【書評】『フリーで働く! と決めたら読む本』(中山マコト)
お薦めの本の紹介です。
中山マコトさんの『フリーで働く! と決めたら読む本』です。
中山マコト(なかやま・まこと)さん(@Makotonakayama)は、日本で唯一の「キキダス・マーケティング」実践者として有名な方です。
フリーランスとして、独自の「コピーライティング手法」を用い、様々な業種・業態のマーケティングを数多く手がけるなど、多方面でご活躍中です。
不自由な「フリーランス」にならないために・・・
中山さんは、フリーランスには、2つの種類がある
と考えています。
1つは、人生の選択権を、自らが握っているフリーランス。
もう1つは、選択権を他者に握られているフリーランスです。
中山さんは、前者を「プロフェッショナルフリーランス」、後者を「なんちゃってフリーランス」と呼んでいます。
両者を分かつのは、独立するまでの準備や独立してからのフリーランスとしての心がまえがしっかりできているかどうかです。
中山さんは、あなたも、ちょっとしたスイッチの入れ替えと、発想の転換さえできれば、プロフェッショナルフリーランスになれる
と強調しています。
本書は、フリーランスとして働き、本当の自由を手に入れる方法を解説した一冊です。
本書に書かれている内容は、すべて中山さん自らが実践して成果を確認したことばかりです。
その中からいくつかピックアップしてご紹介します。
[ad#kiji-naka-1]
フリーランスの成否は、サラリーマン時代の生き方で決まる
フリーランスで働きたいからといって、サラリーマンを辞めてから、「何をしようか?」と考えても遅すぎます。
中山さんは、プロフェッショナルフリーランスでやっていくためには、「サラリーマン在職中の武器づくり」が必要だと強調します。
さて、ここで言う武器というのは、“フリーランスとしての売り物”のことです。
プロフェッショナルフリーランスとは、この“売り物をしっかり確立している人!”という言い方もできます。
あなたに成り代わって、お金、仕事、会いたい人を連れてくる能力。それが売り物です。加えて言えば、売り物とは、「売りたいものではなく、買ってもらえるもの」の意味です。
そもそも、買ってもらえるものがなくてはビジネスは成立しません。あなたがいくら売りたくても、買ってくれる人がいなければ、それは売り物にはなりません。
仮に仕事(のようなもの)を依頼されたとしても、単なる“下請け” “便利屋”のような扱いを受けるだけで、未来への継続も、明日への展望も、そこにはありません。
それでは単なる“切り売り”です。切って売るということは、いずれ在庫切れに陥ります。タコが自分の足を食べるようなものです。いずれ、売るものがなくなり、その時点でジ・エンドです。
その結果、待っているのは、前職以上に過酷で、厳しい日々です。
その過酷で厳しい日々から、あなたが軽やかに脱するために不可欠なものが、まさに武器であり、誰かがお金を支払って手に入れたいあなたの売り物です。
売り物の弱いビジネスは、結局のところ、価格競争に陥るしかありません。そうなれば必要な利益率も確保できす、資金繰りに苦しむ日々が待っているだけです。
それはあなたが、会社を辞めてまで手に入れたかったものとは違うはずです。
さて、あなたにはそんな武器はありますか?『フリーで働く! と決めたら読む本』 Chapter 1 より 中山マコト:著 日本経済新聞出版社:刊
中山さんは、フリーランスで生き抜きたいのなら、「名物サラリーマンと呼ばれるほどの専門性を身につけること」
だと述べています。
フリーランスで働くということは、商品は「自分自身」ということ。
お客様に「お金を払いたい」と思わせるだけの知識なり、技能なりを身につけることが不可欠です。
「何をしたいか」ではなく、「どう見られたいか」を考える
中山さんは、サラリーマンを辞めて、フリーランスで生きようと決めたときに犯しがちな大きな間違いは、「やりたいこと」ばかりを考えてしまうことだと指摘しています。
プロフェッショナルフリーランスになるにはイメージング能力がとても重要です。ここで言うイメージング能力とは、未来を見るチカラです。未来を見るというのは、そこにあるべき“自分の姿”です。
たとえば、あなたが、フリーのイラストレーターを目指すとしたら、あなたの仕事は、イラストを描くことですね。これは、実は、あなたが「やりたいこと」「できること」でしかありません。イラストを描いて生きていくこと。確かに間違いではないですが、でもこれは、未来の自分の姿として自分の姿としてワクワクしますか? 当たり前すぎて、刺激にもなりませんよね。
でもそこで、
「商業イラストの世界では右に出る者がいないと言われる存在で、大手の商業施設やディベロッパー、あるいはメーカーから、毎日何件ものイラスト依頼が来るカリスマ的存在」
というイメージができれば、具体的にやるべきことが見えてきます。加えて、ワクワクしませんか?
