本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ

本を読むことは、心と体に栄養を与えること。読むと元気が出る、そして役に立つ、ビタミンたっぷりの“おいしい”本をご紹介していきます。

【書評】『なぜ、健康な人は「運動」をしないのか?』(青栁幸利)

 お薦めの本の紹介です。
 青栁幸利先生の『なぜ、健康な人は「運動」をしないのか?』です。

 青栁幸利(あおやぎ・ゆきとし)先生は、高齢者の健康を専門に研究されている医学博士です。
 現在は、東京都健康長寿医療センター研究所老化制御研究チームの副部長を務められています。

「運動すれば、健康になれる」の思い違い

 青栁先生は、長年にわたって高齢者の体と健康について研究してきました。
 その集大成ともいえる成果が、群馬県中之条町で65歳以上の方5000人を対象に行った「中之条研究」です。

 青栁先生は、研究を続けていく中で、ある重大な事実に気づきます。
 それは、「運動が大好きで、いかにも健康そうな生活」をしている方の数値を見ても、健康とは限らないことです。
 逆に、運動らしい運動をしていなくても、健康そのものという方もいます。

 その違いはどこから生まれたのかを追求し、導き出した結論は、『運動には年齢に即した「最適な強さ」がある』ということ。

 青栁先生は、この研究成果を「メッツ健康法」と呼ぶ、独自の理論としてまとめます。
 中之条研究では、「メッツ健康法」を導入したことで、9割以上の高齢者に健康状態の改善が見られ、さらにその健康状態が10年以上も続いているため、「中之条の奇跡」と呼ばれています。

 本書は、誰にでも手軽にできる「メッツ健康法」の具体的なやり方を解説した一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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ただ「歩く」だけでは健康になれないわけ

 青栁先生は、運動とひとくちにいっても、その「強さ」によって、健康になったり、反対に病気を呼び込んでしまったりと、体に及ぼす影響は百八十度変わってくると指摘します。

 大切なのは、「運動の質」です。
 運動は、強すぎても弱すぎても、健康維持に効果はないということですね。
 最も質のよい運動が、「中強度の運動」となります。

 つまり、健康という視点に立てば、運動の強さは、弱くても、強すぎてもダメということ。
 中強度の運動こそが、健康の維持・増進、病気の予防に最も効果的であり、健康で長生きするために必要なものなのです
 これが、私が中之条研究所で導き出した結論です。

 中強度・・・・といわれても、一般の方にはピンとこないかもしれません。中強度の運動として代表的なのは、「速歩き」です。
 普段の歩行よりも急ぎ足。犬の散歩や、待ち合わせの時間に遅れそうで少し急いでいるときの歩行を思い浮かべてください。
 低強度の運動は、掃除、洗濯などの簡単な家事や、ゆっくりとした歩行などのこと。「歩きながら歌を歌える」なら、その歩行はゆっくりすぎます。残念ながら、このような運動を続けても、効果はあまり得られません。
 なお、一日7000歩ほど歩くと、普通、低強度と中強度の比率は3:1程度になります。つまり、およそ4分の1(1750歩)が中強度の運動ということになります。男女で差はありません。
 ただし、意識しないと、先に紹介した人々のように、「歩いても歩いても、低強度ばかりの運動」になることもあるので、注意が必要です。

 高強度の運動は、ジョギングや駆け足、水泳など、ハードな運動がこの代表です。これらのようなきつすぎる運動では、健康になるどころか、人によっては病気になることもあります。
 運動と健康の関係を語るうえでは、運動の量(歩数)と運動の質(活動強度)のバランスが重要なのです。

 世間では「健康のために歩くのはよいことだ」というイメージばかりが先行しますが、歩数や歩く速度については、それぞれのイメージで行うために「理想的な運動になっていない」人も少なくないのです

 『なぜ、健康な人は「運動」をしないのか?』 第1章 より  青栁幸利:著  あさ出版:刊

 歩くといっても、ただダラダラ歩いているだけでは、健康にはまったく効果がありません。
 息が上がってしまうような速いジョギングを長時間続けるのも、体を傷めるだけです。

『運動の量(歩数)』『運動の質(活動強度)』

 体を動かす際には、いつも意識していたいですね。

運動の強さをあらわす「メッツ」

 青栁先生は、「中強度」とは、どの程度の運動をいうのかを以下のように説明しています。

 身体活動・運動の強度は、「メッツ」(METs)という言葉であらわすことができます。(以下、「メッツ」と表記)
 メッツは、体を安静にしている時を基準にして、体を動かしたときにどのくらいエネルギーを消費するかを見る単位です。これが運動の強さということになります。
 人は、安静にしている状態でもエネルギーを消費しており、これが1メットと定めています。
 したがって、安静時の二倍のエネルギーを消費する身体活動は2メッツ、三倍なら3メッツ、四倍なら4メッツ・・・・ということになります。
 メッツは、1メットから、活動量が最も多い20数メッツまでありますが、消費カロリーが少ない方から順に、「低強度」→「中強度」→「高強度」に分類できます。
 活動強度が高ければ高いほど、体にかかる負荷が大きくなると考えてください。

