【書評】『リンパを流すと健康になる』(大橋俊夫)
お薦めの本の紹介です。
大橋俊夫先生の『リンパを流すと健康になる』です。
大橋俊夫(おおはし・としお)先生は、循環生理学がご専門の医学博士です。
とくに、リンパ学研究の権威として世界的に知られている方です。
知っているようで知らない、「リンパ」の働き
「リンパ」は、体中を巡っていて、非常に重要な役割を担っています。
にもかかわらず、なかなかクローズアップされることがなく、理解しにくい部分があったり、一般的にはよく知られていないのが実情です。
本書は、一般の人に向けて書かれた、分かりやすく実生活に役立つ「リンパの循環学」です。
その中からいくつかピックアッしてご紹介します。
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「リンパ」と「むくみ」の関係
一日中デスクワークや立ち仕事をしていると、夕方になると足がむくんでパンパンとなる。
よく聞く話です。
この「むくみ」の正体とは、一体なんなのでしょう。
むくみとは、医学用語ではありません。
医学的には、むくみのことを「浮腫(ふしゅ)」と呼びます。
浮腫とは、細胞の周りに過剰な水分が溜まった状態のことをを表しています。
成人の体の中には約60兆個にも及ぶ細胞があり、その一つ一つを水分が包んでいます。
細胞と細胞の隙間に極端に水分が増えると、浮腫、つまり「むくみ」という症状が出ます。
そのむくみの元になっているのが、「リンパ」です。
そのリンパを体中の隅々にまで行き届かせているのが、「リンパ管」です。
人間は、全身を張り巡らされた毛細血管を通る血液から養分を摂り込んでいます。
では、老廃物が溜まった血液は、どのように回収されるのでしょうか。
毛細血管の隙間からしみ出した血漿から栄養分を吸収した後には、細胞から排出された汚れた成分が残ります。この老廃物をそのまま放置しておけば、やがて細胞は死んでしまうことになります。どこかに捨てなければなりません。それを回収しているのが毛細血管とリンパ管なのです。 細胞に必要な成分を行き渡らせた後に、老廃物や余分な水分の大部分は、毛細血管を通してすぐに血液の中に戻っていきます。さらに余分な水分の大部分は、毛細血管を通してすぐに血液の中に戻っていきます。さらに余分なものだけが毛細リンパ管に流れていく。やがてそれはリンパ液となり、リンパ節を通って胸管を経て、静脈へと回収されます。それがふたたび心臓、肺まで届けられ、新鮮な血液に返られて全身に送り出される。 つまりは、このリンパ管が正常に仕事をしている限り、細胞の周りの余分な水分は常に回収されているということです。まさにリンパ管とは、体内の排水管のような役目を担っているのです。
『リンパを流すと健康になる』 第1章 より 大橋俊夫:著 PHP研究所:刊
全身の細胞の“廃品回収”という重要な役割を担う、「リンパ管」と「リンパ液」。
それらの働きが悪くなれば、回収しきれない水分が細胞の周りに溜まっていきます。
これがむくみの原因となります。
もともとリンパ管の能力はとても高いです。
体が正常なときの水分量の20倍もの水が細胞の周りに溜まり込んでも処理する能力を備えています。
大切なことは、そのポンプ作用をいかに正常に保つかです。
働き者の「アルブミン」
リンパを語る上で欠かせない物質が「アルブミン」というタンパク質です。
アルブミンの働きとは何か。たとえて言うならば、体の中のタンパク質であると同時に運搬人とでも言いましょうか。まずは細静脈(毛細血管の合流するところ)を通って、カルシウムやビタミンなどの栄養素を積んで運んできます。それらの栄養素を一つ一つの細胞に届け、と同時に細胞から出た不要なものを再び回収する。そのゴミを今度はリンパ管を通って静脈へと運んでいく。要するに新しい商品を届けながら、廃品回収もしてしまうという働き者なのです。 このアルブミンというタンパク質は、浸透圧がものすごく高い。まるでスポンジのように、余分な水分を吸収してくれます。それに加えて、いろいろなものをくっつけてしまう性質を持っています。それがために、体内を動きながら疲労物質や死んだ細胞の破片などを回収することができるわけです。
『リンパを流すと健康になる』 第2章 より 大橋俊夫:著 PHP研究所:刊
アルブミンは、タンパク質を肝臓で分解・合成して作られていきます。
完全に私たちの体が作り出すもので、薬剤などでは補うことができない物質です。
アルブミンの基準量は、1デシリットル(デシリットルは、リットルの10分の1の単位)あたり4グラムほど。
つまり、全身に約200グラムのアルブミンを持っていることになります。
このアルブミンが十分に働ける環境を整えてあげること。
それが細胞周囲の内部環境をきれいに保つことにつながります。
美脚モデルさんの習慣
CMなどに出演している足専門のモデル、いわゆる、“美脚モデル”さんは、当然、「足が命」です。
彼女たちのむくみ対策は、どのようなものなのでしょう。
彼女たちは仕事が終わって家に帰ると、まずはお風呂に入ります。ぬるめのお湯に、30分以上はつかるそうです。湯船につかると、まずは足を伸ばして浴槽のふちに乗せる。こうすることで足が心臓よりも高い位置に来ます。ますはこれが、むくみを取るための重要な姿勢となっている。次に足首をゆっくり何度も回す。そして丁寧にマッサージを始めます。まずは足の指からです。足の指の間に手の指を入れて、指間マッサージをする。20回から30回くらい、手の指で足の指の間を揉みほぐしていく。その次には土踏まずです。手の親指を使って、ゆっくりとマッサージをする。それが終わると、今度は足首からふくらはぎにかけて、表面を撫でるようにして揉みほぐす。下に溜まった水分を上に持ってくるようなイメージで、何度も何度も撫でていく。 一通りやさしくなでた後、今度は少し強めに足首とふくらはぎを両手でぎゅっと握る。これは筋ポンプ作用と同じことです。そして最後に、膝の裏側から太ももの柔らかい部分を揉みほぐしていく。このようなマッサージを、必ず毎日30分以上はやっているそうです。おそらく彼女たちはいろいろな勉強をしながらこの方法に辿り着いたのでしょうが、医師である私から見ても、それは完璧に近いマッサージ法でした。
『リンパを流すと健康になる』 第4章 より 大橋俊夫:著 PHP研究所:刊
ポイントは、「ぬるま湯のお風呂に30分以上つかって、ゆっくりと念入りにマッサージすること」です。
私たちも、ぜひ、参考にしたいですね。
春夏秋冬、汗をかく
リンパの流れをよくするためには、「新陳代謝を上げる」ことがとても重要です。
新陳代謝を高めるために必要なのが、「適度な汗をかく」ことです。
子どもの頃は、新陳代謝が活発で、少し動いただけで汗をかきます。
大人になるにつれて、新陳代謝の働きが弱くなり、汗もかきにくくなっていきます。
大橋先生は、汗をかくという行為を、意識的にしなくてはいけない
と指摘します。
お風呂にゆっくり浸かったり、ウォーキングなどを積極的に行うことで、汗をかく習慣をつけることが大事です。
現代社会は、何もしなければ汗をかきにくい環境になってしまいました。夏になれば、どこに行ってもエアコンがついている。会社の中などは、真夏なのに寒いくらいです。こういう環境に慣れてしまうのは、体にとってはけっしてよいことだとは思えません。 だからこそ、意識的に汗をかくことが必要なのです。自宅に居る時には、できるだけ夏でもクーラーをかけないことです。どうしても我慢できなければ、設定温度を高めにしておく。うっすらと汗をかき、団扇であおぎながら過ごすくらいが丁度いい。 寝る時にも、できるだけクーラーに頼らずに自然の風を入れることです。うっすらと寝汗をかき、のどが渇けば水を飲むこと。枕もとにはいつもペットボトルなどを置いておくのがいいでしょう。(中略) 汗をかくというのはとても大事なことです。汗をかいて水を飲む。それがリンパの流れをよくして、疲労物質を体外に出してくれることになる。汗をかくと体がべたべたするし、臭いも気になる。特に女性はそう思うかもしれません。まずはその発想を止めることです。汗をかくのは健康な証拠。「よし、今日もいい汗をかいたな」という清々しい生活こそが、リンパの流れをよくし、あなたを元気にするのです。
『リンパを流すと健康になる』 第5章 より 大橋俊夫:著 PHP研究所:刊
昔より汗をかかなくなったと自覚している人は、新陳代謝が落ちている証拠。
つまり、体の機能が衰えてきている証拠です。
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真っ赤な血液と違い、無色透明で目立たない、黒子のような存在である「リンパ」。
細胞から出た老廃物の回収を引き受けているだけでありません。
体中を巡りながら、どこかに異常がないかモニタリングするという非常に重要な役割も担ってもいます。
まさに「縁の下の力持ち」ともいえる貴重な存在ですね。
普段の生活にも気を配り、リンパの流れをスムーズにして、疲れの溜まらない健康的な生活を送りたいですね。
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