【書評】『ズバ抜ける技術』(山田和史)
お薦めの本の紹介です。
山田和史さんの『ズバ抜ける技術』です。
山田和史(やまだ・かずし)さん(@katsumokujuku)は、就職指導塾「刮目塾」の塾長を務められています。
その独自の理論・指導法から、「内定率100%」という驚異的な実績を生み出しています。
誰でも「ズバ抜けてできる」人材になれる
いち早く頭角をあらわし、誰よりも輝かしい実績を築いていく。
どこの会社にも、そんな「仕事のできる」社員はいるものです。
山田さんは、努力次第で「誰でも“トップランナー”になれる方法がある」
と断言します。
トップランナーになれるか、なれないか。
それは、自分が今抱えている問題点とまっすぐに向き合い、それらを克服するための技術を身につけたかどうかという、わずかな姿勢の違い
です。
本書は、ビジネスの世界で、他を寄せつけない実績を挙げるのに必要な技術をまとめた一冊です。
その中からいくつかピックアップしてご紹介します。
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「フライング」のススメ
ビジネスの世界は公平ではありません。
人と同じタイミングで、同じことをやっていても、抜きん出ることは難しいです。
「企画会議に向けて企画書を書いてはいけない」
山田さんは、ある先輩からそう教えられ、衝撃を受けます。
自分のやりたい企画は、企画会議を待たずに、できるだけ早く提出する。
そして、事前の“根回し”をすることが大切とのこと。
“根回し”なんて聞くと、「そんな卑怯な真似を・・・・」「ゴマすりなんてまっぴら」と拒否反応を示す人もいると思います。
ところが、その先輩は「企画を本当に実現させたいなら、他の人よりも早く企画書を提出して“根回し”をしなさい」と教えてくれたのです。いち早く手を挙げ「最初に提案した」という既成事実を作ってしまう。それが、シンプルにして最も効果的な“根回し”になるのだ、と。言うなれば、仕事の「フライング」です。
ライバル達がまだ準備運動すらしていないタイミングで、走り出してしまう。そうすれば、負けるはずがありません。足の速さではかなわないとしても、先にスタートすればかなりの差をつけて圧勝することさえ可能です。
もちろん、スポーツのレースでフライングをすると失格になってしまいますが、ビジネスの世界ではむしろ「いかにフライングができるか」が結果を大きく左右するといっても過言ではありません。
「フライングする。誰よりも早く、先頭でスタートを切る」
この姿勢が、能力や経験値といった条件差をひっくり返す、とっておきの秘策になることを教えてもらいました。『ズバ抜ける技術』 第1章 より 山田和史:著 サンマーク出版:刊
「先手必勝」は、ビジネスの鉄則。
スポーツと違って、試合開始を告げる笛は吹かれません。
試合開始前にどれだけ準備し、“根回し”ができるか。
それが勝負の分かれ目になります。
心理的ハードルを下げる「魔法の言葉」
山田さんは、自他ともに認める「晴れ男」です。
生まれながらに「晴れ男」や「晴れ女」の人はいません。
山田さんは、みんな、「ハッピーマインド」を鍛えることで、次第に「晴れ男」「晴れ女」思考が身についていく
と述べています。
「ハッピーマインド」を身につけるための簡単な方法。
それは、毎日の生活の中でできるだけたくさん「晴れ男ワード」を見つける
ことです。
山田さんは、“晴れ男ワード”の一つとして、「パイロット版」という言葉を挙げています。
「パイロット版」と銘打ったからといって、何か特別なことをするわけではありません。やる内容は変わらないのですが、それだけでプレッシャーから解放され、ハードルがグッと下がります。
もちろん、「お試し版」と言ってもいいのですが、それではあまり参加希望者が集まらないような気がします。
(中略)
「パイロット版」は違います。
クオリティには自信がある。ただ、今の世に合うかどうかは未知数ーーそういった、前向きで実験的な姿勢を打ち出すことができます。少なくとも僕は、そのイメージを取っかかりに、毎年新しい講座を開発し、積極的にデビューさせることに成功してきました。
何か主催者としてイベントを企画したい時、あるいはもっと身近に、新しく何かに挑戦したい時、自信が伴わないのであれば「パイロット版」と銘打ってみてください。
意義の深さを変えることなく、一瞬で心理的ハードルが「膝下30センチ」ほどまで下がる、魔法の言葉です。『ズバ抜ける技術』 第2章 より 山田和史:著 サンマーク出版:刊
とにかく始めてみないことには、始まりません。
問題があるのかないのか、それでいけるのかいけないのかもわかりません。
「パイロット版」、便利な言葉ですね。
