【書評】『自分の中に毒を持て』(岡本太郎)

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 お薦めの本の紹介です。
 岡本太郎さんの『自分の中に毒を持て』です。

 岡本太郎(おかもと・たろう)さんは、日本を代表する芸術家です。
 大阪万博開催の時に建てられた「太陽の塔」の作者として、また、「芸術は爆発だ!」の発言で有名ですね。

熱く、人生を駆け抜けるための秘訣は?


 岡本さんの作品からは、絵画でも、彫刻でも、心を揺さぶる強烈なパワーを感じます。

 その溢れんばかりのエネルギーの源は、すべて岡本さん自身から放たれています。
 熱くたぎるマグマのような情熱を、自らの作品に注ぎ込んだ。
 そんな印象です。

 岡本さんは、なぜここまで熱く、人生を駆け抜けることができたのか?

 本書は、そのヒントが散りばめられた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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過去を捨て、瞬間瞬間を生きろ!


 人生は積み重ねだと誰でも思っているようだ。ぼくは逆に、積みヘらすべきだと思う。財産も知識も、蓄えれば蓄えるほど、かえって人間は自在さを失ってしまう。過去の蓄積にこだわると、いつの間にか堆積物に埋もれて身動きができなくなる。
 人生に挑み、本当に生きるには、瞬間瞬間に新しく生まれ変わって運命をひらくのだ。それには心身とも無一物、無条件でなければならない。捨てれば捨てるほど、いのちは分厚く、純粋にふくらんでくる。
 今までの自分なんか、蹴トバシてやる。そのつもりで、ちょうどいい。

   「自分の中に毒を持て」  第1章より   岡本太郎:著  青春出版:刊 

 新しいものを創り出すことが全てである、芸術家らしい主張ですね。

 瞬間瞬間に新しく生まれ変わって運命をきりひらなければならない。
 それは、私たちも一緒です。

 今までの自分と違う意識や考え方を身につけることを「成長」と呼ぶ。
 それなら、それまでの「古い自分」を壊し、捨てる必要があります。

『本当に生きる』

 それには過去の自分を否定するという、過酷で厳しい作業を繰り返すことなのでしょう。

自分を敵だと思って闘え!


 自分に忠実と称して狭い枠のなかに自分を守って、カッコよく生きようとするのは自分自身に甘えているにすぎない。
 それは人生に甘えることでもある。もしそんなふうにカッコウにとらわれそうになったら、自分を叩きつぶしてやる。そうすれば逆に自分が猛烈にひらけ、モリモリ生きていける。
 つまり自分自身の最大の敵は他人ではなく自分自身というわけだ。自分をとりまく状況に甘えて自分をごまかしてしまう、そういう誘惑はしょっちゅうある。だから自分をつっぱなして自分と闘えば、逆にほんとうの意味での生き方ができる。
 誰だって、つい周囲の状況に甘えて生きていくほうが楽だから、きびしさを避けて楽なほうの生き方をしようとする。
 ほんとうの人生を歩むかどうかの境目はこのときなのだ。
 安易な生き方をしたいときは、そんな自分を敵だと思って闘うんだ。
 たとえ、結果が思うようにいかなくたっていい。結果が悪くても、自分は筋をつらぬいたんだと思えば、これほど爽やかなことはない。
 人生というのはそういうきびしさをもって生きるからこそ面白いんだ。

   「自分の中に毒を持て」  第1章より   岡本太郎:著  青春出版:刊 

『自分自身の最大の敵は他人ではなく自分自身』

 自分自身に対し、どこまでもストイックで、厳しく対する岡本さん。

 はるか頭上にある一筋の光を目指す、求道者のような姿勢。
 それが、岡本さんを、大いなる高みへと導いたのでしょう。

 人間、楽な方に行こうと思えば、いくらでもできます。
 しかし、それでは、自分の道を、自らの手で切り拓く逞しさは、永遠に手に入りません。

『ほんとうの人生』を歩む。
 そのためには、自分を律し、あえて厳しい道を進む必要があります。

『人生というのはそういうきびしさをもって生きるからこそ面白いんだ。』

 同感ですね。

社会と妥協するな、闘い続けろ!


 激しく挑みつづけても、世の中は変わらない。
 しかし、世の中は変わらなくても自分自身は変わる。
 世の中が変わらないからといって、それでガックリしちゃって、グラッと妥協したら、これはもう絶望的になってしまう。そうなったら、この世の中がもっともっとつまらなくみえてくるだろう。
 だから、闘わなければいけない。闘い続けることが、生きがいなんだ。
 しかし、いままで、ぼくはずいぶんと闘ってきたが、世の中が変わらないどころか、逆に悪くなってきている。つまらなくなったことは確かだ。
 変えようと思っても、変わらないのは事実なんだ。だけど、挑むということでぼく自身が、生きがいをつらぬている。
 ぼくは絶対に、変わらない社会と妥協しない、これが、ぼくの姿勢だ。

   「自分の中に毒を持て」  第2章より   岡本太郎:著  青春出版:刊 

 岡本さんらしい考えですね。
 本当に世の中が変わるかどうかは、大したことではありません。

 社会と妥協せず、闘い続けることで、人間は、間違いなく磨かれます。
 岡本さん自身の発する熱も、社会と闘うことで生じたものです。

 時々、火花が散るくらいの激しい摩擦。
 それが、岡本さんの精神を鍛え上げました。

生きることは「爆発」だ!


 ぼくが芸術というのは生きることそのものである。人間としてもっとも強烈に生きる者、無条件に生命をつき出し爆発する、その生き方こそが芸術なのだということを強調したい。
 “芸術は爆発だ”
 ぼくの気ままに言った言葉。
(中略)
 全身全霊が宇宙に向かって無条件にパーッとひらくこと。それが「爆発」だ。人生は本来、瞬間瞬間に、無償、無目的に爆発しつづけるべきだ。いのちの本当のあり方だ。
 子供の頃から私は胸の奥深いところに神聖な火が燃えているという、動かし難い感覚を持っていた。それは誰にも冒させることのできない、絶対的な存在感なのだ。

   「自分の中に毒を持て」  第4章より   岡本太郎:著  青春出版:刊 

『芸術というのは生きることそのものである』

 岡本さんは、常に『爆発』し続けていることが人生の本当のあり方だと強調します。
 岡本さん自身が、まさに太陽のような存在であり続けました。

 自ら燃え続けよ! 常に外に向かって解き放て!

 強烈なメッセージが伝わってきます。

不器用でもいい、突き進め!


 つまり手づくり、手で作るというのは、実は手先ではなく、心で作るのだ。生活の中で、自分で情熱をそこにつぎ込んで、ものを作る。楽しみ、解放感、そして何か冒険、つまり、うまくいかないのではないか、失敗するかもしれない、等々いささかの不安をのり越えながら作る。そこに生きている夢、生活感のドラマがこめられている。心が参加して、なまなましく働いていることが手づくりの本質だと言いたい。
(中略)
 とかく素人は玄人の真似をしようとして絶望し、私は不器用だからとても、などと言って尻ごみしてしまう。子供の時には誰でも平気で作ったのに。大人になると、みっともないと自分で卑しめてやめてしまう。
 とんでもない。むしろ下手の方がよいのだ。笑い出すほど不器用であれば、それはかえって楽しいのではないか。

   「自分の中に毒を持て」  第4章より   岡本太郎:著  青春出版:刊 

 不器用でも、素人でもいい、とにかく前に進みなさい。
 岡本さんの芸術、いや、人生に臨む姿勢がよく表れています。

 岡本さんの絵画は、不器用さを隠すことなく、思い描いたイメージを大胆に描ききったものばかり。
 うまくはなくても、存在感があります。

 不器用だから、下手だから思いが伝わることもあります。
 要は、どれだけ気持ちを込めたかということ。

 不器用でもいい。
 転びながらでもいい。

 自分の思い描く人生を堂々と歩んでいきたいですね。

己を殺す決意で生きろ!


 本当に生きがいをもって、瞬間瞬間に自分をひらいて生きているかどうか。
 システムのベルトコンベアーに乗せられ、己を失って、ただ惰性的に生活を続けているというのなら、本質的に生きているとはいえない。
(中略)
 自分を大事にしようとするから、逆に生きがいを失ってしまうのだ。
 己を殺す決意と情熱を持って危険に対面し、生き抜かなければならない。今日の、すべてが虚無化したこの時点でこそ、かつての時代よりも一段と強烈に挑むべきだ。
 強烈に生きることは常に死を前提にしている。死という最もきびしい運命と直面して、はじめていのちが奮い立つのだ。死は生理的な終焉ではなく、日常生活の中に瞬間瞬間にたちあらわれるものだ。この世の中で自分を純粋に貫こうとしたら、生きがいに賭けようとすれば、必ず絶望的な危険をともなう。
 そのとき「死」が現前するのだ。惰性的にすごせば死の危機感は遠ざかる。しかし空しい。死を畏れて引っ込んでしまっては、生きがいはなくなる。今日はほとんどの人が、その純粋な生と死の問題を回避してしまっている。だから虚脱状態になっているのだ。

   「自分の中に毒を持て」  第4章より   岡本太郎:著  青春出版:刊 

 岡本さんは、「死」という厳しく、目を背けたい現実に対しても、真正面から向かい合います。

「死」から逃れようと目をつむるのでなく、あえて「死」を凝視する。
 そこに本当の意味の「生きがい」を見出します。

「死」を恐れるな!
 己を殺す決意と情熱を持って生き抜け!

 岡本さんの、どこまでも厳しく、真っ直ぐな視線が脳裏に浮かびます。

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☆    ★    ☆    ★    ☆    ★    ☆

「毒をもって毒を制する」
 
 社会全体が停滞し、エネルギーを失いつつある日本。
 この国に必要なのは、岡本太郎という「毒」なのかもしれません。

 この毒は、死にゆく“重病人”、日本のカンフル剤になりえる「劇薬」です。

 この「毒」は、効きます。
 皆さんも是非、一口お試しください。

(↓気に入ってもらえたら、下のボタンを押して頂けると嬉しいです)
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