なささいな仕事でも、誰かがやらなくてはいけません。
 そんな仕事を自らすすんでさっさとこなす人には、誰もが頼もしく思うのは当然ですね。

徹底的に聞き出すことで、強い信頼感を醸成する


 世界の一流MBAプログラムを卒業するエリートのほとんどは、マッキンゼー、ベイン・アンド・カンパニー、ボストン コンサルティング グループなどの戦略系コンサルティングファームで働くことを第一希望にしています。

 コンサルタントの主な仕事は、大きく分けると次の三つです。

  1. 企業の問題点を診断し、現状を把握したうえで解決策やビジョンを提示する
  2. 対象企業を買収すべきかデューディリジェンス(多面的な調査)をし、アドバイスする
  3. 第三者の立場で企業変革の実行(組織・人事・企業風土など)を支援する
 キムさんは、コンサルタントに必要な能力として「聞く力」を挙げています。
 相手のニーズも知らないのに独りよがりの提案をしたところで、お客さんに受け入れてもらえるわけがないからです。

 コンサルタントは、クライアント企業を動かすために、あの手この手で人間関係を築き、信頼を勝ち取らなければならないが、そのベースになるのもやはり「聞く力」である。
「十分に自社のことを理解してくれている」という実感がないと、クライアントは信頼してアドバイスを聞き、実行してくれない。みなさんも自分のことを本気で心配してくれている友人や家族の忠告でないと、耳を傾けないはずだ。
 そもそも人は他人に自分の話を聞いてもらいたい生き物だし、自分を理解してくれる人を信頼するものだ。
 たとえば、「原宿の母」や「新宿の母」といった占い師のところに、1時間2万円も払って人生相談に行くような人が世の中には少なからずいる。しかし相談に行ったところで、話をしているのはほとんど自分で、相手にいってもらうのは、要約すると「大丈夫よ、自分を信じてがんばりなさい!」
だけということも少なくない。
 それでも大金を払って占い師に人生相談するのは、自分の悩みを理解してくれる人が必要で、その人に強く背中を押してほしいからだ。迷っている心情を理解したうえで、ズバリ力強く後押ししてもらいたいというのは、誰もがもつ深層心理である。
 この「自分のことを理解してくれている人」への信頼感の高まりと、それに対して支払うプレミアム価格のメカニズムは、業界を問わず当てはまるものだ。たとえばスーツのテーラーメードで、一度自分の体形をきちんと計ってもらい市販のスーツではありえないほどのぴったり感を味わうと、そのテーラー以外から買う気が起こらなくなる。そして最後、ボタンの色で迷っているところに、「このマーブル色の牛の角からできたボタンが最高にお似合いだよ!」とひと押ししてもらうことで、そのテーラーへの信頼が増すのだ。
 この「私を理解してくれている」「みんなに同じものを売っているのではなく、私にぴったりのソリューションを提供してくれている」という感覚こそが、あらゆるビジネスで大きな競争優位につながる。

 『世界中のエリートの働き方を1冊にまとめてみた』 第2章 より ムーギー・キム:著 東洋経済新報社:刊

 自分の話を聞いて理解してくれる人が信頼されるのは、コンサルタントに限った話ではありません。

 自分の商品を売り込む前にまず、相手の話をしっかり聞いて、ニーズを的確に把握すること。
 それがお得意様をつくるコツですね。

お金を預けてはいけない運用会社は、どう見分けるのか?


「お金を預けてはいけない運用会社は、どう見分ければいいか」

 この質問に対して、キムさんは、アナリストやファンドマネージャーをはじめ、人が頻繁に入れ替わる会社は要注意だと答えています。

 ダメな運用会社のいちばん簡単な見分け方は、アナリストやファンドマネージャーなど、内部の人がころころ入れ替わっているかどうかだ。
 運用成績がうまくいっていない会社ほど、マネジメントチームのクビが飛ぶので、とっかえひっかえ新しいマネジメントチームがやってくる。
 以下はシンガポールの某大手ファンドの話だが(ただしどこの運用会社でも同じようなことはよく起こる)、まず部門のヘッドが外部から新たに招聘(しょうへい)されるや否や、本社の大ボスに「こんな変革を起こしました」と報告するためだけの、変革のための変革が行われた。
 やたらと中間管理職の数が増え、出張などの予算の使い方が絞られ、細かい的外れの情報をすべての投資レポートに加えるような、非生産的な仕事ばかりが増えていったのだ。
 それに反発する既存のファンドマネージャーとの対立が起こり、社内闘争がエスカレートしていった。そうした雰囲気に嫌気が差し、優秀なスタープレーヤーが次々に会社を離れると、社内に殺伐(さつばつ)とした空気がますます蔓延(まんえん)するようになった。
 勝っているファンドは、優秀なアナリストやファンドマネージャーが中間管理職による無用な介入を受けず、のびのびと仕事に集中しているものだ。こういう「ストリート・スマート」な真のタレントは、無駄なプロセスや雑務が増えると会社への不信から会社を去る。
 どのファンドにお金を預けるか検討中のみなさんは、トップエリートが自由に投資だけに集中できているかという社内外の評判も、判断材料のひとつにするといいだろう。

