本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ

本を読むことは、心と体に栄養を与えること。読むと元気が出る、そして役に立つ、ビタミンたっぷりの“おいしい”本をご紹介していきます。

【書評】『新世界』(西野亮廣)

 お薦めの本の紹介です。  西野亮廣さんの『新世界』です。

 西野亮廣(にしの・あきひろ)さんは、お笑い芸人、絵本作家です。  1999年、梶原雄太さんと漫才コンビ「キングコング」を結成され、テレビなどでご活躍中です。

これからの時代の「大切なものを守る」方法とは?

 芸人という枠にとらわれず、様々なことにチャレンジし続ける西野さん。
 その物怖じせず、自らの道を突き進むキャラクターは、数多くの批判やバッシングを受けてきました。

 この国では、“外”に出ようとすると必ず村八分に遭う。
 この国では、多くの人が自分の自由に自主規制を働かせて生きているから、自由に生きようとすると、必ずバッシングの対象になる。  その根底にあるのは、「俺も我慢しているんだから、お前も我慢しろ」だ。  夢を語れば笑われて、行動すれば叩かれる。  挑戦する以上、この道は避けて通れない。  でも、大丈夫。  キミは、キミの最初の一歩を決して諦めることはない。

 ボクが証拠だよ。  あれだけボッコボコに殴られても、死んでないだろ? 「死んでない」どころじゃないよ。  今、ボクは、本を出せば、どれもベストセラー。  有料のオンラインサロンは国内最大。  つまんない仕事は全部断って、自分が本気で面白いと思ったことしかやっていない。  皆は転落したと思っていたけど、ボクは転落なんてしちゃいなかった。

 ずっと探していたんだよ。  戦い方を。  生き延び方を。  大切な人を守る方法を。

 そして、ようやく見つけた。  今は、世界を獲りに行っている最中だ  獲るよ、本気で。

 いいかい?

 その場所から一歩踏み出すのに必要なのは、「強い気持ち」なんかじゃない。  キミに必要なのは、踏み出しても殺されない『情報』という武器だ。  右斜め前に落とし穴があることが分かっていれば、左斜め前に足を出せるだろう?  今、世の中で何が起こっているかを知るんだ。  時代が大きく動いている。  ここ1〜2年は、とんでもない規模のゲームチェンジが起きている。  とくに『お金』は大きく姿を変えた。  当然、扱い方も変わってくる。  ほとんどの人がこの変化に気がついていなくて、変化に乗り遅れた順に脱落していっている。  キミに守りたいものがあるのなら、この変化を正確に捉えるんだ。  少しだけボクの話に耳を傾けてください。

『新世界』 はじめに より 西野亮廣:著 KADOKAWA:刊

「一歩踏み出したいけど、踏み出せない」 「変わりたいけど、変われない」

 立ちすくむ私たちを、自らの生き方を通して勇気づけてくれる西野さん。

 本書は、そんな西野さんがこれからの時代を生き抜く戦い方、『新世界』を創り出す方法をまとめた一冊です。  その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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「貨幣経済」から「信用経済」へ

 私たちは、「貨幣(お金)」を媒介物として商品やサービスの交換が行われる「貨幣経済」が中心の社会を生きています。

 貨幣経済が進化して登場したのが、「信用経済」です。  クレジットカードや小切手、株式など、「信用」を媒介物として成り立つ経済です。

 これまで、信用経済はお金持ちの世界だけのもの、という印象がありました。  しかし、ここ数年で、その状況が一変しつつあります。

 2016年、年末。  SMAPファンが、クラウドファンディングで資金を募り、新聞の一面を買い取り、「私たちはこれからも応援し続けます」というメッセージを届けた。  この時、集まった金額は3992万5936円。  発起人はジャニーズ事務所でも何でもない。  知名度も何もない二人の会社員と一人の主婦だ。

 SMAPがこれまで積み上げた信用と、「あなたのことは知らないけれど、あなたがSMAPファンなら、あなたに託したお金は絶対に素敵な形で還元してくれる」というSMAPファン同士の「信用」が、4000万円近いお金を作った。

