【書評】『中村天風「幸せを呼び込む」思考』(神渡良平)

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 お薦めの本の紹介です。
 神渡良平さんの『中村天風「幸せを呼び込む」思考』です。

 神渡良平(かみわたり・りょうへい)さんは、作家です。
 大学を中退後、新聞記者や雑誌記者を経て、独立されています。

「天風哲学」は生きる知恵に満ちている


 天風先生の教えは、明治から現在に至るまで、数多くの人に多大な影響を与えてきました。
 神渡さんもその恩恵を受けたひとりです。

 神渡さんは、「思考が人生を創る!」という天風哲学をひたすら信じ、回復して社会復帰できることを微塵も疑わずにリハビリに励んだとのことです。
 
「常に心に感謝と歓喜を持って事に当たれば、宇宙のエネルギーが流入する」

 そう教える天風哲学は、生きる知恵に満ちています。
 神渡さん自身も、「どんなに助けられたかわからない」と述べています。

 本書は、そんな天風哲学から人生を切り拓いていくためのヒントを取り出し、解説した一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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自分を信じよ!


 天風先生は、「心の行なう思考は、すべて個人の命の原動力となっている霊魂を通じて、その霊の本源たる“宇宙霊”に通じている。しかもこの“宇宙霊”は一切の万物を創造するエネルギーの本源である(『運命を拓く』中村天風:著 講談社)」と述べて、「思考は人生を創る」と結論づけています。

 神渡さんは、天風先生のこの言葉を、以下のように解説します。

「思考が人生を創る!」とは、何という高らかな宣言だろう。
 このことは誰しも漠然と感じているが、なぜか深くは詮索(せんさく)しなかった。しかし、天風はさらに突っ込んで考え、人間の思考は一切の万物を創造するエネルギーの本源である宇宙霊と直結しているから創造力があるのだと思い至っている。
 この考えに至ったとき、天風は手が舞い、足が踊り出すのをどうにもできなかった。天風の身体を歓喜が走り、次々と笑いがこみ上げてくるのだ。
 だから前節に続けて、さらにこう書いた。これは哲人と呼ばれるに至った天風のもっとも重要なメッセージだ。
「この絶対関係を揺るぎないものにすれば、宇宙エネルギーの受入量が多くなり、人間は期せずして生命の強さを自由に獲得することができる。これはただ単に肉体の生きる力のみではない。このような理解が深くなれば、思考作用の運用方法が、どれだけすばらしいものかがわかると同時に、宇宙霊の創造作用と人間の思考作用とが決して別々のものではなく、むしろ本質的に一つのものであるということが必ず明らかになってくる」
 人間はひ弱な一被造物なのではなく、天地の創造者と一つになることによって、それぞれがますます唯一絶対の存在になるのだ。特に最後の一節、
 「宇宙霊の創造作用と人間の思考作用とが決して別々のものではなく、むしろ本質的に一つのものである」
 は大変な発見であり、確信である。

 『中村天風「幸せを呼び込む」思考』 六 宇宙と創造主と人間 より 神渡良平:著 講談社:刊

 神渡さんは、奇跡とも思えるような天風の数々の所業は、この確信と宇宙霊との一体化から生み出されたものであると指摘します。

 宇宙を動かす絶対的な力、「宇宙霊の創造作用」と人間の思考は、本質的な部分でつながっている。
 それを確信できるかどうかが、“思考を現実化”するカギですね。

誰かのために使えてこそ「いのち」


 天風先生は、人間の心のなかの思い方、考え方、いわゆる「思念力」の力の大きさを繰り返し強調しています。
 神渡さんは、幸せか不幸か、意味あるものか意味のないものになるかは、結局人の心が決めるということの例として、星野富弘さんという画家を取り上げています。

 星野さんは、不慮の事故で頚椎(けいつい)を折り、首から下が動かない全身麻痺となりました。
 生きる意味を失った星野さんに人生の希望を与えたのは、ベッドの脇に生けてある花の写生でした。

 星野さんは、口で絵筆を加えて花の絵を描きながら、様々なことを学んで再び生きる力を得ます。

 星野さんの九年にわたる入院生活中、家に帰ったのはわずかに二回だけというお母さん。生きる意味が見いだせなくて、落ち込んでいた星野さんに、絵筆を口にくわえ、絵を描くことを教えたお母さん。このお母さんは描かれた絵をみたとき、おそらく「へぇっ」と驚かれたのではなかろうか。
 お母さんは星野さんを励まし、生きる力になってくれた。
 だからなずなを描いたとき、こう書き添えた。小さなこぶしのような実がたくさんついていたからだ。

   神様が たった一度だけ
   この腕を 動かして 下さるとしたら
   母の肩を たたかせてもらおう
   風に揺れる
   ぺんぺん草の実を見ていたら
   そんな日が
   本当に来るような気がした

 天馬空を行くがごとく颯爽(さっそう)と生きた天風は、声を嗄(か)らして説き続けた。
「人間はこの地上に贅沢をしに来たのでもないし、病をわずらうために来たのでもない。その人以外にできないことをその人にさせるために、生まれてきているのだ」
 星野さんもこの言葉を実感しているに違いない。

 『中村天風「幸せを呼び込む」思考』 七 宇宙霊のエネルギーとは より 神渡良平:著 講談社:刊

 限られた時間をどう生きるか、何を目指すのか。
 それにより、人生の輝きがまったく違ったものになります。
 人生に意味を与えるのは、自分自身です。

 周りの人や状況のせいにしない。
 与えられた環境の中で自分は何ができるのかを考えていきたいですね。

小さな日常的習慣が大きな力となる


 自分の信念を強化するために、「自己暗示」はきわめて効果があります。

 PHP研究所から出されている天風語録『ほんとうの心の力』に、天風の習慣が紹介されているので引用しよう。
「私は毎晩の寝がけに、
『今日一日、本当にありがとうございました。本当に嬉しく、ありがたく、これからやすませていただきます』、鏡を前に置いて、顔を映して、じいっと顔を見て、『お前は信念が強くなる!』と一言いって、床の中に入る。
 そして、『今日一日、“怒らず、怖れず、悲しまず”を実行したかどうか』『“正直、親切、愉快”に人生の責務を果たしたかどうか』、少しでも自ら省みるところがあったら、『明日は、今日よりも、もっと立派な人間として生きるぞ』ということを心に描く。
 そして、いかなることがあっても、喜びを感じ、感謝を感じ、笑いを感じ、雀躍(こおど)りして喜ぶ気持ちになって、その一刻を過ごすということが、何十年来の私の習慣である。
 そして、朝起きると、まず第一に、ニッコリと笑う。もう、くせがついているから、ひとりでにニッコリと笑う。そして、『今日一日、この笑顔を壊すまいぞ!』と自分自身に約束する」
 知識があればあるほど、自己暗示ということを馬鹿にして等閑視(とうかんし)するものだが、「自分とは何か」という自己像が確立したら、それを自分に刷り込む必要がある。刷り込むのに、自己暗示ほど効果があるものはない。

 『中村天風「幸せを呼び込む」思考』 十 私の使命は教育だ より 神渡良平:著 講談社:刊

 心の底から(潜在意識から)確信する。
 そのためには、日々の小さな習慣を積み重ねることが大事です。

 とくに、一日の最初と終わり(寝る前と起きた後)は大切です。
 気持ちが前向きになる習慣を身につけたいですね。

宇宙の仕組みを知ろう


 神渡さんは、天風先生の箴言(しんげん)から人の心の奥には潜在勢力という驚くべき絶大なる力が与えられているから、それを活用することを工夫すべきであって、いたずらに他に力を求めてはいけないと述べています。

 外に力を求めるより、自分の中に力を求めよ。
 そして、自分を信ずべき。

 そのように強調する神渡さん。

 では、なにゆえ自分を信じるのか。
 現実は、部活ではレギュラーに選ばれなかったし、志望校にも合格しなかったし、恋人にも愛想をつかされ逃げられてしまったし、課長からは怒鳴られてばかりいる駄目な自分なのに、自分の何を信じろというのか。
 そう、そういう現実を見ると、夢も希望もない。けれども天風はそれを承知の上で、自分を信じるんだと励ます。その理由は、人間は万物の霊長として、宇宙霊の持つ無限の力と結び得る奇しき働きを持っているからだという。するとすぐ、
「俺は神とか仏とか信じないんだ」
という拒否反応が返ってくる。拒否反応ほど強いものではなくても、言っていることの意味がわからず、「フーン、そんなものかな?」と軽く受け流してしまう。
 しかし、天風は神仏があるとかないとか、信仰とか何とか言っているのではない。幸せを実現できる宇宙の仕組みを語っている。講演では、よく扇風機と電気の例を用いて説明した。
「扇風機だけじゃ回らないだろう。プラグをコンセントに差し込んだら、初めて回るだろ。おれはそのことを言ってんだ。扇風機は電源とつながらなかったら回らないように、人間も宇宙霊とつながり、そこから活力を吹きこまれなかったら、ただの木偶(でく)の坊になっちまうんだ」

 『中村天風「幸せを呼び込む」思考』 十二 外に頼らず、自分を信じる より 神渡良平:著 講談社:刊

 神仏にひたすら手を合わせて拝んでおれば、ご利益がある。
 天風先生は、そんな「他力本願」的な生き方を極端に嫌いました。

 結果のあるところに必ず原因がある、という「因果の法則」があります。
 それを成り立たせているのが、天風先生のいう「宇宙の仕組み」です。

「宇宙の仕組み」では、自分の人生を導くのは、自分自身の心。
 上手に使いこなしたいところです。

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☆    ★    ☆    ★    ☆    ★    ☆

 神渡さんは、半身麻痺の重病に罹(かか)ります。
 それを乗り越える過程で「目に見えない大きな力」の存在に気づき、今の地位を築かれています。

 神渡さんが天風先生の哲学と出会われたのも、この病気のおかげです。

「人間万事塞翁が馬」。

 何が自分にとっていいことで、悪いことなのか。
 最後になってみないとわからないものですね。

 今はムダだと思っていることでも、いつかそれが役に立つことがあります。
 人生とはそういうものなのでしょう。

 今の状況を、嘆かず、おごらず。
 つねに最善を尽くして日々を過ごしていきたいですね。


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