【書評】『あご筋をほぐせば 健康になる!』(福島一隆)
お薦めの本の紹介です。
福島一隆先生の『あご筋をほぐせば 健康になる!』です。
福島一隆(ふくしま・かずたか)先生は、歯科医です。
これまで3000人以上の患者を診断、独自に研究を重ねられた結果、口の動きに関わる筋肉のこりに、体調不良を改善するポイントがあることを突き止められました。
「あごの筋肉のこり」をほぐせば、健康になる!
日本人の多くは、あごの筋肉がこっています。
その理由は、あごの筋肉がこる原因である“噛み合わせが悪い”人が多いこと。
福島先生は、日本人の約9割が下あごがずれている
と指摘します。
あごの筋肉のこりは、体のさまざまな部分の不調を引き起こします。
直接関係のなさそうな、頭痛、肩こり、目の疲れ、耳鳴りなどの症状。
その多くが、「あごの筋肉のこり」が原因です。
本書は、あごの筋肉のこりをほぐすことで、体の不調を解消する方法について解説した一冊です。
その中からいくつかピックアップしてご紹介します。
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あごの筋肉は「4つの筋肉」で構成されている
福島先生は、あごの構造について以下のように説明しています。
あごの筋肉は、主に4つの筋肉で構成されています。上あごと下あごを開けたり閉じたりする、咀嚼(そしゃく)する動作のときに働きます。あごの筋肉がこる話をしましたが、使われ方によって、どの筋肉もこりかたまってしまう可能性があります。
あごの筋肉を1つずつ紹介すると、まず側頭筋(そくとうきん)。頭の横側に手のひらを当てて、奥歯を強く噛みしめてみてください。ぷくりと膨らむので簡単にわかります。
次に咬筋(こうきん)。頬を覆うように手のひらを当てて、奥歯を噛みしめてみてください。頬骨の下に膨らみができます。それが咬筋です。
3つ目は内側翼突筋(ないそくよくとつきん)。その上部にあるのが外側翼突筋(がいそくよくとつきん)です。内側翼突筋と外側翼突筋は、口の内側にある筋肉で、顔の表面から確認することはできません。口の中に指を入れて、なんとかさわることができる筋肉です。
これら4つの筋肉は、口を閉じるときに働く筋肉と開けるときに働く筋肉に分けられます。
口を閉じるときに使うのは側頭筋、咬筋、内側翼突筋、そして外側翼突筋の上側の部分です。
対して、口を開けるときの筋肉は、外側翼突筋の下側の部分だけになります。
口を閉じるときは4つのうちの3.5個の筋肉を使い、開けるときは0.5個。閉じる力が、開く力より圧倒的にパワーがあります。食べものを噛み砕くことが咀嚼の目的なので、理にかなったパワーバランスです。
ただし、開けるときは、のど仏の上にある舌骨の周囲の筋肉も働いています。『あご筋をほぐせば健康になる!』 第1章 より 福島一隆:著 アスコム:刊



図1.4つのあごの筋肉 (『あご筋をほぐせば健康になる!』 第1章 より抜粋)
あごの4つの筋肉は、腕や足の筋肉と同じ骨格筋です。
骨格筋には、使わないと細くなり、使い過ぎると痛くなったり、硬くなる特徴があります。
あごの筋肉は、特別に鍛えて太くする必要はありませんが、やわらかくしておくことが重要です。
福島先生は、こりかたまったあごの筋肉をほぐしてあげるだけで、あごの動きがなめらかになるだけでなく、頭痛や耳鳴り、肩こりなどの症状をやわらげる
と述べています。
頭が痛くなったら「あご筋」をほぐす
原因がはっきりわからない「慢性頭痛」に苦しむ人は多いです。
あごの筋肉のこりは、その原因の一つとなります。
頭痛と強く関連していると考えられるのは、4つの筋肉の中の、左右の側頭部にある側頭筋です。頭が痛くなったときに、頭の横を両手で押さえたり、こめかみを押さえたりすることがありますが、まさにそこにあるのが側頭筋です。
側頭筋がこってくると、筋肉内にある血管の流れが悪くなり、さらに老廃物がたまって神経を刺激するようになります。側頭筋は、1章で紹介したように、側頭部を覆うようについている大きな筋肉です。その筋肉がこわばっているのですから、それだけで頭部を締めつけている感覚はわかるのではないでしょうか。
(中略)
私のところを訪れる患者さんの中にも、慢性的な頭痛を抱えていて、今までいろいろな病院でレントゲンやMRIの検査をしたけれど、原因がわからないという方がたくさんいらっしゃいます。そんな方は、必ずといっていいほど、側頭筋をさわると飛びあがるほど痛い個所や、かたくなっている個所が見つかります。側頭筋がかたくなるのは、あごの筋肉を偏って使うことに加えて、噛みしめや食いしばり、歯ぎしりなどが習慣になっていることが考えられます。これらの悪い習慣を積み重ねることで、知らず知らずのうちに側頭筋を使い過ぎてこりかたまってしまうのです。
それと同時に、噛みしめや食いしばりなどは、あごの筋肉だけでなく首から肩にかけての筋肉も使っているため、首や肩の筋肉も同じようにかたくなり、よけいに頭痛の症状が長引くことになります。
側頭筋をさわって痛みを感じるときは、頭痛の原因が側頭筋にある可能性があります。
そういうときは、マッサージでこりをほぐしてあげるだけで、頭の痛みが消えることがあります。
側頭筋は、あごの筋肉のなかでも外側からさわることができる筋肉で、直接マッサージしやすいところです。コリコリしている個所や、ズキンと痛むようなポイントがわかったら、指でやさしくもみほぐしてみましょう。
毎日続ければ、より効果を実感できるはずです。『あご筋をほぐせば健康になる!』 第2章 より 福島一隆:著 アスコム:刊
あごと側頭部は、位置的に離れているように感じます。
そのため、あごのこりが頭痛の直接の原因であるとは、なかなか思い浮かびませんね。
心当たりの方は、側頭筋のこりを疑ってみてください。
あご筋がよく働くと「唾液」が出る
体や精神の不調に大きく関わってくるのが、「自律神経」です。
福島先生は、自律神経のバランスが崩れると、頭痛や肩こり、耳鳴り、めまい、動悸(どうき)、口の渇(かわ)き、肌荒れ、冷え、便秘、下痢というような、さまざまな症状が現れ
ると指摘します。
自律神経が正常かどうかの目安になる一つが「唾液の分泌(ぶんぴつ)」です。
この唾液の分泌にも、あごの筋肉が大きく関わっています。
日本人は、食生活の変化などにより、咀嚼(そしゃく)する回数が大幅に減ってきています。
そのことが、唾液の分泌にも悪影響を及ぼしているとのこと。
唾液の分泌は自律神経によってコントロールされています。交感神経と副交感神経のバランスがとれているときは、しっかり唾液が分泌されて、口内環境をよい状態にキープします。しかし、交感神経が活発になり過ぎると、唾液はネバネバして分泌量が少なくなります。
唾液の量が減ることは自律神経が乱れているサインなのです。唾液の分泌を促すには、咀嚼(そしゃく)運動をすることです。あごの筋肉がちゃんと動いて噛むことによって脳に“食べる”という指令が伝達され、唾液が分泌されます。
1章で話したように、日本人の咀嚼回数は減少しています。また、唾液は加齢によっても分泌されにくくなります。高齢になって咀嚼力が低下し、やわらかいものばかり食べていると、ますます唾液は分泌されにくくなります。
唾液の分泌力は噛む回数などが影響します。口内環境を守るために十分な唾液を分泌するには、あごの筋肉のコンディションを整えておくことは、とても大切なのです。あごの近肉がこっていると、あごの関節や筋肉が正常に動くことができないのですから、しっかり噛むことができません。そうなると、唾液がうまく分泌されなくなります。唾液の量が少なくなっていると思ったら、自律神経のバランスが崩れているかもしれないと疑ってみましょう。そして、解消するために、あごの筋肉をほぐしてあげましょう。それだけで、体に起きている不調が改善する可能性があります。
『あご筋をほぐせば健康になる!』 第3章 より 福島一隆:著 アスコム:刊
咀嚼の回数を増やすことは、食べものを消化しやすくするためだけではなく、唾液を分泌することで自律神経のバランスを整える意味もあったのですね。
「食事はよく噛んでから食べなさい」
昔からよく言われるこの言葉は、とても理にかなった言葉だということです。
側頭筋をほぐすマッサージ
福島先生は、側頭筋をほぐすマッサージの具体的な方法について、以下のように説明しています。
①側頭部を手のひら全体で包み込みます。
②奥歯をぐっと噛みしめます。そのとき、盛り上がったり、動いたりするところが側頭筋です。
③側頭筋の上を、指を少しずつずらしながら押していき、痛いところやコリコリとしこりになっているところを探します。
④痛い個所やしこりを見つけたら、指の腹で円を描くように押し回しながらもみほぐします。
※側頭筋や咬筋の痛みやしこりを見つけられなくても、“隠れこり”や、まだこりの程度が低い場合があります。あご筋のもみほぐしによって肩こり、頭痛、眼精疲労などが改善する可能性もありますので、あご筋マッサージ&ストレッチは行なってみてください。また、マッサージ後に痛みが残ったり、ストレッチでの口の開閉時に鋭い痛みが走ったりした場合は中止するようにしてください。『あご筋をほぐせば健康になる!』 第4章 より 福島一隆:著 アスコム:刊


図2.側頭筋をほぐすマッサージ (『あご筋をほぐせば健康になる!』 第4章 より抜粋)
慢性頭痛にお悩みの方は、ぜひお試しください。
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☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆
あごは、食べものを噛み砕く働きをするため、大きな負荷がかかる場所です。
多くの筋肉を使うため、その影響は私たちが思っているより広範囲にわたるということですね。
噛み合わせが少しずれただけでバランスが崩れ、あごの筋肉がこり、体のさまざまな部分に悪影響を及ぼします。
ずっと力を入れすぎていると自分ではなかなか気づけないもの。
少しでも心当たりの方は、本書を手にとって、あごの筋肉のマッサージにチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
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