【書評】『このムダな努力をやめなさい』(成毛眞)

LINEで送る
Pocket

 お薦めの本の紹介です。
 成毛眞さんの『このムダな努力をやめなさい』です。

 成毛眞(なるけ・まこと)さんは、企業経営者です。
 86年に日本マイクロソフト社に入社、91年からは同社代表取締役社長を務められます。
 同社を退社後、投資コンサルティング会社を設立してその運営に携わるかたわら、大学の客員教授を務められています。

「頑張らない」「我慢しない」「根性を持たない」


 成毛さんは、若いころから、「頑張らない」「我慢しない」「根性を持たない」の三原則をモットーにしています。
 さらに徹底的に「ムダ」を排除することにより、自分の得意な分野に力を集中して成功を収めました。

 本書は、自分が「やりたいこと」「好きなこと」「得意なこと」で思う存分本領を発揮して成功し、自分らしい人生を手に入れるための方法をまとめた一冊です。
 その中からいくつかご紹介します。

スポンサーリンク           

課題も、目標も、締め切りもいらない


 成毛さんは、今の20代、30代は、かつてないほど懸命に働く世代であると述べています。
 朝から晩まで働きづめにもかかわらず、残業代は上限が決められ、下手をするともらえない。
 10年前に比べると、平均年収が200万円も減りました。
 年金も何歳になったらもらえるのか見当もつかず、先行きのまったく見えない時代です。

 このような時代は、未来に期待しないのが一番賢明な生き方だろう。
 上司が「今頑張っておけば、必ず将来の糧になる」などと、きれいごとをいって仕事を押し付けようとしてきても、素直に信じてはいけない。三年後に会社があるかどうかもわからないからである。
 「戦略的に生きる」というのは、今までのトレンドだった。そんなものは不可能だと、リーマンショックや東日本大震災でよくわかっただろう。明日には何が起きるのかわからないのに、目標を立てても意味はない。
 これからは「場当たり的に生きる」のをおすすめする。
 その場その場で判断を変えてもよし、今日できることを明日に持ち越してもよし。
 自分に課題を課さず、締め切りも設けない。
 もっとゆるく生きればいいのだ。
 そんないいかげんな生き方はできない、と思うかもしれない。大丈夫だ。今の政治を見ていればわかるように、場当たり的にしのいでいても、日本はギリシャよりも危機的な状況にならずに、何とかなっている。
 ただし、自分が勤めている企業が突然倒産する可能性はある。自分の会社なら莫大な負債を抱えなければならないが、サラリーマンは職を失うだけなので、まだマシだ。
 それから管理職だと転職するときに敬遠される恐れもあるので、平社員のほうが自由度は高いといえる。今の時代、出世は必ずしも身を助けるわけではない。

 『このムダな努力をやめなさい』 第2章 より  成毛眞:著  三笠書房:刊

 キャリアアップを重ねて、戦略的に生きていこう。
 そう思っても、5年10年後の社会が想像つかないのでは、意味がありません。
「会社のため」と一生懸命に働いても、その努力が報われることはまずないと思っておいた方が身のためです。
 となると、私たちのやれることは一つ。
 世の中がどんなに変わっても対応できるような柔軟性を身につけておくことです。
 仕事だけではなく、色々な経験を積んでおかないと世の中の動きに翻弄されてしまいます。
 毎日毎日、夜遅くまで残業している場合ではないですね。

「いい人」を信用しない


 成毛さんは、誰からも「いい人」だと評されている人、「賛」の評価しかされていない人は、偽善者である可能性が高いので近づかないほうが賢明だと述べています。
 偽善者は、誰に対しても腰が低く、嫌いな人などいないという素振りを見せるが、裏を返せば八方美人で信用できない人物です。

 逆に、99人から嫌われても、たった一人から徹底的に愛されればいい、と思ったことをそのまま口にするような人。
 成毛さんは、そのような人のことを「偽悪者」と命名しています。

 ビジネスで「いい人」と仕事をするのは、一見やりやすいように思える。
 だが、「いい人」は優柔不断なうえ、責任を取りたがらないから厄介だ。自分がかわいいから悪者になるのを嫌がる。実は自分のことしか考えていないのだ。
 ビジネスでは、誰かが悪者にならなければならない場面が出てくる。「いい人」はそのような場面になると逃げようとするから、頼りにならない。
 嫌われることに慣れている「偽悪者」は、そういう場面を平然と切り抜けたりする。土壇場に強い。
「いい人」と仕事をすると、最後の最後であなたの努力がムダに終わる可能性がある、ということは肝に銘じておくべきだ。

 『このムダな努力をやめなさい』 第2章 より  成毛眞:著  三笠書房:刊

「偽善者」ではなく「偽悪者」になれ。
 それが成毛さんの本書でもっとも伝えたいメッセージの一つです。
 自分が「偽善者」にならない。
 それはもちろんのこと、その人間がどの程度信頼できるかを考えるときにも、表面的な部分だけで判断しないよう肝に銘じたいですね。

