【書評】『精神科医が教える集中力のレッスン』(西多昌規)

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 お薦めの本の紹介です。
 西多昌規先生の『精神科医が教える集中力のレッスン』です。

 西多昌規(にしだ・まさき)先生(@masaki_nishida)は、精神神経学や睡眠療法などがご専門の精神科医です。
 臨床医として診療を行うかたわら、企業産業医としても活躍されています。

「集中力」を高めることは、「人生の質」を高めること


 人間に与えられた時間は誰でも同じ、一日24時間です。
 ならば、この時間を効率よく使い、さっさと仕事を終わらせ、余暇を楽しみたいですね。
 そのためには、「集中力」を高め、時間あたりのパフォーマンスを上げることが必須となります。

 身の回りに情報が洪水のようにあふれ、気を散らす誘惑が多い世の中。
 だからこそ、「集中力」が今まで以上に重要となってきます。

 本書は、精神科医の知見から、幅広く応用できる集中力を高める知識や工夫をまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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「攻めの集中」と「守りの集中」を使いこなす


「集中力のタイプ」は、大きく二つに分類されます。
 西多先生は、自分が望んでおこなうことに対する集中を「攻めの集中」、そうでないものに対する集中を「守りの集中」と呼び、以下のように説明しています。

「攻めの集中」の特徴は、人に褒められたり、数値化された目標を達成したりすることが、集中の原動力となることです。例えば、あなたが留学のために英会話を勉強しているとしましょう。「英語、上手くなったね」「とても発音がよくなった」などと褒められることで、ますます頑張ろうという意欲が高まります。あるいは、TOEICやTOEFLで何点取れた、前回を上回ったなど、数値化された目標とその達成を確認することも「攻めの集中」にはプラスに働きます。
 その意味では、「攻めの集中」をするときには、最初からあまりに難しいことに取り組まないことが大切です。難しい程度は、人によってそれぞれ異なりますが、自分が「これは到底ムリだ」と感じているレベルのものにいきなり集中しようとしても上手くいかないのは当たり前ですし、上手くいかなければ目標をクリアする喜びも得られません。
「攻めの集中」では、「少しだけ難しいこと」を対象にして取り組むのかポイントです。簡単な問題集を集中的に繰り返すことなどは、このパターンです。
 また、「攻めの集中」のときは、なるべく成功したときの喜びやもらえる報酬といった、ポジティブなイメージを持ちましょう。そもそも集中するべき対象は、自分のためになると思ってやっていることですので、前向きなイメージは大切です。
(中略)
 逆に、やる意味を感じられず納得できないような、モチベーションの上がらない作業に集中しなければならないときは、どうすればいいのでしょうか。
 実は、このような「守りの集中」を高める原動力は、他人から怒られたり批判されたりすることへの恐怖心です。「このくらいの書類、ちゃんと仕上げろよ」「これくらいのこと、ぱぱっとできなくてどうする」などと上司から注意されるかもしれないという不安が、やらざるを得ないという気持ちを喚起するわけです。
「守りの集中」は、他人からの批判や叱責(しっせき)、その予感によっていやおうなしに高まります。こちらの集中も、あまりに難しい課題だと集中力が続きませんが、「攻めの集中」に比べればより難しい課題にチャレンジできる可能性があります。なぜなら、難しいからといって投げ出してしまうと、手厳しい批判が待っているからです。
「守りの集中」では、危険や叱責、罰、苦痛といったネガティブなイメージを持って取り組むほうが、皮肉ですが集中することができます。試験に落ちたくないがために、「一夜漬け」で集中力を発揮した経験を持つ人も少なくないでしょう。まさに、「不合格」「再試験」といった負のイメージが、集中力の原動力となるのです。
「攻めの集中」は楽観主義で、「守りの集中」は悲観主義で臨むことが、集中力をコントロールできるコツだと言えそうです。集中するべき対象によって心構えを変えてみることで、集中力を自在に扱えるようになります。

 『精神科医が教える「集中力」のレッスン』 第1章 より  西多昌規:著  大和書房:刊

 集中力を要するとき、どちらのタイプの集中を必要とするかを考えてから取り組む方がいいですね。
 自分がどちらのタイプの集中に強いのかをしっかり把握しておくことも大事です。

『「攻めの集中」は楽観主義で、「守りの集中」は悲観主義で臨む』

 頭の片隅に入れておきたいノウハウですね。

「難しいが可能」なレベルの目標を立てる


 西多先生は、やる気と集中力を引き出すためのポイントは「目標設定」の決め方にある、と指摘します。

 やる気と集中力を引き出すためにまずやるべきことは、目標設定です。しかし、単に大きな目標をかかげただけでは、やらなければいけない作業や業務量に圧倒されてしまいます。目標設定の方法を誤れば、「ダメだ、こりゃ」というオチになってしまう可能性大でしょう。
「ベストを尽くす」
「一生懸命に頑張る」
 これらは、一見威勢が良く気持ちがこもっているように見えますが、いちばん悪い目標設定の見本です。抽象的ですし、どれくらい難しい課題かがはっきりしません。
 集中力という観点から言うと、「難しいが可能」な目標を立てることが理想です。あまりに簡単な目標だと集中力を発揮する余地がありませんから、具体的で難易度が高い目標を練り上げるべきなのです。ハーバード大学心理学部で長年教鞭(きょうべん)を執(と)ったデイビッド・マクレランド教授は、達成確率が60%くらいがちょうどいい目標設定だとしています。
 勉強ならば、苦手科目の国語は70点を目指す、などのように、数値化ができて頑張れば手が届きそうな数値目標が理想です。苦手科目の目標値を100点満点にしてしまうと、「どうせムリだろう」諦めモードになり、やる気や集中力は眠ったままになってしまうからです。
 目標設定のコツとしては「SMART」という考え方があります。SMARTは、以下の五つの頭文字を取ったものです。

  • Specific(より具体的に)
  • Measurable(数値化できる)
  • Achievable(達成できる)
  • Realistic(現実的な)
  • Time(締め切りがある)
 先ほどの国語の勉強ならば、「古文の文法は、この問題集を三ヶ月でやり終える」というような目標になるでしょう。せめて、数値目標と期限を決めておくのは、目標設定の基本です。

 『精神科医が教える「集中力」のレッスン』 第3章 より  西多昌規:著  大和書房:刊

 何ごともまずは、「目標」ありき。
 しかも、「難しいが可能」な目標を立てることがベストです。
 そのためには、集中しようとしていることに対する自分の実力がどの程度なのかを正確に把握しておくことが大事ですね。

メールよりハマりやすいSNS


 始める前は乗り気でなかった作業も、続けているうちにハマってしまうことがしばしばあります。
 この現象を「作業興奮」といいます。
 西多先生は、集中している状態に入るにはある程度の準備期間が必要だと述べています。

 集中状態に入るのを邪魔するもののひとつに「インターネット」の存在があります。
 メールやLINE、facebookなどで、本来やるべきことに身が入らないという経験をした人も多いでしょう。
 そのような場合への対処はどうすればいいのでしょうか。

 メールも、なるべくすぐに返信するのが理想的とはいえ、少しばかり時間を置いての返信も許されます。フェイスブックのメッセージも、直(ただ)ちにレスをしなければならないという決まりはありません。
 しかし、チャットやLINEとなると、やや趣(おもむき)が異なってきます。短いリプライで済む分、レスのスビードが重視されます。レスのスビードは、生の会話並みと言っていいでしょう。
 メールなどに比べて、このようなスビード重視の、ほぼ「同時」にと言っていいくらいのコミュニケーションツールは、メールに比較して依存性が強いことが指摘されています。注射後すぐに効く薬剤が、ゆっくり効く薬剤よりも依存性が強いのと似ています。
 2〜3分も経たないうちにウズウズしてきてスマホをチェックしてしまう。こういった人は、まずは30分ごとに「インターネットタイム」を、1分だけ設けてみましょう。
 30分はスマホの電源を切ってカバンや引き出しの中に入れてしまい、仕事や作業に集中します。30分間作業に打ち込んだあとに、1分だけメールやSNSに触れるのです。重要なのは「インターネットタイム」の時間を厳守することです。
 SNSから集中力を守る方法は、ネット依存対策と通じるものがあります。ただ、基本はメールと同じです。時間枠を決めた「SNS休憩」を確保してしまうことです。
 あるいは、SNSを強制的に遮断するか、使用時間を制限するアプリを導入する方法があります。たとえばGoogle Chrome では「StayFocusd」という拡張機能を導入することができます。
 StayFocusdは、ある特定のウェブサイトを登録し一日の閲覧時間を設定することで、そのウェブサイトを設定した時間以上見るとアクセス制限がかかり、その日一日見ることができなくなるという拡張機能です。
 これらのアプリは、すぐに新しいものが開発されるので、ここでたくさん紹介してもすぐに時代遅れになってしまうでしょう。ただ、SNSへの依存傾向は断ちがたいのが現代人です。こういった拡張機能やアプリを使用する方法も知っておくのがベターではないでしょうか。

