本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ

本を読むことは、心と体に栄養を与えること。読むと元気が出る、そして役に立つ、ビタミンたっぷりの“おいしい”本をご紹介していきます。

【書評】『EQ2.0』(トラヴィス・ブラッドベリー他)

 お薦めの本の紹介です。
 トラヴィス・ブラッドベリーさんとジーン・グリーブスさんの『EQ2.0』です。

 トラヴィス・ブラッドベリー(Travis Bradberry)さんは、著作家です。
 臨床心理学と組織心理学の両方で博士号をお持ちです。

 ジーン・クリーブス(Jean Greaves)さんは、著作家です。
 組織心理学の博士号をお持ちです。

「EQ」とは、何か?

 人生の成功と失敗を分けるのは、経験でも、知識でも、知力でもありません。
 それは、「EQ」、すなわち「心の知能指数」です。

 EQというコンセプト自体は、社会に浸透してきました。
 しかし、それが実際の生活でどのように関わってくるのか、どう高めていけばいいのかは、よくわかっていない人も多いでしょう。

 EQとは自分自身と他者の心の動きに気づき、それを理解する力である。また、その気づきを使って自分の行動や人間関係を上手にマネジメントする力でもある。EQはどんな人の中にもあるが、目に見えにくい。EQの力が、行動をコントロールできるか、複雑な社会の中をうまく進めるか、賢い判断によって前向きな結果を出せるかを左右する。
 EQは人間の行動の土台になる要素だが、知性とは違う。IQとEQのあいだに明確な関連はない。EQは知性では測れない。認知的な知性、つまりIQは変わらない。何らかの出来事によって脳が損傷を受けた場合は別だが、IQは生まれながらに決まっている。知識や情報を蓄えても、IQが上がるわけではない。IQとは学習能力で、15歳でも50歳でも同じだ。EQは違う。EQは後天的に身につけられるスキルだ。もちろん、生まれながらに高いEQを持つ人はいるが、生まれ持っていなくても高いEQを身につけることはできる。
 個性が成功を左右するという人もいる。個性とは、ひとりひとりが持っている独自の決まった「スタイル」だ。その人の志向や特徴が表に現れたものが、「スタイル」である。たとえば、内向的だったり、外向的だったりするのも、その人のスタイルだ。とはいえ、IQと同じで、個性でもEQを測ることはできない。また、IQと同じで個性も生涯変わらない。個性や特徴はかなり若いうちに現れ、消えることはない。特定の個性(たとえば外向性)がEQに関連すると思い込んでいる人は多いが、EQが高い人はひとりでいるより他人と一緒にいることを好む傾向が強いという言い方が正しい。EQを伸ばすために個性を使うことはできるが、EQが個性に左右されるわけではない。EQは変わるが、個性は変わらいない。全人格を理解するには、IQとEQと個性をすべて調べる方がいい。ひとりの人間の中にあるIQとEQと個性をすべて測ると、重なる部分はあまりない。むしろそれぞれが独立していて、それを見ると、ある人が何に反応するかがわかってくる(下の図1を参照)。

 EQは仕事の成功にどのくらい影響するだろう? 簡単に答えると、「ものすごく影響する」。EQを高めることで、ひとつの方向に力を集中でき、最高の結果が生まれる。EQとその他の33のスキルを検証したところ、時間管理や意思決定やコミュニケーション力といったほとんどのスキルはEQに含まれることがわかった。さまざまな重要なスキルの土台になるのがEQである(下の図2を参照)。EQは、日々の発言や行動のほぼすべてに影響を与える。EQは成功に欠かせない。あらゆる職種において、成果の58パーセントはEQによって生み出されている。職場で成果を出せるかどうかはEQによって決まると言っていいだろう。リーダーシップと個人の成功の原動力になっているのもEQだ。

『EQ 2.0』 第2章 より トラヴィス・ブラッドベリー、ジーン・グリーブス:著 関美和:訳 サンガ

図1 全人格を測る EQ2 0 第2章
図1.全人格を測る
図2 EQはあらゆる重要なスキルの土台 EQ2 0 第2章
図2.EQはあらゆる重要なスキルの土台
(『EQ 2.0』 第2章 より抜粋)

 本書は、社会で生きていくために必須の能力「EQ」を高めるためのノウハウをわかりやすくまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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「感情ボタン」を押す人やものを知る

 EQを高めるための基本となる重要な能力が、「自己認識力」です。
 自己認識とは、本当の自分を知ることで、中にある芯の部分、つまりあなたの本質を知り、それに慣れていくことです。

 自己認識力を高める方法のひとつが、「感情のボタンがどこにあるか探す」ことです。

 あなたの感情ボタンを押すのは誰か、そしてどのように押すのかを知ることは、状況をコントロールし、落ち着きを保ち、冷静さを取り戻すのに欠かせない。この訓練では、抽象的に物事を考えてはいけない。あなたの感情の引き金を引く特定の具体的な人物や状況をピンポイントで考えてほしい。さまざまな人物や物事があなたの感情ボタンを押しているはずだ。たとえば特定の人(先ほどの女優気取りの同僚)や、特定の状況(恐ろしいときや不意を突かれたとき)や、特定の環境(うるさい職場)など、さまざまなことが引き金になる。どんな人やものがあなたの感情ボタンを押すかがはっきりとわかれば、その人やものへの対応が少し楽になる。不意を突かれることも少なくなる。
 感情ボタンのもとがどこにあるのかを発見すると、自己認識が大きく進む。それはつまり、気にならない人もいる一方で、特定の人や状況があなたの気に障ってしまうのはなぜかを知ることだ。女優気取りの同僚は、小さい頃に注目をひとり占めしていた姉を思い出させるのかもしれない。あなたはいつも姉の陰に隠れていて、そんな生き方に嫌気がさしていたのかもしれない。そして今、職場で姉のような同僚の横に毎日座ることになったそれなら心がざわついてしまうのも、うなずける。
 何があなたの感情ボタンで、その原因がどこから来ているのかを知ることが、引き金に対する反応をコントロールする第一歩になる。やるべきことは単純だ。ボタンのもとになっているものを見つけ、書き出してみよう。あなたの感情ボタンが何かを知り、のちほどの自己管理と人間関係管理の訓練に使ってほしい。

『EQ 2.0』 第5章 より トラヴィス・ブラッドベリー、ジーン・グリーブス:著 関美和:訳 サンガ

 私たちは、自分が思っているより、自分自身を知っていないものです。
 自分を知ることが、自分(の心)をコントロールする第一歩。

 感情が乱される場面があっても、それが「なぜ」かわかっていれば、その状態を一歩引いて客観的に見ることができますね。

「ひとりごと」をコントロールする

 EQを高めるために、まず身につけるべき能力が「自己管理力」です。
 自己管理力とは、自分の感情に気づき、その気づきを基にして言動をみずから選ぶ力のことです。

 自己管理力を高めるための方法のひとつが、「ひとりごとをコントロールする」ことです。

 思考は感情の流れを制御する門番のようなもので、どんな思考を自分に許すかによって感情が表面に浮かび上がることもあれば、感情が地下に閉じこもることもあれば、感情が強まって長引くこともある。強い感情が湧き上がってきたときに、思考によって感情がさらに燃え上がることもあれば、和らぐこともある。ひとりごとをコントロールすれば、正しいことに集中でき、感情をより上手に管理できるようになる。
 ほとんどのひとりごとはポジティブで、あなたの毎日の生活を助けている(「ミーティングの準備をしなきゃ」とか「今晩の夕食がすごく楽しみ」とか)。だがネガティブなひとりごとは自己管理の妨げになる。ネガティブなひとりごとは、現実的でなく自分を打ちのめすようなのもだ。ネガティブなひとりごとはあなたを感情の悪循環に陥れ、人生に望むものからあなたを遠ざける。
 次に挙げたのは、最もよくあるタイプのネガティブなひとりごとだ。それをコントロールし、ポジティブに変えるにはどうしたらいいかをここに記した。

1「いつも〜だ」または「絶対に〜ない」と考えず、「今回は〜」とか「たまたま〜だ」と考えよう。

 状況はいつも違っているし、あなたの行動も状況によって毎回違う。いつもいつもダメと思っていても、そんなことは決してない。状況は毎回違うことを自覚し、失敗するたびに自分を責めるのをやめれば、問題が実際より大きくなることを防げるはずだ。

2「自分はバカ」と決めつけず、「ミスをした」と考えよう。

 自分にレッテルを貼ってしまうと、向上できなくなる。事実は状況によって変わるものと考えよう。事実を見れば、何を改善できるかを考えられるようになる。

3 他人のせいにしないようにしよう。

 何もかも他人のせいにしていると、ネガティブなひとりごとが増える。もし、「すべて自分が悪い」か、「すべて誰が悪い」と考えがちなら、たいていの場合はそうでないと思った方がいい。すべてに自分が責任を持とうとするのは見上げたことだが、誰かの重荷をいつも背負う必要はない。また、いつも誰が悪いと言っている人は、自分を振り返ってほしい。

『EQ 2.0』 第6章 より トラヴィス・ブラッドベリー、ジーン・グリーブス:著 関美和:訳 サンガ:刊

 私たちが日常、最も多く聞く声は、「自分の声」です。
 自分自身が発する言葉の影響は、私たちが思っている以上に大きい、ということです。

 普段、自分がどんなひとりごとを言っているのか。
 それを意識だけでも、自分を客観的に捉えることですから、自己認識力を高めることになります。

 ネガティブなひとりごとをやめて、ポジティブなひとりごとを増やす。
 普段から心がけたいですね。

15分の旅に出る

 他者との関係を築くうえで重要な能力が「社会的認識力」です。

 社会的認識力とは、自分の内側を見て理解することではなく、目線を外に向けて他者について学び理解することであり、他者の感情を察して理解する力が核になります。

 著者が挙げている、社会的認識力を高めるための方法のひとつが「15分の旅に出る」ことです。

 人生は旅のようなもので、終点に到着することが目的ではないとも言われている。人生という旅を楽しみ、その途中に出会う人たちを観察することで、社会的認識力が上がる。次のミーティングや次の授業を急ぎ、次の患者やクライアントのことを考え、急いでメールを出すことしか頭にないと、旅の途中の出会いを見逃してしまう。
 職場をぶらぶら歩き回って、周りのものや人に目を向けよう。少しばかりぶらつくと、周りの人やその気持ちに敏感になり、目の前にあったのに気づかなかったちょっとした大切なヒントに注意が向くようになる。
 いつでもいいが、15分だけ、これまでに気がつかなかった何かを観察する時間を設けよう。たとえば、職場の雰囲気、いろんな人がオフィスを動き回るタイミング、誰が周りの人に話しかけていて、誰が一日中机にへばりついているかを観察してみよう。
 最初の観察の旅のあとで、今度は別の日に職場の雰囲気を感じる旅に出てみよう。周囲のムードは、個人と集団で何が起きているかを知る大切なヒントになる。人々が何を感じているかや、彼らとおしゃべりをしてあなたがどう感じたかを覚えておこう。オフィスや学校、病院、工場などの全体の雰囲気を観察しよう。そこで見るもの、聞くこと、他者から感じたことに注目しよう。
 週に2度、15分の旅を1カ月続けてほしい旅に出るときには、思い込みや結論はできるだけ避けた方がいい。ただ観察してほしい。旅の途中で見たものに驚くはずだ。