どんどん使って、なんでも前向きに挑戦できる「ハッピーマインド」を身につけましょう。
人を動かす時も「アクション」で伝える
山田さんは、「伝える力」の重要さを、以下のように説明しています。
「言う」と「伝える」の違いはメッセージの届く範囲にあると考えています。自分の口で発するだけなら「言う」。相手の耳に届くだけでも「言う」。相手の心に届いて初めて「伝える」になる
ただ言葉で口から言うだけではダメ。目に見える形で、行動・アクションを伴わないと人には伝わらない
ということ。
山田さんは、バスケットボールのディフェンスを例に説明しています。
ディフェンスの一番のコツは重心を低くすることです。どの本にも書いてあることで、どのコーチも言うことですが、これがなかなかできません。とり続けるのがつらい体勢だからです。
コーチがどんなに「しんどいだろけど、がんばれ!」と叱咤(しった)激励したところで、試合の後半になればなるほど、だんだんと重心が高くなってしまうのが常です。
そんな時、優秀なコーチなら、別の表現で伝えます。
「味方のシュートが外れたり、ボールが奪われたりして、相手ボールになった時は、全員で床を触ろう」
床を触ると、一時的とはいえ、嫌でも重心が低くなります。そうすると半分自動的に、重心を低くするというディフェンスの鉄則を体で思い出すことができるのです。
「がんばれ!」というアドバイスはマインドです。目に見えません。だから当然伝わりません。伝わらないから結局がんばれません。
一方、「床を触れ!」というアドバイスは「アクション」です。どうすればいいかが目に見えてわかります。チーム全員で共有し、実行できるのです。『ズバ抜ける技術』 第4章 より 山田和史:著 サンマーク出版:刊
思っているだけでは、もちろん伝わりません。
だからといって、言葉にすれば伝わるかといえば、そうとは限りません。
具体的なアクションを起こして、初めて相手の心に届くもの。
コミュニケーションの秘訣として覚えておきたいですね。
「WANT TO」が3年後の自分を作る
山田さんは、「やりたいこと」すなわち「WANT TO」は日々追求するべきだ、と考えています。
「WANT TO」に打ち込んだ時間がその人の成長スピードを決めてしまう
からです。
仕事には大きく4つの種類があると言われています。
- 緊急で、重要なタスク
- 緊急だけど、重要ではないタスク
- 緊急ではないけれど、重要なタスク
- 緊急でもなく、重要でもないタスク
(中略)
①の優先順位が高いことは言うまでもありません。ただ、①に追われていると、作業をこなすだけになり、思うように実力が伸びなくなります。
その人の成長スピードは、①の合間に、いかに③に打ち込んだかによって決まります。
一般的に、新入社員の評価は入社3年目あたりを境にして大きく差が開き始めます。生々しい言い方をすると、「誰が出世するか」が見えてきます。
また、入社直後の評判はイマイチだったけれど、急成長を遂げてライバル達をゴボウ抜きにし、「生まれ変わったようだ」と周囲から驚かれたりする“出世魚”が頭角をあらわすのもこの頃です。
新人のうちは、日々、①や②の仕事だけでいっぱいいっぱいになりがちです。こなすだけで精一杯。③に手をつける余裕がありません。
しかし、忙しさを言い訳にして③から逃げている限り、成長はできません。恐ろしいのは、その事実に気づくのが、しばらく時間を置いてからであるということです。『ズバ抜ける技術』 第6章 より 山田和史:著 サンマーク出版:刊
将来、自分のやりたい仕事を任せてもらえるようになる。
そのためには、その仕事について誰よりも詳しくなる必要があります。
乗り気のしない仕事やルーチンワークにかける労力を最小限に抑える。
そして、とことん「WANT TO」を追求したいものです。
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☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆
他よりもズバ抜けるためには、仕事のスピード自体を速くする必要はありません。
取り掛かるタイミングを早めればいい、それだけのことです。
100m走で、他の人よりも10秒早く走り始められれば、絶対に1位を取れますね。
本書は、そんな当たり前だけれど、ほとんどの人が意識していなかったことに気づかせてくれます。
ただスタートの号砲を待っているのは時間のムダです。
早くアクションを起こしてしまった人が勝ち。
私たちも、フライングしまくって、ズバ抜けた存在になってしまいましょう。
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