【書評】『脳に免疫力をつければ病気にならない!』(苫米地英人)
お薦めの本の紹介です。
苫米地英人先生の『脳に免疫力をつければ病気にならない!』です。
苫米地英人(とまべち・ひでと)先生(@DrTomabechi)は、著名な脳科学者です。
ご専門は機能脳科学や認知心理学、人工知能など多岐に渡ります。
「脳の免疫力」を高めれば健康で長生きできる!
苫米地先生は、病気にならず健康で長生きするためには「脳の免疫力」を高めること
だと指摘します。
脳の免疫力とは、「ホメオスタシス」のことです。
ホメオスタシスとは、脳が司っている生体の恒常性維持機能のことです。
体温や心拍を一定に保とうとするのも、ホメオスタシスの働きによるものです。
病気とは、脳が正しい指令を出せずに「脳の免疫力」が正しく働いていない状態です。
反対に、健康とは、脳が正しい指令を出している状態です。
本書は、脳科学の見地から、「脳の免疫力」が健康を左右する理由を解説し、「脳の免疫力」を高める健康法をまとめた一冊です。
その中からいくつかピックアップしてご紹介します。
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「健康な自分」をコンフォートゾーンにする
情報空間(脳)は、物理空間(体)にさまざまな影響を及ぼします。
つまり、頭で考えていることが、体に現れるということ。
苫米地先生は、これを「脳は体を書き換える」と表現します。
健康にとって重要なのが、「コンフォートゾーン」という概念です。
コンフォートゾーンとは、「自分が心地よいと思う状態」のこと。
脳の免疫力は、コンフォートゾーンに戻ろうとする性質を持っています(これを「ホメオスタシスの遠心力」と呼びます)。
苫米地先生は、「どんなコンフォートゾーンを設定しているか、どんな状態に居心地がよいと感じているかによって、脳の免疫力の向かう方向が決まる」
と述べています。
体力に自信のない人や、病気がちの人は、「体力がない自分」「病気がちな自分」がコンフォートゾーンになっているため、「体の弱い自分」を維持するように脳の免疫力が働いてしまっています。
ですから、体力をつけようと運動しても、病気をしないように食事に気をつかっても、「体の弱い自分」が維持され、すぐに疲れを感じて体調を崩してしまいます。健康な人は、寒い部屋で薄着でうたた寝をしたくらいでは、風邪を引きません。室温の低さに反応して、体が最適な体温を維持しているからです。この環境とフィードバック関係を持ちながら体を適した状態に持っていく機能が、脳の免疫力です。
一方、健康ではない人、体の弱い人、病気がちな人は、寒い日にちょっとうたた寝をしたくらいで風邪を引いてしまいます。これは「よく風邪を引く」自分がコンフォートゾーンになっているせいで、「風邪を引く」ほうへ脳の免疫力が働いてしまうのです。最強の健康法は、「自分は健康で長生きする。自分が病気になることはない」と確信することです。その確信によって健康な状態がコンフォートゾーンになり、その結果脳の免疫力が高まって強健な心身をつくります。それはつまり、「完全に健康で病気とは無縁!」というコンフォートゾーンさえ作れば、さまざまな健康法に精を出さなくても健康でいられるということです。
『脳に免疫力をつければ病気にならない!』 Chapter1 より 苫米地英人:著 徳間書店:刊
体の弱い人は、「自分は体が弱い」と信じているから、「体の弱い自分」になったということ。
最初に変えるべきは、頭の中の「コンフォートゾーン」ですね。
幸せじゃないからうつ病になる
うつ病者の増加が社会問題になっていますね。
現在のうつ病治療は、仕事の負荷を減らし、投薬治療を続けることがセオリーです。
しかし、苫米地先生は、その治療法に疑問を投げかけています。
うつ病は「幸せじゃないからなる病気」だから投薬治療では治らない
というのが、その理由です。
人間の脳は幸せを感じなくなると、セロトニンという神経伝達物質を出さなくなります。セロトニンは精神の安定にかかわる物質で、またドーパミンの分泌にもかかわっています。ドーパミンは意欲や運動調節にかかわる物質です。パーキンソン病はドーパミンが出なくなり、体の運動に制限が出てくる病気です。
幸せを感じなくなりセロトニンが出なくなると、ドーパミンも出なくなり、心も体も鈍くなる。それがうつ病です。ですから、本人が幸せになれば、うつ病は治ります。本人が「自分は幸せだ」と思えば、セロトニンとドーパミンが出て、うつ病はよくなるのです。
セロトニンが出ない状態が長く続くと、脳がその状態に慣れてしまうので、薬でセロトニンが出るように介入するわけですが、いくら薬を飲んでも、本人が「自分は幸せじゃない」と思っていれば、セロトニンの自然な分泌が始まりません。
うつ病の治療法はただひとつ、本人が幸せになること。これしかありません。『脳に免疫力をつければ病気にならない!』 Chapter2 より 苫米地英人:著 徳間書店:刊
うつ病は、そのほとんどが仕事が原因のものです。
