本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ

本を読むことは、心と体に栄養を与えること。読むと元気が出る、そして役に立つ、ビタミンたっぷりの“おいしい”本をご紹介していきます。

【書評】『その痛み・不調は、「座り方」を変えれば消える!』(木津直昭)

 お薦めの本の紹介です。
 木津直昭先生の『その痛み・不調は、「座り方」を変えれば消える!』です。

 木津直昭(きづ・なおあき)先生は、カイロプラクターです。
 自らが運営するカイロプラクティックには、20年以上にわたり、のべ約25万人以上の患者が来院されています。
「日本人を健康で格好よくすること」をミッションにかかげ「姿勢シンポジウム」を定期的に開催され、姿勢の大切さを伝えるためのさまざまな活動に積極的に取り組まれるなど、幅広くご活躍中です。

「座り方」を変えれば、体が変わり、人生も変わる

 人間の身体は、本来、外を歩いて動きまわり、休むときには寝転がるようにつくられています。
 そのため、長時間座り続けるということは、「身体に不自然な負担をかけ続ける」ことになります。

 多くの現代人は非常に多くの時間を「座り姿勢」で過ごしています。
 オフィスではパソコン作業をし、通勤時間にはスマホをいじり、家に帰ればテレビを観る・・・・

 木津先生は、一日の大半を健康に対するリスク要因である「座り姿勢」で過ごしている影響は計り知れないものがあると警鐘を鳴らします。

 実際に、スマートフォンが急速に普及し始めたここ数年、治療に来る患者さんの頭痛・肩こり・腰痛・胃腸の不調などを症状の悪化と若年化が進行しているとのこと。

 どんな姿勢であろうと、座ることが人間の身体にとってリスクであるという事実は変わりません。
 だからこそ、少しでもそのリスクを軽減する身体にいい座り方を身につけることは重要です。
 
 本書は、負担の少ない「正しい座り方」を身につけ、体の痛みや不調を治し、予防する方法をまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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ヒトの身体は「長時間座り続ける」ように作られていない

 座り方がさまざまな痛み・不調の原因となるポイントは「重力」にあります。

 私たちが生きている地球上には重力があります。この重力は身体に対して良い影響と悪い影響を及ぼしています。
 まず、良い影響は筋力を保ってくれていること。重力がないと筋肉や関節機能の低下が起きます。宇宙飛行士が無重力の宇宙から帰還すると、しばらくの間、足腰が立たなくなるという話を聞いたことがあるでしょう。
 2012年の11月に4カ月の宇宙滞在から帰還した宇宙飛行士の星出彰彦さんも、帰還後は約1カ月半の予定で筋力トレーニングなどの「リハビリ」を受けたといいます。重力があるからこそ、私たちは健康でいられるし、さまざまな運動能力を維持できているということがわかるでしょう。

 逆に悪い影響のほうは、重力により身体の組織に負荷をかけてしまうことです。ここでいう組織とは、関節・筋肉・内臓組織などを指しています。
 重力の下で普通に生活しているだけで、全身の筋肉、足腰などの関節には重みがかかっていて、大げさにいうならば常に傷めつけられている状態にあります。その結果が高齢者に多い、ひざや股関節の変形性関節症だったりするのです。
 内臓も同様で、それ自体の重みで下垂したり、筋肉やほかの臓器によって上から押さえつけられたり、といったことでダメージを受けているのです。

 そこで、重力から全身の組織を解放し、回復させるために、人間には休息が必要になります。それが就寝の姿勢です。身体を横たえることで、筋肉や関節、内臓などの組織がずっとのしかかっていた重力から解放されるのです。睡眠にはこうした役割があるからこそ、睡眠時間が短かったときや徹夜明けには誰しも「しんどいな」と感じるわけです。
 また、椎間板への圧の変化により、身長も夜より朝のほうが高くなります。

 人間は、はるか昔から野山を駆け巡って食料を採集したり、獲物を追って移動したりして、動きながら生活してきました。そして、疲れて休むとはすなわち寝ることだったのです。
 では、座ることはどう位置づけられるかといえば、おそらく身体の動作の一つ、動きまわるなかで一時的にとることもある姿勢、といったものだったと考えられます。
 つまり、身体は長時間座り続けるようには作られていないのです。

