【書評】「突き抜ける人材」(波頭亮、茂木健一郎)

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 お薦めの本の紹介です。
 波頭亮さんと茂木健一郎さんの『突き抜ける人材』です。

 波頭亮(はとう・りょう)さんは、経営コンサルタント、経済評論家です。
 幅広い分野における戦略系コンサルティングの第一人者として活躍されています。

 茂木健一郎(もぎ・けんいちろう)さんは、脳科学者として、幅広い分野で活躍されています。

今、日本に必要とされる人材とは?


 長引く不況に、多額の国債(国の借金)。
 さらに東日本大震災からの復興という、厳しい課題にも取り組まなくてはならない日本。

「日本はこのままでは危ない・・・」

 そういう危機感を、多くの方々が感じていることと思います。

 著者も、そんな日本の将来を憂い、日本は既存組織の力が強過ぎるため、組織やシステムを変えるような変化が起こりにくい。それが日本が長い間停滞を続ける最大の原因と指摘します。

 そして、その閉塞感を打破するためには、古い体質に風穴を開ける「突き抜ける」存在が、どうしても必要だと強調します。

 では、「突き抜ける」存在とは、どんな人なのか。

 こうしてみると、この閉塞した社会を変えるために有効なアプローチは、政治を変え、新しい社会を設計し、新しい政策を整えていくという方法論よりも、既存のしがらみにとらわれていない若い人たちが、それぞれの場所で、それぞれのやり方で、既存のルールや従来の常識を“突き抜け”ていくほうが有効なのではないか。
(中略)
 したがって、いま、日本の閉塞感を打破し、新しい社会を築いていくために求められているのは、こうした”突き抜ける存在”なのである。いままでのやり方と古い常識にとらわれない、自分で考え、自分で行動することのできる人たちである。
 そして、そうした”突き抜け”ていくことができるのは、現行の社会システムの既得権益を有していない、またこれまでの常識が染みついていない若い人たちであろう。(波頭)
 
  「突き抜ける人材」 まえがき より  波頭亮・茂木健一郎:著  PHP研究所:刊

 本書は、世の中を変える「突き抜ける人材」について、波頭、茂木両氏がリレー形式で交互に意見を述べ合い、エッセイ集の形でまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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「専門性」と「職人性」の違い


 現代のエリートには、システムにどのような脆弱性があるかとか、部分の和がどうやって全体になるか、あるいは予想できないことをいかにリスクヘッジするか、そんなことを知っていなければならないのに、その類の授業はない。法律の職人をつくる授業ばかり受けた人が霞ヶ関の官僚になっているのですから、彼らにも当然、そのような問題意識はありません。まさに日本は「1億総職人の国」なのです。
「専門性」を「職人性」とほとんど同じものと思う傾向が、日本の学者にはあります。そして波頭さんのように分野を越境する人は、「色物扱い」されます。日本のヒーローはイチローや羽生善治といった、野球職人であり将棋職人なのです。
 しかし、「この分野に通じている」という専門性と、「これ一筋に賭ける」という職人性は違います。
分野を越境していろんなことを知り、いろんなことをやる人が「色物」なら、グーグルやフェイスブックはその典型です。そして彼らは評価され、話題になる。外からきた「色物」も評価すべきでしょう。そうすれば、日本は強くなれるのです。(茂木)
 
  「突き抜ける人材」 第2章 より  波頭亮・茂木健一郎:著  PHP研究所:刊

 これからの時代は、それぞれの分野の技術力を高めることも、もちろん大事です。
 しかし、それ以上に、個々の技術を結び付けて、新たな分野を切り開く、そんな力が必要です。

 ただし同時に、哲学的な思考や思索とはまた別のところにある「アニマル・スピリッツ」という価値観も大切です。アニマル・スピリッツとは、ケインズの『雇用・利子および貨幣の一般理論』の中に出てくる言葉で、経済取引あるいは企業経営者に経済合理性で説明できない行動を起こさせる衝動を指すものです。
(中略)
 たとえばスティーブ・ジョブズの生涯をたどると、まさに彼はアニマル・スピリッツの塊です。このアニマル・スピリッツをジョブズは、いまの日本社会のように非生産的なことに浪費するのではなく、ポジティブな方向に使った。だからアップルを誕生させたのです。そう考えると「突き抜ける人材」の条件として、自分のアニマル・スピリッツをうまく制御し、その波に乗ることもあると思うのです。
 ところが日本の学校教育では、「情緒の安定」を重視し、アニマル・スピリッツを否定しがちです。「エリート」と呼ばれているのは、理性で感情を押さえ込める能力に優れた人ばかりです。(茂木)

 とにかく、「理性によって感情をコントロールする」というのは聞こえはいいですが、十分に気をつけなければなりません。私が最も尊敬する経済学者であり思想家でもあるフリードリヒ・ハイエクは、ケインズのライバル的存在ですが、彼も社会を健全に進歩させていくのは人間の本能的な姿勢と経験から学ぶ能力だと喝破しています。
 人間の本能と経験に基づく行動が、市場の中でぶつかり合って正しい道を示すという考え方です。(波頭)

  「突き抜ける人材」 第3章 より  波頭亮・茂木健一郎:著  PHP研究所:刊

「いい子」なだけではダメだ、ということです。

 自らの感情や信念に任せて、実際に行動を起こす。
 そんなことも、時には必要です。

 空気を読んでばかりじゃ、今の状況を変えることなどできません。

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 最後に、茂木さんが以下のようにおっしゃっています。

 ここで、注意しなければならないのは、みんなが同じになってしまっては、協力するメリットがないということである。一人ひとりが違っているからこそ、組み合わせたときに「かけ算」ですごい力が出る。
 この、「かけ算」の哲学こそが、これからの日本の道を開く考え方だと、私は確信してる。
(中略)
 失われた20年の中で自信を失い、立ちすくんでいる日本人。「もっと、自分の個性を肯定していいんだ。変人へのアクセルを踏んでいいんだ」。読者の背中を押したいという気持ちで、この本をつくった。現状の厳しさをしっかりと見つめると同時に、明るい未来に向かって、楽観的な気持ちで歩んでいくようにしたい。(茂木)

  「突き抜ける人材」 あとがき より  波頭亮・茂木健一郎:著  PHP研究所:刊

 日本では、協調性を重んじ過ぎて、考え方自体も、似たり寄ったりです。
 個性的な考え方が、埋没してしまっていますね。

 1億人以上の国民の「かけ算」として考えると、まだまだ実力を出し切れていません。

 波頭さん、茂木さんの後に続く、個性的で「突き抜ける人材」が多く生まれることを。
 そして、そういう私たち自身も「突き抜ける人材」の一人でありたい、と改めて願います。

 力を合わせて、この困難を乗り越えていきたいですね。
 負けるな、ニッポン!!

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