 そして2017年8月。 『polca(ポルカ)』というサービスがスタートした。  ポルカは、友達同士の支援サービスだ。  クラウドファンディングの小ちゃい版。

 クラウドファンディングと少し違う点は、支援の募集範囲を指定できるということ。  Twitterで広く公開することもできるし、たとえば、LINEグループだけに限定公開することも可能だ。  これによって、私的な企画が立ち上げやすくなった。 「焼肉、奢って」なんてのもアリ。

 もちろん、「焼肉、奢って」という企画をクラウドファンディングでも立ち上げることは可能だけど、公開範囲がフルオープンなので、「自分で働いて稼いだお金で買え!」という輩が絡んでくるリスクが高い。  この本を手にとっているキミも、もしかしたら、そっち側の人もしれない。  大丈夫、今は世の中の99%が、そっち側だ。

 でも、ちょっと聞いて。

 たとえば、キミの恋人や、仲の良い友達や後輩が、「今、お金が無いので、今夜は焼肉を奢って」ってキミに言った時に、キミは、「何をラクしようとしているんだ! オレがストレスの対価として、ようやくお金を手にしているのに、お前ときたら!」と説教を始めるかな?

 いいや。  きっとキミは、 「もう、しょうがねえなぁ。この借りは、いつか返せよ」  そう言って、焼肉をご馳走すると思う。

 それは、キミが友達を「信用」しているからだ。

 もう少し分解すると、キミの友達が“焼肉をご馳走してもらうのに値する信用”を貯めていたからだ。だから、君は友達に焼き肉をご馳走する。  ポルカは、そのやりとりをインターネット上で可能にした。  お金持ちだけのものであった「信用経済」に、ボクらのような一般人も参加できるようになってきた。

『新世界』 第1章 より 西野亮廣:著 KADOKAWA:刊

 クラウドファンディングやソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の普及によって、誰でも、「信用」をお金に換えることができるようになりました。

「労働の対価がお金」から「信用の対価がお金」へ。

 これまでの常識を覆す、革命的な出来事が、今まさに進行しているということですね。

ポジションを「可視化」する

 これからは「お金持ち」よりも「信用持ち」の時代。

 では、信用を稼ぐには、どうしたらいいのでしょう。

 最も重要なのは、「嘘をつかないこと」です。

 西野さんは、嘘をつくことで露出を続けると、認知度は上がるけど、人気度(信用度)は確実に落ちると指摘します。

図1 炎上の4象限 新世界 第1章 jpg
図1.炎上の4象限
(『新世界』 第1章 より抜粋)

 横軸が「認知度」で、縦軸が「信用度」。  右に行けば行くほど有名人で、上に行けば行くほど信用できる人。  くれぐれも言っておくけど、縦軸は「信用度」であって、「好感度」じゃないよ。

(象限A) 『おでんツンツン男』は注目を集めたけど、著しく信用を落としているので、右下。  コンビニのアイスクリームの冷凍庫に入る人達も、一時的に注目は集めたけど、著しく信用を落としているので、右下。  実は、注目を集めて生きている多くのテレビタレントも、ここだ。

(象限B)  では、嘘をつかないホリエモンはどこだろう?  有名で、信用度が高いので、右上。  相手が誰であろうとズケズケ本音をぶつける落合陽一さんや、幻冬舎の編集者の箕輪厚介さんもココ。  たぶん、ボクもこの枠に入るね。

(象限C)  嘘をつかなくて、それほど有名ではないホームレス小谷と、田村Pは左上。

 ここから、とっても重要な話をするね。

「注目」を集めて生きている人と、「信用」を集めて生きている人とでは、お金の出所が違うんだ。

「注目」を集めることで成り立っている場合、お金の出所は広告主(広告費)。  一方、「信用」を集めることで成り立っている場合、お金の出所はお客さん(ダイレクト課金)。

 テレビにしても、YouTubeにしても、注目度の高いところに、広告費が支払われている。  例外は、Twitter。  広告主がいないので、何万リツイートされても1円にもならない。

 さっきの座標軸に、「お金の出所」を加えたのが、こちら(下の図2を参照)。

 クラウドファンディングは、「注目度」の影響はゼロではないので、右上のあたり。 『しるし書店』は自分の店のファンを20人ぐらい抱えていればいいので、「注目」は必要なく、「信用」があればいいので左上。

 ここで一つ興味深い話をするね。  以前、ウチのスタッフの甥っ子(中学生)が、自分が買うお菓子を選ぶ時に、素人のオッサンYouTuberの感想を参考にしていたのね。

 そのオッサンの動画が、まあ酷くて、お菓子を食べた後のリアクションがすこぶる悪い。  マズイ時は本当にマズそうに食べるし、美味しい時は「あ〜、まあ、美味しいっすね」ぐらい。  そこで彼に「なんで、そんなオッサンの動画を見てるの?」と訊いてみた。
 すると、返ってきた言葉がこれだ。

「タレントさんは演技ができるから(上手に嘘がつけるから)、お菓子が美味しいかどうかが分からないんだよ」

 グウの音も出ないよね。  そんな感じでタレントを見る世代が出てきている。  つまり、広告費で生きているタレントの広告力が落ちてきているわけだ。  こうなってくると、スポンサーはどこに「広告費」を出すだろうね? (中略)  ダイレクト課金の手段が増え、そして「広告費」ですら右上の人達に使われ始めた。  最近、面白い活動をしている人は大体、上の方にいるよね。  これらのことを踏まえて考えると、キミがこれから進む方向が見えてくるんじゃないかな?

 さあ、どこに向かう?

『新世界』 第1章 より 西野亮廣:著 KADOKAWA:刊

図2 炎上の4象限にお金の出所を加えると 新世界 第1章
図2.炎上の4象限にお金の出所を加えると
(『新世界』 第1章 より抜粋)
 ネットの社会では、これまで認知度がクリック数、すなわち広告収入に直結しました。  これからは、信用度も収入につながるようになったということ。

「認知度」をベースにする場合と「信用度」をベースにする場合。  両者では、お金の出所がまったく異なるということは、理解しておきたいですね。

コミュニティの時代に「生き残る会社」の条件

 ネットサービスなどを使い、個人がやりたい仕事だけを選べるようになってきた今の時代。

 西野さんは、仕事内容をバッキバキに決めてしまう「会社」の立ち位置は難しいと指摘します。

 結論から言うと、社員に利用されない会社は廃れる。  これは間違いないね。

 自分で発信して、信用を稼いで、稼いだ信用を換金できるようになった。 「お金」は、その気になれば自分で作れる時代になったので、優秀な人材ほど『給料』で釣ることが難しくなる。

 彼ら(優秀な人材)が追い求めるのは、「高い給料を貰っている自分」ではなく、「常に面白いことをしている自分」だ。  信用さえ稼いでしまえば、お金は後から手に入れられるからだ。  何度も同じことを言ってゴメンね。  こうなってくると会社は、社員に対して「面白いことができる環境」を提供するしかない。  これから生き残るのは「社員を使う会社」ではなくて、「社員に使われる会社」だ。 「あの会社、メチャクチャ使いやすいよ」となれば、ホイホイと才能が集まってくるし、「あの会社、給料はいいんだけど・・・」となってしまうと、見事にポンコツしか集まってこない。

 ホラ。  時々、「事務所から干された」って話を聞くじゃない?  あれなんて最悪だよね。  まったく今の時代に合っていない。 「干す」をチラつかせる芸能事務所に、次代の才能が集まるわけがない。  とくに今なんて、芸能事務所を経由しなくても、自分の表現を発信できるようになったので、尚更。  このご時世に「干す」なんて言っている芸能事務所は、まもなく時代から干される。

 個人の信用が換金できるようになった。  いい加減、会社も芸能事務所も変わらなくちゃいけない。

 そんな時だ。

 そういえば昔からビックリするくらい自由にやらせてくれている吉本興業に恩返しがしたくなったので、吉本興業のアップデートを考えてみることにした。  あまりにも突然だよね? 「芸能事務所のアップデート」という実験に興味が湧いたという説もあれば、社長に酒で買収されたという説もある。  正解は後者だ。  京都でご馳走になったスキヤキがとても美味しかった。  とにかく恩返しをする。

 ここで言う恩返しは、「気持ち」とか、そういう生ぬるい話じゃなくて、「具体的に吉本の売上を上げる」というやつね。  ついでに吉本興業が世界一の芸能事務所になれば、面白い。

