【書評】『40代を後悔しない50のリスト【時間編】』(大塚寿)

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 お薦めの本の紹介です。
 大塚寿さんの『40代を後悔しない50のリスト【時間編】―――1万人の失敗談からわかった人生の法則』です。

 大塚寿(おおつか・ひさし)さんは、営業コンサルタントです。
 米国でMBAを取得されたあと、自ら営業研修・コンサルティング会社設立されています。

人生の分かれ道となる「40代の壁」とは?


 職場でも家庭でも、やるべきことを山と抱える40代。
 彼らにとって最も悩みが多いのは、「時間の使い方」です。

 大塚さんは、40代は、これまで自分が築き上げてきたメソッドや、その上で絶妙に積み上げてきた、さまざまな両立のバランスが崩れ始める時期だと指摘します。

 30代までに成果を出してきた人というのは、人以上に努力をしてきた自負があるはずです。言い換えれば、人の何倍も時間を費やして結果を生み出してきたのです。本人が意識しているかいないかは関係なく、輝かしい成果は必ずそれまでかけた多くの時間の対価で支えられています。いわば、「時間を使って解決してきた」といえるのです。
 しかし、時間で解決した問題は、時間がなくなると解決できなくなります。
 頑張りが足りないわけでも、能力が落ちたわけでもありません。これまでと同じように「時間が取れない」だけで、築き上げてきたスキルは無用の長物へと成り下がってしまうのです。
 40代で多くの人が陥るのが、頭ではできるイメージがあっても、物理的に時間を奪われるために実行が伴わなくなるということです。どれだけ正しい方策を考えても、実行できる基盤がなければ意味がありません。
 実行するための基盤、実行のOSこそが時間です。
 やりたいけど、やる時間がない、これまでと同じように仕事に時間をかけられない、そうしたジレンマを抱える40代は、時間というOSを刷新しないと立ち行かない年代なのです。これが「40代の壁」の正体です。
 どれだけ効率化を洗練させても、膨大な仕事量には焼け石に水です。時間の使い方を根本的に変えない限り、どれだけ上手にやれるイメージを持っていても、そもそも実行することができないのです。30代まで優秀だったプレーヤーが、マネジャーになったとたんにうまくいかなくなる大きな理由はここにあります。
 ドラッカーは『経営者の条件』で、次のように言っています。

「成果をあげる者は仕事からスタートしない。時間からスタートする」

 すべての土台は時間なのです。自分で自分の時間をマネジメントできない限り、何もかも絵に描いた餅になってしまうからです。40代がもっとも後悔する時間の使い方こそ、この年代が真っ先に身につけるべきスキルだと言っても過言ではありません。

 『40代を後悔しない50のリスト【時間編】』 序章 より 大塚寿:著 ダイヤモンド社:刊

 大塚さんは、仕事の成果に焦点を合わせたり、自分の価値観や生き方に合わせて、持ち時間を何にどう配分するかが大切だと強調します。

 本書では、先人たちが試行錯誤し、工夫しながら身につけた等身大の時間術をまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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やるべきことが多くて、優先順位がつけられない


 40代に必要なもの。それは、「ボールを見抜く選球眼」です。
 時間の総量は一定ですから、やるべきタスクの量を調整する必要があります。
 大塚さんは、人生全体で自分の時間を何に振り分けるのかを、考えなくてはいけないと述べています。

では、自分の人生をトータルに考えて、どのようにやるべきことを絞っていけばいいのでしょうか。答えはバラバラでも、考え方にはきっとコツがあるはずです。それを教えてくれたHさんのケースをご紹介しましょう。
 Hさんは現在起業して、自分でIT系のビジネスを行っていますが、40代の前半まで、大手の外資系企業のコンサルタントでした。30代後半くらいから、多忙な毎日の中で、やるべき仕事の多さと時間の足りなさのアンバランスに苦しんでいたと言います。そこで、自分の将来を見つめ直し、働く目的を明確にしようとしました。
 そこで役に立ったのが、いわゆる「PPM」(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)でした。ボストン・コンサルティング・グループが開発した、経営資産配分のフレームワークを左の図(下図2を参照)のように「自分にとっての重要性」と、「所要時間」に変えてみたのです。Hさんは、それを「LPM」(ライフ・ポートフォリオ・マネジメント)と呼んでいました。
 通常、PPMでは企業が持つ事業や商品を、市場における「成長率」と「占有率」の中でどう配分していくかを考えますが、時間も限られた資源なのだから人生に応用できるはずだと気づいたのは、何ともコンサルタントらしい発想です。
 成長率=「重要性」、占有率=「所要時間」としてポートフォリオを組み、そこに今抱えるタスクをすべて並べていきました。
 PPMでは、「花形」「金のなる木」「問題児」「負け犬」という四象限に分けて、花形はシェアが高く競争力のある経営資源、金のなる木は成熟期にある事業、問題児は成長期にあるがシェアが低いもの、負け犬は衰退期にある事業を指します。
 これを自分の人生に応用して、新しい技術習得は時間を多く取られるが、自分にとって重要度が高く決して譲れない「マスト(MUST)」、社内調整や会議は時間を取られるが、自分にとってはさほど重要ではないのだ、できるだけ減らしたい「レス(LESS)」、家族との時間は自分にとって重要な上に時間もかからないので、もっと増やしたい「モア(MORE)」、飲み会といった付き合いやSMSをやる時間はさほどかからないが自分にとって重要ではないので、できればやめたい「ダンプ(DUMP)※ゴミ捨て場」に分けます。
 そして、「マスト」と「モア」に振り分けたものに、今後はできるだけ時間を投入し、「レス」と「ダンプ」に振り分けられたものは、できるだけ減らすか捨てるように意識づけをしていくのです。
 時間がなくて迷ったときも、「マスト」常に重要度が高いので、その時間を確保するとHさんは言います。時間はかかるのに自分にとって重要度が低い「レス」をいかに減らしていくか、そのための時間割をどうつくるかがコツのようです。
 このように自分の価値観にもとづいた優先順位づけを人生全般においてできれば、確かに根本的な時間配分を調整できるでしょう。
 後悔しない人生を送るには、一度崩れる40代の時間割をいかにチューニングし直すか、自らの価値観を見つめ直して、すべての土台となる時間の使い方をどう変えていくかが問われているのです。

 『40代を後悔しない50のリスト【時間編】』 第1章 より 大塚寿:著 ダイヤモンド社:刊

PPMとLPM 第1章P47
図2.PPMとLPM 
(『40代を後悔しない50のリスト【時間編】』 第1章 より抜粋)


 40代の時間術で最も重要なこと。
 それは、自分の資源である時間を、自分にとって最も重要なことに集中投下することです。

 長年の習慣で続けているけれど、そんなに重要でないこと。
 それらをバッサリ切り捨てる勇気が必要だということですね。

やるのが億劫なものを、つい先延ばししてしまった


 予定通りに仕事ができない。
 その要因の一つが、「ついつい先延ばししてしまう」という心理的な問題です。
 大塚さんは、以下のような「先延ばし病」克服の例を挙げています。

