本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ

本を読むことは、心と体に栄養を与えること。読むと元気が出る、そして役に立つ、ビタミンたっぷりの“おいしい”本をご紹介していきます。

【書評】『感情をコントロールする技術』(岩隈久志)

 お薦めの本の紹介です。
 岩隈久志さんの『感情をコントロールする技術』です。

 岩隈久志(いわくま・ひさし)さんは、プロ野球の選手です。
 東北楽天ゴールデンイーグルスなどでエースとして君臨し、数々のタイトルを獲得されています。
 2013年4月現在、米大リーグのシアトル・マリナーズに所属されています。

感情に左右されない自分をつくる

 どんな世界でも、いい結果を残すためには、メンタルの浮き沈みや感情の起伏をできるだけ抑えることが重要です。

 岩隈さんは、勝っても負けても、成功しても失敗しても、そこで必要以上に一喜一憂することなく、目の前で起こったことから、自分の成長につながる何かを学んでいく姿勢が何より大切だと強調します。 

 本書は、米国のメジャー・リーグという未知の世界を経験して得た気づきをもとに、どんな状況にも適応できる「メンタル・コントロール術」についてまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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「自分ではコントロールできないこと」を考えない

 プロ野球の選手のなかには、マスコミの流す情報に振りまわされてしまう人もいますが、岩隈さんはまったく気にしない質(たち)とのこと。

 鈍感といえば鈍感なのかもしれませんが、僕がマスコミの誤報に左右されないのは、それが「自分の制御できないこと」だと割り切っているからです。
 人生にはさまざまな障害や壁といったものがあらわれますが、その障害や壁は「自分でコントロールできること」と「自分ではコントロールできないこと」のふたつにわけられると思います。
「自分ではコントロールできないこと」は、自分がいくら頑張ったり、努力したりしてもどうにかできる問題ではありません。
(中略)
 他人の言うこと、評判などを、いちいち気にする人は僕のまわりにもいますが、僕はそんな人たちに対して「言いたい人には、言わせておけばいいんだよ」と言葉をかけてあげたいです。
 誰かの流した間違った情報を鵜呑(うの)みにし、自分のことを誤解している人がいたとしても、それは「自分ではコントロールできないこと」です。
 だったらそんな誤報に右往左往することなく、自分という“芯”をしっかり持って生きていけばいいのです。
 自分さえしっかりしていれば、誤報によって生じた誤解もいつか必ず解けます。
 もし、いつまでもその誤報を信じているような人がいたとしたら、それこそ、「そんな人間はこちらから見限ってやる」ぐらいの気持ちでいればいいのだと思います。

 『感情をコントロールする技術』 第1章 より 岩隈久志:著 ワニブックス:刊

 人のうわさ話や評判は、自分ではどうしようもない部分も多いです。
 それでも、根拠のないものはいずれ消えてなくなります。

 そういったものに振り回されず、「自分のコントロールできること」のみに意識を向ける。
 やるべきことに集中したいですね。

“自主性”を重んじる環境に、やりがいを見出す

 岩隈さんは、日本のプロ野球と米国のメジャー・リーグの両方を経験し、「同じ野球なのに、ここまで違うのか」ととまどうことも非常に多かったとのこと。

 例として、メジャー・リーグの「自主性を尊重する指導方法」を挙げています。

 なぜ、アメリカでは選手の自主性が尊重されるのか? それは、アメリカのコーチングの基本が「Don’t over teach(教えすぎない・言いすぎない)」だからです。
 何かを聞いてくればコーチは答えますが、基本的には選手を見守ります。
 そのほうが自主性が育まれ、プレーヤーとして大きく成長していくことをアメリカの指導者は知っているのです。
 考えてみると、教えられて覚えたものは忘れやすいですが、自分でコツをつかみ、覚えたものは体に染み込んでいるので忘れるということがありません。
 選手の自主性に任されるということは、「すべての責任は選手自身にある」ということでもあります。
 すべての責任は自分にあるのですから、成績が悪かったとしても、誰かに責任を擦りつけることはできません。
 メジャーの若い選手たちと話していて「大人だな」と思うことが度々ありますが、彼らはそういった環境で育ってきているので、「プロとしての責任感」を知らず知らずのうちにしっかりと学んできたのだと思います。
 自主性を重んじる世界は責任重大ですが、それだけにやりがいもあります。
「自分の道は、自分で切り拓くしかない」
 アメリカに来たことで、あらためてプロとしての正しい生き方を教えられたような気がします。

 『感情をコントロールする技術』 第2章 より 岩隈久志:著 ワニブックス:刊

 自主性を尊重するということは、責任感を育てることにつながります。
 どんなことでも、人より抜きん出るためには、人と同じことをしていては到底無理です。

 試行錯誤しながら、自分にあったやり方を見つけていく。
 それが、誰にもマネすることができない、その人の個性にもなります。

 米国の指導法には、日本も見習わなければならない部分が多そうですね。

気持ちのメリハリから「いい集中」が生まれる

 メジャー1年目、これまでやったことがない「中継ぎ」を経験しました。
 ここで、ピッチャーとしての心構えや精神と肉体両面の準備の仕方など、先発でも大いに参考になることを学びます。

 その中のひとつが、「目の前の“ひとつ”に集中したからといって、いい結果が出るとは限らない」ことです。

 目の前のことに集中しすぎるとということは、まわりが見えなくなってしまうということでもあります。
 野球に限らず、あらゆるスポーツにおいて「まわりの見えない状態」になってしまうのは致命的です。
 いい集中の仕方をすれば、目の前のことにとらわれず、全体の流れを冷静に見渡せる感覚をもつことができます。
 イメージとしては、試合全体の流れに注意しながら、自分の出番や、出番が来そうなときに一気に“集中の範囲”を自分の半径数メートルぐらいに狭めているような感じでしょうか。
 気持ちが張りっぱなしの状態でも、緩みっぱなしの状態でも、「いい集中」をすることはできません。
 気持ちにメリハリをつけることで、「いい集中」は保たれるのです。
 気合十分で心身ともにエネルギッシュな状態なのに、物事がうまくいかない人は、常に力が入って「空まわり」しているのではないでしょうか。
 一度、自分の集中の仕方に目を向け、見直してみるのもひとつの手です。
 適度に力を抜くことで、まわりがよく見えるようになり、「ここぞ」というときに自分の力を発揮できるようになるはずです。

 『感情をコントロールする技術』 第3章 より 岩隈久志:著 ワニブックス:刊

「集中力が大事」だとは言っても、つねに気持ちを張り詰めていては、疲れるだけです。

 本当に集中するべきときに、力み過ぎてしまいますね。
 逆に、気持ちを緩めすぎると、いざというとき、準備が間に合いません。

「いい集中」ができる、適度な気持ちの張り具合。
 その状態を知り、維持する。

 本番前の大事な準備のひとつです。

「自信」は小さな成功の積み重ねによってもたらされる

 プロ野球は、結果がすべての厳しい世界です。
 しかし、そこで失敗を恐れていては前に進めません。

 岩隈さんにも、前に進もうと思っても、なかなか一歩を踏み出せない時期がありました。
 しかし、「失敗したってしょうがない。ダメで元々」という精神で乗り越えてきました。

 岩隈さんが、不安を吹っ切ることができたのは、日本で培った「自信」があったからです。

「これまで自分がやってきたことは間違いない」という自信。
 それが、僕に次の一歩を踏み出す勇気をくれました。
 練習でやってきたこと以上のものは試合では出せません。
 実戦の場でいきなり難しいことをしようとしたり、いつも以上の力を出そうとしたりしても無理なのはわかり切っています。
 不安を払拭(ふっしょく)してくれる唯一の薬は「自信」であり、その自信は小さな成功の積み重ねによってもたらされるのです。
 大きな成功を求めると、ミスしたときの衝撃も比例して大きくなります。
 あまりに大きな成功を求めすぎると、ミスしたときの衝撃で立ち直れなくなってしまうことだってあるかもしれません。
 人間は失敗して当たり前なのですから、高望みをせず、目の前の小さな目標をひとつひとつクリアするようにすればミスの代償も小さくてすみますし、新たな一歩も踏み出しやすくなります。
 そして、それこそが大きな成功への近道でもあります。
 等身大の自分に返り、目の前のやるべきことをひとつずつこなしていく。
 そうすることの積み重ねが自信となり、その自信が自分を窮地(きゅうち)から救ってくれることにもなるのです。

 『感情をコントロールする技術』 第5章 より 岩隈久志:著 ワニブックス:刊

 初めから「揺るがない自信」を持っている人はいません。

「自信は小さな成功の積み重ねによってもたらされる」

 本質を突いた言葉ですね。

 小さな成功を得るためには、チャレンジを繰り返す必要があります。
 失敗したときの衝撃に耐えられることも大事なこと。

「千里の道も一歩から」

 まずは、その一歩を踏み出す勇気を持ちたいですね。

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 岩隈さんは、マウンドの上では、喜怒哀楽をほとんど見せることはありません。

 どんな場面でも、自分の感情をコントロールし、冷静沈着。
 その堂々としたマウンドさばきには、エースの風格が漂います。

 岩隈さんは、自らの体験も踏まえて、失敗から何かを学ぼうとする姿勢がある限り、失敗を恐れる必要はまったくないとおっしゃり、私たちを勇気づけてくれています。
 岩隈さんのこれからのご活躍にも期待したいですね。

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