 『精神科医が教える「集中力」のレッスン』 第4章 より  西多昌規:著  大和書房:刊

 集中したいときは、気が散る要因となるものを身近に置かないことが一番です。
 スマホなどのようにそれが難しい場合は、しっかり利用する時間を決める習慣をつけることが大切。
 どうしても難しいという人は、西多先生が勧めるように、拡張機能やアプリで強制的にアクセスを制限するのもひとつの手ですね。

集中力を高めるには「吐く息」が重要


 集中するときには、気持ちも身体も力が入るというイメージが強いです。
 しかし、医学的には、集中するためにはむしろ逆に「力を抜く」といった行動のほうが、理にかなっているのだそうです。

 力を抜くための最も簡単な方法は、「深呼吸」です。

 吐く時間を思い切って長く取ることが、副交感神経のはたらきを高めて、集中力を引き出す深呼吸法です。吐く時間に決まりはありませんが、息を吸うのが2〜3秒とすれば、10〜15秒はかけたいところです。
 タイマーや砂時計まで使う必要はありません。自分で数を数えて呼吸をするほうが手軽ですし、余計な雑念が入らなくなるのでいいでしょう。回数は、時間にもよるでしょうが5〜10回もおこなえば、身体には確実に変化が起きているはずです。
 規則的な呼吸運動は、焦りや不安を和らげるセロトニンのはたらきもアップさせます。集中するよりもリラックスるするほうにご利益がありそうな深呼吸ですが、そういうわけでもありません。焦りや不安、恐怖心が強いときは、「さあ、気合を入れるぞ!」といった喝(かつ)よりも、合理的な行動です。
 深呼吸が集中を整える意味でもっとも素晴らしい理由は、具体的で道具もいらず、誰にでもすぐにできる行動だからです。「気合を入れる」と言われても、漠然として具体性に欠くので困ってしまうでしょう。コーヒーを飲むでもいいのでしょうが、カフェインに頼りすぎることは害があることも忘れてはいけません。
 深呼吸は、子供にでもできる単純な動作です。シンプルなだけに、もしかしたら軽視しているかたもいるかもしれません。科学的に根拠の乏しい習慣ならば無視しても構いませんが、生理的現象に基いているこういったテクニックをバカにしておこなわないのは、いかにももったいない話です。
「なんだか集中できないな」と思ったときには、思い切って深呼吸の時間をとりましょう。集中できずにグズグズしているよりは効率的でしょうし、健康的なのではないでしょうか。

 『精神科医が教える「集中力」のレッスン』 第5章 より  西多昌規:著  大和書房:刊

 気持ちがザワザワと落ち着かないと、なかなか集中できないものです。
 そのようなときは、気がつかないうちに身体に力が入って、呼吸が浅くなっていることが多いです。

 プレッシャーのかかる大事な場面ほど、深呼吸で「間」をとること。
 忘れないように、習慣づけたいですね。

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☆    ★    ☆    ★    ☆    ★    ☆

 長引く不景気で、合理化で人は減らされるため、一人あたりの仕事は増える一方・・・・。
 そんな職場は多いでしょう。
 そのような状況を個人レベルで打開するには、時間あたりの仕事量を増やす以外に方法はありません。
 そのためにも、集中力を高めるスキルを身につけることは、ますます重要になってきますね。

 ひとくちに「集中力の欠如」といっても、その理由は人それぞれ、いろいろな原因が考えられます。
 集中力を高めるためにまず必要なのは、集中を阻害しているものはなにかを把握することです。

 毎日、だらだら夜遅くまで仕事するよりも、集中して定時までにやるべきことをやる
 そして、さっさと帰ってアフターファイブを満喫する。
 そんな生活を送れるようにしたいものです。

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