 40代の頃、エンジニアリング会社でマネジャーを務めていたIさんは、いつも時間に追われる日々を過ごしていました。Iさんの場合、自分のやり方を冷静に見返すと、ボトルネックになっているのは、急ぎの仕事ばかり優先してしまい、時間のかかる重要な仕事にすぐに取りかかっていないことでした。
 時間管理マトリクスの考え方は理解していたものの、仕事のバランスが取れている間はよくても、次から次へと降り掛かる仕事を前にすると、どうしても重要度の高いものより、緊急度の高いものを優先してしまいがちでした。
 重要度の高いものから着手しようと思いながらも、簡単に進まないものは忙しい業務の中でついついやり過ごしてしまい、結果として綱渡りの毎日でした。そうしたやり方を解消しようと、先輩たちにもアドバイスを求めながら試行錯誤を繰り返していました。
 結局、行き着いたのは「スイス・チーズ法」という、まずはその億劫な仕事の一口目をかじる、つまり、あまり深く考えずに5分でも10分でもいいので、反射神経的に手をつけてしまうという方法です。
 スイス・チーズというのは「トムとジェリー」に出てくる穴あきチーズのことです。そのチーズにあいた穴のように、何から始めていいかわからない仕事の塊に、とりあえず徒手空拳でも5分、10分、手をつけてみて、少しずつその穴を増やしていく。10分やったら他のタスクに移り、またこちらに戻って10分やり別の穴をあけてみるという方法を繰り返します。
 その穴はどんなに小さくても確実に数は増えていき、やがて穴と穴が貫通して進行に拍車がかかり、完成までもっていけるようになります。
 Iさんの会社では、それを「A3のマジック」と呼ぶそうですが、企画書、提案書のテンプレートが「A3」であるために、やるのが億劫なものでも、とにかくエクセルの画面を開いて5分でも10分でもいいので、その画面に何かを入力していきます。
 タイトルでもいいし、項目用のキーワードでもいいですし、とにかく始めてしまうと頭がそのモードに切り替わり、自然とやる気も湧いてくることで「A3のマジック」という呼称が定着したというわけです。
 ポイントは、いかに最初の一口目をかじるかということです。物事を始めるときは、この最初の行動をいかに起こすかがカギとなります。

 『40代を後悔しない50のリスト【時間編】』 第2章 より 大塚寿:著 ダイヤモンド社:刊

 気の進まないことでも、やり始めれば、やる気が出てくる。
 誰にでも経験があるのではないでしょうか。
 これは、脳科学的にも立証されている事実です。

 本当に自分のやりたいことをする時間を作り出す。
 そのためにも、「スイス・チーズ法」は、ぜひ試してみたいですね。

情報との付き合い方をもっと考えればよかった


 現代社会において、時間管理で避けて通れないこと。
 それが、インターネットやメール、SNSなどの「情報ツールの使い方」です。
 使う時間を決めるなどの「マイ・ルール」を課して習慣化することが重要となります。

 情報ツールの使い過ぎには、「時間の浪費」の他にも、「思考が奪われる」というデメリットがあります。

 40代の情報との付き合い方が、20代や30代とは異なる部分は、知識があるかどうかより、断片的な情報を自分の頭の中で編集し、それを他人に伝えることが強く求められるということです。
 例えば、ネットで検索すればメガバンク、あるいは地銀の勘定系システムのベンダーや特徴は簡単に調べられます。それらの金融機関の情報も、日々のニュースやSNSで流れてくるでしょう。
 30代までは、それらの知識を元に状況を概観するのが最低限のレベルです。しかし、地銀各行が系列ではなく、同じベンダーの勘定系システムを使っているという理由で経営統合を検討する時代、チームを率いる40代に求められるのは、どういう切り口で営業を進めるべきかという「戦略思考」です。
 ネットを駆使しても、その切り口は見出だせません。もちろん、誰かが言っていることを、あたかも自分の意見として語ることはできるでしょう。ネットの情報は非常に断片的で、わかったような気にさせる魔力を持っています。ネット上で極端な意見が多いのは、匿名性の問題だけでなく、断片的な情報だけで意見を言うこととも関係していると思います。
 実際に戦略思考を磨き上げ、大型プロジェクトを次々と受注したMさんが、自分の頭で情報を編集し、他人に伝えるトレーニングとして実践していたのは、ベースとなる知見を厚くすることと、実際に現場で起こっていることを的確に把握しようとした二点です。
 前者のためにはマーケティングや戦略論など本格的な専門書をしっかりと読み込み、後者のために、ミクロ的なところでは現場のユーザーやキーパーソン、マクロ的なところではアナリスト、新聞や雑誌の記者、編集者から直近の情報を仕入れるようにしていました。
 専門書から得た情報を縦糸、ミクロ、マクロとも人を通して得たライブ情報を横糸にして、必ずMさんは自分で仮説を立て、営業に役立つ切り口にして既存顧客、新規顧客に対して発信していました。その結果は、相手が関心を持つか否かという明確なフィードバックとなってMさんに戻ってきました。そのPDCAサイクルを回すことに、Mさんは頭と時間を使ったのです。