これがイメージング能力です。
「何をしたいか」ではなく、「どうなっていたいか」を明確にイメージすることによって、そこに至るまでに必要な要素、例えば右の例ですと、「商業イラストの専門家」ですが、これがキチンと見えることで、「商業イラストを徹底的に研究する!」とか、「時代ごとのテイストや特徴をリサーチする」とか、努力目標やライバルにあたる人がハッキリしてきます。ここが重要なのです。
この「イメージング能力=将来どうなっていたいか」を明確にするチカラが、プロフェッショナルフリーランスを目指すには、絶対に必要です。『フリーで働く! と決めたら読む本』 Chapter 3 より 中山マコト:著 日本経済新聞出版社:刊
ただ自分がやりたいことをやって、それを商品にしても、その商品を買ってくれるお客様がいなければ無駄な努力ですね。
フリーになって「何をしたいか」ではなく「どうなっていたいか」。
それを明確にイメージすること。
自分のモチベーションを上げるためにも、必要なことですね。
差別化をするな! 先鋭化せよ!
ライバルとの違いを出そうと頑張ること。
つまり、「差別化を図る」ことは危険な発想です。
差別化というのは、相対的な違いを出そうとあがく行為
であり、お客様の取り合いだからです。
中山さんは、フリーランスで生きていくためには、「先鋭化」がもっとも重要だと述べています。
「独自性=先鋭化」となります。
先鋭化については、中山さんが開発したチャート(下図を参照)でチェックすることができます。

図.先鋭化を表すチャート (『フリーで働く! と決めたら読む本』 P109 より抜粋)
この数字でいうところの第一象限。つまり右上のゾーンにあなたが位置しているかどうかがとっても大事なのです。
しかし、左下の第三象限は論外として、右下の第四象限とか、左上の第二象限に位置しているにもかかわらず、まったく気づいていない人が実に多いのです。
それでは戦えません。
第四象限・・・・このゾーンは、ライバルとの違いは大きいが、選ばれる理由が小さい。
たとえば、「独自の能力はもっているけれど、価格が高い」などがこれに当たります。
この場合、何とか工夫して、価格を下げられれば、一気に第一象限に位置づけることができます。
第二象限・・・・これは、ライバルとの違いは小さいが、選ばれる理由はもっている。
たとえば、「ありきたりなノウハウしかないけれども、圧倒的に安い」などがこれに当たります。この場合は、そのノウハウにちょっとしたオリジナリティーが加われば一気に第一象限に突入しますので、その工夫が重要になるのです。
そしてこのチャートの優れたところは、常に相対的なチェックができるという点です。
ライバルがいつのまにか工夫をして、価格を下げてきたとします。そこで通常だと、自らも価格を下げるほうに動きがちです。
しかし、それをやったのでは価格合戦に迷い込んでしまうだけです。この場合は、価格を下げずに、ライバルとの違いをさらに強化するという方向で取り組めば、価格競争に陥らずにすみます。
自らのポジションをいつも第一象限に維持することで、ライバルとの違いを明らかに使用というスタンスがハッキリします。これがとても大事なのです。『フリーで働く! と決めたら読む本』 Chapter 4 より 中山マコト:著 日本経済新聞出版社:刊
頑張って仕事をすれば、給料がもらえたサラリーマンと違って、いくら頑張っても収入が保証されないのがフリーランスです。
やみくもな努力ではなく、しっかりとした戦略でのマーケティングがより求められますね。
自分を安売りしないこと!
フリーランスになった直後は、なかなか将来への金銭的不安が払拭(ふっしょく)できません。
無理してでも、仕事をつくり出そうとしがちです。
間違いではありませんが、問題にしたいのは、その“仕事の引き受け方”について
です。
多くの方は、フリーランスになった直後は、仕事をくれる可能性のある人にたくさん会おうとします。ちょっとした可能性にも懸けてみたくなるからです。
しかし、ここで下手に出たり、「何でもやらせてください!」と言った瞬間、あなたは奴隷、相手は神様という関係が生まれてしまいます。
結局、値引きを要求され、手元には何も残らないということになりかねません。
「フリーランスは自らを売ってナンボ」「体が一つしかない分、いかに時間単価を上げるかが重要」という話もしました。
要は、世界中の人をお客様にはできない。言い換えれば、本当にあなたを信じ、あなたが信じる、そんな相手とだけ付き合っていけば、それでよいのです。
下手に出て付き合ってしまった相手は、いつまでもそのスタンスを崩そうとしません。
ですから、依頼を受ける際に、必ず「予算はいくらですか?」と聞くクセをつけましょう。
あるいは少しでも怪しいなと感じたら、「見積を出させていただきます」と言いましょう。
そこで、「えっ? 金とるの?」みたいな態度を見せられたらそこで断るべきです。
私たちは自分の時間、知恵、ノウハウ、すべてが商品です。言い換えれば、それ以外に売るものはないのです。
その唯一の商品を、無料で使ってはいけません。その能力を大事にすることが、何よりも重要です。
「お金がかかるのなら頼まない」と言われたらそれでOK。その相手とは付き合わないことです。結構勇気のいることかもしれませんが、あなたの能力は、必ずお金と引き換えに使ってください。『フリーで働く! と決めたら読む本』 Chapter 7 より 中山マコト:著 日本経済新聞出版社:刊
会社は、ひとつの部門が大きな赤字を出しても、他の部門で補えばなんとかなります。
しかし、フリーランスの場合は、そういうわけにはいきませんね。
自分で契約して、稼いだお金がそのまま売上や利益につながります。
安易な妥協は、命取りになります。
フリーランスは、自分の時間、知恵、ノウハウ、すべてが商品。
契約やお金に関しては、妥協を許さない態度で臨む必要があるということですね。
[ad#kiji-shita-1]
☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆
独立してフリーランスとして働くことを、サラリーマンの働き方との延長線上に考えていては、まったく通用しないことが、本書を読むとよく分かります。
サラリーマンは雇われる立場であり、上から降りてくる業務をこなす立場。
フリーランスは経営者の立場であり、仕事を自らつくり出し、売り込む立場。
その意識の切替ができないと、「プロフェッショナルフリーランス」にはなれません。
サラリーマンが「正規の軍人」であるのに対して、フリーランスは「傭兵」に例えられます。
体ひとつで、自分のスキルや能力を買ってくれる雇い主に助っ人として世界中の戦場を飛び回る。
彼らは、まさに「プロフェッショナルフリーランス」といえますね。
世の中が流動的になり不安定感が増している時代です。
これからは傭兵のような働き方がますます求められてきます。
「もしこのまま独立したとき、自分にはフリーランスとして生活していける実力があるのか」
つねに自問自答することを忘れないようにしたいですね。
【書評】『いつもうまくいく人の感情の整理術』(里岡美津奈) 【書評】『「怒らない体」のつくり方』(小林弘幸)