本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ

本を読むことは、心と体に栄養を与えること。読むと元気が出る、そして役に立つ、ビタミンたっぷりの“おいしい”本をご紹介していきます。

【書評】『「しぶとい人」の行動法則』(上野光夫)

 お薦めの本の紹介です。
 上野光夫さんの『3万人の社長に学んだ「しぶとい人」の行動法則』です。

 上野光夫(うえの・みつお)さんは、資金調達コンサルタントです。
 日本政策金融公庫(旧国民生活金融公庫)に26年間勤務された経験をお持ちです。

「しぶとい人」には理由がある!

 どんな困難にも負けず、何度つまずいてもすぐに起き上がって前に進める人。
 ピンチの連続で絶体絶命の状況になっても、最後には目標を達成してしまう人。

「しぶとい人」というと、一流のスポーツ選手や一部の成功者などの特別な人を想像しますね。
 しかし、実際の「しぶとい人」はこうしたイメージとはまったく違うのだそうです。

 上野さんのいう「しぶとい人」とは、ごく普通の人で、見かけはむしろ弱々しかったり頼りなかったりするけれど、実はどんな不測の事態にも心が折れず、しぶとく生きる方法を知っている人です。

 長年にわたって金融機関で中小企業の融資担当者を勤めた上野さん。
 3万人を超える社長と会って話を聞くうちに、苦境を乗り越えてきた心の強い社長には、一定の共通する習慣があることに気づきました。
 それらは、どれも私たちがすぐにでも実践できる、ちょっとした習慣です。

 本書は、「しぶとい社長」の考え方、気持ちの切り換え方を実例を交えながらまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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「運がいい人」になるには?

 儲かっている企業の経営者も、順風満帆(じゅんぷうまんぱん)だったわけではありません。
 運気が低迷する時期を何度も経験し、それを乗り越えることで自ら進む道を切り拓いています。

 上野さんは、儲かっている人、しぶとい人に共通しているのは、運気の波を感じ取る能力に優れていることだと述べています。

 彼らの運気に関する考え方はこうです。

「運はいいときがあれば悪いときもあるので、ジタバタせずに受け入れることが大切。運気が好調のときは、思い上がることなく平常心でいることが肝心。逆に、運気が低迷しているときは、何をやってもうまくいかず、連戦連敗が続くものである。それを脱するためには、運気が低迷していることを早く意識して、対策を打つことが大切である」

 そして、ここで言う「対策」とは、なんと「ゲンをかつぐ」です。
 非論理的な話のようですが、実際にこれを実践して儲かり続けている経営者は数多くいます。

 たとえば、香川県でリフォーム工事業を営んでいたA社長は、一日のうちお客様からのクレームや従業員のミスなど、困ったできごとが三回あれば、「運気が悪い日」と判断して事務所に花を飾っていました。
 以前から、事務所に花を飾ると、悪いことが収まって仕事がうまくいくことがあったからです。
 まさしくゲンをかついでいるわけですが、気を取り直す効果と従業員にも注意を促す効果がありました。このように、儲かっている経営者ほどゲンかつぎをするものなのです。
 そのやり方は、事務所の入り口に盛り塩を置く、机の中の整理をする、靴を履きかえるなど、みなさん実に些細(ささい)なものですが、何か行動するということに意味があります。
 ゲンかつぎの本当の効果は、運気をよくするというよりも、不運だと思って落ち込んで消極的になる気持ちをリセットすることにあります。
 儲かっている人は、失敗や挫折の記憶を引きずることなく、「自分は運がいい」と自らに言い聞かせて次の行動に移ります。
 また、ゲンかつぎの方法は、神頼みや霊能力者に頼むなどといった他力本願的なものではなく、自分が行動する内容であることがポイントです。

 『「しぶとい人」の行動法則』 第1章 より 上野光夫:著 日本実業出版社:刊

 人は、うまくいっているときには、積極的になり過ぎて、リスクを大きくとってしまいがちです。
 逆に、うまくいっていないときには、消極的になり過ぎて、これまでやってきたことをやるだけという守りの姿勢になってしまいがちです。

「しぶとい人」とは、この逆の考え方ができる人のことです。
 うまくいっているときには気持ちを引き締め、うまくいかないときには気持ちを素早く切り替える。
 これが運気の波にうまく乗って、成功するための秘訣ということですね。

相手の本音を引き出す方法

「しぶとい人」は、人の本音を引き出すこともうまいとのこと。
 上野さんは、実際に効果のあった「本音を引き出す方法」として、「会話の中に、意図的に沈黙をつくる」という方法を紹介しています。

 普通に会話していて、会話が弾んできた頃に、最も重要な質問をします。その質問は、相手が考え込んでしまうような内容です。たとえば、「あなたはこの会社に何か不満はありますか?」といった質問です。
 一時的に会話が止まります。そこで、助け舟を出したりせず、相手が答えるまでじっと沈黙するのです。
 時間は30秒から1分間、状況によってはもっと長くです。
 会話が途切れた1分は、かなり長く感じて、お互いにいたたまれない感覚になります。
 ほとんどの人は会話の中での沈黙が怖く、ついに我慢できなくなり何か言おうとします。すると、思わず「社長と専務の仲が悪くて困る」といった本音が出ることが多いのです。
 この方法は、お互いを知り尽くしたような親密な関係の人に使うのは避けたほうがいいですが、まだそれほど親しくない間柄の人に対してはとても有効です。私は、この方法を学んでから、金融機関での審査の面談の場でよく使いました。

 『「しぶとい人」の行動法則』 第3章 より 上野光夫:著 日本実業出版社:刊

 多くの人は、会話の中での長い沈黙に慣れてはいません。
 あまり親しい人でなければ余計に、です。
「何か答えなければいけない」というプレッシャーに押され、つい本音が出てしまいます。
 ビジネスの場だけではなく、いろいろな場面で応用できそうな方法ですね。

「トラブルを解決した経験」を積むことも必要

 成功している経営者は、例外なく大きなトラブルを幾度となく経験しています。
 会社では、「トラブルはすぐに上司に報告すること」と指導されます。
 とはいえ、細かいものまですべて上司に報告していたら、問題解決できない人になります。

 上野さんは、トラブル対応能力を鍛えるためには、あえて自分で解決した経験を積むことも必要だと指摘しています。

 自分のミスで問題を起こすと、精神的にとてもつらいものです。
「商談に遅刻して大切な取引先を怒らせてしまった」、「重要書類をなくした」、「作成した書類に間違いがあった」など、想像するだけでゾッとします。そういうときこそ、自分のミスを認め、早い事態の収拾に努力します。
 ミスをしても、自分の非を認めようとしなかったり、言い訳をしたりする人がいますが、それはカッコ悪いし問題の解決にはなりません。
 大手企業が不祥事を起こして、テレビでトップが会見する場面が映し出されたときに、言い訳ばかりしていると叩かれてしまいますよね。まずは堂々とミスを認めて、腹をくくる覚悟を決めます。
 そして、迷惑をかけた相手に誠心誠意お詫びして、解決の道を探らなくてはなりません。
 また、そんなトラブルの渦中にいるときこそ、周囲の人の本性を見ることができます。
 それまで親しかったのに、ミスをしたあなたを避けようとする人が出てきます。逆に、そんなときでも、「なんとかなるよ。頑張れ」などと、親身になって声をかけてきて力を貸してくれる人もいて、そういう人こそ真に信頼できる人物だということがわかります。

 『「しぶとい人」の行動法則』 第5章 より 上野光夫:著 日本実業出版社:刊

 ミスをしたときは、言い訳をせず、自分の非を認め、一刻も早く事態を収拾する方法を探ること。
 当たり前のことに思いますが、実際にできる人はなかなかいません。

 トラブルに巻き込まれたときは、周囲の人の本音が見え隠れするものです。
 そのようなときに力を貸してくれる人、親身になってくれる人は、大事にしたいものです。

チャンスをつかむ行動法則とは?

 ここぞという場面でしっかり結果を残すことができる人が「しぶとい人」です。

 上野さんは、勝利すれば大きなチャンスを引き寄せられる「人生の大切な勝負」は、日常のいたるところにあると指摘します。

 儲かっている経営者は、毎日の生活や仕事の中で、見るもの聞くもの、あるいは会う人すべてに対して「何か得るものがないか」という気持ちで接しています。
 相手の一言一句や表情の変化について、五感を総動員して感じ取ろうとする姿勢をもっているのです。
 あるハイテクを駆使した製品をつくっている企業の経営者は、「人に会ったら必ず何かつかむのだ」と言って、人に会うたびに有効な情報を得て、業績を飛躍的に伸ばしています。
 ビジネスパーソンであれば、たとえば、上司から「こんな仕事があるけどやってみないか」と言われたときに、「ちょっと今は手が一杯ですから」と断ってしまう人がいます。
 そんな人は、目前に訪れたチャンスを逃している可能性があります。「人生の大切な勝負」で棄権しているようなものです。
 上司が何のために新しい仕事を打診してきたのかを考えれば、それを引き受けるほうが飛躍のチャンスであることがわかるはずです。もし、その仕事を引き受けて首尾よくやり遂げることができたら、社内で高く評価されて望むポジションにつくことができたかもしれません。
 このように、日常の仕事や生活の中に、人生を劇的に変えるかもしれないチャンスがしばしば訪れており、その何気ない場面すべてが「人生で大切な勝負」と言えるのです。
「毎日同じことの繰り返し」と思って過ごすのではなく、「今日も何かチャンスをつかもう」とアンテナを高くしてアクティブに行動することが、「人生の大切な勝負」に勝てることにつながります。

 『「しぶとい人」の行動法則』 第6章 より 上野光夫:著 日本実業出版社:刊

 人生を変えるようなチャンスは、ただ待っているだけでやってくるわけではありません。
 絶好のシュートチャンスは、「ボールはかならず来る」と信じて動き続ける人だけに訪れます。

「今日も何かチャンスをつかもう」と、アンテナを高くして行動すること。
 しぶとく人生を勝ち抜くために、普段から心掛けたいですね。

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 変化が激しく先の見えない世の中。
 誰もが視界の悪さに不安を覚えて、失敗を恐れて足が止まってしまう。

 そんな時代だからこそ、自らの力を頼りに、一歩一歩着実に前に進み続ける力が必要とされます。
 失敗しないことよりも、失敗してもそこから何度でも立ち上がれる「しぶとさ」が求められる時代だといえますね。

 失敗も成功も、過ぎてしまえば同じ経験。
 むしろ、失敗した経験の方が後の人生の糧になることが多いです。
 結果にこだわらず、チャレンジし続けること。
 私たちも、負け続けても最後に笑える「しぶとい人」を目指したいですね。

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