【書評】『部下を育てる「承認力」を身につける本』(吉田幸弘)

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 お薦めの本の紹介です。
 吉田幸弘さんの『部下を育てる「承認力」を身につける本』です。


 吉田幸弘(よしだ・ゆきひろ)さんは、大学卒業後、大手旅行代理店に入社、その後、管理職としていくつかの企業に在籍されています。
 現在は独立されて、経営者や中間管理職向けのコミュニケーション術やマネジメント術を伝えるコーチとしてご活躍中です。

「相手を承認すること」の重要性


 コミュニケーションにおいて最も大切なこと。
 それは、「お互いを認め合う」「相手を承認する」ことです。

 人は誰でも、「他人から認められたい」という欲求を持っています。

 吉田さんは、自らの経験も踏まえ、「メンタルヘルス」や「パワーハラスメント」などの精神面の労働問題の多くは、上司が部下を認めていないことから起こっていると指摘します。

 部下が思い通りに動かないのも、たいていは、上司の態度や指示の仕方に問題があります。

 吉田さんは、部下を承認して最大限の力を発揮させる能力のことを、「承認力」と名付けています。
 
「会社と部下の板挟みになる」として、若い世代を中心に、管理職に就くことを嫌がる風潮もあります。
 しかし、「承認力」を身につければ、その負担もかなり軽減され、部下も気持ち良く働いてくれるようになるでしょう。

 本書は、ほめ方・叱り方・言葉の使い方・しぐさなどで部下を承認し、「承認力」をアップさせる方法を、具体的な事例を挙げながら解説した一冊です。
 その中から印象に残った部分をいくつかご紹介します。

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「部下のほうが得意なことがある」と認める


 役職は、会社の中だけの身分です。
 上司だからといって、人間としての格が上がるというわけではありません。

 ところが、上司になったとたん、「自分自身が偉くなった」と勘違いしてしまう人は多いです。
 そこから誤解が生じます。

「上司は部下よりもすべての面で上回っていなくてはならない」

 そんな強迫観念が働くと、部下の自分より優れている点や長所を認めることができなくなります。

 吉田さんは、上司と部下は「上下関係」ではなく、「役割が違う」だけなのだと認識すべきと指摘します。 

 部下のほうがよく知っていることなら、あえて相談してみましょう。むしろ、「君にだから相談するけど」と言えば、それを受けた側の部下は「認めてもらっているのだな」と承認欲求が満たされ、モチベーションも上がるのではないでしょうか。
 そもそも、上司と部下は仕事の役割が違うのです。当然、部下のほうが上司よりもくわしくて得意な部分があります。自分では分からないことは、恥ずかしがらずに部下に相談してみましょう。
 人は相談されると、承認欲求が満たされます。上司であるあなたも、部下から相談されると「俺のことを頼っているんだな」と承認欲求が満たされないでしょうか。これと同じです。
 上司は、つい完ぺきを求めてしまいがちです。完ぺきを求めてしまうと、周囲のことも認められなくなってしまいます。部下の相談することも、承認のひとつなのです。

  『部下を育てる「承認力」を身につける本』  1章 より 吉田幸弘:著  同文館出版:刊

 上司になると、つい自分自身に完ぺきを求めてしまいがちです。
 完ぺきを求めてしまうと、部下にも完ぺきを求めてしまい、周囲のことも認められなくなります。

 吉田さんは、部下に相談することも、承認のひとつだと述べています。

 部下のほうができることは認める。
 そう思って肩肘張ることをやめると、自分自身にも精神的な余裕が出てきます。

部下に「自己開示」する


 上司の役割は、部下をまとめて結果を出すことです。

 吉田さんは、初めて部下を持った時の失敗から「結果を出す過程において、むやみに威圧感を出す必要はない」ことに気づき、部下をフラットな関係の「パートナー」と位置づけることで関係性を大きく改善させました。

 部下とフラットな関係を保つためのポイントは、「自己開示」です。

「自己開示」とは、自分自身に関する情報を打ち明けることです。今、チームとして困っていること、自分が弱い部分を、あえて部下に打ち明けるのです。
 上司が若い頃、失敗した例、成績が悪かった例を出すのもいいでしょう。部下に、自分自身の弱みを自己開示するのです。
 自己開示をされた部下は、「私という存在を認めてくれているから打ち明けてくれたのだ」と思います。そんな上司のために、頑張ろうという気持ちがより増すはずです。
 自分の弱点を部下に打ち明けたら、「なめられるのではないか」と思う方もいらっしゃるかもしれません。
 そもそも、上司が部下になめられる、馬鹿にされる、言うことを聞いてもらえないのは、あることに起因しています。
 それは、上司に判断力がないことです。自分でジャッジできないのです。このような上司は部下から馬鹿にされ、チームとしての統制がとれません。
 逆を言えば、自己開示で弱みをさらけ出しても、判断するときはきちんと判断すれば部下からなめられるということはありません。心配しないで、自己開示していきましょう。

  『部下を育てる「承認力」を身につける本』  2章 より 吉田幸弘:著  同文館出版:刊

 部下の立場からすると、全く隙を見せない上司は、近寄りがたいものです。

 逆に、「上司にも自分と同じような欠点がある」ということが分かると、親近感が湧きますね。
 自分のこともわかってくれている、という安心感も抱きます。

 威勢を張っても、尊敬されるわけではありません。
 同様に、弱みを見せてもなめられるということではありません。

 頭に入れておきたいですね。

「私」を主語にしてほめる


 言葉で相手を承認する方法のひとつに、「ほめること」があります。

 ほめるのはいいと分かっていても、なかなかほめることができない。
 そういう「ほめベタ」な方も多いでしょう。

 ほめベタを克服するためには、

  • ほめられ上手になる
  • Iメッセージを使う
  • 見たままを伝える
 の3つを意識することが重要です。

 吉田さんは、「Iメッセージ」について、以下のように説明しています。

 Iメッセージとは、「私」を主語にした言い方であり、あくまでも自分の気持ちや感じたことをただ伝えるだけというものです。「いつも細かい作業を手伝ってくれて助かっています」「勉強になります」などがそうです。
 このIメッセージは、謙遜をする人やほめると訝しがる人にも効果的です。「私はこう思うよ」というメッセージであって相手に対する評価ではないので、信用してもらいやすいのです。私自身もIメッセージでほめられたことがありますが、非常に心に響きます。
「吉田君は、忙しいのに後輩によく声をかけてくれていて助かるよ」。こう言ってもらえるだけで、上司に対して、「見ていてくれている。よし、もっと上司を喜ばせよう」という気持ちになったものです。

  『部下を育てる「承認力」を身につける本』  3章 より 吉田幸弘:著  同文館出版:刊

「私」を主語にして話しかける。
 それによって、自分の意図や感情が、無理なく相手に伝えることができます。

 ほめられて嫌に気分になる人はいません。

 ちょっとしたことでも、相手をほめる言葉を口にする。
 そんな習慣を身に付けたいですね。

周囲の批判から部下を守る


 部下が大きな失敗をしてしまったとき。

 吉田さんは、そういうときこそ、上司は「承認している」というサインをいつも以上に出すべきだと述べています。

 本人に対するフォローはもちろん、批判から部下を守ることが何より重要な仕事になります。

 確かに、失敗した要因をきちんと分析し、次回以降に役立てなければなりません。しかし、きちんと分析したら、後は実行するのみです。上司も、小言を言う必要はありません。むしろ、何もなかったかのように改善に向けて行動していくのみです。つまり、きちんと分析して、後は実行するのみなのです。
 本人は、不必要な他人からの批判を受ける必要はありません。そうでなくても、失敗した部下はショックを受けています。これがきっかけで、挑戦することは報われない、と感じさせてはならないのです。
 そもそも、新しいことに挑戦するのだから、本人の意欲は高いはずです。そんな部下のモチベーションを、ひとつの失敗くらいで下げてしまうことは大きな損失です。
 本人の気持ちも落ちているし、このようなときこそ、「挑戦したことを承認する」という意識を強く持つべきです。

  『部下を育てる「承認力」を身につける本』  6章 より 吉田幸弘:著  同文館出版:刊

 冷たく突き放したり、一緒になって失敗した部下を批判して、責任逃れをする上司もいます。
 そのような上司に対して、失敗をしてしまった部下は「裏切られた」との思いしか残りません。

 部下の失敗の責任は上司の責任でもあります。
 それはどのように言い逃れをしても変わることはありません。

 いかなる場合も、逃げずに部下としっかり向き合うこと。
 それが上司の「承認力」の基本となるのは間違いありません。。

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 吉田さんは、「承認力」を身につけると、相手と必要以上にぶつからなくなり、相手が納得する伝え方ができるようなるため、初対面の人とも上手く話せるようにもなるとおっしゃっています。

 相手から認められるには、相手を認めることが必要です。
 相手を認めることは、結局、自分自身を認めることにつながります。

「承認力」をうまく利用して、周囲とのより良いコミュニケーションを築きたいですね。



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