【書評】『胃腸を最速で強くする』(奥田昌子)

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 お薦めの本の紹介です。
 奥田昌子さんの『胃腸を最速で強くする』です。

 奥田昌子(おくだ・まさこ)さんは、内科医です。
 予防医学の理念にひかれ、検診ならびに人間ドック実施機関で20万人以上の診断にあたられています。

知ってそうで、知らない「消化管」

 胃潰瘍、便秘、下痢、胃痛・・・・・。
 消化管の不調に悩まされている人は、意外と多いです。

 しかし、自分の消化管に何が起こっているのか、本当にわかっている人は、ほとんどいないのではないでしょうか。

 厚生労働省の「平成26年(2014年)患者調査」によると、胃腸を含む消化管の病気で治療を受けている人の数は、がんを除いて約950万人、がんを含めると約1010万人にのぼると推定されています。日本人に発生するがんのなかで、もっとも多いのが消化管のがんです。
 これらのデータをふまえ、高血圧を含む心臓と血管の病気、そして心の病気とならんで、消化管の病気を現代日本を代表する病気の一つととらえることがあります。いつ、誰のお腹に不調が起きてもおかしくないということですが、それにしても、なぜ消化管の病気がこんなに多いのでしょうか。
 一つには、消化管が高度な機能をになっているからです。人間の体には無数の管があります。消化と吸収をおもに行う消化管、酸素を取り込む気道、不要のものを水に溶かして捨てる尿路、酸素と栄養素を全身に運ぶ血管など、いずれも昼夜を問わず、生命活動の根本を支えています。人は管なしに生きることはできず、人間はまさしく生きる管なのです。
 それと同時に、管はとても繊細です。なかでも、外界とつながる管のなかでもっとも長く、もっとも複雑なネットワークによる調整を受け、もっとも多くの機能の舞台となり、心の状態が深く影響する消化管は、それゆえにバランスを乱しやすい管でもあります。

 しかし、最大の問題は、私たちが消化管のことをまるでわかっていないことでしょう。「腹も身の内(うち)」という言葉があります。お腹も体の一部だから大事にしなさい、という意味ですが、こんな言葉が生まれたのは、頭や胸が痛もうものなら青い顔で病院に駆け込む人も、胃もたれとなると、「消化薬でも飲んでおけばいい」と軽く考えがちだからです。
 確かに、消化管のトラブルは自然に治まることがよくあります。けれども、その一方で、かなり悪くなるまで軽い症状しかあらわれないことが少なくありません。消化と吸収という任務が生命に直結するだけに、消化管は黙って我慢に我慢を重ねるからです。
 問題がこじれる前に消化管の不調に気づき、軌道修正をはかるには、何を知っておけばよいのでしょうか。小難しい教科書や、不確かな健康情報サイトの説明は忘れてください。必要なのは、最新の医学研究に裏づけられた生きた知識です。本書では、皆さんと一緒に消化管に飛び込んで、消化管の本当の姿を見ていきます。

『胃腸を最速で強くする』 はじめに より 奥田昌子:著 幻冬舎:刊

 本書は、消化管の作りや働きを解説し、胃腸を強くするために誰でもできる方法をまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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太い管、長い管、管もいろいろ

「管」とは、必要な物質が、必要な量だけ、必要な場所に、すみやかに移動できるように作られた専用の通路です。

 奥田さんは、移動する物質に合わせて、長さも、直径も、壁の材質も、行き先も異なるさまざまな管が備わっていると述べています。

 先に書いたように、管といってもさまざまです。体の中でもっとも太い管は胃で、お腹いっぱい食べて大きくふくらむと、太い部分の直径が12〜14センチメートルにもなります。膀胱も成人男性なら最大で800ミリリットルくらい尿をためることができるので、ふくらんだ状態だと横幅の直径は10センチメートルを超えるでしょう。

 胃や膀胱のように太さが変化する臓器を別とすると、血管のなかでもっとも太いのは心臓から出たばかりの動脈で、直径およそ2.5センチメートルです。食道も食べ物が通るときには同じくらいまでふくらみますし、肺に出入りする空気が通る気管の太いところも直径が約1.5〜2センチメートルあります。図1で直径をくらべてみましょう(下の図1を参照)。

 その逆に、細い管となると際限がありません。心臓を出た血管は枝分かれを繰り返し、しまいには直径わずか5〜10マイクロメートルの毛細血管になります。血液細胞一個が通り抜けるのがやっとという細さで、毛細血管の壁は薄い膜一枚でできています。

 マイクロメートルは1000分の1ミリメートルにあたる単位で、以前はミクロンと呼ぶこともありました。

 吸った空気が運ばれていく気管は、もっとも細い先端部分でも直径が約0.1ミリメートル、すなわち100マイクロメートルありますし、血管の仲間であるリンパ管は細いところでも直径が60〜100マイクロメートルです。毛細血管は本当に細いのですね。

 では、もっとも長い管はというと、これまた比較するまでもなく血管です。心臓から全身に向かう動脈と、全身の組織から心臓に戻る静脈をすべてつなぎあわせると何と10万キロメートル!

 地球2回り以上の長さです。気が遠くなるほどの長さですが、その99パーセントを毛細血管が占めています。

 全身に網目状に広がる血管とリンパ管を除けば、一本の管として長いのが消化管です。食べたものは消化管の中を進みながら消化され、栄養素を吸収されて、最後は肛門から出ていきます。全長およそ9メートルですから、平均的な人の身長の5〜6倍になります。

『胃腸を最速で強くする』 第1章 より 奥田昌子:著 幻冬舎:刊

図1 体内の管は意外に太い 胃腸を最速で強くする 第1章
図1.体内の管は意外に太い
(『胃腸を最速で強くする』 第1章 より抜粋)


 ひと口に「管」といっても、さまざまなものがあるのですね。

 五臓六腑(ごぞうろっぷ)の「腑」とは、中が空洞になった臓器で、胆(たん)、小腸、胃、大腸、膀胱(ぼうこう)、三焦(さんしょう)の六つを指します。

 昔から、「管」は重要な臓器されてきたということです。

人間の体は「ちくわ」に似ている

 管の中でも、とくに重要なものの一つが「消化管」です。
 消化管は、口に始まり、食道、胃、小腸、大腸を通って体の中心を貫通し、肛門にいたる管のことです。

(前略)長さは約9メートルもあって、食べたものが平均して1日半かけて通過します。一分間に16〜18回も空気が出入りする気道とくらべたら長い旅路ですね。図6の左に消化管の見取り図をのせました(下の図6を参照)。
 消化管にははっきりした入口と出口があって、中を通り抜けられるようになっています。このことから、人間の体を巨大な「ちくわ」になぞらえることがあります。
 これは人間だけの特徴ではなく、犬や猫、カエル、サケ、カブトムシ、さらにはウニやナマコにいたるまで、ほぼすべての動物が同じような消化管を持っており、「ちくわ」のような構造をしています。
 父親の精子と母親の卵子が受精すると受精卵ができます。一個の丸い細胞で、見かけ上は変わったところはありません。受精卵は数回分裂すると、細胞が密集したおにぎりのような固まりになります。さて、これがどう「ちくわ」に変形するのでしょうか?
 まず思いつく方法は、体の中心から外に向かってトンネルを2本掘ることです。外につながったら、一方を入口、もう一方を出口にすればよいですね。第2案が、体の表面のどこか1ヵ所を入口と決めて、そこから頑張ってトンネルを1本掘り、体の反対側に出たところで、そこを出口にする方法です。
 なかなか大変そうですが、じつは正解は第2案です。細胞の固まりの一点にくぼみができて、くぼみがだんだん深くなり、体の反対側に近づくと、最後に皮が破れてトンネルが完成します。

「そうか! 口のくぼみが奥へ奥へと伸びていき、最後に肛門ができるんだな!」。いえいえ、そうではないのです。最初にくぼみができるのは肛門です。そう、人間の消化管は肛門に始まり、下から上に進んで最後に口が開くのです。多くの動物が同じ方式で消化管を作るなか、タコ、バッタ、ミミズなどは例外で、口がくぼんで最後に肛門が作られます。
(中略)
 それはともかく、体の表面がくぼんで管になるとなれば、消化管は体の外にできた深い「くぼみ」ということになります。管は管でも体の中にすっぽりおさまっていて、針で皮膚を突き破らないと到達できない血管とは根本的に異なります。
 そうなると、食べものを飲み込むというのは、外から見えないところに隠すくらいの意味しかありません。子供が硬貨やペンのキャップを飲み込んでも、病院で適切な処置をすれば吐き出させることができます。あるいは、数日たったらお尻から出てくるかもしれませんが、こんなことが起きるのは、これらの物質が「体の中に入っていない」からです。
 消化管は食べたものをただ運ぶだけでなく、工場のベルトコンベヤーのように消化という加工処理を次々に行っています。ベルトコンベヤーは体の外にあって、食べ物は腸で吸収されて初めて体の中に入ります。
「消化」が行われるのは体の外、「吸収」は体の外から中への移動であることを理解してください。

『胃腸を最速で強くする』 第2章 より 奥田昌子:著 幻冬舎:刊

図6 消化管は巨大な ちくわ である 胃腸を最速で強くする 第2章
図6.消化管は巨大な「ちくわ」である
(『胃腸を最速で強くする』 第2章 より抜粋)


 複雑な人間の消化管ですが、シンプルに考えると「ちくわ」に例えられる。
 さらには、受精卵の段階から、最初に形成されるのが「消化管」であり、その始まりは「肛門」である。

 やはり、知っているようで知らない、消化管の仕組みですね。

管の機能は自動的に調整されている

 消化管の働きに異常が起きることで発症する病気をまとめて「機能性消化管障害」と呼びます。

 機能性消化管障害は、大変ありふれた病気です。
 胃のもたれと胃が張った感じで、みぞおちの痛みや焼けるような不快感なども、それに含まれます。

 機能性消化管障害の大きな原因となるものの一つが「ストレス」です。

 それにしても、心に受けたストレスで管の通りが悪くなるなんて、ちょっと不思議な気がしますが、心の状態と管を結びつけるものがあるのです。それが自律神経です。
 神経は白っぽくて糸のように細く、全身に網の目のように張りめぐらされています。その働きは、脳から送られてきた信号を臓器や組織に伝えたり、その逆に体のあちこちで起きていることを脳に知らせたりすることです。
 たとえば野球選手がボールを投げるときは、脳の命令で腕の筋肉が動きます。湯飲みを手にして温かいと感じるのは、皮膚から情報が脳に送られるからです。これらの命令や情報の通り道が神経です。
 自律神経も神経の一種で、おもに管を含む臓器に広がっています。ところが、筋肉が脳の命令どおりに動くのに対して、管や臓器を自由に動かしたり、しっかり働かせたりすることはできませんね。自律神経は自分の意思でコントロールできないのです。
 でも心配は無用です。いちいち命令しなくても、心臓は24時間ちゃんと動いていますし、胃腸は食べたものを勝手に消化し、水をたくさん飲めばトイレに行きたくなります。自律神経は自分で判断して、こちらの機能を行っているのです。
 こんなことができるのは、自律神経に独特のしくみがあるからです。自律神経は交感神経と副交感神経の二つでできています。交感神経は元気に活動するための神経で、呼吸や脈拍を速くして、酸素が全身に十分行き渡るようにしています。そのおかげで脳と体がしっかり働くことができます。
 一方の副交感神経はリラックスのための神経です。呼吸や脈拍をおだやかにして、胃腸の働きを高め、活動のためのエネルギーをたくわえます。
 原則として、どの臓器にも交感神経と副交感神経の両方がつながっていて、バランスをとりながら働くことで体の機能を調整しています。たとえば胃は、交感神経が強くなると蠕動運動がおさえられます。この逆に副交感神経の作用が高まると蠕動運動が活発になり、食べたものをしっかり撹拌(かくはん)します。
 どちらの神経が強すぎても管の不調を招くため、交感神経と副交感神経の二つがアクセルとブレーキのようにバランスよく作用して、状況に応じてスムーズに切り替わるあるわけです。図16に交感神経と副交感神経の働きをまとめました。副腎(ふくじん)と腎臓では交感神経だけが働いています(下の図16を参照)。

『胃腸を最速で強くする』 第4章 より 奥田昌子:著 幻冬舎:刊

図16 管の働きは自律神経が調整している 胃腸を最速で強くする 第4章
図16.管の働きは自律神経が調整している
(『胃腸を最速で強くする』 第4章 より抜粋)


 交感神経は管を収縮させ、副交感神経は管を拡張する。
 そのため、交感神経を刺激する「ストレス」は、管の通りを悪くし、その働きを阻害します。

 過剰なストレスは、健康の大敵。
 それは、消化管の働きからみても、間違いないですね。

いつでもどこでもできるリラックス法

 消化管を守り、健康を維持するためには、ストレスを寄せつけないことが大事。
 では、ストレスから解放されるには、どのような方法があるのでしょうか。

 奥田さんは、「筋弛緩法」を挙げています。

 心と体をリラックスさせる技術としては自律訓練法が知られています。体の力を抜き、手足の重さや温かさを感じて、楽に息をするなどの練習を段階的に行うものです。
 これとは別に、もう少し気楽に、いつでもどこでも行えるのが筋弛緩法(きんしかんほう)です。名前は固いのですが、自律神経の働きを整えて心と体の緊張をほぐすことができます。手順は簡単で、顔、首、肩、腕、足などの順で筋肉に力を入れて10秒たもち、すっと脱力するのを繰り返すだけです。
 論より証拠、ここでちょっとやってみましょう。首をすくめるように両肩を耳に向かってぐっと上げて、60〜70%の力をこめます。筋肉が固くなっているのを感じましょう。
 そのまま10秒くらい我慢したのち、息を吐きながら、すっと力を抜いてください。このとき目の前にテーブルがあればテーブルに、なければ自分の膝にそっと手を置くとよいでしょう。そのままの状態で、肩とその周辺がゆるんで温かくなるのを15〜20秒しっかり味わいます。普段、自分の体にムダな力が入っていることを痛感するはずです。
 大きく伸びをしてリラックスするのとしくみは同じですが、筋弛緩法は慣れれば会議中でも電車の中でも、目立たないように実施できます。体の疲れをほぐすのにも役立つので、心身症や機能性消化管障害がない人もおぼえておいて損はありません。
 図24に肩と足の筋弛緩法のやりかたをイラストで示しました。大切なのは、力が抜けたときの楽な感じをじっくり味わうことです。何度も試してみて、もっとも効果的な力の入れ加減や、入れる場所、持続時間を見つけてください。寝る前、または起床時にベッドで実施することもできます(下の図24を参照)。

『胃腸を最速で強くする』 第5章 より 奥田昌子:著 幻冬舎:刊

図24 筋弛緩法のやりかた 胃腸を最速で強くする 第5章
図24.筋弛緩法のやりかた
(『胃腸を最速で強くする』 第5章 より抜粋)


 心と体はつながっています。
 体をゆるめることで、心もほぐれてきますね。

 どこでも気軽にできるリラックス法「筋弛緩法」。
 ぜひ、試してみたいですね。

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 人間を巨大な「ちくわ」に例えたとき、「空洞」の部分にあたるのが消化管です。

 食べものを取り込んで消化し、必要な栄養素を吸収する。
 そして、老廃物や必要のなくなったものを体外に排出する。

 人間が生きていくうえで欠かせない重要な機能を担う消化管。
 しかし、その働きを十分に認識して人は、やはり少ないでしょう。

 私たちのために、24時間休まず働き続ける消化管。
 本書は、そんな“縁の下の力持ち”にスポットライトを当て、その重要性を再認識させてくれます。
 ストレス社会を生きるすべての人に、ぜひ読んで頂きたい一冊です。

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