【書評】『ホルモンを活かせば、一生老化しない』(根来秀行)
お薦めの本の紹介です。
根来秀行先生の『ホルモンを活かせば、一生老化しない』です。
根来秀行(ねごろ・ひでゆき)先生は、内科学、腎臓病学、抗加齢医学などを専門とする医師です。
「ホルモン」を活かせば、老化は防げる!
最近、よく聞くようになった「ホルモン」という言葉。
にもかかわらず、その種類や働きなどについて、具体的に知っている人は少ないでしょう。
ホルモンは自律神経と並んで、私たちの体を制御する“二大機構”の一つです。
知らないうちに体を動かし、メンテナンスし、体内環境の恒常性を保つ役割を果たしています。
ホルモンの種類は、実に100種類以上。
それらが連携して各器官の機能を制御していますが、そのホルモン・バランスが崩れると、体にさまざまな異変が起こります。
根来先生は、ホルモン全体を大きな体の制御機構ととらえ、その力を総合的に発揮することを目指すと、おのずとベストな生活スタイルが見えて
くると述べています。
本書は、私たちの健康に重要な役割を占める「ホルモン」を解説し、ホルモンの機能を活性化させる方法をまとめた一冊です。
その中からいくつかピックアップしてご紹介します。
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ホルモンの力で睡眠中に生まれ変わる
私たちの体内には、いつでも、多くのホルモンがかけめぐっています。
その中でも、「成長ホルモン」は、「アンチエージング・ホルモン」として有名です。
根来先生は、成長ホルモンの働きについて以下のように説明しています。
成長ホルモンとはその名のとおり、体の成長を促進するホルモンです。
これがもっとも分泌されるのが睡眠中であり、成長ホルモンの作用で骨が太くなり、筋肉がつき、身長が伸びます。「寝る子は育つ」は正論なのです。
では、大人になってしまった私たちは、成長ホルモンを無視してもいいのでしょうか?
いえいえ、大人になっても成長ホルモンは大きな役割を果たしています。
私たちの体は、睡眠中に「再生工場」と化すのです。
例えば、皮膚でも基底(きてい)層で新しい細胞が生産され、それと入れ替わるように古い細胞が外表に向かって押し上げられます。これが角質(かくしつ)層になります。その角質層も垢(あか)としてはがれ落ちますが、このターンオーバーのサイクルが約四週間と言われます。
このターンオーバーは新陳代謝(しんちんたいしゃ)と呼ばれますが、新陳代謝がもっとも進展するのが睡眠中というわけです。そして、睡眠中の新陳代謝をサポートするのが成長ホルモンです。
「美肌をつくるにはよい睡眠を」
最新の医学研究の結果でも、これは正しいと確認されています。
私たちの骨も、じつは約五年間で生まれ変わります。新しい組織に入れ替わっているのです。これは骨代謝(こつたいしゃ)と呼ばれています。大人にとっても、丈夫な骨はぐっすりの睡眠からというわけです。『ホルモンを活かせば、一生老化しない』 第1章 より 根来秀行:著 PHP研究所:刊
「健康的な生活には、質のよい睡眠が欠かせない」
多くの専門家が口にしている言葉です。
睡眠は、単に身体的、精神的な疲れをとるためだけのものではありません。
若々しい体を維持するためにも、睡眠は十分とるように心がけたいですね。
「切り替え」をうまくして、アドレナリンを味方にする
「アドレナリン」と「ノルアドレナリン」は、「快楽ホルモン」と呼ばれています。
これらは、命が危険にさらされるとか、怒りを覚えるとか、不安な感情が湧き出るという状況で、集中力が問われて決断力が必要になる時に出るホルモン
です。
根来先生は、この二つは「交感神経の活性」という意味でも重要
だと述べています。
集中力、決断力、そういうパワーを高めるためには、アドレナリンやノルアドレナリンが適度に活性化される必要があり、それにともなって交感神経も高まります。
ただしこれらのホルモンがずっとオンの状態になると、コルチゾールが出てきます。当初は交感神経が高ぶりすぎることによるストレス解消のためですが、それが続くと、血圧上昇、血糖値上昇、免疫力低下などを起こし、全身に悪影響がおよび始めます。
ここでのキーワードは「切り替え」です。
状況の切り替え、気持ちの切り替え、色々ありますが、何ごとも引きずらずにサッと切り替えることで、アドレナリンやノルアドレナリンを、適度に分泌することが可能となるのです。適度な範囲の分泌の場合、これらのホルモンは集中力の発揮などに大いに力を発揮します。
しかし、それが度をすぎると体に負荷がかかってしまいます。集中して力を発揮した後に高ぶりすぎていると感じた時には、サッと切り替える意識を持つことが大切です。
それによって、その影響が過度に悪い連鎖を引き起こすことを避けられます。ホルモンはよくも悪くも連携プレーなのです。
ちなみにアドレナリンは、チロシンというアミノ酸が土台です。
だから高タンパクの食品、例えば鶏肉、大豆類、魚介類、そういうものをとるとアドレナリンの元が摂取できます。
そのチロシンは、炭水化物よりもトリプトファン(必須アミノ酸の一つ)をたくさん含む食べ物と一緒にとると効果的です。その理由は炭水化物とチロシンとを一緒にとると、チロシンが脳に行くのを炭水化物が抑制してしまうという研究結果があるからです。
セロトニンの元でもある、トリプトファンとチロシンを一緒に摂取すると、脳にチロシンを届けやすくなり、アドレナリンが自然と増やされます。ヨーグルト、チーズ、牛乳などの乳製品、あるいは大豆類には、トリプトファンが豊富に含まれていますので、バランスよく摂取してください。『ホルモンを活かせば、一生老化しない』 第2章 より 根来秀行:著 PHP研究所:刊
ホルモンの分泌は、多すぎても少なすぎても、体にはよくありません。
ほどほどがちょうどいい、ということです。
「ちょっと気持ちが高まりすぎたな」と感じたら、少し休んでクールダウンする。
オン・オフの「切替え」をスムーズに、ホルモンのバランスを良好に保つよう心がけたいですね。
お昼のリズム運動が「セロトニン」を増やす
「セロトニン」は、「幸せホルモン」と呼ばれています。
セロトニンがたくさん分泌されると、ストレスが緩和され、人生の充実感を覚える効果があります。
セロトニンの分泌のピークは、お昼の12時前後です。
根来先生は、この時間帯のリズム運動が「睡眠を深くする」ことにつながる
と指摘しています。
またホルモン分泌上、午前中の時間帯にウォーキングや水泳、筋トレなどリズム運動を入れることは重要ですが、通勤時や移動時の「ながらウォーキング(通勤しながら、営業で移動しながら)」にもリズム的なものを入れてあげると、セロトニンを健康的に増やすことができます。移動時に心の中で「イチニ、イチニ」とリズムをとりながら歩いてください。
反復運動であるリズム運動には、①歩行、②呼吸、③咀嚼(そしゃく)、などがありますが、これらによってセロトニンの分泌が活性化されます。意外なところでは「ガムを噛む」ことも有効です。リズム的なダンスや、ゆったりと吐く腹式呼吸法なども有効です。
大事な点は「集中して行う」ということ。
だらだらと行うことには、何の効果もありません。
とくに呼吸法はとても有効です。
副交感神経を上げる呼吸法によって、セロトニンを上げることがわかっています。夜、寝る前に副交感神経を上げる意味での呼吸法も大事ですし、昼間の交感神経が上がりすぎた時に解放してあげる意味での呼吸法も大事です。
呼吸法にも色々なバージョンがあります。
その中でも難しくない、割と簡単なバージョンを使ってセロトニンをちょっと意識してみるつもりで、やってみるといいでしょう。
また、誰かと触れ合うと増えるオキシトシンや、リズム運動で増えるセロトニンの特性を応用して、ダンスを取り入れるのはいいと思います。
良好なコミュニケーションをとるという意味では、ヨガ教室で呼吸法を学ぶのもいいかもしれません。ウォーキングやサイクリングなど、一人でできるリズム運動でもセロトニンは出ますが、オキシトシンも一緒に出したいと思うなら、何か皆でできること、しかも呼吸法やリズム運動ができるような「場」に参加すると、いいと思います。
デスクワークが続くようなら、次のようなプチ・トレーニングをしてください。①息を吸いお腹を思い切り膨らませる。
②息を吐いてお腹をへこませ、そのまま30秒間キープ
③これを数セット繰り返す
④続いて、お腹を意識して1から8まで数えつつ息を吐く
⑤これを数セット繰り返すこれはリズム運動として、お腹の筋肉、とくにインナーマッスルを鍛えるドローイングと、副交感神経を上げる腹式呼吸を組み合わせたものです。筋トレやストレッチをする時間がないという時に、仕事をしながら、ぜひ行ってみてください。手軽にホルモン・バランスと自律神経バランスを整えることができます。
『ホルモンを活かせば、一生老化しない』 第3章 より 根来秀行:著 PHP研究所:刊
同じ「歩く」という動作でも、リズムよくする場合とダラダラする場合では、ホルモンの活性化という面から考えると、まったく違うということですね。
「呼吸」についても同じことがいえます。
普段の生活でも、ちょっとした工夫をすることで、ホルモンの分泌を上げることができます。
意識して習慣にしたいですね。
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☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆
「ホルモン」は、年齢とともに分泌される量が落ちてくるものがほとんどです。
若い頃、多少無理をしても平気だったのは、「成長ホルモン」などの若返りホルモンが、寝ている間に大量に分泌されていたからです。
年齢を重ねても、若い頃と同じような生活スタイルを続けていると、ホルモンが足りなくなり、老化への道をたどってしまいます。
老化を食い止めるためには、ホルモンのムダ遣いをせず、ホルモンの分泌を促す習慣を増やすこと。
人間に生まれつき備わっている制御システム「ホルモン」を上手に活用して、いつまでも健康的で若々しい生活を続けていきたいですね。
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