本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ

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【書評】『エースと呼ばれる人は何をしているのか』(夏まゆみ)

 お薦めの本の紹介です。
 夏まゆみ先生の『エースと呼ばれる人は何をしているのか』です。

 夏まゆみ(なつ・まゆみ)先生は、ダンスプロデューサー・指導者です。
 長野オリンピックの閉会式や紅白歌合戦の振り付けを指揮され、モーニング娘。やAKB48など数々のアーティストの振り付けを手がけられている、日本を代表する振付師です。

誰でも「エース」になれる!

 夏先生は、一般人からアイドル・芸能人にいたるまで、数多くの人にダンスを指導してきた経験から、「エースと呼ばれる人」は例外なく、成長するために必要な正しい考え方・習慣を持っていることに気づきました。

 頑張っても成果が出ない人は、本人に実力や能力がないわけではなく、成長するための正しい方法を知らなかったために実力や能力をうまく発揮できなかっただけ
 つまり、考え方・習慣を身につけることさえできれば、誰でもエースになれるということです。

 夏先生が考える「エースと呼ばれる人が持つ考え方・習慣」=「エースの資格」は大きく分けると以下の3つです。

  1. 自己を確立し
  2. 自信を持ち
  3. 前に向かって進む

 本書は、「エースと呼ばれる人」が持っている考え方・習慣を身につける方法をまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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「センター」と「エース」はまったく別の存在

 世の中は、“上”に行けるのは、「エース」と呼ばれる一握りの人材だけの競争社会に突入しています。

 ただ、周囲からはエースたることを求められても、エース争いに興味がない人や、エースだけがほめそやされる風潮に疑問を感じている人も少なからずいるでしょう。
 そのような中では、なかなかモチベーションを上げることはできませんね。

 夏先生は、これは「エース」という言葉が、アイドルでいう「センター」という意味で使われているために生じている問題だと述べています。

「センター」とは、冒頭で述べたように、チーム全体の中心のポジションに立ち、「チームの顔」として振るまう人のことをいいます。そのため、人によって向き不向きがあり、センターとしての特性を備えていなければなりません。AKB48でいえば前田敦子のような存在であり、曲によって違いはあるものの、基本的には一つのチームで一人が背負う存在です。
 一方、「エース」とは自分自身の実力や魅力を、発揮するべき場所で十分に発揮し、輝いている人のことをいいます。私はこれまでアイドル、芸人、紅白歌合戦や1998年冬季長野オリンピックなどを通して、芸能人から一般の方々まで、のべ210万人以上の人にダンスを指導し、それ以上に多くの人に出会ってきましたが、そこで感じたことは、人には必ず自分が輝ける場所があるということです。
 つまり、誰でも「エース」になれるということ。
 その点で「エース」と「センター」はまったく異なる存在なのです。

「エース」という名の「センター」をめざす風潮が強いなかで、なかなかうまく期待に応えられなかったり、興味が持てなかったりするのは当たり前のことです。
 これは自分に責任があるわけでは決してありません。「センター」や「エース」という言葉がさかんに飛び交うようになったいまの時代が混乱を引き寄せているだけであり、そこに原因があるのです。
 だからこそいま、その違いを理解し、「センター」をめざしたい人はセンターをめざし、一方で自分なりのやり方で輝きを放って成功したいと思う人は「エース」をめざして努力することが重要なのです。

 『エースと呼ばれる人は何をしているのか』 第1章 より 夏まゆみ:著 サンマーク出版:刊

「エース」とは、自分の居場所を見つけ、自分なりのやり方で輝いている人です。
 必ずしも、グループ全体の中心であったり、トップの成績である必要はありません。

「この分野では負けない」という、自分だけのポジションを確立すること。
 それが「エース」であるための条件ということですね。

「群れない時間」をつくりなさい

「エース」になるには、具体的にどうすればいいのでしょうか。

 夏先生は、「ずっと群れている人」と「群れない人」ではその後の成長・成功に明らかな差が生まれると指摘します。

 周囲の目ばかり気にしたり、仲間同士で群れたがるのは、自分というものがない証といえます。そんなつもりがなくても、いつも集団にいると、グループのやり方、グループの総意、グループの行動に少しずつ影響されていきます。
 しかし、エースの第1条件である「自己確立」ができている人はまず群れません。仲間と必要以上になれ合うことなく、つねに自分として行動するのはエースに共通する特長です。少なくとも必ず「ひとり時間」を知らず知らず設けているのです。
 この「ひとり時間」というのが、自己を確立していくうえで非常に重要な「時間の使い方」なのです。

 AKB48時代の前田敦子がまさにそうでした。
 レッスンの合間にある休憩時間の多くを、前田は一人で過ごしました。ほかのメンバーが数人のグループになってワイワイおしゃべりをしているなか、ステージの端で座り込む姿をしばしば見かけました。
 私は、この時間が「絶対エース」前田敦子をつくったと思っています。
 本人にたしかめたことはありませんが、自分自身のこと、仲間のこと、それぞれの立ち位置や目標など、いろんなことを頭のなかで確認していたのだと思います。
 レッスンがはじまってしまえば、いかに前田といえども、私に言われるままがむしゃらに動くしかありません。だからこそ彼女はわずかな休憩時間を群れずに過ごし、自分自身を取り戻す時間にあてた。そして自分の伸ばすべきところ、直すべきところ、さらには自分の立ち位置や役割までも確認して微修正を加えていった。その積み重ねにより、前田はゆるぎない自己を確立していきました。不必要に群れずに「ひとり時間」を積み重ねることが、エースの資格〈その1〉である自己確立を自分にもたらすのです。

 『エースと呼ばれる人は何をしているのか』 第2章 より 夏まゆみ:著 サンマーク出版:刊

 AKB48のようなアイドル集団に限らず、一般の会社員も会社という組織の一員ですから、ある程度の協調性や規律が求められます。
 だからといって、いつも仲間同士で群れているというのは問題ですね。

 組織の一員でいながら自分を見失わず、自分の長所を探し出して伸ばしていく。
 そのためには、一人でいる時間が絶対に必要だということです。

 勇気を出して、群れから離れてみる。
 それが「エース」になるための第一歩ですね。

一流の人ほど休憩時間の使い方が一級品

 近年、日本においても、残業の削減に取り組む企業が増えています。
 時間外まで働くのはよろしくないという考え方が主流になってきましたね。

 そのおかげもあり、「与えられた時間内だけ頑張ればそれでいい」と割り切った考えで仕事をする人も増えてきました。
 しかし、夏先生はそのような考えには、違和感を感じるといいます。

 時間外だから働かないという発想は、少なくとも芸能界でエースと呼ばれる人にはまったくありません。たとえその日のレッスンが終わったとしても、足りないと思えば自主的に練習するのが当たり前です。そうしなければ追いつけない、生き残れない世界だからです。
 自己研鑚(けんさん)に余念がないのは、成長途上の若手だけではありません。たとえば郷ひろみさんは私が知る芸能人のなかでもトップクラスの努力家で、つねに自分磨きにいそしんでいます。14年ほど前になりますが、彼の振り付けをしたときも、郷さんにとってはそれほど難しくない曲だったにもかかわらず、非常に熱心に練習していました。
 驚いたのは、レッスンがひと段落して休憩に入りましょうということになっても、郷さんは少しも休もうとせずに黙々とエクササイズをはじめたことです。年齢を感じさせないあの美しいボディラインは、少しの時間も無駄にしない努力によって保たれているのだなあと、あたしはとても感心させられました。
 もちろん休憩時間をすべて犠牲にせよと言いたいわけではありませんし、休憩時間を削って研鑽するのがいいかというと、それも違います。そのようなことをしていたら身体をこわすのは目に見えているし、集中力だって続くわけがありません。
 そうではなく、十分な休憩をとった後の時間の使い方や行動が違うのです。つまり「惰性の休憩時間」は決して過ごさないということ。人はえてしてダラダラと楽をして過ごしてしまうものです。しかし、それは休憩の時間であっても「本来の休息」ではありません。むしろ夢や目標のある人であればその時間を「前進する時間」に使ったほうが、気持ちは新たにリフレッシュし、活力も生まれます。
 大事なのは、与えられた時間をただ過ごすのではなく、与えられた時間の枠を意識し、コントロールする習慣を身につけることです。
 1時間の休息が与えられたとして、何も考えずに1時間まるまるやすんでしまうのではなく、自分は本当に1時間も休憩する時間が必要なのか考えてみる。そんなに休まなくても大丈夫とか、1時間も休んだらかえってペースが乱れてしまうと思ったなら、必要な時間だけを休憩にあて、あとは自主的に練習や勉強をする。エースたちはほぼ例外なく、そうやって限りある時間を上手に使っています。

 『エースと呼ばれる人は何をしているのか』 第4章 より 夏まゆみ:著 サンマーク出版:刊

 スポーツの世界でも、一流といわれる選手ほど、他の選手とのトレーニングが終わった後に、一人残って自主練習をして、自分自身の課題に取り組む人が多いです。

 自分自身を客観的に把握し、長所をさらに伸ばすことに全精力を注ぎ込む。
「エース」と呼ばれる人たちは、そのための努力に時間を惜しまないということです。

「地道で正直」はかけがえのない強み

 夏先生は、「エースになるということと、成功するということはイコールではない」と指摘します。
たとえエリート街道を突き進んでいる人でも「自己を確立し、自信を持ち、前に向かって進む」ことができていなければエースといえないからです。

 エースの条件を満たしていないのに成功しているのはうそやハッタリが上手な人である場合が少なくない。たしかな自己や自信、前向きさなどを備えているのに世間的な評価が低い人はほとんどが正直者です。前者は要領よく出世していくのに対し、うそをつけないタイプの人が出世コースに乗り遅れてしまうというのは、たしかに世間ではよくある構図です。
 けれども世の中は、ハッタリだけで乗り切れるほど甘くもありません。要領がいいだけの人は、いつかきっとごまかしようのない事態に陥って、そのときになってようやく自分が地道な努力を怠ってきたことを悔やむことになるでしょう。
 一方、地道で正直な人は、「地道で正直」というかけがえのない強みを持っています。たとえ何年か出遅れたとしても、どん底まで落ちてしまうことはないし、そのうちに地道さ、正直さという強みを発揮できるチャンスにめぐりあい、より大きなゴールを達成するときがやってきます。
 長い目で見れば、正直者のほうが絶対にエースに近いのです。私が大勢のなかからエース候補を選ぶときも“正直さ”は大きなプラスの査定要素となります。
 誤解しないでほしいのは、私はエリートをめざすこと自体を否定しているわけではありません。
 雇用条件や就業環境が決してよくないなかで、きちんと会社に就職して仕事をするということは、それだけである種の社会貢献だと私は思っています。しかもエリート志向の人はただ働くだけではなく、貪欲に上を目指そうというのだから、そのポジティブな姿勢は本当にすばらしいことだと思います。
 大切なのは、それがすべてだと思わないことです。一番になるのはすごいことだけれど、下位にいる人のほうが成長することもあるし、出世コースから脱落したからこそプライベートな世界でエースになれる人もいるのです。

 『エースと呼ばれる人は何をしているのか』 第5章 より 夏まゆみ:著 サンマーク出版:刊

 他人をおとしめるような汚い手を使って地位を得た人は、いずれ同じような手口で他の人に追い落とされます。

 一歩一歩、地道に。
 自分にも他人にも、正直に。
 他人の足を引っ張るのではなく、自分自身を高めて目の前の壁を乗り越える。

 それが、真の「エース」が持つべき心構えであり、プライドですね。

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 どのような分野でも、「エース」と呼ばれる人。
 彼ら/彼女らは、人並み以上の努力を積み重ねています。
 ただ、そのような努力を見せずに、淡々と自分のやるべきことをこなすタイプの人が多いです。

 不言実行。
 自分の長所・短所を知ること。
 自らが輝ける場所で、自分を磨き続けること。
 
 私たちも、そんな「エース」と呼ばれる存在を目指したいですね。

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