本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ

本を読むことは、心と体に栄養を与えること。読むと元気が出る、そして役に立つ、ビタミンたっぷりの“おいしい”本をご紹介していきます。

【書評】『7つの動詞で自分を動かす』(石黒謙吾)

 お薦めの本の紹介です。
 石黒謙吾さんの『7つの動詞で自分を動かす – 言い訳しない人生の思考法』です。



 石黒謙吾(いしぐろ・けんご)(@ishiguro_kengo)さんは、著述家・編集者です。
 作家として幅広いジャンルの著書を多数お書きになっています。

「動詞」で能動的に考える

 会社に一度も属さずに、フリーランスとして趣味的なお金にならない本ばかりを書いてきたという石黒さん。
 お金がなくて当たり前の生活を続け、50歳を超えて貯金ゼロ、借金たくさん。
 それでも毎日、対人関係などのストレスはほぼない状態で過ごすことができていて幸せだととのこと。

「愚直に動くこと それは誰だってできる簡単な問題解決法」である。
石黒さんは、この言葉を胸に、自らから行動を起こすことで人生を切り開いてきました。

 そんな石黒さんから見ると、今の日本の人々は、「待ちの姿勢」が浸透してしまっていると危惧しています。
 受動的な姿勢から立ち上がり、自分自身の背中を押す。
 そのためにすべきことは、自分の意識を変えること。
 具体的には、〈名詞で受動的に考える〉から〈動詞で能動的に考える〉へ、意識のスイッチを切り替えることです。

 石黒さんは、その入り口として、「ぶつける」「分ける」「開ける」「転ぶ」「結ぶ」「離す」「笑う」の7つの動詞を挙げています。
 自分という「車」は自分自身が動かさないと走り出しません。
 車を駆動させるためのいろいろなパーツがこの7つの動詞とのこと。
 ここでは、その中から3つの動詞を取り上げてご紹介します。

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「ぶつける」

「ぶつける」は、車の部品に例えると最も重要な心臓部、「エンジン」です。
 能動的な動詞の中で、もっと重要なのが、この「ぶつける」です。
 石黒さんは、この気持ちを持たずして自分を動かすのは無理と断言します。
 石黒さんは、中堅のライターさんなどから出版社や編集者の仲介を頼まれても、ほとんど断ってしまいます。
 その理由は、その人のためにならないからです。

 自分の出したい本はどんな出版社に向いているかは、書店に行って自分の書きたいジャンルの売り場の棚を観て、自分で見つけ出せばいい。目星をつけたらダイレクトに電話する。メールする。郵送する。その熱意は伝わるときは伝わるだろうし、伝わらなければ、また、縁のある人に巡り合わなければ、さっさと次にいけばいいんですから。
 難しいテクニックはひとつもありません。ただ、たんたんと、愚直にぶつけるだけ。それは誰にでも、今すぐできること。
 それができないぐらいなら、本が出したいという言葉は本物じゃないのです。超シンプルなこと。実際に僕自身はなんの縁もゆかりもない出版社にそうやって1軒1軒電話をかけて会ってもらい、新しく企画を出せる出版社を開拓してきました。

 加えて、その人がぶつかって人脈を築いていくことに意味がある。紹介してもらうことも悪くありませんが、まずそれを期待してばかりの「好意依存症」では、構築していく人間関係がゆるいものになる恐れがあるのです。自分で苦労して建てていけば崩れないし、トンカチとノミをふるって建てた経験があれば、どんどん自分で増築していけますから。
 つまり、企画をぶつける以前に、人にぶつかるという気持ちでいてほしいです。

  『7つの動詞で自分を動かす』 第1章 より  石黒謙吾:著  実業之日本社:刊

「ぶつける」思考の感覚をイメージするのに最も適しているのが、ラグビーのタックルです。
 倒れても倒れても起き上がってタックルし続けるラガーマン。
 彼らのように、諦めず愚直にぶつけ続けること。
 そこからすべてが始まるということです。

「開ける」

 「開ける」は、自分という車を動かす第一歩である「アクセル」です。

 「開ける」という行為は、扉という対象物を開ける行為です。
 鏡と同じく、自分の心にも同じことが返ってくる、つまり、自分自身の心を開けることにもなります。
 未知の場所の扉を開けるということは、「外向きな開ける」ことです。
 そうすることで、そこで出会う人たちを自分の中に迎え入れる「内向きな開ける」の準備が始まります。