『新世界』 第2章 より 西野亮廣:著 KADOKAWA:刊

 会社が個人を選ぶ時代から、個人が会社を選ぶ時代へ。  個人と組織の力関係が、劇的に変化していることがわかりますね。

 組織にしがみついて生きる人と、組織を使い倒して生きる人。  今後、大きく二極化していくのかもしれません。

「オンラインサロン・オーナー」の条件

 国内最大のオンラインサロンを運営する西野さん。

 その西野さんが、日本で一番説得力のある「サロンオーナーに必要な条件」について語っています。

 まず、押さえておかなきゃいけないのは、オンラインサロンもクラウドファンディング同様、「信用を換金する装置」だということ。  今、いろんな人がオンラインサロンを立ち上げているんだけど、第1章の座標軸を使って説明すると、上手くまわっているサロンオーナーは、皆、右上にポジションをとっている人ばかり(上の図1を参照)。

 TVタレントさんがやっているオンラインサロンは、あまり盛り上がっていないんだ。
 もう大体、分かってきたでしょ?  そう。「有名であればいい」というわけじゃない。  必要なのは「信用」だ。

 そして、もう一つ。  盛り上がりを見せている感のあるオンラインサロンだけど、少し前は「オンラインサロン」というだけで飛びついていた層も、ここ最近は内容を吟味するようになってきた。  今は、メンバーが増え続けるサロンと、徐々に減っているサロンの二極化が進んでいる段階。  この二つのサロンの違いは何だろうね。  説明するよ。

 現在、オンラインサロンは“迫害段階”なんだ。  5〜6年前のクラウドファンディングと全く同じで、今、オンラインサロンをやっていると、「宗教でしょ?」とか言われちゃう。  オーナーもメンバーも両方ともね。  メンバーからすると、毎月、いくらかお金を払って参加してるというのに、たまったもんじゃないよね。  オーナーは、メンバーが味わっているこの痛みを拭ってやらなきゃいけない。  でも、どうやって?

 答えはカンタン。 「オンラインサロンで美術館を作りました」 「オンラインサロンで『えんとつ町のプペル』を作りました」  といった「具体的な成果物」を水戸黄門の印籠のように「ドーン!」と出せばいい。  その印籠(成果物)が確かなモノであればあるほど、周りは批判できなくなる。

 一方で、その印籠を出さない限り、メンバーは「中で怪しいことをしているに違いない」という目を向けられ続ける。  当然、サロンを続けることが辛くなってきて、まもなく離れる。

 オーナーに必要なのは、印籠を作れる生産能力で、それを持ち合わせていないとちょっと厳しいかな。 「みんなが集まれる場所を提供しま〜す」だけでは、乗り切れない。  批判を全て跳ね返すだけの圧倒的な作品をコンスタントに発表できる力が必要だね。  幻冬舎の箕輪さんのオンラインサロンでは、年間に100万部の本を売っているし、ホリエモンのオンラインサロンでは宇宙ロケットを飛ばしている。

『新世界』 第2章 より 西野亮廣:著 KADOKAWA:刊

 有名であるだけではダメ。  重要なのは、「信用」があるということ。

 信用は、宣言したことが実現されることで、高まっていきます。

 具体的な成果を出し続けることが、信用を得る最大の秘訣。  オンラインサロンに限らず、すべてに言えることですね。

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 私たちは、周囲の環境が変わらないことに、イラついたり、ムカついたりしてしまいがちです。  西野さんは、そんな私たちに今この瞬間に「言い訳」と縁を切ることの重要性を説かれています。

 もう、情報は伝えた。  武器は渡した。 「現実」というものは、  行動を起こしていない人間の想定を軽く超えてくる。  足を動かしていない人間が出す答えには何の価値もない。  考えるだけ身体が固くなる。無駄だ。  武器の使い方は、戦いながら覚えるんだ。  覚悟を決めるんだ。

 少しだけでもいいから、挑戦して、  少しだけでもいいから、失敗から学んで、  少しだけでもいいから、傷を負って、  少しだけでもいいから、涙を流して、  少しだけでもいいから、想いを背負って、

 強くなってください。

『新世界』 おわりに より 西野亮廣:著 KADOKAWA:刊

 ほんの少しの勇気を持って踏み出した一歩。  その先に、これまで気づかなかった、希望にあふれた『新世界』が広がっています。

 新たな時代のパイオニア(開拓者)ともいうべき、西野さんの思想のエッセンスが詰まった一冊。  ぜひ、皆さんも味わってみてください。

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