 『その痛み・不調は、「座り方」を変えれば消える!』 第1章 より 木津直昭:著 PHP研究所:刊

「身体は長時間座り続けるようには作られていない」

 私たち現代人の常識から考えると、信じがたいような事実ですね。

身体にとっては、座っているよりも立っているほうがマシ

 一般的に、座っていることは、立っていることより身体的に「楽だ」と考えられがちです。
 しかし、それは間違いです。
 立っているときよりも座っているときのほうが椎間板への負担は大きいのです。

 ある調査によると、椎間板には、座位で前傾している姿勢(座って前かがみの姿勢)、つまり、パソコン作業をしているときの姿勢は、直立しているときの倍近い負担がかかるとのこと。

 なぜ、人体が座り姿勢を苦手にするのかは、ヒトの背骨の仕組みを力学的に見れば理解できます。
 ヒトの背骨は頸椎(けいつい)(7個)・胸椎(12個)・腰椎(ようつい)(5個)の合計24個からできています。このうち頸椎と腰椎が前へカーブし、胸椎は後ろにカーブして、前へのカーブと後ろへのカーブが12対12で拮抗しています。この3つのカーブこそ、重力に対抗する非常に優れたメカニズムです(下図1を参照)。
 背骨がまっすぐである場合と、カーブがある場合では、その長軸(上から下)にかかる抵抗力はまったく違います。頸椎・胸椎・腰椎に3つのカーブがあるおかげで、ヒトの背骨の抵抗率は約10倍となるのです。ヒトの頭は5キロ~8キロほどの重さがありますが、背骨のカーブによって、実際の負担は10分の1の800グラムほどですむわけです。
 しかし、座り姿勢になると、どうしてもこのカーブが崩れてしまいがちです。立っているときと比べて、座っているときの背骨の抵抗率は5分の1ほど。頭の重さは一気に4キロになります。これにより、背骨の各所にかかる負担も当然ながら急増するわけです。先ほど見たように座り姿勢が椎間板に最大の負担をかけるのも当然でしょう。

 『その痛み・不調は、「座り方」を変えれば消える!』 第1章 より 木津直昭:著 PHP研究所:刊


正常な人の背骨
図1.正常な人の背骨
(『その痛み・不調は、「座り方」を変えれば消える!』 第1章 より抜粋)

 頭の重さの負担が背骨のわずかなカーブがあることで分散されて、立っているときにはわずか10分の1になるとは驚きです。
 座っているときには、その倍の5分の1ほどの負担となります。

 よりよい姿勢で座ることが椎間板への負担を減らすために最も重要であることが、このデータからよくわかりますね。

第一歩は「思い切り足を開いて座る」こと

 木津先生は、身体に負担の少ない座り方として勧めているのは、「丹田座り」と呼ぶ座り方です。

 丹田とは、「骨盤アーチの中心にあたる部分で、ヘソから5センチほど下、身体の中心部」
 丹田座りとは、この丹田を軸にして、腰を反らさず丸めず、その中間の座り方のことです。

 丹田座りを身につけるための第一段階は「足を開いて座ること」です。
 それも中途半端な開き方ではなく、思い切って開きます。

 イメージとしては、テレビドラマや映画に出てくる戦国武将が、戦場で床几(しょうぎ)に座っているときの、足を左右に大きく広げた姿勢です。

 足を大きく開くことで、おのずと丹田を意識して座ることができるようになります。
 すると、骨盤を左右の足でしっかりと支えることができ、姿勢も安定します。

 特に女性の場合は、足を開いて座ることには抵抗があるでしょう。どうしてもお行儀が悪く見えてしまうためです。そもそも日本の女性の場合には足を開いて座る文化がなく、心理的に大きな抵抗を感じる人も多いようです。セミナーなどでジャージに着替えて練習する場面でも、女性はたいてい、最初のうちは恥ずかしがってこの座り方ができません。
 しかし、ここはぜひとも足を開いて座ることに慣れていただきたいのです。先ほども述べたように、足を開くことで丹田を意識しやすくなるからです。実はこれは、身体操作のプロも活用している方法です。
 たとえばバレエのプリエという練習法をご存じでしょうか。股関節を外側に回し足先とひざも外側に開いたバレエ特有の立ち方から、腰を下に落として足を開くものです。腰を途中まで落とすドゥミ・プリエ、腰を完全に落とすグラン・プリエがあり、後者では相撲の「蹲踞(そんきょ)」に近いくらいしっかりと股関節を開きます。バレエ経験のある方はわかると思いますが、プリエでしっかり腰を落とし、足を開くと身体の軸が意識され、丹田のあたりに力が入ります。
 バレエダンサーは、人間離れした動きをこなす超一流のアスリートでもあります。バレリーナがほっそりした足で驚異的な跳躍をすることができるのは、丹田に重心があるからです。だからこそ、バレエの練習体系では、プリエを基本練習に組み込むことによって、丹田を意識することが目指されているのでしょう。

 先ほど蹲踞を例に出しましたが、日本古来の身体技術である相撲も丹田を意識する稽古の宝庫です。たとえば「四股」。四股もまた、しっかりと足を開いて立つことによって、丹田を意識する訓練になっています。四股や蹲踞、腰割りといった稽古でしっかりと丹田が意識できているからこそ、力士はあの巨体でも俊敏かつ安定した体さばきができるのです。
 足を開く、というのは一般にはだらしなさの表れ、弛緩した姿勢と思われがちですが、そんなことはありません。意識して行えば、姿勢を保つポイントである丹田を意識し、その力を引き出すという絶大な効果をもたらすのです。

 『その痛み・不調は、「座り方」を変えれば消える!』 第2章 より 木津直昭:著 PHP研究所:刊

 足を大きく開いた状態で座り、ねこ背と反り腰を繰り返してみて、ちょうど中間の重心がきちんと身体の真ん中にある位置に置かれている状態が「丹田座り」の基本です(下図2を参照)。

 丹田座りができたときの感覚を表現する言葉は、人によって異なるとのこと。
「腰がまっすぐになった」という人もいれば「骨盤が立った」という人もいます。

 いろいろ試してみて、自分の中でしっくりとくる感覚の腰の位置を体得したいですね。

丹田座りマスターのステップ
図2.丹田座りマスターのステップ
(『その痛み・不調は、「座り方」を変えれば消える!』 第2章 より抜粋)

椅子選びの鉄則は、「30分座ってみる」こと

 木津先生の考える良い椅子の条件とは、「長時間使っても体にいい椅子」です。
 重要なことは、椅子を選ぶ際には実際に30分ほど座ってみること

 具体的な椅子選びのチェックポイントは、以下のとおりです。

 最初に座ったときの「第一印象」の座り心地で選んでしまうと、失敗することになります。椅子を選ぶためには、とにかく最低30分は座ってみる。これが鉄則です。

そのうえで、パソコン作業用の椅子を選ぶためのチェックポイントは次の7点です。

  1. クッションの硬さ→柔らかいものは避ける。
  2. 座面の高さ→調節可能なものを選ぶ。
  3. 座面の奥行き→身体の大きさや背丈にフィットしたものを。奥行きがある椅子は小柄な女性は特に気をつける。
  4. 座面の水平度→水平もしくは、ひざに向かって少し下がる椅子を選ぶ。お尻側が下がり、ひざ側が上がる椅子は避ける。
  5. ひじ掛け→ひじ掛けのあるものを選ぶ(ただし、ひじ掛けが邪魔になるケースもあるので注意)。
  6. デスクとの関係→椅子のひじ掛けが机にぶつからないよう、高さを考慮する。
  7. デザイン→重視しすぎて、座り姿勢が二の次にならないように気をつける。

 結論としては、以上の条件を満たしていればいい椅子であるといえます。
 価格はリーズナブルなもので十分です。むしろ、高価な椅子は、得てしてこだわった作りになっているため、座り姿勢をある状態に固定してしまう可能性があります。「高級椅子=身体にいい」という先入観で身体に合わない椅子を選んでしまうことに注意すべきです。

 『その痛み・不調は、「座り方」を変えれば消える!』 第4章 より 木津直昭:著 PHP研究所:刊

 私たちは、つい「はじめの座り心地」を重視してしまいます。
 しかし、本当に大事なのは、「長時間座ったときに座り心地」です。

 毎日、長い時間使うものですから、慎重に選びたいですね。

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 パソコンなどのIT機器の発達により、現代人の生活は便利になりました。
 その反面、それまでにはなかった不都合もみられるようになりました。

 肩こり、腰痛、その他の身体的・精神的な苦痛もそのひとつですね。

 長時間、パソコンやデスクの前に座り続けることは、現代人の宿命といえます。
 だからといって、パソコンやスマホなしの生活は考えられません。
 デスクワーク中心の仕事を急に変えろと言われても無理な話です。

 座っている姿勢の時間が長い生活スタイルは変えることが難しい。
 だからこそ「体の負担の少ない座り方」の重要度はますます大きくなります。

 すでに身体に不調のあるデスクワーカーはもちろん、まだ不調を感じていない方も、予防のために是非身につけたいスキルです。

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