 心を開いた状態、オープンマインドになるには、自分から「開ける」という行動をとることが何よりも重要です。

 相手が心を開いてくれないと言っている人のほうが心を開いていないケースもあるのでしょうね。自責として捉えず他責と決めつけてしまうとそうなりがち。自分の心を開ければ、ポンプの弁が開いて水が入ってくる状態となると思います。
 かといって、すべての人間が、もし自分の100%腹を割ったところで割ってくれるなんて思ってはいませんよ。それは性善説というかそうあってほしいという理想論という気がします。
 しかし、自ら腹を割っているか検証、自己分析を意識することで、もっともっとカッコつけない自分に向かって進みたいと。せめてそれだけは携えておかないと、社会的な強みは何もなくただがむしゃらに進んできただけの自分は、人から信頼していただけるようにはならないと思うからです。
 今まで僕が接してきた多くの人でも、とっつきやすくて親近感の湧く人、あっという間に人間関係を築ける人ほど、腹を見せるのがうまい人だと感じます。そういう人は、ストレスフリーで心地よく生きようと自然にそう振る舞っている。その結果として楽しさが滲み出て、これまた自然に周りに人を呼び込んでいます。

  『7つの動詞で自分を動かす』 第3章 より  石黒謙吾:著  実業之日本社:刊

 相手は自分を映す鏡である、と言う人もいます。
 自分が相手に対して感じた通りに、相手も自分に対して感じてしまう。
 人間の感情には、そのような仕組みがあるのかもしれません。
 相手の心を開くには、まずすべきことは自分から心を開くこと。
 意識したいですね。

「転ぶ」

「転ぶ」は、車に例えると「タイヤ」です。
 いつも重い車を支え続けているのがタイヤです。
 人間の心を目立たない一番根っこで支えているのが、「転ぶ」という体験です。

 一方、石黒さんは、「心が折れる」という言葉が大嫌いです。
 心が折れないようにするためには、倒れてしまえばいいのに、それをプライドが邪魔して「折れる」と言ってしまうのだろう、と述べています。

「折れる」というのは途中からぽきっと折れますが、「転ぶ」は根っこから倒れる。そこが大きない違いです。

 根っこから倒れると、根っこからなんとかしようとします。でも途中から折れたものをつなぐのは単なるその場しのぎ。つまり、根本を治そうとしなければ、いつまで経っても大きい木にならないということです。

 そもそも、そんな簡単に心が折れるわけがない。確かに自殺者が年間3万人という日本では、精神を病む人が多いのでしょう。ここについては門外漢の僕が分析などできているわけでは当然ありません。しかし、やはりこの言葉が(J-POPの歌詞とかから? 笑)若者中心に当たり前のように使われるようになってから、ぶつかっていくムードが減少しているように感じています。
 心が傷つきたくないという言葉は昔からあったし、それはみんなそうでしょう。
 でも、それと、心が折れる、は違います。ぽきっと折れてしまうなんて再生不可能じゃないですか。そんな言葉を口にすることで、自分にネガティブの極限を刷り込んでどうするんですか。僕は身近な人がこう言ったら、ウザがられるなと思っても熱く強くそう言葉を叩きつけます。

  『7つの動詞で自分を動かす』 第4章 より  石黒謙吾:著  実業之日本社:刊

 「転ぶ」という表現が、何となく失敗するというイメージを含んでいるからでしょうか。
 無難に、失敗しないように、という時代の雰囲気を反映しているのかもしれませんね。
 しかし、折れるまで頑張るより、その前に転んで倒れてしまった方がダメージが小さくて済むこともたしかです。
 何度も転ぶと、転ぶことに慣れてきます。
 転ぶことに不安がなくなると、思い切って動くことができるようになります。
 やはり、学ぶべきは「転ばないための方法」ではなく「上手に転び方」なのでしょう。

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 石黒さんは、『自分を動かす根っこには、「捧げる」という動詞がある』とおっしゃっています。
 つまり、能動的に動くには何事も見返りを期待してはいけないということ。
 対価を求めずに他者に感謝していれば、自然とそれが相手に伝わって必ず返ってくるのだ、と強調します。

 「捧げる」は、車に例えるとガソリンのようなものなのかもしれません。
 その中に「感謝の気持ち」という成分が増えれば増えるほど、より質が高く効率の良い動力源になるのでしょう。

 人間は生きている以上、心も体も動くしかない宿命です。
 本書で取り上げられている7つの動詞をフルに動かすことで、能動的で健康的に力強く人生を突っ走っていきたいものです。

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