本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ

本を読むことは、心と体に栄養を与えること。読むと元気が出る、そして役に立つ、ビタミンたっぷりの“おいしい”本をご紹介していきます。

【書評】『「キャリア未来地図」の描き方』(原尻淳一、千葉智之)

 お薦めの本の紹介です。
 原尻淳一さん、千葉智之さんの『「キャリア未来地図」の描き方』です。



 原尻淳一(はらじり・じゅんいち)さん(@junichiharajiri)は、本業のマーケティングコンサルタントのかたわら、セルフブランディングの学校でメイン講師を務められるなど幅広くご活躍されています。
 千葉智之(ちば・ともゆき)さん(@chibatomo)は、総合メディア企業で戦略立案などを担当されています。
 また、『出逢いの大学』学長という別の顔もお持ちです。

転職でも、起業でもない、新しい人生を歩み方

 先行きが不透明な今の時代、自分の将来について不安を覚える人は多いのではないでしょうか。
 勤めている会社がいつまで続くのか、リストラに遭ってしまわないか、などなど。
 今の仕事や職場に満足できない、もっと収入を増やしたい、そう思って転職をしようにも、色々なリスクを考慮するとなかなか実行に踏み切ることはできません。

 これまでの一般的な会社人生だけの一本道キャリアは“二者択一”の選択肢しかありませんでした。
 つまり、今の会社を続けるのか他の会社に転職するのか、会社勤めを続けるかのか独立起業するのか。
 常にどちらか一方を選ばなければならない「OR」の人生です。

 一方、著者はそのような生き方とまったく別の生き方もある、と提案しています。
 それが本業を疎かにせずに、もうひとつの人生をかけて追求する「何か」を持つ生き方、二つ以上の道から「選びながら」進んでいく「AND」の人生です。

 本書は、「キャリア未来地図」という手法を用いて、仕事も趣味も家庭もうまくいく「AND」の人生を模索する方法をまとめた一冊です。
 ここでは、核となる部分をいくつか取り出してご紹介します。

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「ライスワーク」と「ライフワーク」

「ライスワーク(rice-work)」は、ご飯を食べていくための活動のこと。
「ライスワーク(life-work)」は、夢や自分の好きなことを追い求める活動のことです。

 「OR」の人生では、この二つは両立することは難しいです。
 しかし、「AND」の人生では、むしろこの二つは車の両輪のように対になって、前に押し進む原動力となる、と述べています。

 ライスワークでは「やりがい」を、そしてライフワークでは「生きがい」を。二つの車輪を回すことでスキルやモチベーションを相互に移動させ、シナジーを生み出す。プラスをさらにプラスにするだけではなく、たとえライスワーク上の失敗で落ち込んだり凹んだりしているマイナスのときでも、ライフワークからエネルギーを充填してモチベーションを保ち続けることができます。少なくとも原尻、千葉はそうしてきました。

 僕らからの提案は、働き方をウンヌンするキャリアデザイン論からの脱出です。オンとオフとを峻別するような発想でもない。人生や生活をまるごと、一体的にカバーするような包括的な意味での「キャリア」という概念を定義し直したいのです。
 「AND」発想なら、人生にいくつもの道を走らせることができるはず。会社にいる自分だけでなく、もう一人の自分もカタチにする。人生の主役はいつだって自分なのですから。

 『「キャリア未来地図」の描き方』  第1章 より  原尻淳一、千葉智之:著   ダイヤモンド社:刊

「AND」発想の人生では、ライスワークとライフワークがからみ合い、「キャリアのらせん二重構造」を描きながら、公私共に成長していくことが目標となります。<

「消費」と「創造」の境目について

「AND」発想の人生を考える上で重要になるのは、「創造」することです。
 「消費」とは何も生み出さない行動、「創造」は新たな価値を生み出す行動のことです。
 「AND」発想の人生を考える上で意識すべきことは、ライスワークでもライフワークでも「創造」することです。
 ライスワークは、ルーチンワークなどの単純労働は「消費のライスワーク」、新しい工夫や知恵を加えて新しい価値を生み出す仕事は「創造のライスワーク」という2つに分けることができます。
 ライフワークも、自分だけで楽しむ単なる娯楽や趣味は「消費のライフワーク」、自分以外の誰かに何らかの価値を与えられる特技といえるようなものは「創造のライスワーク」として分けることができます。

 著者は、「消費」から「創造」へシフトするときのコツを以下のように述べています。

 消費から創造へシフトするときのコツを二つほど。
 一つ目は、小さくても創造的な工夫を積み重ねること。いきなり大きな創造性が発揮されることはなくて、小さな創造性が結びついて・・・・そして化ける。いざ大きなプロジェクトを任されたときに役に立ちます。十数年働いてきて、自分自身を含めていろんな人を見てきての実感です。だから、小さな仕事をバカにしてはいけない!