苫米地先生も、根本的な治療法は「仕事を替えること」だといいます。
仕事を替えて「自分は幸せだ」と感じれば、うつ症状は良くなります。
仕事は、自分の生活を維持するためにすること。
自分の健康を損なってまでその仕事を続けるのは、本末転倒です。
自分が幸せになるために、何が一番大事なのか。
冷静に考えたいところですね。
毎日「健康だ!」と唱えれば健康になる
人間は1日におよそ100回、自分を定義する言葉を口にし、心の中で発していると言われます。
「疲れた」「だるい」「気分が悪い」などというセルフトーク(独り言)。
それらが強力なエネルギーとして、自分自身を「不健康」の自己イメージに縛りつけます。
自己イメージの構築では、「言語」が大きな影響力を持っています。
自己イメージをいい方向に書き換える。
そのためには、自己対話の中身を、健康的なものへ、ポジティブなものへ変えていけばよい
とのこと。
まず、今日この瞬間から、「疲れた」「だるい」「ストレスだ」「イライラする」などの不健康な独り言は禁止です。最初のうちはまだ「不健康な自分」がコンフォートゾーンになっていますから、「疲れた」「だるい」などと言ってしまうことがあるでしょう。そういうときは、「自分らしくないな」と自分に語りかけてください。新しいあなたは「健康で元気ハツラツ」な人なのですから、「疲れた」などというのは「自分らしくない」ことなのです。ですから、ネガティブなひとりごとをいってしまったときは、「自分らしくないな」と思って、二度と言わないことです。
そして、健康で、元気で、ポジティブな自己対話を習慣にします。朝起きたら「今日も元気だ!」。食事のときは「今日も飯が美味い!」。仕事や家事をしているときは「今日も絶好調だ!」。というぐあいに、ネガティブなセルフトークを一切やめて、いつも「健康だ!」「元気だ!」と唱えること。
それが、「自分は健康で病気とは無縁で長生きする」という確信を生み、「健康で元気いっぱいな自分」に自己イメージを書き換え、「健康で元気な自分」に向かって脳の免疫力が高まる第一歩です。『脳に免疫力をつければ病気にならない!』 Chapter3 より 苫米地英人:著 徳間書店:刊
実際に体が「疲れた」から、「疲れた」という言葉が口をつくのではありません。
「疲れた」という言葉を発するから、体が「疲れた」状態になります。
ネガティブな口癖は、自分で自分の首を絞めます。
ポジティブな口癖に変えて、自己イメージを健康的に書き換えていきたいですね。
楽譜を見ながら楽器を弾こう
脳の老化を防ぎ、健康的な生活を送る。
そのためには、脳機能を維持し、高める必要があります。
苫米地先生は、「脳の機能を上げるということは、IQを上げるということ」だと述べています。
IQを上げるには、脳と体の運動を連動させるとよいことが分かっているとのこと。
機能脳科学の理論では、「情報空間の運動(=脳の運動)と物理空間の運動(=体の運動)を結びつけて同時に行なう」ということです。
もっともよいのは、情報の世界に合わせて体を動かすこと。特に指を動かすのは効果的です。
脳内の神経ネットワークの中で指に関係するものは多数あります。人間は指を器用に使うことで進化してきました。指の運動は脳の運動に直結するといえるくらい重要なのです。具体的には、楽譜を読みながら楽器を弾くこと。これがもっとも脳の機能の維持・向上に役立ちます。楽器という情報空間のシンボルを読み取ることは脳の運動です。その脳の運動が、物理空間で楽器を弾くという体の運動に結びつけられます。これで確実にIQが高くなります。大人になってからも譜面を見ながら楽器を弾くと脳機能の維持に役立ちます。
『脳に免疫力をつければ病気にならない!』 Chapter4 より 苫米地英人:著 徳間書店:刊
苫米地先生によると、「指を早く動かす楽器」が、脳機能を高めるには適しているそうです。
具体的には、バイオリンやピアノなどの楽器がお勧めとのこと。
楽しみながら、脳の機能を高められ、しかも健康にもいい。
これほどお得な趣味は、なかなかないでしょう。
何かひとつ、身につけておきたいですね。
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☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆
苫米地先生は、健康を維持するうえで大事なことは、「健康な体」そのものではなく、「健康な体で何をするか」だとおっしゃっています。
そして、「ゴール(人生の究極目標)を持つ」ことの大切さを強調されています。
健康は、「目的」ではなく「手段」です。
「将来、自分は〜をする」
「将来、自分は〜になる」
そういう前向きで力強い信念を持つことが、健康的な心身の土台となります。
やはり、病は「脳」から。
健康も「脳」から。
「脳の免疫力」を鍛える習慣を身につけ、健康的な人生を送りたいですね。
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