【書評】『稼ぎたければ、働くな。』(山田昭男)

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 お薦めの本の紹介です。
 山田昭男さんの『稼ぎたければ、働くな。』です。


 山田昭男(やまだ・あきお)さんは、「未来工業」の設立者であり、元社長です。
 未来工業は65年の設立以来、順調に業績を伸ばし、91年には、名証二部に上場を果たすまでに成長します。
 現在は、同社の相談役を務められています。

「稼ぎたければ、働くな。」の真意は?


 山田さんの経営方針は、当時から、かなり異色なものです。

「残業は一切禁止」
「年末年始休暇は19連休」
「定年は70歳まで」

 このような常識はずれの制度を次々と設けながら、創業以来40年以上赤字ゼロという業績を収めて世間の注目を浴びるようになりました。
 最近では、テレビや雑誌など多くのメディアで取り上げられています。

 タイトルにもある、「稼ぎたければ、働くな。」とは、どういう意味でしょうか。
 もちろん「働くこと自体を投げ出してしまえ」という意味ではありません。

 山田さんは、ただ、がむしゃらに働けばいい、という通り一遍の「常識」をいったん捨て、なかなか報われない今の仕事に対する考え方を見直せ、ということだと強調します。

 世の中の97%の儲かっていない会社と同じ働き方とは、真逆の方法をとことんやってみること。
 つまり、「稼ぎたければ、しっかり働け」の真逆、「稼ぎたければ、働くな。」ということになります。

 本書は、山田さんが実践してきた「世の中の常識とは真逆の取り組み」を具体例を交えてまとめた一冊です。

 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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「差別化」とは「常に考える」こと


 社員数800人程度。
「田舎の中小企業」である、未来工業。

 そんな小さな会社が、名立たる国際企業を相手に渡り合えた理由。
 それは、ほかにはないプラスアルファの価値をつけること、つまり、商品の「差別化」を徹底するため、社員総動員で考えて、考え抜いたことです。

 未来工業の壁にはいたるところに大きな標語が貼ってある。
 書かれている言葉は「常に考える」。
 どんなことでもいい。常に考える。そこから差別化が生まれる。目につくところに貼っておけば、社員たちはもちろん、私自身も忘れない。
 見るだけで実践できない者もいるだろうからと、何か新しいアイデアをひとつ提案するたびに、社員には500円を支給することにした。そうすれば、誰でも少しは考えてみようという気になるだろう。
 提案する内容は、製品に関することでなくてもかまわない。
 「食堂のテーブルに一輪挿しを置きたい」などといった小さなことでも、500円。ひと月に10件考えれば5000円になる。20件考えれば1万円だ。ちょっとした小遣い稼ぎになるではないか。
 だからみんな懸命に考える。知恵を絞って「常に考える」ようになる。
 次第に社員からどんどん新しい提案が生まれるようになった。今やその数は1年間で約1万6000件。
 (中略)
 すぐれたアイデアに知識や才能はいらない。必要なのは「なぜ?」と思う感覚だ。当たり前のことを当たり前と思わず、常に「なぜ」と考える。そこから常識を打ち破る斬新なアイデアや生き方も生まれてくる。

 『稼ぎたければ、働くな。』 1章 より  山田昭男:著  サンマーク出版:刊

「何か改善できるところはないか」
「何か便利になるアイデアはないか」

 それを考えることが、組織を活性化させます。
 社員全員にその意識が徹底していることが、未来工業の強さの秘密です。

 業績のいい企業でも、それにあぐらをかいて現状維持に甘んじるようになったらおしまいです。
 近い将来、存亡の危機に立たされることになります。

儲からない会社の反対のことをやれ!


 山田さんの会社経営のモットーは、「周りがやっているのと反対のことをする」です。

 働いても稼げていないのは、他人と同じことをしているからだ。
 ならば、その反対のことをやればいい。
 単純明快な理屈ですね。

 未来工業は10年以上も前に、タイムレコーダーを廃止し、社員の時間管理を自主性に委ねました。

だいたいタイムレコーダーがあると、ズルズルと時間を引き延ばして残業代を稼ごうとする輩が必ず出てくる。5時で終わるところを、だらだらと8時まで引き延ばして3時間分の残業代をくすねようとする。
 だから私はタイムレコーダーを廃止して、残業を禁止した。
 いざ禁止してみると不思議と仕事はちゃんと5時前に終わるようになる。やればできるのだ。だらだらやるよりも、短い時間に集中してしまったほうが絶対に効率は上がる。おかげで未来工業は、前よりもっと儲かるようになった。
 それだけではなく、残業を禁止した代わりに、残業代の1、2時間分を給料に上乗せして、ほかの会社より多めの給料を払うことにした。
 世の中には残業しても残業代をケチって払わない会社が多いが、私に言わせれば大バカである。そんな会社で社員が一生懸命働くはずがない。
 うちは残業をなくして、それでも残業代を払う。そんな会社はほかにないもんだから、社員はますます感謝して会社のために働くようになる。だから儲かる。簡単な理屈である。

 『稼ぎたければ、働くな。』 2章 より  山田昭男:著  サンマーク出版:刊

 残業を禁止して、その分給料に上乗せされるのならば、社員のやる気は、否が応でも上がりますね。
 結果として効率が上がり、それまで以上の結果が出せます。

 事実、未来工業はタイムレコーダーをなくして、残業を廃止した翌年から売上げが20パーセントもアップしました。
 社員の士気を保つことが、いかに大切かということですね。

小さな倹約、大きな浪費が肝心


 山田さんは、儲けたかったら倹約も重要だが、それ以上に浪費が大切だと述べています。
 倹約するか、浪費するか、その基準は、それをやって「やる気が出るか」「人が喜ぶかどうか」にあるからです。

「倹約」の例を挙げると、未来工業ではクリアファイルの使用は禁止されています。
 手紙や書類を送るときは、100%裏紙を使うといいますから、徹底されていますね。

 逆に、「浪費」の一例として、「サークル活動」を挙げています。

 未来工業には約80のサークルがあるが、どのサークルにも会社から年間12万の補助が出ることになっている。私の会社は日本一休みが多い。その休みを有効に使ってもらえるように、会社がお金を出そうという趣旨だ。

 社員が3人集まって「サークル」を名乗れば、どんなサークルでも12万円の補助が出る。早い話、3人集まって何もやらずにお金だけ受け取ってもいいわけだ。

 12万円×80サークルだから、年間約1000万円。社員に1000万円の小遣いを渡していると言ってもいいだろう。

 この「浪費」がムダかと言うと、けっしてそうではない。

 1000万円の小遣いまでもらえるからには、社員もその分働かないと悪いなと思う。「恩義」を感じた社員たちはそれだけ仕事をがんばるから、1000万円くらい、軽く稼ぎ出してしまう。社員のやる気を引き出せるのなら、1000万円は安い投資である。

 『稼ぎたければ、働くな。』 1章 より  山田昭男:著  サンマーク出版:刊

 サークル活動にまでお金まで出す会社は、日本中探しても少ないでしょう。
 ただでさえ、この不景気を口実に、福利厚生に掛ける費用が年々削られています。

 目先のことばかり考えて、会社の経営をすべきではないということ。

 「儲からない会社の逆のことをしろ」

 ここでも、山田さんの考え方が強く反映されています。

「部下ゼロ人」の支店長が活躍できるわけ


 成績優秀な社員が、必ずしもリーダーに適しているわけではありません。

 山田さんは、以前、営業でトップセールスだった社員を支店長に抜擢しました。
 しかし、仕事を部下に任せられず、結果として、その支店の成績が伸び悩びました。

「なら、おまえ、本社に帰ってこい。本社の営業部に机をひとつやるから、そこをおまえの支店にせい」
 そいつは「ヨシダ」という名前だったので、私は本社に「ヨシダ支店」をつくり、彼を大阪支店長からヨシダ支店長に異動させた。
 支店長だから今まで通り、支店長手当ては出す。ただ、部下はいない。ひとりだから、自分の好きなように営業していい。
 すると、彼はものすごく喜んだ。それはそうだろう。もう部下の面倒は見なくてよく、売ることだけに専念できるのだから。まるで水を得た魚のように、それまで以上にすごい成績を上げだした。結果的に采配が功を奏したわけだ。
 これをもし「おまえには支店長は向かないから」と平社員に格下げしたら、どうなっただろう。収入は減って、肩書もなくなる。本人が落ち込んで働かなくなってしまったら、会社にとっても損失だ。

 『稼ぎたければ、働くな。』 1章 より  山田昭男:著  サンマーク出版:刊

「社員のやる気を百%引き出すのが社長の仕事」

 そう言い切る山田さん。
 このエピソードは、そんな山田さんの真骨頂ですね。

 山田さんの柔軟で機転の利いた発想が一人の優秀な社員を救ったと言えます。

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☆    ★    ☆    ★    ☆    ★    ☆

 長期にわたって順調に業績を上げている企業には、必ずその理由があります。
 その最も重要な要素のひとつが、「社員がやる気をもって前向きに仕事に取り組めているかどうか」です。

 どんなに大きな会社でも、社員のやる気が落ちて守りに入るようになると、業績は落ちます。
 それに前向きに考えることで、色々なアイデアも次々に生まれてきます。

 一人ひとりのやる気を引き出し、仕事の効率を上げることで、会社全体の効率も上げる。
 山田さんは、その仕組み作りにとても長けた経営者であるといえるでしょう。

 私たちのような、一人ひとりの働き手にも、見習うべきことが多いです。

「不況だ、不況だ」と頭を抱えて、有効な手を打ていない、多くの日本の経営者。
 彼らにとっても、おおいに参考となる一冊です。


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