【書評】『多動力』(堀江貴文)

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 お薦めの本の紹介です。
 堀江貴文さんの『多動力』です。

 堀江貴文(ほりえ・たかふみ)さん(@takapon_jp)は、実業家であり起業家です。
 元・ライブドアの代表取締役CEOで「ホリエモン」の愛称で親しまれています。
 現在は、民間でのロケット開発を行う会社のファウンダーとしてご活躍されています。

なぜ、「多動力」が最も必要とされるのか?


 堀江さんは、これからの時代は「多動力」こそが最も必要な能力だと強調しています。

 多動力とは、いくつもの異なることを同時にこなす力のことです。

 堀江さんは、「多動力」が求められる理由を、以下のように説明しています。

 IoT(Internet of Things=モノのインターネット)という言葉を最近ニュースでもよく耳にすると思う。
 これは、ありとあらゆる「モノ」がインターネットにつながっていくことを意味する。
 調査会社ガートナーによると、2014年の時点でネットにつながっているデバイスの数は38億個。その数が2020年には200億個を超えると予想されている。

 つまり、テレビなどの家電はもちろん、自動車も、家も、ありとあらゆる「モノ」がインターネットにつながるということだ。
 すべての産業が「水平分業型モデル」となり、結果“タテの壁”が溶けていく。

 たとえば、テレビとインターネットがつながると、テレビはスマホアプリの一つになり、電話やフェイスブックと同じレイヤーで競争することになる。
 フジテレビのライバルは日本テレビではなく、恋人からのLINEになるのだ。
 また自動車がインターネットにつながり、自動運転が進めば、もはや自動車の形である必要はなくて、ただの移動するイスになるかもしれない。
 そのとき、自動車業界もインテリア業界もタテの壁はなくなる。

 この、あらゆる産業のタテの壁が溶けていく、かつてない時代に求められるのは、各業界を軽やかに越えていく「越境者」だ。

 そして、「越境者」に最も必要な能力が、次から次に自分が好きなことをハシゴしまくる「多動力」なのだ。
 

『多動力』 はじめに より 堀江貴文:著 幻冬舎:刊

 堀江さんは、現在、日本のみならず、世界中を飛び回る生活を送っています。

 あまりのフットワークの軽さに、肩書きも、関わっているプロジェクトの数ももはや自分ですら把握できていない状態です。

 本書は、そんな堀江さんの源である「多動力」の中身を明かしてまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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寿司屋の修行なんて意味がない!