 『40代を後悔しない50のリスト【時間編】』 第3章 より 大塚寿:著 ダイヤモンド社:刊

 大塚さんは、40代は情報を知っていることより、その情報をどう語るかが求められる年代だと述べています。
 知識というたくさんの「点」を結んで、一つの「画」を描くことが求められます。

 これまでの人生で培った「経験」を生かして、独自の戦略を練っていく。
 40代には、そんな仕事の仕方を身につける必要があるということですね。

組織内の食い違う意見に時間を奪われた


 組織仕事に費やす時間を最小限にする。
 そうすれば結果的に、自分のやりたいことに投入できる時間も最大となります。
 大塚さんは、40代には、内向きな仕事に使う時間の「投入時間対効果」を最大にすることが求められると指摘します。

 そういう意味では、医療器具の販売会社に勤めるT江さんは、周りのプレイング・マネジャーと比較すると、内向きな仕事に費やす時間が少ないにもかかわらず、結果を出し続ける人でした。
 組織仕事に振り回される同僚や後輩マネジャーから見ると、ちょっと不思議な人だったかもしれません。なにせ週の半分以上は定時に帰ってしまいますし、それでいて事業部でも一、二を争う業績を上げ続けているのですから。
 そんなT江さんが社内調整で気をつけていたのは、地雷を踏まないように「前始末」に時間を費やすことでした。前始末とは、失敗の後始末とは真逆の発想で、仕事の準備の段取りをきちんと考えて実行することです。
 例えば、契約書関係でのグレーゾーン。法務で通るかどうか微妙な場合、つまり法務の担当者によって与(くみ)しやすい人は通すが、うるさ型の担当者の場合は通さないといったケースです。
 T江さんの場合は、必ず「あらかじめ、どうするのか」を担当者に聞くようにしています。その時間が取れるか、事前確認なしで進めてしまうかで、その後にかかる時間がまるで違うのです。
 出たとこ勝負で進めてしまい、法務で待ったがかかるとそれからの「後始末」に「前始末」とは比較にならない調整やすり合わせの時間がかかるだけでなく、下手をすれば入札に遅れてしまったり、最悪、契約書の不備が原因で会社に多大な損害を与えてしまうといったことも珍しくありません。
 契約書のドラフトが法務で引っかかったら、まず叱られるところから始まって、調整、やり直し、といったことに時間を失ってしまいます。あらかじめ聞いておけば、数分で済んだものがその何百倍もの時間の浪費に変わってしまうのです。

 『40代を後悔しない50のリスト【時間編】』 第4章 より 大塚寿:著 ダイヤモンド社:刊

「仕事は、段取りが8割」
 そう言われるくらい、事前の下準備は大切です。
 面倒くさい仕事ほど、さっさと終わらせようと、すぐに取り掛かりがちですが、そんな時ほど「前始末」が重要です。

「後始末」より「前始末」。
 仕事をスムーズに進めるために、ぜひとも、頭に叩き込んでおきたいですね。

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 日本人の平均年齢は、おおよそ80歳。
 40代は、ちょうど人生の折り返し地点を過ぎたところと言えます。
 これまで歩んできた道のりを振り返り、「最終目的地」を決める大切な年代です。

 30代までのように、がむしゃらに突き進むだけではうまくいきません。
 体力や気力が徐々に衰えていくぶん、積み重ねてきた経験や知恵でカバーしていく。
 そんな発想の転換が必要です。

「時間」は、本人の意識次第で、“追い風”にも“向かい風”にもなります。
 ぜひ、時間を味方にし、スマートな後半生を送りたいものですね。


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