「朝令暮改」のすすめ


「朝令暮改」は、「決めたことをコロコロと変えてしまう」という批判的な意味で使われる言葉です。
 しかし、成毛さんは、ビジネスにおいては朝令暮改を歓迎すべきだと考えています。
 成毛さん自身、朝の会議に「その企画いいね。やろうよ」といったことを、夕方に「やっぱりあの企画じゃダメだな。あの話ナシね」と平気で撤回するそうです。
 自分は部下を振り回すのが仕事、部下は振り回されるのが仕事だと言い切ります。

 部下は上司や社長のわがままや気まぐれを愚痴るが、それは大きな間違いだ。能力のある部下なら、上司のツボを心得てうまく取り入りながら、自分の思い通りに上司を操るくらいのことをする。
 要するに能力がないから振り回されるのであり、それでも給料をもらえるのだからむしろ感謝すべきだ。それがわからずに愚痴をこぼしている人は、一生、ムダな努力をして終わるだろう。
 始終意見を返るくらいなら、その場で判断せずに熟考してから答えを出すべきだと考える人もいると思う。しかし、熟考するとマイナス要素ばかり目について、かえって決断力が鈍る。
 そもそも、どんな決断にも“絶対”はない。熟考した結果、実行に移してもうまくいかないことは多々ある。どの段階で決断を下しても、成功するときは成功するし、失敗するときは失敗する。だから、臨機応変に対処するのが重要なのであって、どの時点で決断するかはそれほど重要ではない。

 『このムダな努力をやめなさい』 第3章 より  成毛眞:著  三笠書房:刊

 今の日本では、熟考に熟考を重ねて結局何もしない。
 そんな硬直した、保守的な組織ばかりが目立ちます。
 とにかくやってみて、問題点があればその場で臨機応変に対応する。
 そんな機動力のある組織でないと、これからの時代は厳しいです。

 組織だけでなく、個人も求められることは同じです。
 リスクをとってさっさと決断し、トラブルにその場で対応できる人間を目指せ、ということです。

もっと自分の“本能”を大事にする


 成毛さんは、科学や医学などは、日進月歩で発展して歴史や時間の淘汰を受けていないものも多いので、そのまま信じてしまうことは危険であると指摘します。

 人は、もっと自分の本能を信じたほうがいい。
 人間は、しょせん動物なのである。
 教育で理屈ばかり教え込まれると、疑うべきときに疑う感性が鈍ってしまう。
 日本の教育は、学校や社会に適応させようと過剰に管理し、優秀な生徒、優秀な社会人を育てるために本能を去勢してきた。
 快活な好人物で仕事熱心な人間などは、その最たるものだ。少しでも学校や社会の意にそぐわない人は、不適応者として排除される。
 世の中は本能より理性が尊重される風潮にあるが、理性が働きすぎると、失敗や過ちを極端に恐れるようになる。行動する前に「これは本当に正しいのか」「ほかにいい方法があるのかもしれない」とあれこれ悩み、行動を起こせないまま終わる場合も多い。理性は臆病を生む要因でもある。
 たとえまわりの人が全員白だといっても、自分が黒だと思うなら、そこには何らかの理由がある。安易にまわりに流されるのではなく、自分の内なる声に耳を澄ませてみるべきだ。

 『このムダな努力をやめなさい』 第4章 より  成毛眞:著  三笠書房:刊

 私たち日本人は、以前から、学校で教えられてきたことに疑問を挟むことは、「いけないこと」とされてきました。

「理性は臆病を生む要因」
 その通りですね。
 頭で考えているだけでは、何もできません。
 実際に行動に移さないと意味がないということです。
 自分の中から涌き上がる“感情”や“感性”を信じて行動するよう、心がけたいですね。

スポンサーリンク           

☆    ★    ☆    ★    ☆    ★    ☆

 私たちは、「やりたいことをする時間がない」という言い訳をして、結局何もしないということが多々あります。
 しかし、それは「時間がない」のではなくて「ムダなことをしている時間が多い」というだけなのだ、と本書を読んで痛感しました。

「嫌々やっていること」
「世間体を気にすること」
「空気を読むこと」
「サービス残業」

 成毛さんは、これらすべて「ムダなもの」と切り捨てています。
 やりたいことをやるには、それ位の割り切りと思い切りの良さが必要なのでしょう。
 だとすれば、まず考えなければいけないのは「自分が本当にやりたいこと」を明確にすることです。
「やりたいこと」「好きなこと」に通じること以外は「ムダな努力」なのだという意識の変革から始めたいですね。


 (↓気に入ってもらえたら、下のボタンを押して頂けると嬉しいです)

  にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 15

フォローする

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA