本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ

本を読むことは、心と体に栄養を与えること。読むと元気が出る、そして役に立つ、ビタミンたっぷりの“おいしい”本をご紹介していきます。

【書評】『日々、生まれ変わる』(我喜屋優)

 お薦めの本の紹介です。
 我喜屋優さんの『日々、生まれ変わる 人生に大輪の花を咲かせるための“七つの力”』です。

 我喜屋優(がきや・まさる)さんは、高校野球の監督です。
 社会人野球チームの監督を経て、2007年に母校である興南高校野球部の監督に就任されます。
 2010年には、同校を春夏連覇の偉業に導くなど、名指導者として知られる方です。

「ディスポート」精神が「根っこ」を支える

 我喜屋さん率いる、興南高校野球部は、甲子園で数々の偉業を成し遂げました。
 といっても、特別な指導方法をしたわけではありません。

「早寝早起き」
「食事を残さず食べる」
「大きな声で挨拶をする」
「自分のユニホームは自分で洗う」

 このような基本的で、当たり前のことを徹底的に指導しています。

 スポーツでは、体格的、技術的なこと以上に、精神的な部分に大きく左右されます。

「あと一歩」を踏ん張れるかどうか。
 それは、基本的なことを積み重ねることでしか鍛えられない「根っこ」の部分が問われます。

 桜が美しい花を咲かせることができるのは、根がしっかりしているからです。
 我喜屋さんの「根っこ」を支えているのが、「ディスポート」精神です。

 ディスポート(disport)とは、ディス「離れる」、ポート「港」という意味で、スポーツ(sport)の語源の言葉です。

「ひとつの場所にとどまらず、チャンスがあれば出港し、港を離れて、新しいことに出会い、日々、経験を積んで生まれ変わろう」

 という意味が込められています。

 本書は、我喜屋流の指導方法の基本である「しっかりとした根を張る」ために必要なことをまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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まずは、整理整頓、掃除を徹底する

 我喜屋さんは、球児たちの指導において、最初に野球と直接関係のない部分、掃除や整理整頓などの雑用を徹底的に叩きこみます。

 人の嫌がる雑用を率先してやること。
 それが、人生を切り開くことを、自らの体験から学んだからです。

 わたしが野球部に入部した年、興南高校野球部は初の甲子園出場を決めた。
 甲子園に行けるのは、ベンチ入りの選手14名のほか、3名の雑用係だった。そして、甲子園に行くメンバーが発表される日が来た。
 選手に選ばれたのは、誰もが予想していた人たちだった。戦力順に選ばられるのは当然のことだ、と思いながら発表を聞いていると、私の名前が呼ばれた。
 3名の雑用係のうちの1人に選ばれたのだ。
 陸上部から転部してきた野球経験がほとんどない私が、甲子園に行ける!
 この目で内地を見ることができる、甲子園を見ることができる。それが、当時の沖縄の高校生にとって、どんなに嬉しかったことか。
 文句も言わず、黙々と雑用をやってきたことを、監督はもちろん、ほかの部員も見ていてくれたのだ、しばらくしてから気がついた。そして、雑用を頑張ってきて本当によかった、と心の底から思ったのだった。
 実際の甲子園を雑用係ではあったけれど体験したことが、その後の私の野球人生に深く影響したのは言うまでもない。ひとつの「きっかけ」が、人の人生を左右する。そして、そのきっかけはどんな形でやってくるかは、誰も予想ができないのも、また人生なのだ。

 『日々、生まれ変わる』 第一章 より 我喜屋優:著 光文社:刊

 興南高校野球部の部員は皆、監督のこのエピソードを知っているので、雑用をいといません。
 それどころか、積極的に手を動かします。

 来客に座布団を持ってくる仕事も、担当者が決まっていなく、気づいた者がやる。
 そういうルールになっています。

 雑用でも何でも、言われたことだけやるのではない。
 周囲に気を配って、自発的に行動する。

 それが身についていることでも、彼らの強さの秘訣が垣間みられます。

「生まれ変わろう」という気持ちを持ち続ける

 我喜屋さんは、小さい頃から人生は、何歳になっても挑戦し続けるものだと思い続けています。
 60歳を過ぎた今も、その思いは変わりません。

 しかし、人は40代、50代と年齢を重ねていくにつれ、いろいろなことを経験した気分にもなってきて、「挑戦し続けよう」という気持ちを持ち続けることが難しくなってくる。だからこそ挑戦し続けることが大切なのだが、けっして楽なことではない。日々の仕事や目先の忙しさに追われ、「今、そんなことをしている余裕はない」などと自分に言い訳をして、ずるずると日々を送ってしまいがちだ。どうにかして、守りの姿勢に入ろうとして、ルーティンの毎日を送ろうとする。安定、安心、安全でありたい、という思いが強いのだろう。しかし、慣れ親しんだ環境からディスポートすることを避けていたら、人生は豊かにならないし、いつまでたっても花を咲かせることもできない。
 その点、高校生は柔軟性がある。自分という人間がまだ完成しきっていないし、すがる栄光もさほどないから、新たなチャレンジへの恐れもない。こういう柔軟さが、若さの素晴らしさなのだろう。
 だが、何歳であろうと「生まれ変わろう」という気持ちになれれば、いつでも生まれ変われると、私は信じている。大切なのは、本人の思いであり、気持ちひとつで人生を再び、輝かせることができるものだ。

 『日々、生まれ変わる』 第二章 より 我喜屋優:著 光文社:刊

 高校球児を指導するだけでなく、逆に、彼らからもいろいろな刺激を受けているのでしょう。

 吸収し続けられる心の柔らかさが、いつまでも若々しくいられる秘訣ですね。

部下や生徒たちの顔色をうかがうな

「しつこさ」にかけては、日本一の監督だという自負を持つ我喜屋さん。

 生徒指導も、徹底的にやり続けます。
「うるさい監督だ」と思われることは、承知の上です。

 我喜屋さんは、あえてしつこく言い続ける理由について、以下のように述べています。

 興南高校野球部の監督に就任したとき、私の指導は身だしなみまで及んだ。シャツのボタンはきちんとかけて、裾(すそ)はズボンの中に入れろ。公的な場所に出るとき襟付きのシャツを着なさい。そんな指導をされて部員たちは内心、反発していただろう、と思う。けれど、のちに彼らは私が身だしなみをはじめとする、私生活についてしつこく指導していた「意味」をちゃんと理解してくれた。身だしなみを整えるということが部員たちに浸透するにつれ、それが一体感となり、部の協調性が生まれ、助け合う気持ちを培っていたことを実感するようになったのだ。
「口うるさい監督だと思ったけれど、言っていることにはちゃんと意味があるんだ」
 そういう実感を得られると、彼らの意欲も変わってくる。私の指導がただ、「しつこい」「口うるさい」のではなく、意味のあることなのだという意識で向き合ってくれるようになる。私の望みは人気者になることではなく、彼らが成長することなのだとわかってもらえれば、私は本望なのである。
 指導者やリーダーというものは、人気を集められる立場ではないし、そもそも、人気を得ようとしてはいけない立場なのだと思う。そして、人気があることは、人望があることとイコールではないのだ。

 『日々、生まれ変わる』 第三章 より 我喜屋優:著 光文社:刊

 組織が大きく成長するか、否か。
 それは、リーダーが明確なビジョンを持ち、それを貫き通せるかにかかっています。

 誰でも相手から嫌われることを、あえてしたくはありません。
 しかし、「嫌われたくないから」と、相手を見て言うことを変えていては、信念は伝わりません。

「人気があることと、人望があることはイコールではない」

 肝に銘じたい言葉ですね。

プレッシャーで緊張するのは、準備不足の証である

「プレッシャーに弱い」
「本番に弱い」

 そういう人は、我喜屋さんに言わせると、プレッシャーのせいで緊張してしまうのは、準備が足りないだけです。

 興南高校野球部の部員が、甲子園の大観衆の前で緊張することなくプレーできるのも、日ごろから準備しているからです。

 一流のアスリートが試合で緊張しないのは、彼らの精神力が生まれつき優れているわけではない。日々、練習を積み重ねていくなかで、精神力も備わっていくだけのことだ。そして、自分がこれまで「きっちり準備してきた」という自信があるから、堂々と本番に臨めるのである。言いかえれば、緊張しプレッシャーに押しつぶされそうになるのは、自分が十分に準備をしていない、という自覚があるからだ。
 今を生きている人は、「プレッシャーが」などと言ったりしない。
 なぜなら、今、この瞬間に照準を合わせてさまざまな準備をしているからだ。そして、準備万端、という自信を持って本番に臨む。
 人前で話すことに緊張しない人がいる。緊張してしまう、という人は、平然としている人たちのことを、
「肝が据わっている」
 と褒める。だが、緊張しないのは、その人が人前で話すということの準備を日ごろからしてきているからにすぎない。事実、ろくにスピーチができなかった興南高校の野球部員たちも、1分間スピーチの練習を積んだおかげで、甲子園ではカメラとマイクを前に堂々とスピーチできるまでになった。
 結局、プレッシャーは、その人の心ひとつで決まるものなのである。

 『日々、生まれ変わる』 第五章 より 我喜屋優:著 光文社:刊

 本番でも、普段通り、練習通りにできる人が一番強いです。

 どれだけ本番をイメージしてトレーニングを積むことができるか。
 それが大切になります。

「今、この瞬間」に、照準を合わせて準備をする。
 その大切さを身をもって示し、身につくまで教えこんできた。

 それが、興南高校野球部の勝負強さにつながっています。

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 当たり前のことを、当たり前にやること。

 言うのは簡単ですが、実行するのはとても難しいです。
 自分がやるだけでも大変ですが、相手にやってもらうには、その何倍もの根気が必要となります。

 どれだけブレない信念を持ち続けることができるか。
 人間としての「強さ」が問われます。

 我喜屋さんを見習い、「根っこ」を張り巡らせ、美しい花を咲かせる人を目指したいですね。

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