 『世界中のエリートの働き方を1冊にまとめてみた』 第3章 より ムーギー・キム:著 東洋経済新報社:刊

 資産運用には、様々な理論や法則があり、プログラムで自動化されている部分が多くなっています。
 ただ、最終的には、人の判断がすべてであるところは変わりません。

 アナリストやファンドマネージャーが腰を据えて、じっくり自分の仕事に邁進(まいしん)できる運用会社は、やはり結果をしっかり残す確率が高いということです。
 どの分野の仕事でも、同様のことがいえますね。

“高望み症候群”で婚期を逃すエリート男性


 気になる、トップエリートの恋愛・結婚観とはどのようなものなのでしょうか。
 有名投資銀行や有名コンサル会社のエリートともなれば、「結婚マーケット」では、完全に買い手市場です。
 しかし、キムさんによると、選択肢が多いゆえに絞り切れず、結果として、婚期を逃す男性も少なくないとのこと。

 時がたつにつれ、やれ賢くて子育てをきっちりやってくれそうな人、やれ親にも丁寧に接してくれる人、やれ教育水準が高くて実家も金持ちの人などと、要求水準ばかりが高騰するのである。
 やがて、いままで付き合った彼女よりは総合的に上回っていてほしく、外見はできれば北川景子クラスなどと、もはや「白昼夢の世界」に突入する。結果的に、一般的な女性が結婚相手に求める要素をすべて満たしているにもかかわらず、皮肉にも選択肢が多いがゆえに一生婚期を逃すのである。
 残念なことに、高望みしすぎて期待値をコントロールできずに婚期を逃し、一生独身で終わるエリート男性が少なくないのも事実である。仕事では「相手の期待値をコントロールすること」に長けている彼らも、自分の結婚への期待値はコントロールできないのだ。
 これは徹底的にデューディリジェンス(投資先に対する多面的な調査)に時間をかけたはいいものの、その間に投資案件が競合他社にもっていかれていつまでも投資できないファンドマネージャーを思い起こさせる。そんな投資家に限って、最後に焦ってろくでもない案件に手を出してしまうことも多い。
 結婚も投資も、戦略性とタイミングが重要という点では同じである。
 ビッド案件(競争案件)になる前に、自分の人生と戦略的整合性の高い案件にアンテナを張っていなければ、「オークション」(他の男性との競争)で高づかみされるか、いくつになってもしぶとく「ディールソーシング」(潜在的結婚相手の開拓)に精を出す「お寒い結婚戦線の老兵」に成り下がってしまいかねない。

 『世界中のエリートの働き方を1冊にまとめてみた』 第5章 より ムーギー・キム:著 東洋経済新報社:刊

 仕事では、客観的な視線で冷静に分析できるトップエリートたち。
 ただ、自身の恋愛や結婚となると、フラットな視線を忘れてしまう人が多いようですね。

 結婚は、相手の望む条件をクリアできるかどうかが最大の関門の場合が多いです。
 しかし、それだけではうまくいかないのが難しいところです。

 恵まれている人には、恵まれている人なりの、悩みがあるということでしょうか。

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 キムさんは、多くのグローバルエリートが見出した意義深い教訓として「好きなこと、人生で成し遂げたいことを仕事にする」ことこそが、どんな仕事術や勉強術よりも「成功」に近づく道だということを忘れてはならないと強調されています。

 人もうらやむキャリアを積み、目がくらむ位の収入を得ているトップエリートたちが、「お金や社会的名声で仕事を選ぶな、自分の夢と信念に従って選べ」とアドバイスしていることは、とても興味深いですね。

 トップエリートの仕事術も、基本の部分は一般の仕事に通じるものがあります。

 当たり前のことを、どれだけ正確に、大量にこなすことができるか。
 どれだけクライアントや上司の信頼を得ることができるか。

 実力をつければつけるほど、自分のやりたい仕事に近づくのは、古今東西変わらない真実です。
 私たちも、本書からトップエリートたちの仕事ぶりを面白おかしく学んで、自分のやりたい仕事へのキャリアアップを目指したいですね。


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