【書評】『超訳 ニーチェの言葉』(白鳥晴彦)

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 お薦めの本の紹介です。
 白取春彦さんの『超訳 ニーチェの言葉』です。



 フリードリヒ・ヴィルヘルム・ニーチェ(1844年~1900年)は、19世紀を代表するドイツの哲学者です。

ニーチェの思想は「生の哲学」


 19世紀までの西欧での絶対的価値と真理は、キリスト教道徳でした。
 しかしニーチェは、キリスト教道徳はありもしない価値を信じさせる宗教だと解釈し、真っ向から否定しました。
 そして、もっとこの世における真理、善、道徳こそ大切だと強く唱え、『今生きている人間のための哲学』を打ち出します。

 より充実した意味のある人生を送るにはどうすればいいか。
 ニーチェは、生涯をかけて「生きること」の意義を突き詰めていきます。
 そのためニーチェの思想は、「生の哲学」とも呼ばれます。

 ニーチェの哲学は決して難しいものではありません。
 簡潔で分かりやすいからこそ、その言葉は物事の本質を突き、読む人の心に刺さります。

 ニーチェの名が今なお世界的に知られている理由は、その洞察力の鋭さによるところが大きいです。
 訳者の白鳥春彦さんはニーチェの言葉は、急所を突くような鋭い視点、力強い生気、不屈の魂、高みを目指す意思が新しい名文句とも言える短文で発せられるから、多くの人の耳と心に残ると指摘します。

 本書は、膨大なニーチェの遺した言葉の中から、現代の人のためになるものを選りすぐってまとめた一冊です。
 印象に残ったものをいくつかピックアップしてご紹介します。

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はじめの一歩は「自分への尊敬」から


「己」について。
 ニーチェは、徹底的に自分自身を肯定することを求めます。
 自分自身の価値に気づくこと、それが自分自身に力を与えることだと強調しています。 

 自分はたいしたことがない人間だなんて思ってはならない。それは、自分の行動や考え方をがんじがらめに縛ってしまうようなことだからだ。
 そうではなく、最初に自分を尊敬することから始めよう。まだ何もしていない自分を、まだ実績のない自分を、人間として尊敬するんだ。
 自分を尊敬すれば、悪いことなんてできなくなる。人間として軽蔑されるような行為をしなくなるものだ。
 そういうふうに生き方が変わって、理想に近い自分、他の人も見習いたくなるような人間になっていくことができる。
 それは自分の可能性を大きく開拓し、それをなしとげるにふさわしい力を与えることになる。自分の人生をまっとうさせるために、まずは自分を尊敬しよう。

                                   『力への意思』

  『超訳 ニーチェの言葉』  Ⅰ より   フリードリヒ・ヴィルヘルム・ニーチェ:著   白鳥春彦:訳   ディスカヴァー・トェンティーワン:刊 

 他人ではなく、自分を人間として尊敬する。
 そこからすべてが始まります。
 自分の「外側」ではなく、「内側」に存在価値を認めること。
 既存の宗教的な価値観を壊そうとしたニーチェの思想をよく表していますね。

人生を最高に旅せよ


 ニーチェは、「旅」を「人生」にたとえて以下のように述べています。

 知らない土地で漫然と行程を消化することだけが旅行だと考える人がいる。買い物だけをして帰ってくるのが旅行だと思っている人もいる。
 旅行先のエキゾチックさを眺めるのをおもしろがる旅行者もいる。旅行先の出会いや体験を楽しみにする旅行者もいる。一方、旅行先での観察や体験をそのままにせず、これからの自分の仕事や生活の中に活かして豊かになっていく人もいる。
 人生という旅路においてもそれは同じだ。そのつどそのつどの体験や見聞をそのとき限りの記念品にしてしまえば、実人生は決まり切った事柄のくり返しになってしまう。
 そうではなく、何事も明日からの毎日に活用し、自分を常に切り開いていく姿勢を持つことが、この人生を最高に旅することになるのだ。

                                           『漂泊者とその影』

  『超訳 ニーチェの言葉』  Ⅲ より   フリードリヒ・ヴィルヘルム・ニーチェ:著   白鳥春彦:訳   ディスカヴァー・トェンティーワン:刊 

 人生は何気なく暮らしていると、あっという間に過ぎ去ってしまいます。
 アンテナの感度を高く、新しい発見をしながら、毎日を過ごしていきたいですね。

「飽きる」のは、自分の成長が止まっているから


 「成長」について。
 ニーチェは、「飽きる」という心理状態についても鋭い考察を行っています。

 なかなか簡単には手に入らないようなものほど欲しくなるものだ。
 しかし、いったん自分のものとなり、少しばかり時間がたつと、つまらないもののように感じ始める。それが物であっても人間であってもだ。
 すでに手に入れて、慣れてしまったから飽きるのだ。けれどもそれは、本当は自分自身に飽きているということだ。手に入れたものが自分の中で変化しないから飽きる。すなわち、それに対する自分の心が変化しないから飽きるのだ。つまり、自分自身が成長し続けない人ほど飽きやすいことになる。
 そうではなく、人間として成長を続けている人は、自分が常に変わるのだから、同じものを持ち続けても少しも飽きないのだ。
          
                                          『悦ばしき知識』

   『超訳 ニーチェの言葉』  Ⅳ より   フリードリヒ・ヴィルヘルム・ニーチェ:著   白鳥春彦:訳   ディスカヴァー・トェンティーワン:刊 

「転がる石には苔はつかない」という諺もあります。
 「飽きる」とは、外側状況を指すのではなく、自分自身の心の状態を指します。
 常に動き続けること、変化し続けること。
 それが「飽きる」ことから脱する唯一の方法ということです。

夢の実現に責任を持て


 ニーチェは、「夢」を持つことの重要性を指摘し、その実現に全力を尽くせ、と強調します。

 きみはそんなことに責任をとろうとするのか。しかし、それよりも自分の夢の実現に責任をとったらどうだろう。
 夢に責任をとれないほど弱いのか。それとも、きみには勇気が足らないのか。
 君の夢以上に、きみ自身であるものはないのに。
 夢の実現こそ、きみが持っている精一杯の力でなすべきものではないのか。
   
                                       『曙光』

  『超訳 ニーチェの言葉』  Ⅶ より   フリードリヒ・ヴィルヘルム・ニーチェ:著   白鳥春彦:訳   ディスカヴァー・トェンティーワン:刊 

 自分の抱く夢を実現する力を自分の中にすでに持っている。
 ニーチェはそう言いたいのでしょう。
 自分自身の可能性を信じろ。
 ここでも、ニーチェは僕らの背中を強烈に後押しします。

絶えず進んでいく


 ニーチェは、「過去」ではなく、「現在」そして「未来」のみを見よ、と強調します。

 「どこから来たのか」ではなく、「どこへ行くのか」が最も重要で価値あることだ。栄誉は、その点から与えられる。
 どんな将来を目指しているのか。今を越えて、どこまで高くへ行こうとするのか。どの道を切り拓き、何を創造していこうとするのか。
 過去にしがみついたり、下にいる人間と見比べて自分をほめたりするな。夢を楽しそうに語るだけで何もしなかったり、そこそこの現状に満足してとどまったりするな。
 絶えず進め。より遠くへ。より高みを目指せ。
 
                                  『ツァラトゥストラはかく語りき』

   『超訳 ニーチェの言葉』  Ⅹ より   フリードリヒ・ヴィルヘルム・ニーチェ:著   白鳥春彦:訳   ディスカヴァー・トェンティーワン:刊 

「どこへ行くのか」
 それを決めるのはあくまで自分です。
 つねに「過去の自分」を超えていこうという姿勢。
 それこそがニーチェから僕らが学ぶべきことでしょう。

 「絶えず進め。より遠くへ。より高みを目指せ。」
 この言葉は、心に刻み込んでおきたいですね。

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☆    ★    ☆    ★    ☆    ★    ☆

 百年以上前に亡くなったニーチェ。
 しかし、著書に遺された言葉は、変わらずにエキサイティングでエネルギーに満ちていています。
 ニーチェ自身が周りの批判を気にせずに、より高みを目指して独自の道を切り拓いてきたからに他なりません。
 その「生きること」への真摯な姿勢が、現代の読者にも共感されているということでしょう。
 先の見えないこの時代、大きな不安を感じ、なかなか一歩が踏み出せない僕らを強烈に後押しする力強さがあります。

 時代を超えて読み継がれるものには、それなりの理由があります。
 ときどき開いて、刺激に溢れた言葉で自分を奮い立たせたい。
 そんな熱さが感じられる一冊です。



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