『EQ 2.0』 第7章 より トラヴィス・ブラッドベリー、ジーン・グリーブス:著 関美和:訳 サンガ:刊

 社会的認識力を高めるには、まず、さまざまな状況で他者を観察することです。

 著者は、今この時に集中し他者に注意を向けることが、社会的認識力を高める第一歩だと述べています。

 他者観察と気分転換の休憩を兼ねた「15分の旅」。
 ぜひ、普段の生活に取り入れてみたいですね。

「意図」と「結果」を一致させる

 人といつまでも固くつながり、時間と共に実り豊かになっていくような関わりを築く。
 そんな満足すべき人間関係を持つためには「人間関係管理力」は必須です。

 著者は、人間関係管理スキルを後天的に身につけることはできると述べています。

 そのための方法の一つが「意図と結果を一致させる」ことです。

 スタッフ会議での次の議題が、どして大切な締切に間に合わないことがあるのかを突き止めることだとしよう。いくつか意見が出たあとで、どうやらアンナに責任の一部があるらしいとわかってきて、会議の雰囲気が険しくなってきた。ムードを明るくしようと、あなたはこんな冗談を言う。「まいったな、アンナ・・・・・前から思ってたけど、やっぱり昼食が長すぎたみたいだな!」
 しかし、誰も笑わず、重い沈黙がのしかかる。あなたはなぜ滑ったのかわからず、あとでアンナに「冗談だから」と言うが、アンナは頭にきているようだ。これは、意図と結果が一致しなかった例だ。謝っても、遅すぎた。
 ではここで、結果重視の上司が、善意から部下たちに高い目標を達成させようとして、部下を導いている例を考えてほしい。その上司は仕事で成功しようとがむしゃらに頑張っている(仕事の大部分を自分で引き受けるか、部下を自分のやり方に従わせようとしている)。彼女は部下を通して仕事を管理するやり方を身につけていない。部下は彼女が情報をひとり占めしている上に、重箱の隅をつつくように部下の仕事に口を挟む人間で、彼女と同じやり方を部下に命じて成功したがっているだけだと感じている。ここでも、上司の意図はよくても、結果は反対になってしまった。人間関係にひびが入り、上司はなぜ部下が腹を立てているのかわからない。
 関係回復のために時間を使わなければならなかったり、人間関係のどこがうまくいっていないのかがわからない場合、こうした状況は誰にでも起き得るものだと考えた方がいい。社会的認識スキルと人間関係管理スキルを使って少し調整するだけで、関係は大きく改善するはずだ。
 言葉や行動をあなたの意図と一致させるには、社会的認識スキルと自己管理スキルを使って、まずは人と状況を観察し、言動を起こす前にきちんと考え、適切で繊細に対応しよう。簡単に分析をしてみるといい。過去にあなたの言動が意図と違った結果をもたらしたときのことを思い出そう。その出来事とあなたの意図、行動、そして結果を紙に書き出してみる。次に、あなたがそのときには気づかなかったけれど、今は気づいていることを書き出してみる。たとえば、見逃してしまったヒント、あなた自身や他者についてあとになって知ったことなどを書き出そう。最後に、意図に添った結果を出すには、どうしたらよかったのかを書いてみる。もしわからなければ、その出来事に関わっていた人に聞いてみよう。
 アンナの場合には、そんな冗談を言うべきタイミングではなかった。全員の前でアンナを晒し者にしてしまった。次回、その場の雰囲気を明るくしたかったら、他人ではなく自分をからかった方がいい。先ほどの結果重視の上司は、部下のモチベーションがわかっていなかった。部下が自分の力で学習し成長する余裕も時間も与えていなかった。人間関係を上手に維持するには、行動が与える影響とあなたの意図の不一致を察し、結果と意図が一致するよう確かめてから行動することが欠かせない。

『EQ 2.0』 第8章 より トラヴィス・ブラッドベリー、ジーン・グリーブス:著 関美和:訳 サンガ:刊

 良かれと思ってやったことが、まったく逆の反応を引き起こしてしまった。
 誰にも、そのような経験はあるでしょう。

 過去の言動と意図が違ってしまったことを思い出す。
 その原因を突き止め、どうすれば良かったかを考える。

 それだけで、人間関係を築く力が大きく上がるのは間違いないですね。

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 これからは、「IQ」よりも「EQ」が重視される時代。
 そう言われ始めてから、かなりの年月が経ちました。

 実際、仕事も個人で進めるよりも、チームとして進めるものが多くなり、人間関係の重要性が増してきましたね。

 自分との関係を含めた、人との関わり合いを潤滑にする。
 そのためには「心の知能指数(EQ)」を鍛えるのは、必須となります。

「EQ」とは何かを知り、「EQ」を高めるための方法を知る。
 本書は、そのとっかかりとして最適な一冊といえます。

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