【書評】『不動心』(松井秀喜)

LINEで送る
Pocket

 お薦めの本の紹介です。
 松井秀喜さんの『不動心』です。

 松井秀喜(まつい・ひでき)さんは、元プロ野球選手です。
 読売ジャイアンツ(巨人)では日本を代表する長距離バッターとして活躍しています。
 その後、FAで大リーグに渡り、ニューヨーク・ヤンキースなどでプレー、2012年シーズンを最後に引退されています。

「生きる力」とは困難を乗り越える力


 長年にわたり、日米の人気球団の主軸として活躍した松井さん。

 ヒットでも、凡打でも、表情ひとつ変えず、豪快にバットを振り続ける。
 その姿は、多くのファンを魅了しました。

 松井さんは2006年、試合中に、左手首を骨折するという大怪我を負います。
 この選手生命の危機ともいえる大ピンチも、不屈の精神力で見事に克服。

 再びメジャーリーグのフィールドに戻り、見事な復活劇を演じています。
 2009年のシーズンにはプレイオフで大活躍し、ポストシーズンのMVPにも輝きます。

 言葉や文化の壁を乗り越え、日本のみならず米国でも同僚や多くのファンに愛された松井さん。
 彼にとって「生きる力」とは、成功を続ける力ではなく、失敗や困難を乗り越える力です。

 彼の野球人生は、どんな技術やパワーよりも、逆境に強い力を持った選手になりたいという、自らの願いを体現したものでした。
 
 本書は、不屈の精神力を培ってきた考え方や気の持ち方、メンタルな部分での自己コントロール法について解説した一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

スポンサーリンク
[ad#kiji-naka-1]

悔しい思いは口に出さない


 松井さんは、もともと気持ちの切り替えがうまい方ではありません。
 逆転のチャンスで打てなかったり、絶好球を打ち損じたりすると、引きずるタイプでした。

 そこで、打ち損じて、思わず悔しくて嘆きたくなる時、一つのルールを決めました。
 そのルールとは、「安易に口に出さないこと」です。

 悔しさは胸にしまっておきます。そうしないと、次も失敗する可能性が高くなってしまうからです。コントロールできない過去よりも、変えていける未来にかけます。
 そう思っていなければ、失敗とは付き合っていけません。プロ野球選手として毎日、毎日、試合に出続けられません。何しろ、成功より失敗の方が多い職業ですから。
 もちろん、色々なタイプの人がいます。選手の中には、思い切り口に出して、すっきり忘れる人もいます。仕事の不満や愚痴も、口に出してすっきりする人もいれば、逆に口に出すと憎しみが倍増してしまう人もいるでしょう。
 腹が立ったり、不満が出てきたりするのは、仕方ありません。思ってしまうのだから、自分にも止められない。でも、口に出すか出さないかは、自分で決められます。そこに一線を画した方が、自分をコントロールできるような気がします。

  『不動心』 第2章 より 松井秀喜:著 新潮社:刊

 悔しさ、怒りなどの「負の感情」のエネルギー。
 それらも自分の中に溜め込み、圧力を高め、前に進む推進力として利用したのでしょう。

 愚痴を言っても、他の人の悪口を言っても、自分の置かれている状況は変わりません。

 苦しい思い、悔しい思いを胸にしまって自分の力に変える。
 見習いたいところですね。

162試合、同じ姿勢で臨む


 大リーグのシーズンは、日本より20試合ほど多い162試合を戦います。
 連戦続き、しかも移動距離、日本とは比較にならないくらい過酷です。

 厳しいシーズンを乗り切るために、松井さんが立てた目標。
 それは、「162試合すべてに同じように臨む」でした。

 ここで一打出れば勝てる、という場面で打席が回ってきたとします。何を考えますか。ヒットを打ちたいと思うでしょう。ホームランを打ちたいと思うでしょう。僕にも、そうした思いが頭をよぎります。
 しかし、「打ちたい」と強く願ったからといって、打てるわけではありません。もしも、願いの強さで結果が変わってくるならば、いつも念じます。それこそ400打席同じように念じて、400本塁打を打ちたいです。
 しかし、結果を左右するのは、願いの強さよりも「平常心」ではないかと思います。400打席、同じような心境で打席に入れるかどうか。
 一打出れば勝てるという場面では、相手投手にとっては、一打浴びれば負ける場面です。ピッチャーとバッターのどちらがより「平常心」で臨んでいるかが、勝負の分かれ目になるような気がします。
 チャンスに強いバッターというのは、要するに、ここぞという場面でも「平常心」を保てる選手ではないでしょうか。だから、僕は162試合同じように準備して、すべて同じ心境で打席に入りたいと思っています。ここぞという場面で打つためにです。

 『不動心』 第3章 より 松井秀喜:著 新潮社:刊

 いつも同じ心の状態でいること。
 簡単なようですが、非常に難しいことです。

 試合を決定づける緊迫した場面になるほど、精神的な面で勝負が決まります。

 ここぞという場面でも「平常心」でいられる。
 そんな人が勝負強いのはもちろん、周りの人に安心感も与えますね。

継続は力なり!


 松井さんは、「たとえ草野球でも負けたくない」というほどの負けず嫌いです。

 野球というスポーツにのめり込めんだこと。
 それが松井さんが超一流の野球選手にまでなった最大の理由です。

 好きな野球で常に勝ちたい。「好きこそものの上手なれ」とよく言います。ありふれた言葉でも、物事の核心をついていると思います。僕は野球が好きで、心から勝ちたいと思っているから、そのために自分がどうやってパフォーマンスを上げたらよいかを必死で考える。そして、何かを犠牲にしてでも汗を流そうと思う。
 これは、どんなことでも同じだと思います。よい医師になろうと思ったら、そのために必要なことは何かを真剣に考えるし、努力もするでしょう。よい医師になれるかどうかの最大のポイントは、才能よりもむしろ、そうなりたいという欲がどれくらい強いかだと思うんです。心からそうなりたいと思えば、その過程で自分に欠けているものが何かを考え、それをおぎなうための努力をする。野球選手も一緒で、野球が本当に好きで絶対に勝ちたいと思うかどうかが大事だと思うんです。

 『不動心』 第4章 より 松井秀喜:著 新潮社:刊

 スキルを上達させるコツは、上手くなるためのトレーニングを継続することです。

 継続するために最も大事なことは、「本当に好きなことをすること」です。

 何かを犠牲にしてでも汗を流せる。
 夢中になれることに打ち込んでいる人は、誰でも輝いてみえますね。

個人よりチームの勝利を


 松井さんは、常々「フォア・ザ・チーム」を強調します。
 たとえ自分が活躍して試合に勝ったときも、自分の力で勝った、と思ったことはないとのこと。

 チームの勝利のために自分がすべきことを考えて打席に入ることが、結果として、自分の成績にもプラスにも作用している。これがすべてです。
 2005年のシーズン、ヤンキースとレッドソックスの優勝争いは、最後までもつれました。僕がニューヨークに来てからの三年間で、最も終盤まで気が抜けないシーズンでした。
 そしてこの年、僕は大リーグに来てから初の三割をマークしました。相手投手に慣れてきたということもありますが、緊迫した舞台でチームの勝利を目指し、最後まで無我夢中でバットを振った結果が、この数字につながったという気がするのです。
 確かに、「僕らはプロ。結果が出なければクビ」です。結果を出すことが、何よりも求められます。そして僕にとっては、結果を出すための何よりの近道が、チーム最優先の打撃をすることなのです。

 『不動心』 第5章 より 松井秀喜:著 新潮社:刊

 周りの刺激を受けながら、チームにとって必要なプレーを磨く。
 そうすることで、自分のスキルがより高まっていく。

 それが最も自分が成長できる方法だということ。
 個人の成績よりもチームの勝利を最優先する、松井さんらしい考え方ですね。

スポンサーリンク
[ad#kiji-shita-1]
☆    ★    ☆    ★    ☆    ★    ☆

 松井さんの母校、星稜高校の室内練習場に、以下の言葉が掲げられているのは有名です。
 
    心が変われば行動が変わる
    行動が変われば習慣が変わる
    習慣が変われば人格が変わる
    人格が変われば運命が変わる


 松井さんは、この言葉通り、野球に打ち込むことで、自らの運命を変えました。
 その土台となったのが、どんなときも変わらない心の状態、すなわち「不動心」です。

 どっしりと構えて「自分の道は自分で切り開く」。
 私たちも松井選手を見習い、その信念を持っていたいですね。


にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ(←気に入ってもらえたら、左のボタンを押して頂けると嬉しいです)

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 15

フォローする

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA