【書評】『つなげる広告』(京井良彦)

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 お薦めの本の紹介です。
 京井良彦さんの『つなげる広告』です。

 京井良彦(きょうい・よしひこ)さんは、現在、大手広告代理店に勤務、民間、官公庁、海外と多岐にわたるクライアントを担当するアカウント・プランナーとして活躍されています。

ソーシャルメディアが変える「広告」の世界


 ツイッターやフェイスブックなどの、「ソーシャルメディア」と呼ばれる、新しいタイプのメディア。
 日本でも、ここ数年、急激に普及しています。

 テレビや新聞などの旧来のメディアは、画一的で、一方向の情報伝達です。
 一方、ソーシャルメディアは、情報の受信だけでなく、個人が発信もできる、双方向通信が特徴です。

 世界に目を向けると、中東の民主化運動や米国のウォール街デモなどを例に挙げるまでもなく、社会に浸透し、大きな影響力を持つに至っています。

 京井さんは、ソーシャルメディア普及の世界的な流れは変わることはないと断言しています。
 

 このように企業がソーシャルメディア時代に対応しようという動きは、「ソーシャルシフト」と言われ、今まさに日本でも急速に進行中です。
 この流れは加速することはあっても元に戻ることはありません。なぜならソーシャルメディアは一過性の流行ではなく、インフラとして普及していくものだからです。
 ソーシャルメディアの浸透は、情報の流れと人間マインドに大きな変化をもたらします。情報は人を介して伝播するようになり、生活者はこれまでと違った価値観に基づいて行動するようになります。そのため企業と生活者のコミュニケーションスタイルは、大きな転換点を迎えているのです。

  「つなげる広告」 プロローグ より  京井良彦:著  アスキー・メディアワークス:刊 

 京井さんは、日本でもお馴染みの海外大手コーヒーチェーンの「スターバックス」の例を挙げて説明しています。

 2007年、スターバックスは、「グリーンストーム計画」というインターネットを活用した顧客とのコミュニケーションプロジェクトをスタートしました。

 このプロジェクトの目玉施策は「マイスターバックスアイデア・ドットコム」というサイトで、顧客にスターバックスに対して「もっと、こうしたらいいんじゃないか」「ああしたらいいんじゃないか」という意見を提案してもらい、それを実現していこうという目的のもと立ち上げられました。

 サイトがオープンされると、すぐにユーザーから提案書き込みが始まり、サイトオープンから24時間のあいだに7000件のアイデアが書き込まれ、2ヶ月後には4万1000件のアイデアが寄せられます。

 これだけの反響があると、スタッフがすべてのコメントにきちんと対応していくことは不可能です。
 だからといって、意見やアイデアを出してくれたユーザーを放置したら、このサイトを立ち上げた意味がなくなります。

 このジレンマを解決すべく、スターバックスはサイトに、ある「仕組み」を組み入れていました。

 その仕組みとは、ユーザーが出してくれた意見やアイデアに、他のユーザーが「Good(良い)」「Bad(悪い)」の票を投じるというもの。

 ユーザー同士で賛成票を投じてもらうことによって、意見を出してくれたユーザーにすぐにフィードバックがされるようにしたわけです。
 ユーザー側は、票を投じるボタンを押すだけですから、気軽に参加できます。

 また、スターバックス側もどんな提案に対する賛同が多いのかが、数字で一目でわかるので対応の優先順位を付けることができます。
 情報をやり取りする双方にメリットがある、ソーシャルメディアを上手く活用した象徴的な例と言えますね。

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「熱心のファン」の存在の重要性


 2009年7月に米国の調査期間ニールセン社が2万5千人ものサンプルに対して実施した調査で、最も信用されている情報源は「友人の推薦」でした。
 いわゆる「口コミ」というやつですね。

 口コミは、昔から大きな力を持っていましたが、ソーシャルメディアの普及で更に威力を増しています。

 京井さんは、「友人の推薦」が信頼される理由を、以下のように述べています。
 

 友人からの情報、つまり、薦められる本や映画、その道に通じている人が薦める車や旅行が、なぜそんなに有益なのでしょうか。理由は2つあると考えられます。
 ひとつは、その友人、つまり推薦人の顔が見えていて、こちらがその友人の価値観を理解していることです。もうひとつは、友人の方もこちらがどういう好みを持っているかを知っていて、その上で情報を提供してくれていることです。つまり、友人はこちら側の嗜好や文脈を理解した上で、推薦する情報をこちらの文脈につなげようとしてくれるのです。こんなに有効な情報フィルターは他にはありません。
 ソーシャルメディア時代には、いろいろなソーシャルツールと人力のコラボレーションで、情報を選別するようになります。逆にここのふるいで落とされた情報は、その時点で価値を失ってしまいます。友人に推薦された情報は、フィルターをくぐりぬけてきたというだけで一定の価値を保証されるので、さらにその友人に薦められる可能性が高まります。
 このようにして、価値ある情報だけが、人と人とのつながりを介して流れるようになるわけです。

  「つなげる広告」 第2章 より  京井良彦:著  アスキー・メディアワークス:刊 

 ソーシャルメディアの普及が、情報の伝達経路を変えるということですね。
 企業が発信する情報そのものより、その商品を利用した人々の評価が、ますます重視されます。

 これからの企業のブランド戦略は、フォローしてくれる「熱心なファンを増やすこと」が重要になります。
 数が少ないファンをであっても、ソーシャルメディアを利用すれば、「レバレッジ」(てこの原理)効果を使って、多くの潜在層へ動かすことも可能です。

情報が「共感」によって拡散する構造


 情報を拡散してくれる「熱心なファン」を増やすには、どうすればいいでしょうか。
 それには、受け手の「共感」を得るような情報を発信し続けることが重要です。
 

 企業から発信する情報は、超がつくほど情報過多の中で、共感という友人の推薦を獲得してフィルターをくぐりぬけていかなければなりません。しかし、一度、受け手の共感を獲得すると、「いいね!」やシェアやリピートという行動を促し、友人にその受け手の推薦とともに自動的に届けられます。新たな友人にとっても、友人からの推薦付きの情報ということで、新たな共感を生みやすいものとなっています。
 こうして人の共感をまとった情報は、まるで自らの力でつながりの上を走っていくかのように加速度的にどんどん拡散していくのです。

  「つなげる広告」 第2章 より  京井良彦:著  アスキー・メディアワークス:刊 

「自分の感動を人に伝えたい」
「共感してもらいたい」

 そんな内的な動機が、情報を拡散させる、最も大きな力となります。

 ソーシャルメディアは、その力を増幅させる装置に過ぎないとも言えます。

情報は再び人間が仕切る時代へ


 京井さんは、「広告の目指すべき未来像」について、以下のように述べています。
 

 これまでは、人のつながりは見えないものだったため、「信じること」は「賭け」に近い感覚だったのかもしれません。しかしソーシャルメディアの浸透によって、そこに参加する人々にはネットワークの存在が見えるようになっています。一人一人がつながりを信頼し、全体社会に配慮した行動をとるようになることで、世の中がより良い方向に動いていくと考えられるのです。
 情報は再び人間が仕切る時代になったと述べました。ならば広告も、その人間の能力をもっと信頼しても良いでしょう。企業はブランドのことを真剣に考えてくれるファンと一緒になって未来を拓いていく。広告にはそんな関係を長期にわたって支えていく役割が求められていると思うのです。

  「つなげる広告」 エピローグ より  京井良彦:著  アスキー・メディアワークス:刊 

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 個人にとっても、これからは「どんな情報を受信するか」だけではなく、「どんな情報を発信するか」が、ますます重要となります。

 発信する情報は、その人のキャラクターや思想そのもの。
 人の信頼度は、発信した情報の中身で決まる。

 そういっても、過言ではありません。

 そんなことにも気を付けながら、ソーシャルメディアとは、楽しく上手に、付き合っていきたいですね。

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