【書評】『絶望世代に告ぐ』(おちまさと)
お薦めの本の紹介です。
おちまさとさんの『絶望世代に告ぐ』です。
おちまさと(おち・まさと)さんは、テレビ番組のプロデューサーです。
最近では、WEBサイトやSNSゲームやファッションなどのプロデュースやデザインまで幅広く手掛けて、ご活躍されています。
「サバイバル力」を身につけよう!
『絶望世代』とは、20代から下の世代のことを指します。
長引く不況や少子高齢化、年金問題、それに震災のダメージ。
たしかに、若い世代ほどネガティブなキーワードばかりが目に付きます。
私たち30代や40代も、大差はなく、日本人すべてが、『絶望世代』だと言っても過言ではないです。
「絶望世代」が今までの時代よりも身につけなければならない力は、「サバイバル力」である。誰も、明日さえ予測できない時代を生き抜くには、サバイバル力が何よりも最大の必須科目となっていくのではないか。
しかし、恐れることはない。「絶望」を他のものに置き換えてみよう。
「絶望」を不安視する大きな原因は、「先が見えない苦痛」ではないだろうか。
そこにはヴィジュアルとして見えないことだけでなく、解決までにどれくらいの時間を要するのかが分からないということも、不安を煽る要素となる。
これは車の「渋滞」と似ているのではないだろうか。
しかし、「渋滞」には回避する術があり、ずっと「渋滞」にはまっている人もいれば、どんな「渋滞」も切り抜けて、誰よりも早く目的地へ到着する人もいる。そこには「抜け道」という情報とテクニックが必ずある。ということは、「絶望」にも必ず「抜け道」があるはずである。「絶望世代に告ぐ」 まえがき より おちまさと:著 朝日新聞出版:刊
おちさんは、この本を『絶望世代の抜け道マップ』と呼んでいます。
本書は、その呼び名の通り、おちさんが考える、『絶望世代』が世の中を生き抜くためのユニークなアイデアをまとめた一冊です。
その中からいくつかピックアップしてご紹介します。
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流行にのまれず、勇気を出して「右向け左」で進む
まず世の中の流れに対して、自分の会社はどういうベクトルを進んでいるかを分析し、他の社員や上司や役員たちがどこに向かっているかを検証します。その流れは恐らく一方向をむいているはずです。それがもしも「右」に向かっていれば、あなたは「左」に歩み出すのです。勇気を出して「右向け左」で進んでみて下さい。
「そんなことをしたら上司から文句も言われるし、会社の方向性に逆らってしまう」
そう思ったあなた、その通りです。あなたは今、空気を“読めない”のではなく“読まない”という新たな領域に入ろうとしているのです。しかしそれは会社ましてや自分をおとしめようとしている訳ではなく、むしろ会社も自分も成長させるのです。つまり、「時流やまわりの空気に流されない」ということです。「絶望世代に告ぐ」 第1章 より おちまさと:著 朝日新聞出版:刊
こういう時代だからこそ、大事になのは、『時代や周りの空気に流されない』ことです。
自らの頭で判断し、行動しましょう、ということ。
上の人の言うことに、素直に従っていれば間違いない。
そうやって何も考えずに、後ろからついていくというは、かなり危険です。
空気を“読めない”のと、“読まない”。
似ているようで、天と地ほどの開きがあります。
あえて空気を“読まない”習慣。
普段から身に付けたいですね。
「大きな振り幅」が、人に魔法をかける
あなたの仕事に「振り幅」はありますか?
人は「振り幅」に魅力を感じるものです。なぜなら、そこには“ギャップという永遠の魔法”が作用しているからです。
例えば、スーツを着た真面目そうなサラリーマンが、おばあさんをおんぶして横断歩道を歩いていたとします。当然、素晴らしいとは思いますが、1分後には忘れてしまうでしょう。
しかし同じ行動を、めちゃくちゃ悪そうなヤンキーがやっていたら、「あいつ、本当はいいやつなんだなあ」と、ずっと覚えているはずです。
私はこれを「ヤンキーおんぶ理論」と呼んでいます(笑)
(中略)
あなたも今日から、いつもと真逆の方向の仕事をしてみましょう。結果それは、仕事の振り幅を大きくすることとなります。あなたにとっての「おばあさんをおんぶする」仕事は、意外と近くに転がっているはずです。「絶望世代に告ぐ」 第1章 より おちまさと:著 朝日新聞出版:刊
「ヤンキーおんぶ理論」ですか。
プロデューサーのおちさんらしく、面白いアイデアです。
「振り幅」の大きい人、「ギャップ」の大きい人。
そんな人には魅力を感じるし、印象に強く残ります。
役者さんでも、そうですね。
それまでのイメージとは逆の役柄を演じたりすると、強烈なインパクトが残ります。
たくさん打席に立てば、たくさんヒットが打てる
私は多岐にわたるジャンルでプロデュースの仕事をしています。例えば、携帯SNSゲームの企画や、ベビーカーのデザインを始め、様々な企画の顧問、講演など、およそ100のプロジェクトに携わっています。つまり、日々100打席に立っています。ディズニーの言葉を借りれば「これだけ打席に立てばヒットも打てます」なのです。
なぜ私が打席に立ち続けるのか、打席に立つチャンスがあったにもかかわらず躊躇してしまい、その瞬間に誰かが立ってしまう時ほど、後悔することはないからです。もしかしたら後悔したくないから打席に立っているのかもしれません。
とにかく「打席に立て!道は開かれる!」です。「絶望世代に告ぐ」 第1章 より おちまさと:著 朝日新聞出版:刊
イチロー選手が、大リーグでシーズン200本以上のヒットを打ち続けた。
その最大の理由も、これと同じです。
イチロー選手は、誰よりも多く打席に立ち続けて、バットを振り続けました。
日々の体のメンテナンスはもちろんのこと、コンスタントに調子が維持する必要があります。
そのための努力は、並大抵のものではないでしょう。
まずは打席に立てるだけの実力を付けること。
そして、バットを振り続ける勇気を持ち続けることですね。
ええかっこしいは、「テンパリスト」になる
そこで私はある日、「なぜ人はテンパるのか?」とメカニズムを考えてみたのです。
必ず何かきっかけがあるはずだと考えたところ、それは「うまくやりたい」と思っていることだと突きとめました。俗に言う「ええかっこしい」です。それが「実力以上の力を出したい」となり、毎週その本番だけは120%の力を出したいと力みすぎていたのです。
(中略)
120%力を出そうとすると80%も出ないものが、80%でいいと思ったら120%出る。それが成功体験となったからか、その日から「テンパる」「あがる」「無駄に緊張する」ということが一切なくなりました。
かっこよく、うまく見せたいというのは当然の心理です。しかしそこには「よけいなプライド」がつきまといます。私は「プライドは忘れず、余計なプライドは捨てよ」といつも自分に言い聞かせています。
(中略)
緊張はせずに緊張感は忘れず、自分を常に俯瞰し、80%の力が出ればいいと思っていれば、おのずと道は開かれるのではないでしょうか。そうすれば、テンパリストの一味からは足を洗うことができるはずです。「絶望世代に告ぐ」 第4章 より おちまさと:著 朝日新聞出版:刊
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☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆
人生についても、同じことが言えるのではないでしょうか?
人生をよりよく見せたいと思えば思うほど、「よけいなプライド」のせいで120%の力を出そうと力みます。
そして、かえって結果がでずにみじめな思いをすることになります。
周りの目を気にせず、80%位の力加減で、余裕をもって生きる。
その方が、テンパることなく、人生を120%楽しめるのでしょう。
『常に、素の自分で勝負できること』
それが、これからの時代を生き抜くための、最大の武器になるのかもしれませんね。
皆さんも、この本を読んで、『人生の抜け道探し』をしてみませんか。
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