【書評】『僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?』(木暮太一)

LINEで送る
Pocket

 お薦めの本の紹介です。
 小暮太一さんの『僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?』です。

 木暮太一(こぐれ・たいち)さんは、大学卒業後、大手フィルムメーカーに就職、その後いくつかの企業を経て独立されています。
 現在は、ビジネス書作家として活躍されるかたわら、出版社の経営もされています。
 本書も、ご自身の10年に渡るサラリーマン経験も踏まえた、とても実用的かつ分かりやすい経済解説書となっています。

2冊の名著から導き出される「資本主義」の本質


 小暮さんは、2冊の歴史的な名著を深く読み込むことによって、資本主義経済の構造・仕組みを理解、自分なりの答えを導き出しました。

 その2冊とは、カール・マルクスの経済学の古典『資本論』とロバート・キヨサキのお金の哲学を扱った大ベストセラー『金持ち父さん貧乏父さん』です。
 

 カール・マルクス、ロバート・キヨサキの両氏が「解決策」として提示した内容はまったく異なります。
 一方は革命、一方は投資です。
 しかし、「資本主義経済のなかでは労働者は豊かになれない」という主張の前提の部分は、まったく共通しています。

 わたしはこの2冊の本を読んで、資本主義経済の前提条件を十分理解したうえで「自分の働き方」について考えていかないと、いつまで経っても「目指すべき幸せな働き方」には近づけないことを深く理解しました。

 「僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?」 はじめに より 小暮太一:著 星海社:刊 

 世に出た時代も、場所も、目的も全く異なる2冊の名著が、同じ結論に達しているというのは興味深いですね。

スポンサーリンク

「給料」はなぜその金額なのか?


 小暮さんが「労働者は豊かになれない」資本主義経済の仕組みとは、どんなものなのでしょう?

 まず、企業の給与の仕組みから説明します。
 日本企業では、その社員を家族として考え、その家族が生活できる分のお金を給料として支払う「必要経費方式」という考え方が主流です。

 この考えに基づくと「その社員がいくら稼いだか」「いくら会社に利益をもたらしたか」などの成果・業績と給料は無関係で、「生活に必要なお金しかもらえない」と指摘しています。

 そして「生活に必要なお金」のことをマルクス経済学では、「労働の再生産コスト」と呼びます。
 再生産コストとは、「もう、一度同じことをするのに必要なお金」のことです。
 

 さきほどお伝えしたように、多くの日本企業では、給料は「必要経費方式」で決まっています。それは「生きていくのにこれくらいお金がかかるから、その分を給料として渡そう」という意味でした。
 ただし、「生きていくのに」とは、単に「生命を維持する」ということではありません。
 「労働者として生きていくのに必要なお金」、つまり、

 ●みなさんが明日も同じように働くために必要なお金

 という意味なのです。

 「僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?」 第1章 より 小暮太一:著 星海社:刊 

 なるほど、仕事の成果に関係なく年齢が上がるとともに給料も上がる理由も、これで納得です。

「商品」の値段はどのように決まるのか?


 では、「商品」の値段はどのように決まるのでしょうか?
『資本論』で使われている「使用価値」「価値」という2つの言葉の意味を理解することが大切です。
 

『資本論』では、「有益性・有用性」という意味で「使用価値」という言葉を使っています。「使用価値がある」とは、「(その商品やモノを)使ってみて意味がある、何かの役に立つ」という意味です。

『資本論』のなかには「価値」というキーワードも出てきます。
 これは、「使用価値」とは異なる概念です。
『資本論』において「ものの価値」は、「それを作るのにどれくらい手間がかかったか」で決まります。つまり、「労力がかかっているもの」「人の手がかかっているもの」が「価値を持つ」のです。
(中略)
 そして、「価値の大きさ」は、「その商品を作るのにかかった手間の量」で決まります。

