【書評】『政治家の殺し方』( 中田宏)

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 お薦めの本の紹介です。
 中田宏さんの「政治家の殺し方」です。

 中田宏(なかだ・ひろし)さんは、政治家で、前横浜市長です。

政治家の殺し方


 中田さんは、テレビや雑誌等でバッシングを受けて、任期途中の200年に辞任追い込まれました。
 さまざまなスキャンダルがメディアに報じられたので、いいイメージを持たれていない方が多いでしょう。

 ただ、中田さん本人は、報じられた事実を、すべてきっぱりと否定しています。
 法廷で争った結果、すでに無罪も確定しています。

 しかし、中田さんのイメージが完全に回復することも、市長の座に返り咲くことが出来ないという事実は変わりません。

「政治家・中田宏を殺す」

 その目的で、一連のスキャンダル報道がされたのであれば、目的は達成されたことになります。

 まず、中田さんは、本書を執筆した理由について、以下のように書いています。

 今回、本を書こうと思ったのは、自分の名誉挽回のためではない。メディアで派手に見出しが踊る裏側に横たわる真実、政治には歪んだ闇の世界があるということを知ってほしかったからだ。業界団体や公務員の既得権益、違法風俗店や闇の勢力の存在、まとわりつく陳情やゆすり、たかり。よく「政治の世界は汚い」と言われるが、実際、その通りだ。利権といわれる薄暗い“地下室”の分厚い扉を開け、その中の掃除を始めるとどうなるか、そのことを読者に知ってもらいたいと思っている。

  「政治家の殺し方」 はじめに より  中田宏:著  幻冬舎:刊

 大阪市長に選出された橋下徹氏の動きが、多くのメディアでこぞって報道されるなど、地方政界の動きが、今まで以上に注目を集めています。

 彼らの勢いをみると、日本の政治が変わるのは、「中央」ではなく「地方」からではないか。
 そんな気もしますね。

 ただ、地方政治は、中央政治以上に、「官」と「民」の長年の癒着関係が強いのも、事実です。

 本書は、地方行政に巣食う「闇」の部分をわかりやすくまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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「抵抗勢力」からの攻撃


 中田さんは、横浜市長時代に、破綻寸前だった同市の財政改革を行い、多くの成果を収めています。

 無駄だらけだった市行政の予算に多くのメスを入れました。
 市長就任時3万4000人いた職員数を2万7000人まで減らすなど、財政再建に取り組みます。

 その結果、多くの人たちから恨みを買ってしまいます。
 その代表が、「建設業界、公務員組織、暴力団がらみの風俗業界など」でした。

 理由は、彼らの利益構造にまで手をつけたためです。

 建設業界を例にとります。
 中田さんは、市の建設事業発注を「指名競争入札」から「一般競争入札」に変える改革をしました。

 もちろん、時代の流れからして、当然の改革です。
 しかし、建設業界関係者の多くは、そうは受け取りませんでした。

 まず、建設業界といえば、談合である。そもそも、なぜ談合が可能なのかといえば、指名競争入札といって、指名された業者のみが応札する仕組みだからだ。つまり、不当に高い金額で落札できるわけだ。そこで、談合させないように、一般競争入札にした。だれもが入札できるし、だれが入札しているかわからないから業者側の話し合いもできず、当然ながら建設費も安くなる。市民の税金が有効に使われるわけだ。
 一方、談合で成り立っていた建設業者にすれば、「何するんだ、この野郎。殺してやりたい奴だ」ということになる。私は抹消すべき存在となっていしまったわけだ。入札制度を改めて半年ほどしてから、陰ながら私を支持してくれていた建設会社の社長が耳打ちしてくれた。「中田市長はクラブで飲み歩いている」昼間からサウナばかり行ってろくに仕事をしていない」という話を、建設業界の人間がまことしやかに噂しているから気をつけろというものだった。

  「政治家の殺し方」 第1章 より  中田宏:著  幻冬舎:刊

 いやはや、恐ろしい世界ですね。
 これだけ多くの改革を実行している中田さんが、クラブで飲み歩いている時間はないだろう。

 本書を読めば、容易に想像できますが、人の噂はイメージで広がります。

 殺そうと思えば、簡単に殺せてしまう世界。
 それが政治の世界です。

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☆    ★    ☆    ★    ☆    ★    ☆

 中田さんは、最後に、日本の将来について、以下のようにおっしゃっています。 

 日本はどのような国をめざすべきか。私は、大いなる自由に対して、しっかりと責任が伴う社会をめざすべきだと考える。経済的自由が制限されていれば、ビジネスチャンスが失われる。国や地方行政の規制によって安心感を覚えている日本人もかなり多いが、その結果、創意工夫が発揮されにくく、これまでの既得権を守り続けていく経済になっている。農業や通信をはじめ、規制だらけの分野の自由度を高めることが必要だ。自由があるから人間は努力をするし、頑張りもきくし、我慢もできる。
 しかし、自由には責任が伴う。のびのびと自由に活動する分、ルールを逸脱した場合などは責任をとらせることだ。これまで責任を伴わない、自由をふりかざす勝手主義が広がってきたが、自由と責任をセットにする必要がある。右手に自由、左手に責任を持って活動することが人の力強さを生むことになるのだ。
 これらを一言で表すならば「自立」ということになるだろう。今我が国に最も必要な価値観は自立に他ならない。国家の自立、地方の自立、民間の自立、個人の自立など、あらゆる意味において自立が求められる。
 裏を返せば、いまの日本は依存社会だ。国家の存在はアメリカ依存。地方は国依存、民間や個人は公的依存といえる。

  「政治家の殺し方」 第4章 より  中田宏:著  幻冬舎:刊

 これに関しては、大いに同感です。

 政治や教育も含めて、上からの指令に忍耐強く従順に従っていればいい。
 そんな人間や組織を作り出すためのシステムが、日本を支配しています。

 実際に、そんな人間や組織が大量生産されてきました。

 しかし、すでにそんなシステムが機能しなくなっているのは、誰の目にも明らかです。

「誰かがどうにかしてくれる」

 そんな甘えた考えでは自分の身すら守れない、そんな社会です。

「依存からの脱却」

 それは、日本再生のキーワードです。

 晴れて無罪放免になった中田さん。
 いずれ魑魅魍魎(ちみもうりょう)の棲む政界の表舞台に、また戻ってきてくれるのでは。
 そう期待しています。

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