【書評】『人は「暗示」で9割動く!』(内藤誼人)
お薦めの本の紹介です。
内藤誼人先生の『人は「暗示」で9割動く!』です。
内藤誼人(ないとう・よしと)先生は、社会心理学の知見をベースに、実際のビジネスへの応用を主に研究されている心理学者です。
「暗示」の力で人生を変えよう!
「暗示」というと、何となく、「人を惑わして操る」というマイナスのイメージがあります。
しかし、実際には、そうではありません。
人間の心は、自分で知覚できる「意識」と、知覚できない「無意識」から成ります。
氷山に例えると、意識は、海上に見えるわずかな部分にすぎません。
海面下には、「無意識」という巨大な領域が潜んでいて、考え方や行動に大きな影響を与えています。
つまり、人は意識的に動いているようにみえて、無意識の力によって動かされています。
この無意識にパワフルに働きかけるのが、「暗示」です。
内藤さんは、人づきあいの成否は、「暗示コミュニーケション」にかかっている
と強調します。
暗示コミュニーケションの手順は、とてもシンプルです。
第一に、相手の緊張感をほぐして安心させること。
第二に、心の武装をときながら効果的にメッセージを送ること。
本書は、相手が前向きな気持ちで行動を変えたくなる「暗示コミュニーケション」のアプローチ方法を数多く紹介した一冊です。
その中からいくつかピックアップしてご紹介します。
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「ノンバーバルメッセージ」で相手をホッとさせる
しぐさや顔の表情などの、ノンバーバル(非言語)が発するメッセージ。
それらは、思考を通さずに体に直接影響を及ぼすため、言葉を超えた拘束力を持ちます。
初対面なのに、なぜか接しやすい。
そんな人たちは、ノンバーバルを使って「安心感」を与えるのがうまいです。
挨拶ひとつでも、人の気持ちを瞬時に和ますことができるのだ。
リラックスした雰囲気が、穏やかな表情や声のトーン、みぶりなど、全身からにじみ出ていて気持ちがよい。やわらかな雰囲気がジワッと伝わってきて、つられてこちらもニコッと会釈してしまう。
このとき、人は「こんにちは」「おはよう」などという、セリフに動かされるわけではない。相手が醸し出す安心感に自然と体が反応してしまうのだ。
だが、もし相手がガチガチに緊張していたら、まず間違いなく、たわいない相手のようにこちらも負けじと心のバリケードを強固にするだろう。どちらの場合も心の距離は縮まらない。
人の心をつかみたければ、ノンバーバルを上手に使って、まず自分から相手をホッとさせることである。不安な状態から解放してやることで、心を委ねたくなるからだ。 人に出会ったら、相手の目を見てにこやかに挨拶しよう。これで場の空気がパッと明るくなる。笑顔にメリハリをつけ、ハキハキとした快活な声を出すだけで人は「明るいな」「好感が持てそうだ」と思う。『人は「暗示」で9割動く!』 1章 より 内藤誼人:著 すばる舎:著
挨拶という単純な動作。
それだけでも、「私は信頼に足る人物です」というメッセージを含めることができます。
相手を安心させて、心を開かせる。
そのためには、まず、自分自身が精神的に安心した状態にあり、心を開いていることを相手に示すのが大切です。
人間関係の基本は、やはり「挨拶」です。
大きな声でハキハキと笑顔でしたいものですね。
人を動かす「4つの要素」
アムステルダム大学のW・ファン・W・エルデ博士によると、あなたの話を聞くことで、相手に次のような4つの結果をもたらすという見込みがあるとき、人は心を動かされる
とのこと。
①結果の魅力
②結果の望ましさ
③結果から予想される満足感
④結果の重要性
たとえば、あなたが士気の落ちているメンバーに、もっと仕事を頑張ってほしいと発奮させたいと思っているとしよう。 この場合、頑張るという「結果」に対して、メンバーがどれくらい魅力を感じるか、どれくらいその結果を望ましいものと考えるか、頑張る結果によって満足できると予想されるのか、頑張る結果が本人にとって重要か、という点について分析しなければならないということである。 「なるほど、頑張る姿を見せるのは、カッコイイことなんですね」(魅力) 「なるほど、頑張れば、給料があがるんですね」(望ましさ) 「なるほど、頑張るのは、自分にとっても気持ちのいいことなんですね」(満足感) 「なるほど、頑張ることは、日本の社会にとっても大切なことなんですね」(重要性) このように相手が思ってくれるのなら、ひとまずはあなたの説得はうまくいったと考えてよいだろう。どの点を相手にアピールするかよく考え、少なくともどれか1つの要素を確実に満たすようなアピールをしてほしい。
『人は「暗示」で9割動く!』 2章 より 内藤誼人:著 すばる舎:著
ただ、上から「これをしろ」「あれをしろ」と言っても、人はなかなか動いてくれません。
必ず「動機付け」が必要となります。
誰かに何かを頼みたいときは、この4つを意識して理由までちゃんと説明することが効果的です。
「謝罪」は好意を得るチャンス
相手の自転車を勝手に借りて、しかもそれを壊してしまった。
そんなときでも、「ごめんなさい」と心から反省して謝罪すれば、逆に、相手からの好意を勝ち取れることが、実験的に証明されています。
謝罪するというのは、好意を得るチャンスなのである。 最近のビジネスマンは、きちんと謝ることができなくなっているのではないかと思う。ヘタな言い訳をしてみたり、屁理屈をこねまわして、謝罪するのをのらりくらりとかわそうとする人が多いように思えるのだ。 日本の組織にありがちなことだが、責任の所在が曖昧であるために、たしかに、当人には責任を感じにくいのであろう。 しかし、そういう逃げの態度は、見ていて不愉快である。 世の中の問題は、「謝ってすんでしまう」問題がきわめて多い。謝ってもすまない問題など、ほとんどないと言ってもいい。 たいていの問題は、「ごめんなさい」ですむのである。 ではなぜ、この言葉を使わないのだろうか。それは、単純に、自分のつまらないプライドを守るためである。人に頭を下げることが、自分の誇りを傷つけるように感じてしまうのであろう。 しかし、そういうつまらないプライドなど、持たなくてもいい。 たとえ自分が直接的に迷惑をかけたわけではなくとも、自分が代わりに謝ってしまおう。きちんと頭を下げて、「ごめんなさい」が言える人は、だれからも好かれるのだから。
『人は「暗示」で9割動く!』 3章 より 内藤誼人:著 すばる舎:著
たしかに、自分たちの非を認めて、きっちり謝る。
そのような人の態度は、清々しく、好感を持たれることが多いです。
その場では、バッシングやお叱りの声を受けることになります。
しかし、相手の気持ちさえ収まってしまえば、信頼関係が残ります。
「素直に謝れない人は損」
それは暗示の観点からもいえます。
夢は、大きな字で、のびのびと書こう!
暗示が最も効果的な相手、それは「自分自身」です。
無意識にプラスの暗示を送り続けることは、人生をよりよいものにするのに、とても重要です。
自分の運命は、自分で切り開いていける。
心理学では、そのような信念のことを、「自己効力感」と呼んでいます。
「自己暗示」により、この自己効力感を身につけることが、何にも増して重要なことです。
願い事などを書き出すという行為も、自己暗示の方法の一つです。
書く中身はもちろん、書いている文字自体にも暗示を込めることができます。
メモ帳に、小さな字で、びっしり書き込む人は、不安や緊張の強いタイプです。
一方、余白をたっぷりと残しながら、大きな字を書く人は、心理的に余裕のあるタイプです。
大きな字で書いている人は、明るく、陽気になれるものなのだ。 せっかく願い事を書くのなら、自信を持って、堂々と書けばよい。紙からはみだすほどの大きな字で書けば、「これって、本当にうまくいっちゃうんじゃないの?」と自分でも信じることができるようになるはずだ。 逆に、小さな字で書いていると、「こんなのは気休めにすぎない」とか「叶うわけがない」と、自分でもそれを信じられなくなるのである。不思議なことなのだが、本当なのである。 まずは騙されたと思って、字を書く時には、いつでも堂々と、大きく書くクセをつけよう。そういうクセをつけると、性格のほうも明るく、陽気になっていくものである。小さな字で書いていると、人間の器まで小さくなってしまうので注意が必要だ。
『人は「暗示」で9割動く!』 6章 より 内藤誼人:著 すばる舎:著
まず、形から入ることも大切なことなのかもしれません。
文字を書くときは、大きな字で、のびのびと。
そんな日々の小さな暗示の積み重ねが、自己効力感を高めることにつながります。
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「暗示」は、特別な人が使える特殊な道具だという先入観は多くの人が持っています。
しかし、本書を読むと、誰でも気軽に使える簡単で効果的なコミュニケーションツールであることがわかります。
それどころか、意識している、していないに関わらず、日常的に使っていることに気づきます。
無意識への働きかけが、その人に与える影響がどれだけ大きなものかを示していますね。
「無意識を制するものは、人間関係を制す」
まずは本書にある、気軽な「暗示コミュニケーション」を効果的に使って、自分や相手と前向きな関係を作りたいですね。
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