 二つ目は、一歩でも、半歩でもいいから主体者、当事者の側に踏み込んでみること。「観戦者」から「プレイヤー」になる。「参加する」より「主催する」。次元の違う楽しさを体験できるはずです。
 創造活動の喜びはやってみて初めて感じるセカイです。小さな関与が最初の一歩ですが、その一歩はビジネス上で起こる大きな創造へ踏み込むステップになります。

 『「キャリア未来地図」の描き方』  第2章 より  原尻淳一、千葉智之:著   ダイヤモンド社:刊

 例えば、楽器の演奏では、ただ自分が楽しんでやっているだけならば「消費のライフワーク」です。
 それをもう一歩踏み込んで、人前で演奏できるようになると「創造のライフワーク」にまで発展させることができます。
 「AND」の人生を歩むためには、ライスワークでもライフワークでも、「消費者」と「創造者」の間の壁を越えることが重要となります。 

「ライフワーク」×「創造」=「特技」

 著者は、「AND」発想のキャリアデザインの全体像のことを「キャリア未来地図」と呼びます。
 キャリア未来地図は、「ライスワーク」、「ライフワーク」をそれぞれ「創造的なもの」「消費的なもの」に区分けし、4ゾーンに分けたものです(下図を参照)。

 

キャリア未来地図⑤

      『「キャリア未来地図」の描き方』 P95 より抜粋 

 例えば、この図の右上の「特技」の領域は「ライフワーク」×「創造」と考えることができます。
 著者は、「特技」の領域を持つ意義について、以下のように述べています。

 ライフワークで「特技」を持ち、周囲を喜ばせ、創造を楽しむ人は贈与経済のプレイヤーになります。自分の「特技」を持ち、周囲を喜ばせ、創造を楽しむ人は贈与経済のプレイヤーになります。自分の「特技」が評価され、さらに研ぎすまされただけまた周囲から感謝され、結果、小さいながら経済が回り始めることでしょう。
 (中略)
 ライフワークをそのまま本業にする必要がありません。まずは「趣味」を「特技」に。そして積極的にプレゼントしましょう。プレゼントすることで自分の心が満たされるだけでなく、周囲の人々も多少なりとも満たさせることになります。豊かさの正体は、自分が満たされることにあるのではありません。相手≒コミュニティに価値を提供することで、相手から感謝され、お返しがくる。

 『「キャリア未来地図」の描き方』  第2章 より  原尻淳一、千葉智之:著   ダイヤモンド社:刊

「趣味」を「特技」に“昇格”させるためには、それなりの専門性が備わっていることが条件になります。
 つまり、厳しい目に曝されて、その評価に耐えられるようなものでなくてはいけないということです。
 評価されることから逃げずに創造活動を楽しんで続けていくことが秘訣とのことです。

ダイナミックな「AND」発想キャリアデザイン

 現状認識と未来をデザインする。
 そのためには、キャリア未来地図の4つのゾーンを「何で埋めるか」「どうやって埋めるか」を考えることが大切です。

 「AND」発想の人生では、キャリア未来地図の4つのゾーンすべてをクリアすることが理想となります。

 著者は、目指すキャリア像を実現し、自分自身と周囲とに対して変化を起こす原動力の正体は、本質的な「ノウハウ」と物事をやり遂げるための「エネルギー」だと考えています。
「ノウハウ」と「エネルギー」は区別されているものではなくて、交じり合う液体のようなもので、4つの箱(「労働」「仕事」「趣味」「特技」の4つのゾーン)を自由自在に動く「水」とイメージして考えればわかりやすいです。
 有限な資源である「水」をどの箱にどれくらい、どのように配分するかが極めて重要です。
 著者は、「OR」発想と「AND」発想での成長シナリオの違いをキャリア未来地図を用いて比較し、以下のように述べています。

 また成長シナリオの観点から「OR」マップを見ると、こうなります(左下図参照)。ライスワークの中では、タテヨコに動くことができて“順調”に成長していくことが可能でした。でもライスとライフを隔てる壁は厚く、大きくヨコに動くことは難しい構造です。もちろん、会社の枠を超えたネットワークを構築して大活躍した人もいるわけですが、その人脈もライスワークのためだけに使われていたケースがほとんどなのだと思うのですね。ある意味それは当然で、ライフワークからは「報酬」をもらうことが考えにくかったからでもあります。投資をしてもリターンがなければ、本気にもなれない。ライスワークだけに限定された「OR」の世界を「一本道キャリア」と僕らが名付けた理由が見えたでしょうか?

 それに比べて、「AND」発想で描くキャリアデザインはこうもダイナミックです(右下図参照)。基本はライスワークにあるべきだと思うのです。ここは「OR」発想と変わらないところですが、ライスワークの成長にもライフワークで培ったリソースを活用してしまおう、と考えるのが「AND」らしさ。ライフワークで消費を越え、創造領域に入っていけば、ノウハウや知見、あるいは人的ネットワークのような“水”があふれてライスの方へこぼれてきます。

 『「キャリア未来地図」の描き方』  第4章 より  原尻淳一、千葉智之:著   ダイヤモンド社:刊

キャリア未来地図⑨ キャリア未来地図10
     『「キャリア未来地図」の描き方』 P172~173 より抜粋
 

「AND」発想では、創造領域でのライスワークとライフワークの境目があいまいでお互いに循環しあっているため、両者の間でノウハウの融通が可能です。
「タテ」だけではなく、「ヨコ」の広がりも意識してキャリアデザインすることで、生き方の選択肢を一気に増やすことができるということですね。 

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 人生において、進むべき道は一本ではありません。自分の進むべき道を自分でデザインするという発想は、自分の可能性を広げるという点でとても大きな意味を持ちます。

 著者は、最後に社会が大きく変わりつつある今、必要なのは「たくましさ」である、と述べています。
 それは、所属する組織や会社がなくても生活していける個人としてのたくましさのことです。
 自分の長所や特技を磨き、それを自分軸として生きていく、そんなしたたかなたくましさを身につけることがますます重要となってきますね。

 「キャリア未来地図」を描くことは、たくましい自分になるための大事な最初のステップになります。
 僕らも自分の好きなこと、本当にやりたいことは何かを見つめなおし、それを生かした「自分にしかできない人生」を歩んでいきたいですね。

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