【書評】『「怒らない体」のつくり方』(小林弘幸)

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 お薦めの本の紹介です。
 小林弘幸先生の『「怒らない体」のつくり方――自律神経を整えるイライラ解消プログラム』です。

 小林弘幸(こばやし・ひろゆき)先生は、日本体育協会公認のスポーツドクターです。
 自律神経研究の第一人者として有名で、ベストパフォーマンスを出すために重要なことを医学的に研究・分析し数多くのトップアスリートやアーティストを指導されています。

「怒り」は健康をむしばむ“元凶”である


 昔から、「怒りこそ健康を蝕(むしば)む元凶である」と言われてきました。
「短気は損気」という言葉もあります。
 この場合の「怒り」は、表情や声に表れるような激怒だけを意味しません。
「イラッ」としたりムカムカしたりするのも小さな怒りですし、怒りを我慢したときの苛(いら)立ちや諦めも怒りの一種です。
 小林先生は、そういう小さな怒りが積み重なると、心は乱れ、元気を損なっていくと述べています。

 怒りの感情自体をなくすことは、至難の業です。
 ただ、小さな怒りを大きな怒りに結びつけないこと、小さな怒りを瞬時に解消することで、怒りをコントロールすることはできます。

 本書は、「怒り」の正体を医学的に解説し、「怒り」のコントロール方法をまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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万病のもとは「怒り」である


 感情をコントロールするうえで重要な役割を果たすのが、「自律神経」です。
 自律神経とは、体のさまざまな機能を調整してくれる神経です。
 呼吸や血液の循環、それに、汗をかいたり心臓を動かしたりするのもすべて自律神経の働きです。

 小林先生は、筋肉や器官がハードウエアだとすると、自律神経はすべての器官をコントロールするソフトウエアだと指摘します。

 自律神経には、「交感神経」「副交感神経」の二種類があります。

 交感神経は戦闘モードを司る神経で、昼間に活動しているときに高くなることから、「昼間の神経」とも呼ばれています。交感神経が上昇すると、心拍数が上がり、血圧も上昇していきます。闘うときは体内酸素を増やすために呼吸は速くなり、筋肉を最大限に働かせようとし、暗くてもよく見えるように瞳孔(どうこう)は開き、出血しづらくなるように血液は粘度が高まり、さらに武器を握るために手に汗をかきます。これらは交感神経が急激に上がるから起こる症状です。
 
 副交感神経はリラックスモードを司る神経で、夜に活発になって心と体を静めることから、「夜の神経」と呼ばれています。心拍や血液もゆったりと下降し、全身の血流もよくなり、消化器官の活動も活発化します。
 車にたとえるなら、交感神経はアクセル、副交感神経はブレーキです。どちらが高いといいという話ではなく、両方のバランスがとれているのが理想的な状態といえます。

 私が自律神経を注視しているのは、自律神経の乱れは万病のもとであるからです。
 そして自律神経を乱れさせる原因のひとつが、怒りなのです。
 怒ると交感神経が活発になり、心拍も血圧も上がり、血管がぎゅっと収縮されます。すると血液の流れが悪くなって細胞の一つひとつに血液が行き渡らなくなるのです。
 急激に活発になった乱れはなかなかおさまらず、3時間も乱れたままになるというデータもあります。ほんの数分しか怒らなかったとしても、一度乱れた自律神経はもとに戻りづらいのです。
 その一瞬の「怒り」があなたの人生を狂わせる。その一瞬の「怒り」の積み重ねがあなたの人生を損なうかもしれないのです。

 『「怒らない体」のつくり方』 第1章 より 小林弘幸:著 祥伝社:刊

「怒る」ということは、交感神経の働きを急激に高めることです。
 自動車のアクセルを急に吹かせたのと同じですね。
 何度もくり返すとエンジンを痛めてしまいます。

 毎日怒っている人は、毎日自分の体を自分で傷つけているのと同じです。
 そのダメージの蓄積は、相当なものでしょう。

「怒り」は、血液をドロドロにし、血管を傷つける


 激しく怒っているときは、顔の表情にも、それとわかる現象が現れます。

  • 眉間にしわを寄せる
  • こめかみに青筋が立つ
  • 目が吊り上がる
  • 顔が赤くなる
 小林先生は、このような表情は、怒ったときに自律神経のバランスが乱れている様子をよく表していると指摘します。

 交感神経の働きが急激に高まると、心拍数が増えて血圧が上がります。見た目ではわかりませんが、おそらく、心臓がバクバクしていることでしょう。口の中はカラカラに渇き、全身に鳥肌が立っているかもしれません。
 怒ることを「かっとなる」と言いますが、この「かっ」となる瞬間に、交感神経が興奮していると想像してください。神経学の研究者は神経細胞が興奮することを「発火する」と表現する場合がありますが、まさにそのようなイメージです。
 急激な血圧の上昇や心拍数の増加は、脳梗塞(のうこうそく)や脳出血、心臓発作を起こすリスクが高くなります。怒りっぽい性格の人ほど心臓発作を起こしやすいという調査もありますから、思い当たる人は注意したほうがいいでしょう。

 怒りの度合いがさらに強くなると、初めは赤くなっていた顔色が青ざめてきます。
「怒りに身を震わせる」という言葉のとおり、手足が震え、呼吸が浅くなり、唇は紫色になってきます。頭痛やめまいがしたり、ひどいときは卒倒してしまう人もいるのです。これは激しい怒りで全身に血液が行き渡らなくなって怒る症状です。
「血液が不足する」「血液が行き渡らなくなる」というのは、体にとってひじょうに危険な状態です。
 血液の重要な働きのひとつは、細胞に酸素や栄養を届けることです。また、細胞が出す老廃物を運び出すのも血液の役目です。
 血液が行き渡らなくなると、細胞は酸素不足、栄養不足になってしまいます。そうなるとひとつひとつの細胞が十分に機能できなくなり、いずれ細胞が死んでしまいます。血液が行き渡らなくなるのは、それほどリスクの高いことなのです。

 『「怒らない体」のつくり方』 第3章 より 小林弘幸:著 祥伝社:刊

 怒りは、人の表情を変えるだけでなく、心臓の動きや血管の広さ、血液の流れなど、全身において悪影響を及ぼします。

 小林先生は、怒りっぽい人は、自ら寿命を縮めているようなものだと警鐘を鳴らしています。
 怒りは、まさに「百害あって一利なし」ですね。

口角を上げ、笑顔でいるだけで変わる


 小林先生は、怒りっぽい人が、怒りをコントロールして、イライラや憂鬱(ゆううつ)になりにくい体質にするための方法として、「表情を変えること」を挙げています。

 表情を変えると血の巡りが変わるので、気分も落ち着いてきます。気分が落ち着いたら表情も和やかになると思われがちですが、先に表情を変えるほうが副交感神経は優位に働き、落ち着きを取り戻せるのです。

 緊張しているときも同じです。
 顔がこわばっていると交感神経の働きが強まり、血の流れが悪くなり、呼吸も浅くなって緊張が余計に高まっていきます。頭が真っ白になるのは、脳に血が回っていないからです。
 これは気分を無理やり変えるとどうにかなるという問題ではありません。
 表情を変えると副交感神経が作用して血の流れは通常に戻り、自律神経は整うのです。そうすれば自然とリラックスできます。
 ちなみにリラックスとは、いつでも笑えるような状態のことです。最近笑ってない人は、交感神経が強まり、自律神経が乱れている可能性大です。
 眉間にしわを寄せたり、奥歯を噛みしめたりしていないでしょうか。
 笑う気分でないときは、口角を上げて作り笑いをするだけでも副交感神経の働きはアップします。口角を上げ笑顔でいる。この習慣でイライラしにくい体に変わるのです。

 『「怒らない体」のつくり方』 第4章 より 小林弘幸:著 祥伝社:刊

 他にも、背筋を伸ばしてゆっくり歩くこと、ため息をつくこと、ゆっくり息を吸って吐くことなども、即効性のある副交感神経を高める方法です。
 つねに心にゆとりをもって、せかせかせずに行動することが、自分を怒りから遠ざける秘訣ですね。

気持ちを静める「色」と「香り」とは?


 視覚や嗅覚、つまり「色」や「香り」にも、自律神経に影響を与える効果があります。

 色は、自律神経に影響を与えるひとつの要素です。
 イライラしたときに、窓の外の緑を眺めるだけで落ち着くことがあるでしょう。それは緑には副交感神経に作用し、心を落ち着かせる色だからです。
 屋外に緑がないときは、室内の観葉植物でもいいでしょう。仕事中によくイライラする人は、机の上に小さな観葉植物などを置いておくと効果的です。
 一般に、青や緑などは気持ちを落ち着かせ、赤やピンクは気持ちを高揚させると言われていますが、あまり気にしないで、自分が好きかどうか、心地よいと感じるかどうかを基準に選んでください。
(中略)
 もし特別な理由もなくイライラや鬱々(うつうつ)とした気分が続いているようなら、自分がよく使うグッズやファッションの色を見直してみてはいかがでしょうか。
 また、季節にあった色を身の回りに置くのもおすすめです。夏は青、緑などの寒色を増やすと体感温度が下がります。冬はカーテンやクッションなどの色やオレンジといった暖色に変えると自律神経のバランスがよくなります。

 アロマテラピーに代表されるように、香りにも自律神経を整える効果があります。
 好きな香りを嗅(か)ぐと副交感神経の働きがアップします。
 一般に、ラベンダー、カモミール、サンダルウッド、ネロリなどの香りには鎮静(ちんせい)効果があり、心を落ち着かせたり、安眠効果があると言われていますが、色と同様に、自分が「好きだ」「心地よい」と感じる香りを選ぶことが大切です。
 アロマオイルを使って本格的なアロマテラピーを受けられれば理想的ですが、好みの香水をつけるだけでも副交感神経の働きがよくなります。お風呂に好きな香りの入浴剤を入れると、自律神経のバランスも整い、リラックスできるでしょう。

 『「怒らない体」のつくり方』 第5章 より 小林弘幸:著 祥伝社:刊

 プライベートな時間、とくに、寝る前の時間は、翌日の自律神経の働きに大きな影響を与えます。
 睡眠不足は自律神経を大きく乱すからです。

 寝室の壁の色、室内灯の色を刺激の少ないものに変える。
 ラベンダーの香りのするお茶を飲んだり、リラックス効果の香りのする入浴剤を入れる。

 自律神経の働きを高めて「怒り」を抑える方法は、工夫次第でいくらでもありそうですね。

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☆    ★    ☆    ★    ☆    ★    ☆

 自分の身の回りで起こることは、すべて単なる出来事に過ぎません。
 その出来事に意味付けするのは、私たち自身です。
 同じ体験をしても、考え方や心構え、意識の違いでまったく違った感情を抱くのは、そのためです。

「怒り」の感情も例外ではありません。
自分の受け取り方次第で、怒りを爆発させないように感情を制御することは可能だということです。

 怒っていいことは何ひとつありません。
 対人関係を損なう恐れもありますし、何より、自分の体や心への悪影響が大きいです。

 小林先生は、怒りのコントロールさえできれば、ほかの健康法は必要ないとおっしゃっています。
 自律神経を整え、感情を整え、「怒らない体」をつくり、穏やかで健康な生活を送れるよう心がけたいものです。


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