 それぞれの活動強度の目安は第1章でも簡単に述べましたが、もう一度復習もかねて整理しておきましょう。

  • 低強度:簡単な家事、ゆっくりとした散歩、ゲートボールなど
  • 中強度:速歩き、犬の散歩、山歩きなど
  • 高強度:ジョギング、かけ足、ジャンプなど

 では、それぞれの活動強度は、何メッツにあたるのでしょうか。
 一般的には、次のように定められています。

  • 低強度:1〜3メッツ未満
  • 中強度:3〜6メッツ未満
  • 高強度:6メッツ以上

 ということは、私たちは中強度である3〜6メッツの身体活動を生活の中に取り入れていけばよいということになります。

 『なぜ、健康な人は「運動」をしないのか?』 第2章 より  青栁幸利:著  あさ出版:刊

 青栁先生は、中強度の運動と生活活動を以下の表にまとめています(図1参照)。

3メッツ以上の運動と生活活動 第2章P67

図1.3メッツ以上の運動と生活活動の一覧表
(『なぜ、健康な人は「運動」をしないのか?』 第2章 より抜粋)

 年齢、体格、性別などによって、「中強度」といえる数値は変わってきます。
 自分が無理なく続けられる範囲で続けることが大切ですね。

重い病気にかかる前の「予防」が重要

 私たちの普段の生活における身体活動の「量」と「質」は、ほぼ比例の関係があります。
 青栁先生は、「単純に身体活動の量(歩数)が増えると、質のよい活動(中強度の活動時間)も増えやすい」と指摘しています。

「健康的な生活を送る目安」は、「一日8000歩、20分の中強度の身体活動を続けること」です

 病気の進行は、加齢による身体活動量の減少と密接に関わっています。重い病気が発症するのは、身体活動量が減少したタイミングであるのが通常です。つまり、この段階で身体活動量を増やしたくても、体力的に不可能なのです。
 したがって、重い病気ほど予防に必要な身体活動レベルは低く設定されています。
 それよりも、ここで大切なことは、体が動く元気なうちから予防に努めることです。
 体に無理を強いることなく、「一日8000歩/中強度の活動20分」が実践できていれば、確実にさまざまな病気を予防し、その発生と進行を遅らせることができます。
 また、加齢とともに体力が落ちていく中でも、「一日5000歩/中強度の活動7.5分」のラインはキープしたいところです。
 このラインを下回ると、脳梗塞(こうそく)や脳出血、心筋梗塞など、生死に直結する病気につながりやすいからです。

 『なぜ、健康な人は「運動」をしないのか?』 第3章 より  青栁幸利:著  あさ出版:刊

 以下に、一日あたりの身体活動と、予防できる病気の対応表を示します(図2参照)。

1日あたりの身体活動と予防できる病気 第3章P105
図2.一日あたりの身体活動と予防できる病気
(『なぜ、健康な人は「運動」をしないのか?』 第3章 より抜粋)

 歩数だけでなく中強度の歩行時間を測定できる「身体活動計」も市販されています。
 中強度の活動になっているのか不安な人は、それらを活用するのもいいかもしれませんね。

全身運動の「メッツウォーキング」が最も効率がいい

 中強度の身体活動として、もっとも手軽なのは「歩くこと」です。

 ただやはり、もっとも簡単で、誰もが今すぐ始められる方法としては、「歩くこと」がいちばんおすすめです。
 なぜなら、歩くのは「全身運動」だから。
 エネルギーを効率的に消費するには、できるだけ多くの筋肉を同時に使う全身運動が効果的です。
 たとえば、全身の筋肉を同時に動かすときと、腕の筋肉だけを使うときとを比べた場合では、前者のほうが効率的にエネルギーを消費できるのは想像できますよね。
 もし腕だけで同じエネルギーを消費しようと思えば、それだけ強い負荷をかけるか、長時間筋肉を使わなければなりません。
 つまり、非常に効率が悪い。

 その点、全身運動であるウォーキングは、下半身はもちろんのこと、腕や腹筋など上半身の筋肉も使って、効率的にエネルギーを消費することができます。

「健康のために自転車に乗っています」という人がたまにいます。自転車も運動にはなりますが、下半身中心の運動になるので、ウォーキングに比べると、効率的とはいえません。
 もちろん、水中運動など全身運動はほかにもありますが、人間の基本動作であり、すぐ誰でも手軽にできる「歩くこと」がいちばん日常生活にフィットするのではないでしょうか。(ウォーキングは靴さえあればすぐに始められるのに、プールやジムでの運動だとそうはいきませんよね)

 そういう意味では、日常生活で足りない運動をウォーキングで補うのは、おすすめです。

 『なぜ、健康な人は「運動」をしないのか?』 第4章 より  青栁幸利:著  あさ出版:刊

 青栁先生は、中強度の運動になる速歩きを「メッツウォーキング」と名づけています。
「メッツウォーキング」のポイントは簡単で、次の二つを意識するだけです。

  1. いつもより少し速度を上げて歩く
  2. いつもより歩幅を10センチプラスして歩く

 青栁先生は、これらを意識するだけで、自然と背筋が伸び、胸を張り、腕を大きく振って歩くようになり、「中強度の活動」になるはずと説明しています。
 日常生活で足りない分を「メッツウォーキング」で補って、病気を予防したいですね。

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 私たちが毎日の生活に運動を取り入れようとするとき、

「週に◯回以上、ジムに通う」
「毎日、◯kmランニングをする」
「毎朝、◯歩以上歩く」

 というような目標を立てることが多いです。
 しかし、「どのくらいの強さの運動がいいのか」まで考えている人はほとんどいないでしょう。
 運動の「量」はもちろん大切ですが、それ以上に重要なのが「質」です。

「過ぎたるは及ばざるがごとし」
 ちょうどいい強度の運動でなければ、健康になるどころか、病気を呼び込むこともあります。
 普段から「メッツ健康法」を意識して、いつまでも病気知らずの生活を送りたいものですね。

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