本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ

本を読むことは、心と体に栄養を与えること。読むと元気が出る、そして役に立つ、ビタミンたっぷりの“おいしい”本をご紹介していきます。

【書評】『10年後の仕事図鑑』(堀江貴文・落合陽一)

 お薦めの本の紹介です。
 堀江貴文さんと落合陽一さんの『10年後の仕事図鑑』です。

 堀江貴文(ほりえ・たかふみ)さん(@takapon_jp)は、実業家であり起業家です。
 元・ライブドアの代表取締役CEOで「ホリエモン」の愛称で親しまれています。
 現在は、民間でのロケット開発を行う会社のファウンダーとしてご活躍されています。

 落合陽一(おちあい・よういち)さん(@ochyai)は、研究者、メディアアーティスト、実業家です。
 学際情報学がご専門の博士で、筑波大学の助教を務められています。

「普通」が「普通」でなくなる時代

 社会が急速に変化する今の時代。

 落合さんは、「これまでの普通は、これからの普通ではなくなる」ことを大前提として理解することが重要だと指摘します。

 フランス人権宣言が制定された1780年代に、ヨーロッパ的西洋の近代思想の基本が成立しました。
 そして、このとき現代にも通ずる「普通」が誕生しました。

 現在進行形で進む、人工知能(AI)やコンピュータの発達による、社会の大変革。

 落合さんは、それは恐れとして避けるものではなく、適応すべき「自然」と述べています。

 現在は、この300年間の変化に匹敵する出来事が、15年ほどの期間で起ころうとしている。タイムスパンが技術発展とその市場サイズの拡大に応じて短くなりつつあることを、頭に入れておいてほしい。
 たとえば、インターネットが登場したことで「ローカルな人と人の関係」で完結していた社会システムが「人と機械の関係」にまで広がった。コンピュータサイエンスが発達したおかげで、人間の認知能力より優れたカメラやマイクを搭載した携帯電話とそれによるエコシステムが生まれた。

 こうして社会システムが変化したことを鑑みれば、それまで我々が普通だと思っているものは、大抵誰かが言い出した「発明」にすぎないことがわかる。「こんな職業になりたい」、あるいは「会社に行かなければならない」といった願望も感覚も、ある種の「発明」なのだ。
「普通」という擬態は一見社会にとって正しそうに見えるが、実は正しさ自体は更新され続ける発明だ。不正解ではないにせよ、「普遍」の意味で「普通」ではない。社会のあり方が変わるなら、普通を定義し直したほうがいい。
 仕事とは、社会システムの要請によって生まれるものだ。つまり、現在多くの人は、高度経済成長以後過去40年間の古いシステムの要請によって生まれた仕事に就いているというわけだ。そうした仕事は新しい社会において不必要なため、存在しないほうが効率的とさえいえるものもある。つまり、ある意味で「なくなる仕事」に分類されるのだ。

『10年後の仕事図鑑』 Chapter0 より 落合陽一・堀江貴文:著 SBクリエイティブ:刊

 堀江さんは、誰にとっても、仕事は「引き受ける」ものから「作るもの」へと変わっていくと述べています。

 AIや技術の発達により、今まで人間がやっていた労働を機械やロボットが肩代わりしてくれる時代が必ずやってくる。たとえば、食器洗浄機やロボット掃除機によって、面倒な手仕事は世の中から消えつつある。また、精密機器の製造もすでに人の手を離れた仕事の一つで、部品作りはすでに自動化されている。

 人間の労働が機械によって代替される事例が増えるにつれ、「AIに仕事が奪われる」といった悲観論を最近よく聞くようになった。仕事がなくなる、お金が稼げなくなると、生活に不安を感じている人もいるだろう。
 ただ、もしそうなっても、なんら問題はない。人間がやらなければならなかった仕事の時間が減り、自由な時間が増えるだけの話だ。さらに、生活コストはどんどん下がっていくので、何も無理に働いてお金を得る必要もなくなっていく。
 たとえば、農業は人の手間を減らしながらも収穫量が増えている。今後は、さらに手がかからなくなるのだから、食費は今以上に安くなる。お金がなくても十分に食べていけるようになる世界は、そう遠くない。ロボットが社会全体の富を自動的に作り出し、個人に利益をもたらしてくれるのだ。

 では、その浮いた時間で何をすればいいのか? ひたすら好きなことをしていればいいのである。もしかすると、「好きなことばかりしていたら、仕事が減り、収入が減る」と言う人もいるかもしれない。たしかに、生活するにはまだまだ一定の収入が必要な時代だ。ただ、そういった人たちには、「現代は好きなことでお金が稼げる時代だ」と教えてあげよう。
 自分の「好き」という感情に、ピュアに向き合い、ひたすらに没頭すれば、いつかそれは仕事になる。

『10年後の仕事図鑑』 Chapter0 より 落合陽一・堀江貴文:著 SBクリエイティブ:刊

 本書は、AIが人々の仕事を急速に奪っていくであろうこの10年で、私たちの仕事・働き方がどうかわっていくか、具体例を挙げながらわかりやすく解説した一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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遊びに「没頭」しろ!

 堀江さんは、これからは誰もが「遊び」でお金を稼げるようになると述べています。

「やりたくないことを仕方なくやること=仕事」

 という考え方は、大きく変わっていくということです。

 ブロガーやユーチューバーやインスタグラマー・・・・・。ここ数年、ちょっと周囲を見渡しただけでも、以前は存在していなかった仕事を見かける機会は多い。特にネットでは、ユーチューバーが破竹の勢いで若者を中心に市民権を得ていっているのは、ネットを見ていればすぐにわかる。
 彼らの中に、「金儲け」の手段として動画投稿をしている人間は少ない。日本一の人気を誇るユーチューバー・HIKAKINさんも、はじめは単に趣味だったビートボックスを多くの人に見てもらうことを目的としていた。

 彼らのような「新しい仕事」で成功している人たちには、共通点がある。
 1つ目は、まず「作業にハマっていること」だ。
 ここでい「ハマる」とは何か。「ハマる」とは、何かに「「没頭」するということだ。ここに、好きではないものを歯を食いしばって「頑張る」という意味はない。「努力しよう。頑張ろう」と思って歯を食いしばってやったところで、平凡な結果しか得られない。
 そのために必要なのは、自分の感覚を信じて、自分で方法を考えることである。自分で作ったルール、自分で立てたプランだったら、納得感を持って取り組むことができるし、やらざるをえない。つまり、自分でルールを作ることで、ものごとに没頭でき、好きになることができる。
 多くの人は、好きになってから没頭するものだと思いがちだが、現実は違う。他のことを何もかも忘れて、「没頭する」。この境地を経てはじめて、「好き」の感情が芽生えてくるのだ。たとえば、「最初から好きだから、会計の仕事に没頭する」のではない。「会計の仕事に没頭したから、その仕事が好きになる」のだ。「没頭」さえしてしまえば、あとは知らぬ間に好きになっていく。
 HIKAKINさんは高校生の頃にボイスパーカッションにハマり、放課後、周りがバスケットボールなどで遊ぶ中、1人、MDプレイヤーの前で録音する日々を送っていたという。
 HIKAKINさんの卓越したボイスパーカッションの技術も、高校時代の「没頭」する日々が生み出したものなのだ。

「新しい仕事」で成功する人たちの共通点の2つ目は、「思いを持って毎日発信すること」だ。
 やりたいことや、ハマれるものが見つかったら、毎日自発的に思いを発信し続けることが大切だ。それも「言われたからやる」「ノルマだからしぶしぶこなす」という姿勢で取り組んでいてはダメだ。稚拙でもいいから、読み手に「熱さ」が伝わるものでなければならない。ツイッターやインタグラム、フェイスブック。動画ではユーチューブ、SHOWROOMや17Liveなど、今の世の中、ツールなんて山ほどある。

 SNSを駆使して有名になった事例では、“ゆうこす”こと菅本(すがもと)裕子氏が有名だ。彼女はアイドルグループ・HKT48を卒業してから2年の間で主にツイッターやインスタグラム、ユーチューブをフィールドに活動。「モテるために生きてる」をコンテンツに若い女子を中心に大ブレイクした、いわゆる“インフルエンサー”だ。
 彼女は活動の最中に、数多くの根拠薄弱な憶測や、心ないバッシングに襲われた。それでも彼女は、批判を恐れずに本音で思いを発信することを続けた。最終的には、そこに共感した人が集まり、現在“ゆうこす”のブランドは強固なものとなっている。

『10年後の仕事図鑑』 Chapter1 より 落合陽一・堀江貴文:著 SBクリエイティブ:刊

 個人がコンテンツを発信するためのツール。
 そして、それらをお金に換えるための手段。

 それらが今より充実している時代はありません。

 変化が激しく、先の見通せない世の中。

 堀江さんは、だからこそ、自分の「好き」という感情に、ピュアに向き合うことが大切だと述べています。

コストの高い「弁護士」は、AIに取って代わられる

 AIの進化により、今後10年でなくなる仕事。
 落合さんは、その代表として「一般事務全般」を挙げています。

 理由は、定型的な仕事のため低コストで、かつ携わっている人が多い仕事だからです。

 AIによる仕事の代替は、それだけにとどまりません。
 専門的で高度な知識が必要とされる「弁護士・裁判官・検察官」「会計士・税理士・社労士」も、その波を被ります。

 弁護士の仕事は、過去のデータに基づいて判断することが多い。判例に解説のつく日本風司法では、タスク自体は案外と単純だ。人為的なシステムの中で、人間が判断を下すだけなのに、なぜか不毛な富が支払われる仕組みになっている。つまり、給料が高く、AIに代替される職業の代表格といえる。また、似たような職種である裁判官や検察官も淘汰される可能性が高い。事実、裁判の判決を下すコードを作り判例の理由を学習させると、過去の判例に対して正答率が8割超だった。たった1時間くらいで作ったものですらこれほどまでの成果を上げるのだから、しっかりとしたプログラムを作れば、裁判官はいらなくなるかもしれない。

 会計士や税理士、社労士など法律をベースに判断する仕事はAI得意領域。
 現状でもネットである程度代替できる職業なので、
 間違いなく減っていくだろう。
 自分の会社でも、クラウドサービスで手続きを済ませているし、
 昔に比べれば、すでに人間に頼る割合も減ってきている。
 ゲーム性のあるやりとり以外の人材は必要度が減る。
 また、会計監査なども、AIで個人の特性を分析して魔が差す要因を
 マッピングすれば、その一般業務は代替可能だと思われる。

『10年後の仕事図鑑』 Chapter2 より 落合陽一・堀江貴文:著 SBクリエイティブ:刊

 資格を持っている人しか、なることができなかった仕事。
 いわゆる「士業」といわれる職業が、AIの代替の標的にされるというのは、驚きです。

 学歴や資格、肩書などが、仕事を選ぶうえでのアドバンテージではなくなってきている。
 それを象徴する事実といえますね。

「いけてる職人」は、これからもイケてる!

「お金のために働く」のではなく、「好きなことでお金を得る」ことが大切。

 そう強調する堀江さんが、これから「伸びる仕事」として挙げているのが、「職人」です。

 最近では3Dプリンタによる造形の複製が簡単になり、
 パソコン上で作り上げたデータを現実の造形物にするのも容易になった。
 現在は細かい部品などが中心だが
 3Dプリンタで家をつくるということを現実的にするために研究が進んでいる。
 でも、工場でつくったユニットバスやシステムキッチンなどを
 住居に建て付けるような仕事が、すぐさま機械に変わるとは思わない。
 1点モノなどにいたっては、いまだに工場の職人が手作りしているくらいだし、
 そもそも大工を含め職人の数は足りていないからだ。
 これは、ゼネコンや建築でも同様だろう。
 もちろん将来的には、職人技でさえ機械が再現できる時代がやってくるかもしれない。
 ただ、イケてる職人たちは、自分たちの技術や能力を
 いかに機械で再現できるかを考え、研究・実践している。
 自分にしかできなかった技を機械に代替させることで、
 自分の作業効率を上げようと、“AIを使いこなす”考え方をしているのだ。
「自分たちの技術が奪われてしまう」と躍起になって機械化を否定する職人は、
 イケてない。すでに代替不可能な職に就く人間は、より自分の価値を上げる方法を
 常に模索している。彼らはこれからも代替不可能な存在であり続けるだろう。

『10年後の仕事図鑑』 Chapter3 より 落合陽一・堀江貴文:著 SBクリエイティブ:刊

 工場での大量生産に関する技術は、今後ますます、人の手からAIに委ねられていくでしょう。
 一方、日本の伝統工芸のような一品一品手作りする製品は、これからも価値を保ち続けます。

 実際に作業するのが「人間の手」から「機械の手」に置き換わるかもしれません。
 ただ、美意識だったり、デザインだったりは、やはり人の感性がものを言う世界です。

 簡単には、AIで置き換えることはできないですね。

交換できる「価値の缶詰」をつくろう!

 落合さんは、一見すると、金銭価値に直接変換できないような物事がこれからは「経済活動」になっていくと指摘します。

「価値」を考える上で大切な考え方として、「交換可能性」があります。

 落合さんは、自分の能力、作品が交換可能なのか、交換不能なのかを見極め、他人に提示する自らの「価値」を見極める必要があると述べています。

 たとえば、他人の健康は、自分の健康に置き換えることはできないので、「交換不能」。同様に、自分の足の速さも「交換不能」だろう。しかし、自分が持っている指輪は「交換可能」だし、自分のつくったクリエイティブ作品も「交換可能」だ。もっというと、目に見えない「自分ができること=スキル」は交換可能な価値になる。好きなことを散々やって、できることを増やし、自分を価値資本でいっぱいの「価値の缶詰」にしよう。
 交換不能な価値は、他人に訴求するのが難しい。一方、交換可能であることは、価値があるということだ。何が「交換可能」であり、何が「交換不能」なのか。その区別に意識的であることが重要だ。それは長きにわたる熟成と経験によって成り立つものなのだ。

 僕はVALUというサービスでアカウントを持っている。どんなものか説明すると、まずフェイスブックやツイッターのフォロワー数などを基準に、個人の価値を判定し時価総額が算出される。個人はこの価格を基準に「VA」という細分化された疑似株式を与えられて「上場」し、VALU内で売り出すことができる。フォロワーに疑似株式のようなものを買ってもらうことで、その人の活動資金になる。ただ、このVAはビットコインでないと買うことはできない。また、多くのVAを買ったところで、その人の人生を左右するといった議決権はない。

 僕のVALUに関しては、約8億円ものお金がやりとりされている。面白いのは、僕のところで1つの「市場」が生まれていることだ。僕にそのお金の売上があるわけでなく、僕が発行したものが売買されることで多額のやりとりを生んでいる状況である。VALUがクラウドファンディングと違うところは、即座にリターンを用意しなくてもよい点だ。たとえば僕がこれから数年後に功績をあげる人材になるなら、その先々を見据えた価格設定ができる。信用をベースに、今現在の自分への応援の意味を込めた投資を募ることが可能なのだ。
 こうして、一人ひとりが提供できる価値を提示し、その価値を認めた人たちがVAを買っていく。一人ひとりの市場がぽつぽつ生まれてくる。今までの株式市場と違う点は、株を売買して利潤を得るのではなく、先物取引的にその人の能力、知識、サービスを享受し価値を得るという点だ。そのため、上場する人は、自分の能力や知識を買ってもらうために「信用」が必要になる。
 もちろん信用があれば、有名ではなくてもVALUが取引されることもままある。サービスを使ってみることで、信用の重要さが理解できるだろう。これから、一人ひとりの市場が生まれてくれば面白い。

『10年後の仕事図鑑』 Chapter4 より 落合陽一・堀江貴文:著 SBクリエイティブ:刊

 お金や株式などの有価証券、土地などの不動産。
 これまでは交換可能な「価値」が限られていましたが、今は違います。

 個人的な「信用」や「能力」「スキル」。
 それらも、交換可能な「価値」であり得るということです。

 働き方同様、お金や経済活動の枠組みも、大きく変わりつつある。
 私たちは、その事実を直視しなければなりませんね。

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 落合さんは、本質的に重要なのは、「価値ある仕事に就く」のではなく、「価値ある仕事を創出する」主体性だとおっしゃっています。

 10年後に、その仕事があるか、ないか。
 その可能性は、血液占い程度の信憑性しかないとのこと。

 それだけ将来を見通すのが難しい時代だということです。

 どんな仕事に就いても、ずっと安泰とはいえない。
 ならば、自分が本当にやりたいことを仕事にした方がいいですよね。

 今は、それが可能な時代です。

 どんなことでも、お金に換える手段はある。
 気に入った仕事がなければ、自分でつくってしまえばいい。

 そんな柔軟で前向きな考え方が、人生を切り開くということですね。

 次の10年は、これまでの10年の延長線上にはありません。

 何か起こるかわからない、だから面白い。
 人類の未来は、希望に満ちている。

 落合さんと堀江さんは、そう私たちに訴えかけ、勇気づけてくれます。

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