 「僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?」 第1章 より 小暮太一:著 星海社:刊 

 ここでいう「手間の量」は、あくまで「世間一般にかかる平均労力」のことです。

 この考え方では、有益性はあるけれど人間の手がかかっていないもの、例えば「空気」の価値の大きさは、「ゼロ」となります。

「商品」の値段は「使用価値」でなはなく「価値」すなわち「世間一般にかかる平均労力」を基準にして決まるとのこと。

 経済学的には、労働力も「商品」として考えることができるため、同じく「価値」を基準に決められることになります。

 労働力の「価値」とは、上述の「労働の再生産コスト」のことです。
 つまり、明日も一日元気に働ける準備をするために必要な費用(あくまでも世間一般の平均ですよ)が基準となって労働力の対価である給料が決まるということ。

 個人単位の給料のばらつきがあるのは、他の「商品」と同様に「需要と供給の関係」で決まる、つまり、多くの企業からの「需要」の多い人ほど「値段」が上がるためです。

「自己内利益」を上げる働き方をしよう


 このような資本主義の仕組みを踏まえて、私たちはどのような働き方をすればいいのでしょうか?

 小暮さんは、『企業における「利益」にならって「自己内利益」という考え方を取り入れること』を勧めています。
 
「自己内利益」とは「年収や昇進で得られる満足感」から「必要経費(肉体的・精神的労力や精神的苦痛)」を引いたもののことです。
 
 この「自己内利益」を上げる手段として、「必要経費を下げる」方法があります。
 そのためには、給料を決める基準となる「労働力の価値」を上げる必要があります。
 

 労働力の再生産コストが高くなるように知識やスキルを身につけると、「労働力の価値」は高まります。
 それが「土台」です。
 その土台に乗れば、その分だけすでに給料が上がっているので、毎日ゼロからがんばらなくても、高い給料を得ることができます。
 2倍ジャンプせずとも、まったく同じ労力で、高い目標に手が届くのです。

 自分の労働力を投資し、土台を作るために考えるべきことは、「目先のキャッシュ」を追い求めないことです。残業代、インセンティブなど、目の前に見える「ご褒美」につられてしまうと、どうしても長期的な視点がないがしろになってしまいます。
 自分の労働力を投資できる仕事とは、その経験が「将来の土台を作る仕事」です。一方で、目先のキャッシュを追い求める仕事とは、時給は高いが「将来に何も残らない仕事」です。
(中略)
「今より上」を狙うのであれば、残業代やインセンティブで稼ぐのではなく、労働力の価値を上げて、給料のベースを引き上げるべきなのです。

 「僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?」 第6章 より 小暮太一:著 星海社:刊

 小暮さんは、同じことを「BS思考」という表現でも説明します。

「売上」「費用」「利益」などを表示するPL(損益計算書)。
 それに対して、将来の利益を生み出す「資産」や将来の損を生み出す「負債」を表示するBS(貸借対照表)も考えるべきだと述べています。
 

 BS思考で自分の仕事を振り返ると少し見方が変わります。
(中略)
 とにかく、会社に対して、労働者は利益を生み出さなければいけません。使用価値を発揮しなければなりません。
 ですが、逆にいえば、その日の労働力が利益を生み出してさえいれば、企業で働く労働力としてはOKだということです。
 そして、一労働者としてBS思考で考えるならば、今日の労働が自分への「積み重ね」にもなっていなければいけません。
 そのため、自分自身に毎日問うべきなのは、

「資産を作る仕事を、今日はどれだけやったか?」

 という質問です。
 これは、折に触れて自問するようにしてください。日々忙しく駆けずり回っていても、この質問に答えられないようであれば、立ち止まって考え直すべきです。

 「僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?」 第6章 より  小暮太一:著  星海社:刊 

スポンサーリンク

☆    ★    ☆    ★    ☆    ★    ☆

「自分」という「商品」の「価値」を高めること。
 結局、それが、この不安定な時代を乗り切る最大の「命綱」です。
 今の資本主義が続く以上、それは変わることはないでしょう。

 自分の体に鞭を打って、苦痛に耐えて会社にとっての利益を出す仕事をどんなにやっても、「土台」が高くなるような自分の価値を高める「積み重ね」がなければ、結局何も変わりません。
 小暮さんは、それを理論的に説明してくれました。
 
「資産を作る仕事を、今日はどれだけやったか?」

 割り切りが大事です。
 将来を見据えて、まずは意識を変えるところから始めたいですね。


(↓気に入ってもらえたら、下のボタンを押して頂けると嬉しいです) 
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 15

フォローする

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA