【書評】『内向型人間の時代 』(スーザン・ケイン)

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 お薦めの本の紹介です。
 スーザン・ケインさんの『内向型人間の時代 社会を変える静かな人の力』です。

 スーザン・ケインさんは、米国の著名なライターです。
 有力な新聞紙や雑誌への寄稿の他に、企業や大学などでコミュニケーションや交渉術の講師を務められています。

「内向型が内に秘めているパワー」とは?

 

 今日、世の中では一般的に、おしゃべりな人はそうでない人よりも賢く人間的に魅力があり、友人として望ましいと評価されています。

 ケインさんは、このような「外向型人間」を理想とする考えに異議を唱え、ニュートン、アインシュタイン、ゴッホ、スピルバーグ、J・K・ローリング(「ハリーポッター」の作者)など際立った業績を上げた偉人たちを例に挙げます。

 そして、偉大なアイデアや美術や発明の一部は、自分の内的世界に耳を傾け、そこに秘められた宝を見つけるすべを知っていた、物静かで思索的な人々によるものだと、内向型が内に秘めるパワーの大きさを強調します。

 本書は、内向型人間の「秘められているパワー」を再評価し、内向型の資質を活かしていく指針を示した一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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「内向型リーダー」と「外向型リーダー」


 米国のピザ・チェーン店を対象にしたある研究のデータでは、従業員が受動的なタイプである場合、外向型の店長がいる店舗の売上が、内向型の店長の店舗よりも売上が16%多くなりました。

 逆に、積極的なタイプの従業員と一緒に働いている場合、内向型の店長の店舗の方が外向型の店長の店舗より14%売上が多くなったとのこと。

 スーザンさんは、この結果を以下のように説明しています。

 いったいなぜ、従業員が受動的か能動的かでリーダーの有能さに変化が見られるのだろうか? 内向型リーダーは能動的な人間を導くのが非常に得意だと、グラントは言う。他人の話に耳を傾け、社会的地位の独占にこだわらない傾向ゆえに、内向型リーダーは助言を受け入れやすい。従業員の能力から恩恵を受ければ、いっそう能動的になるように従業員に動機づけをする。要するに、内向型リーダーは能動性の有効な循環をつくる。
(中略)
 それに対して、外向型リーダーは自分のやり方にばかり気をとられて、他人の名案に耳を貸せず、チームのメンバーたちを受け身に陥らせる傾向があった。「彼らは一人でしゃべっていることが多くなりがちで、他のメンバーたちが助言しようとしても耳を貸さない」とフランチェスカ・ジノは言う。だが、外向型リーダーは他人を鼓舞する能力によって、受動的な人々から結果を引き出すのがうまい。

 『内向型人間の時代』 2章 より スーザン・ケイン:著 古草秀子:訳 講談社:刊

 外向型の人がリーダーに向いていて、内向的な人がリーダーに向いていない。
 そう断じることはできないということです。

 価値観が多様化し、個性的な人が増えた今の時代。
 内向型のリーダーの需要がますます増えてくることは間違いないでしょう。

孤独なほうが「集中的実践」が可能になる


 各分野で革新的な業績を上げ大きく貢献した人にも、内向型の人間が多くいます。

 内向型の人間が創造力に優れている。
 それを説明する理由のひとつに、「孤独を好む性質」があります。

 ケインさんは、

『多くの時間「ひとりで真剣に学ぶこと」が人より抜きん出たスキルを身につける』

 という心理学者のアンダース・エリクソンの研究結果をもとに、以下のように説明しています。

 いったいなぜ、孤独はこれほど魔法のような働きをするのだろうか。ひとりでいるときにだけ集中的実践が可能となり、それこそが多くの分野において驚異的な成果をもたらす鍵なのだと、エリクソンは語った。なにかに集中して練習しているときには、より高い知識を身につけたり、パフォーマンスを向上させたり、自分の進捗状況を検討して軌道修正したりすることが可能になる。こうした水準に達しない練習は無益なだけでなく、逆効果を招きかねない。向上をもたらすどころか、現状の認知メカニズムを強化してしまうのだ。
 集中的実践がひとりでやってこそ効果があるのには、いくつか理由がある。極度の集中を必要とするので、他人の存在は気を散らすものになりうる。心の底から自然に湧いてくるような強い意欲も必要だ。だが、もっとも重要なのは、あなた個人にとって非常にやりがいを感じさせる事柄に取り組まなければならない、という点だ。ひとりでいるときにだけ、あなたは「自分にとってやりがいのある事柄に、まともに向き合える。自分の技術や能力を向上させたければ、自発的でなければなない。グループ学習を考えてください――あなたのは集団の中のひとりでしかありません」とエリクソンは語った。

 『内向型人間の時代』 3章 より スーザン・ケイン:著 古草秀子:訳 講談社:刊

 内向型の人間は、自分の世界に入り込んで、外の世界に関心を示さない傾向があります。
 逆に、自分の興味のあることや好きなことには、時間を忘れて熱中し、とことんまで追求します。

 今の日本の教育は、社会性・社交性を重視しています。
 ただ、それが行き過ぎるあまり、集団行動に適応できずに孤立する子どもたちを問題児扱いしているのは、残念なことです。

 画一的で上からのお仕着せではなく、個人の性格や個性に合った教育を考えるべき時なのでしょう。

「高反応な子ども」と「低反応の子ども」


 将来、内向的に育つか、外向的に育つか。
 それは、ある程度、乳児の段階で判別できます。

 発達心理学者のジェローム・ケーガン教授は、『生まれつき脳の一部の扁桃体という部分が興奮しやすい乳児は外界からの刺激に対して大きく反応し、成長すると、初対面の人間に対して用心深く接するようになる』という仮説を立て、それを証明しました。

 高反応の子どもの神経系は、あらゆる刺激に対して敏感です。
 よって、人間に対しても物事に対しても注意深くなり、あらゆる情報を真剣に処理して慎重な判断をするようになります。

 高反応の子どもはまた、自分が気づいたことについて深く考えたり感じたりして、あらゆる日常的な体験から微妙なニュアンスを感じとる傾向がある。このことはさまざまな形で現れる。人との関係に関心がある子供ならば、他人を観察していろいろ考えることに長い時間をかけるかもしれない――ジェイソンはどうして玩具を貸してくれなかったのだろう? ニコラスがぶつかったときにメアリーはなんであんなに怒ったのだろう? といった具合に。たとえば、パズルを解いたり絵を描いたり砂の城をつくったり、何かに特別な関心を持てば、並外れた集中力で取り組むことが多い。高反応の幼児が他の子の玩具をうっかり壊してしまったら、罪の意識と悲しみが混じった感情を低反応の子供よりも強く抱くと、研究は示している。もちろん、どんな子供も周囲のさまざまな事柄に気づき、それなりの感情を抱くが、高反応の子どもは物事をよりしっかり見て、より深く感じる。

 『内向型人間の時代』 4章 より スーザン・ケイン:著 古草秀子:訳 講談社:刊

 内向型の、繊細すぎるくらいの感受性の良さ。
 その性質は、集団生活ではマイナスに働き、自閉的になってしまうことも多いです。

 ケインさんは、内向型のこのような性質を、警戒心、微妙なニュアンスへの敏感さ、感情の複雑さ――は、過小評価されているパワーだとプラスに評価します。

内向型のほうがすぐれているわけ


 内向型の人間は、警戒心が強くつねに慎重で、勢いよく前進するのを嫌がります。
 そのような性質は、リスクを回避することだけでなく、知的な作業をするうえで役立ちます。

 大学生141人を対象にした研究で、美術、天文学、統計学など20種類のさまざまな科目に関するテストをしたところ、ほぼ全科目について内向型の学生のほうが知識で勝っていました。
 ケインさんは、その理由について以下のように説明しています。

 内向型が外向型より賢いということではない。IQテストの結果からして、両者の知性は同等だ。そして、課題数が多い場合、とくに時間や社会的なプレッシャーや、複数の処理を同時にこなす必要があると、外向型のほうが結果がいい。外向型は多すぎる情報を処理するのが内向型よりもうまい。内向型は熟考することに認知能力を使い切っていしまうのだと、ジョセフ・ニューマンは言う。なんらかの課題に取り組むとき、「100%の認知能力のうち、内向型は75%をその処理に当てるが、外向型は90%を当てる」と彼は説明する。これは、たいていの課題は目的を達成するものであるからだ。外向型は当面の目標に認知能力のほとんどを割りあて、内向型は課題の処理がどう進んでいるか監視することに認知能力を使うのだ。 
 だが、心理学者のジェラルド・マシューズが著書で述べているように、内向型は外向型よりも注意深く考える。外向型はより安直なやり方で問題解決を図り、正確さは二の次なので、作業が進むほどに間違いが増え、問題が難しくて自分の手には負えないと挫折感を抱くと、すべてを投げ出してしまう傾向がある。内向型は行動する前に考えて、情報を綿密に消化し、時間をかけて問題解決に取り組み、簡単にはあきらめず、より正確に作業する。内向型と外向型とでは注目点も異なる。内向型はぼんやりと座って思考をめぐらせ、イメージし過去の出来事を思い出し、未来の計画を立てる。外向型は周囲で起きていることにもっと目を向ける。あたかも、外向型は「これはなんだろう」と見ているのに対して、内向型は「もし・・・・したら、どうなるだろう」と問いかけているかのようだ。

 『内向型人間の時代』 7章 より スーザン・ケイン:著 古草秀子:訳 講談社:刊

 洞察力が鋭い上に、つねに考えに考えてから、慎重に行動する内向型。

 課題に取り組むまでの時間はかかります。
 しかし、いったん取り組み始めてからは、解決に至る確率は高いです。

 成功した経営者には内向型の人が多いですが、それもうなずける話ですね。

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 本書は、米国ではミリオンセラーとなるほどの人気となり、すでに32か国語に翻訳されて世界中で大きな反響を呼んでいます。

 典型的な外向型社会である米国から、この本が世に出たことには驚かされますし、この国の懐の深さを感じさせます。
 逆に、外向型なことを強く求める社会である米国だからこそ、大きな注目を集めたともいえます。

 日本はもともと内向型の社会であり、米国以上に内向型の比率が多いでしょう。
 蔓延する沈滞ムードを打開するためにも、内向型の秘められた潜在力を活かせる社会を目指したいですね。


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