「苦しいことを、我慢して行うことが、美徳である」

 修行や下積み、球拾い。
 日本人には、相変わらず、そんな風潮が根づいています。

 しかし、堀江さんはそんな空っぽな幻想から目覚めてほしいと真っ向から否定します。

 以前、ツイッターで「寿司職人が何年も修行するのはバカ」と投稿したら大炎上した。しかし、僕は未来のある若者が卵焼きを作るのに何年もの無駄な時間を費やすのを見ていられない。
 情報伝達手段が限られていた時代には、おいしい酢飯をどうやって作ればいいのか素人にはわからなかったし、魚のうまさを最大限に引き出す包丁の使い方はプロのみぞ知る専売特許だった。貴重な情報をもつ親方に弟子入りし、下積みの苦労にひたすら耐えることでしか、それらの伝統技術や情報を引き継ぐことはかなわなかった。
 インターネット出現前は特定の人間だけが技術や情報を独占し、それこそが価値だったのだ。しかし、インターネットの時代では「オープンイノベーション」が前提となる。
 たとえば、誰かが新しいプログラムコードやツールを作ったのならば、それは公開してしまって、みんなで改良したり、新しい組み合わせを考えたりして、さらに新しいものを作るというのが「オープンイノベーション」だ。情報や権利の囲いこみなどとは正反対の考え方である。
 発明というのは、まったくのゼロからは生まれない。世界のどこかで発明が生まれたのならば、すぐに共有し、その上に新しい発明を積み重ねるほうが技術の進化は速くなる。
「車輪の再発明」という、プログラマーの世界でよく使われるキーワードがある。
 要は、すでに車輪という便利なツールが存在するのに、一から車輪を開発するほど時間と労力の無駄はないということを表した言葉だ。
「すきやばし次郎」のような寿司屋にわざわざ弟子入りし、長大な時間を修行に費やす者は「車輪の再発明」をしているとしか言いようがない。
 現に、大阪の「鮨 千陽(ちはる)」の土田秀信店長は迂遠な修行は積んでいない。専門学校で3ヶ月寿司作りを学んだだけだ。
 その「鮨 千陽」が『ミシュランガイド京都・大阪2016』で「ビブグルマン」部門に選ばれた。開店からたった11ヶ月目の出来事であった。
 つまり、一流店になるための情報や技術などは専門学校でちゃちゃっと身についてしまうことができるのだ。
(中略)
「石の上で3年我慢できたら次の仕事を教えてやる」などと言う親方のもとで働いていては貴重な時間が失われるだけだ。
 繰り返すが、もはや情報自体に意味はない。これからは旧態依然とした業界に「オープンイノベーション」の波が来る。そこでは、とにかくチャレンジしようという行動力とアイデアを進化させる力が求められる。
 

『多動力』 第1章 より 堀江貴文:著 幻冬舎:刊

 インターネットを媒介とした、「オープンイノベーション」。
 その大波は、スキルを身につける手段も、根底から変えてしまいます。

 知識は、以前とは比較にならないほど、簡単に手に入れられるようになりました。
 より必要となるのは、「経験」です。

 頭に入れたノウハウを、いかに体にしみ込ませるか、が重要となります。

 早くから実戦の経験を積み、試行錯誤しながら、成長していく。
 そんな学び方が、これからの時代のスタンダートになりそうですね。

カルピスの「原液」を作れ!


 とんでもない数の仕事をやっている、活動的な人。
 動きの少ない、つまらない人。

 堀江さんは、この両者の違いは、努力や仕事量の差ではなく、「原液」を作ることができきているかどうかの差だと指摘します。

 僕はカルピスで言うところの原液を作っているのだ。
 10〜20代の若い読者は、「カルピス」と聞くと自動販売機で売っている「カルピスウォーター」をイメージするかもしれない。
 僕が小さなころは、瓶詰めのカルピスがどこの家庭にもあったものだ。
 カルピスの原液は非常に濃厚なため、とてもストレートでガブガブ飲めるものではない。この原液を氷水で割ると、1本のカルピスを使って何本分ものカルピスウォーターを作れる。カルピスを長持ちさせるため、コップにちょっとずつ入れて1杯でも多くのカルピスウォーターを作るのがコツだった。
 地上波放送のようなメディアは、カルピスの原液的コンテンツを薄めてマスに届ける典型だ。
 僕が普段メルマガやツイッターで主張していることを、うんとやさしく言いかえて伝える。そして、そのテレビ番組をさらに薄めたものがネットニュースなどにバンバン取り上げられる。
 僕の1滴の原液がアメーバのように無限に広がるのだ。泉の源にあるカルピス原液から派生するアウトプットは、末端に近づくほど薄まり、大海に変わる。
 僕が実際に動かなくても、考えや主張は自動的に生産され続け、何人もの僕が働いているのと同じことになる。
 もう一度言う、「時間がない」と嘆くあなた。どうがんばっても1日は24時間しかない。
 その限られた時間は、自分にしか思いつかないアイデアを出すことや、自分にしかできない発言をすることに集中するべきだ。
 関わっているプロジェクトの数が少ない人は大体、カルピスの原液を作れていない。他の誰かの作った原液を薄める仕事しかしてないのだ。
 起業家でもクリエーターでも、なんでこの人はこんなに多くの仕事をできるのかと思う人は、みな原液作りをしているのだ。
 秋元康さんが、とても一人でやっているとは思えない量のプロジェクトを立ち上げられるのは、彼の作るものがすべて原液だからである。
 味の薄いカルピスウォーターしか作れない人生なんてつまらない。
 どうせなら手元にカルピスの原液の一升瓶を抱え、周囲に大量のカルピスを分け与える。そんな原液まみれの濃密な人生を歩むことを意識しよう。

『多動力』 第5章 より 堀江貴文:著 幻冬舎:刊

 今の世の中は、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)が全盛です。
 面白い話題、役に立つ話題があれば、シェアされて、爆発的に広まっていきます。

「広めたい」
「シェアしたい」

 と、みんなが思うアイデア。
 それが、堀江さんのいう「原液」です。

 これからは、受信するだけでなく、発信することが求められる時代です。
 自分にしか作れない、オリジナルの原液を、周囲に分け与え続ける人生を目指したいですね。

仕事に必要なのは「速度」ではなく「リズム」!


 日々、大量の仕事をこなす。
 そのために大切なのは、「速度」より「リズム」です。

 堀江さんは、仕事のリズムを崩されると、たまらなくイライラするとのこと。

 もう一度言う、仕事というのは「速度」よりも「リズム」なのだ。
 メールを見て即返信する。LINEでピッピッとやりとりする。長めのテキストは隙間時間にチェックする。
 せっかくメールやLINEという便利なツールを使っているのに、重い添付ファイルが交じってサッと開けないだけでリズムが狂い、長い行列を作るのと同じ状態になってしまうのだ。
 マラソンやジョギングをやってみるとわかるが、キレイな道をジャマがなく坦々と走れると、とても気持ちがいい。
 皇居の周りのようにランナーが大勢ひしめいていたり、赤信号でいちいち足を止められたりすると、せっかく途中まで調子良く走れていても途端にペースが乱れてしまう。もちろん、疲労度も変わってくる。
 ファイルをわざわざ添付したり、意味のない長文メールを延々と書き連ねたりしてくるヤツは、マラソンで人のリズムを乱すだめなランナーと似ている。
 メールで時候の挨拶なんて必要ない。最初から結論を伝えればいい。そういう単純なやりとりのほうが、仕事はスムーズに進む。
 グダグダと長ったらしい話をしたり、メールを書いたりしてくるヤツに限って、結局何が言いたいのかわからない。
「お前は何が言いたいんだ」と逆質問しても、キョドってまともに答えられなかったりする。
 人のリズムを狂わせ、自分のペースに巻き込もうとする連中とまともに付き合っていたら、複数のプロジェクトを効率良くこなすことなんてできない。
 ビートを刻むように仕事をパッパとこなす。ビートを乱す不協和音は視界から排除する。
 リズムを止める要因を全部消し去り、障害物のないキレイなコースを走るつもりで仕事をこなす。
 そうすれば、いちいちリズムを崩している駄馬のようなランナーを一気に置き去りにできる。
 自分は仕事が遅いと思っている人は「リズム」良く仕事ができているか見つめなおしてみよう。
 資料をチェックしている途中で電話に出て、電話を切ったらまた最初から読み始めるなどしていては時間がいくらあっても足りないのは当たり前だ。

『多動力』 第6章 より 堀江貴文:著 幻冬舎:刊

 人には、誰でも、気持ちよく作業ができる「リズム」があります。

 リズムにノッて仕事をしているときは、集中してリラックスしています。
 だから、能力を最大限に発揮することができます。

「夢中でやっていたら、いつの間にか、終わっていた」

 皆さんにも、そんな経験はあるでしょう。

 ビートを刻むように、仕事をパッパとこなす。
 そんな“ノリのよさ”が、多動力を身につける秘訣ですね。

「永遠の3歳児」たれ!


 誰でも、3歳児くらいときには、「多動力」を持っています。
 しかし、多くの人は、子どもから大人になっていく中で、その能力を失っていきます。

「やりたいこと」ではなく「やらなくてはいけないこと」をするように矯正され、バランスの取れた大人になるからです。

 堀江さんは、その一方で成功している起業家やクリエイターは、好奇心旺盛な3歳児がそのまま大人になってしまったような人が多いと指摘します。

 大人になるにつれ身につけるはずの分別や自制心を、彼らはいい意味でもってない。無分別であり、ストッパーが外れている。
 だから、50歳になろうが60歳になろうが、興味があることに脇目も振らず邁進する。
 その結果、誰もが考えもしなかったイノベーションを起こすのだ。
 本書の冒頭にも書いたが、テスラ・モーターズCEOのイーロン・マスクは服を着られないらしい。
 服を着ている間に、次にやりたいことを思いついてしまうから、ボタンを留めることができないのだ。
 まるで3歳児がテレビやおもちゃに夢中になってしまって、いつまでたっても服を着替えられないのと同じである。
 だからこそ彼は、常識にとらわれず、「火星移住計画」を立てたり、ロサンゼルスの渋滞に不満を感じれば、いきなり地下にトンネルを掘り始めたりしてしまう。
 人は年を取ると、今まで培ってきた人脈や経験にがんじがらめになり、新しい刺激に身をさらせなくなる。
 自身を変革し続けるフレキシビリティを失ってしまう。
 僕も40代になったころ、同世代の人間が妙に落ち着き、つまらなくなっていることが気になり始めた。
 そうやって落ち着いて一つの型にハマるせいで、自分で自分の世界を狭めてしまう。
 しかし、肉体のトレーニングを欠かさなければ健康を維持できるように、未知なる刺激に接し続けていれば、3歳児のような「多動力」をキープできる。
 AIやロボットに詳しいメディアアーティストの落合陽一さん(筑波大学助教)によると、ディープ・ラーニングの分野は驚くべき速度で開発が進んでいるそうだ。
 数年前の修士論文に書かれていたレベルの内容を、今は機械学習によって15歳の中学生がたった3日間で完全に理解できるというのである。
 となると、資格をもっているとか、高学歴であるといった過去の積み重ねは、あまり意味をなさない。
 今学びたいと思う意思さえあれば、すぐに身につけることができるのだ。
 つまり、今の時代に生きる僕たちは、マインド次第でいくらでも若返れる。
 新しいことに興味を失ってしまえば、10代でも老人だし、新しい刺激を求め続けるのならば60歳でも若者だ。
 テクノロジーは年齢の差をも一気にフラットにした。
 新しいデバイスに触れるのは面倒だ、行ったことのない外国に行くのは面倒くさい。
 そんな態度では化石のように固まってしまうだろう。
 いつまでも未知なるものを求め続ける「3歳児」であろう。

『多動力』 第8章 より 堀江貴文:著 幻冬舎:刊

 動き続けるためには、つねに「燃料」を満タンにしておく必要があります。

 自分を動かすための燃料とは、未知なる刺激を求める姿勢、「好奇心」です。

 人生経験を積むと、体験していないことも、すでに知っているかのような錯覚に陥りやすくなります。

 3歳児は、頭で考えるより、まずやってみようとします。
 何度も失敗を繰り返しながら、世の中を生きる知恵を手に入れます。

 世の中、体験してみないと、わからないことばかりです。

 頭でっかちにならないこと。
 好奇心の塊の、「永遠の3歳児」を目指しましょう。

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「多動力」を身につけるために、まず大切なことは「自分の時間」を取り戻すことです。
 堀江さんは、「他人の時間」を生かされている限り「多動力」は身につかないとおっしゃっています。

 本当にやりたいことは、何か。
 心からワクワクすることは、何か。

 それらを思い出して、とにかく実践してみること。
 最初の一歩を踏み出すところから、すべては始まります。

 好きなことを、好きなだけ、好きなときにする。

「多動力」には、そんな夢のような人生を実現させるエネルギーがあります。

 閉塞感を抱えながら生きる、多くの日本人に、ぜひ一読して頂きたい一冊です。

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