本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ

本を読むことは、心と体に栄養を与えること。読むと元気が出る、そして役に立つ、ビタミンたっぷりの“おいしい”本をご紹介していきます。

【書評】『心を上手に操作する方法』(トルステン・ハーフェナー)

 お薦めの本の紹介です。
 トルステン・ハーフェナーさんの『心を上手に操作する方法』です。

 トルステン・ハーフェナーさんは、世界的に有名なマインド・リーダーです。
 ステージショーの他、講演会やセミナーを開催し、絶大な人気を誇っています。

自分の心を自分で「操作する」ために

 現代社会において、「心理操作」は、日常のいたるところで行われています。
 油断していると、知らない間に、とんでもない窮地に立たされることもあります

 ハーフェナーさんは、他人から影響を受けるだけでなく、トリックにひっかかり、知らないうちに本来は望んでいないことをさせられる。そこが、心理操作の恐ろしいところだと指摘しています。

 心理操作は、常に暗示によって行われます。

 簡単に心理操作にだまされないようにする。
 そのためには、心理操作やそれに用いられる暗示のメカニズムや構造を知り、その対処法を知る必要があります。
「毒をもって毒を制す」ですね。

 本書は、一般的に使われる心理操作の方法や心理操作が行われる状況について解説した一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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信頼関係を築くための秘策とは?

 誰かに近づきたい。上手にコンタクトをとりたい。
 そのとき、ベースとなるのが「ラポール」と呼ばれるものです。

 ラポールとは、フランス語で「信頼関係」という意味です。
 誰かにきちんと話を聞いてもらうには、相手との間にラポールを築く必要があります。

 ラポールを築くのに大事なこと。
 それは、相手をしっかりと観察し、自分の行動を相手の行動に合わせることです。 

 体の姿勢と身振り、話す声の大きさとスピード、呼吸のリズム、語調や抑揚などを活用します。

 ハーフェナーさんは、どんな場面でも誰とでもラポールを築くことができる“秘策”を以下のように説明します。

 その秘策とは何か。どんな相手とも一瞬でラポールを築くには、相手が正しいと認めさえすればいいのだ。
 信じられない? いや、そうなのだ。この本を閉じる前に、少なくとも次の数行を読んでほしい。
 人間は、自分の信念のためなら命も捧げる唯一の動物なのだ!
 相手の反論を切り抜けて、あなたの的確な意見を効果的に述べる方法はこうだ。
 特に誰かが信念を声に出して言ったあとで、あなたがその信念に疑いを示したりしたら、強い向かい風が吹くのは当然だ。だから、一歩下がる。やがて必ずあなたの出番が来るから大丈夫。ラポールを築くときはいつも、相手の目線から世界を眺めること。これが鍵だ。
 必ずしも相手が完全に正しいわけではない。しかし――ここが非常に重要なのだが――相手の目線に立てば、相手が正しいのだ。
 だから、まずは相手の立場になって、相手とまったく同じ行動をとり、とりあえず一歩引く。自分の意見をかたくなに通そうとしないこと。相手がすでにかたくなになっているのだから、あなたはもっと賢くふるまうことだ。

 『心を上手に操作する方法』 3 相手と「ラポール」を築く方法 より トルステン・ハーフェナー:著 福原美穂子:訳 サンマーク出版:刊

「相手目線から世界を眺めること」

 簡単にできそうで、なかなかできないことですね。
 つい自分の都合を優先させ、「自分目線」で考えてしまいがちです。

 自分の考えを貫き通すことは立派なことかもしれません。
 ただ、相手との関係を築こうとする上では、マイナスになる場合も多いです。

「ホリスティック(包括的・全体的)な視点」とは?

 

 世界を眺めるのには、「4つの見方」がある。
 そう考えると、行き詰まったときに視点を変えることができます。

「4つの見方」とは、以下の通りです。

  1. 客観的な視点
  2. 主観的な視点
  3. 象徴的な視点
  4. ホリスティック(包括的・全体的)な視点

 4.ホリスティックな視点では、心と体との間に境界がなく限界もないというのが原則で、1.客観的な観点とは正反対のもの。

 ただ、人間の物理的感覚には限りがあります。
 なかなかそのような視点で見ることは難しいものですね。

 ハーフェナーさんは、だからこそ、新たな現実を見るメガネをかけて、それまで見えてこなかったものを見ることが大事なのだと、4.ホリスティックな視点を取り入れることの効果を強調します。

 視点を変えて、一度狭い境界や限界を取り払って考えてみよう。
 夜空を眺めてみると、宇宙はどこまでも無限だ。どこにも境界や限界はなく、すべてが一つのように思えてくる。同じように、ホリスティックな現実を見る視点からは、気持ちのうえでも、この境界を取り除くことがある。
 たとえば、二人の人間の境界がなくなることがある。あなたの子どもがすばらしい成績をとり、あなたもそれを誇らしく思ったとき。それは、あなたと子どもの間の境界線が解けた瞬間である。パートナーが悲しんでいて、あなたもそのことが原因で悲しくなったら、あなたたちはその瞬間、ホリスティックな視点から世界を見ている。映画の主人公に感情移入して、一緒に悩んだり、大喜びしたりするときも同じだ。
 だが、客観的なレベルではそんなことは起こらない。そもそも映画の登場人物は実在せず、もちろん、あなたの身近にいる人物でもないからだ。
(中略)
 また、ダンスのペアが息のぴったり合ったダンスをして、一体になっているときもそうだ。騎手と馬が一体になっているときもだ。思考の世界では、自分が受け入れている限界や境界だけを存在させることができる。
 望むことを考えよう。思考の中では、想像さえすれば何でもできるし、何にでもなれる。地球上のどの場所でも、いや宇宙でも、魅力を感じる場所を即座に夢想できる。

 『心を上手に操作する方法』 8 自分の「ものの見方」を操作する より トルステン・ハーフェナー:著 福原美穂子:訳 サンマーク出版:刊

 自分と相手を隔てる心理的な壁が取り払われ、「つながった」状態。
 それが、ホリスティックな視点で物ごとを見ているということです。

 普段から、状況に応じて、様々な視点から物ごとを考える習慣をつけたいですね。

「適切な質問」をする者が、会話をリードする

 ただ質問するだけでなく、会話を意図的に導く質問をする。
 そうすれば、相手を自分の意図通りに動かすことができます。

「質問する者」ではなく「適切な質問をする者」が会話をリードします。

 ある晩、僕は夕食でビールを注文した。厳密に言うと、淡色のビール、ヘレスビールだ。ウェイトレスは僕がビールを注文すると、愛想よく僕を見て、控えめに「大ジョッキですか?」と聞いた。
 彼女の確認の仕方はとても感じがよかったので、小さいジョッキを注文する気が起きなかった。それに、ビールはじつにおいしかった。
 まさに、彼女のように聞くといい。ウェイトレスの質問はエレガントで、いかにもお金のためというような無作法なリーディング・クエスチョン(誘導的な質問)ではなかった。
 もし彼女が、「ビールは大ジョッキですよね?」などと押しつけがましく言ったなら、僕はきっと小さいグラスを頼んだだろう。これはまぎれもなく相手に影響を与える方法だが、好感がもてる方法だ。
 影響を与えることは、犯罪ではない。ここで紹介した質問のケースも、もちろん悪いことではない。
 ウェイトレスの仕事は、お客さんにその店でできるだけ心地よく過ごしてもらい、この店に来てよかったと思ってもらうことではないだろうか。僕の場合、あのウェイトレスが、注文を決める手伝いをしてくれたのだ。そして、とても楽しい夕べを過ごした。気分がよかったのは、あの大ジョッキのおかげかもしれない。

 『心を上手に操作する方法』 13 相手を操る「質問の仕方」 より トルステン・ハーフェナー:著 福原美穂子:訳 サンマーク出版:刊

 押しつけがましくても、あからさまな誘導的なものでも、相手に不快な印象を与えます。

 逆に、感じがよい適切な質問の仕方をすれば、相手に影響を与えてこちらの意図に沿った返答をもらえる可能性が高くなります。

人間は、「7種類の感情」に分類できる

 表情の研究の先駆者、心理学者のポール・エクマンは、表情を解読する優れた方法を開発しました。
 この方法は、7種類の基本的な感情がわき上がると、誰でも同じ特徴が顔に表れるという事実にもとづいています。

 エクマンのいう「7種類の感情」とは、以下の通りです。

  1. 驚き
  2. 恐怖
  3. 悲しみと絶望
  4. 憤りと怒り
  5. 嫌悪
  6. 軽蔑
  7. 喜びと歓喜

 エクマンはさらに、表情を予測することも可能だと指摘しています。

 例えば、「驚き」の表情は、次のような特徴があります。

  • 眉がぐっと上がる
  • 額に横じわが走る――子ども、青少年、美容整形した女性以外は。

 さらに、次の点に気をつけること。

  • 眉だけが上がり、顔のほかの部分に変化がないとき、それは驚きではない。眉だけが2、3秒上がったら、それはその人がたった今聞いた話の信憑(ぴょう)性を疑っているか、信じられない話を聞かされたのかのどちらかである。
  • 質問をしたときに誰かが眉を上げたときは、すでにその答えを知っていることを表している。ひょっとすると質問の形をとっているだけで、何かを主張したいだけだったのかもしれない。自分がした質問の答えがわからないときは、まったく違う表情になり、眉をひそめる。この表情は怒りではなく、意識を集中しているということだ。
  • 上まぶたが大きく上がり、下まぶたは力を抜いたままである。
  • 下あごが下がって口が開く。下あごが大きく下がるほど、あぜんとしている程度が大きい。

 驚きの表情が表れるのは、短時間である。誰かに会って、相手が驚いたような顔であなたを数秒以上見ていたら、それは実際には驚いているのではなく、あなたが恐怖の表情を取り違えている可能性がある。

 『心を上手に操作する方法』 14 「顔の表情」から心を読み解く より トルステン・ハーフェナー:著 福原美穂子:訳 サンマーク出版:刊

 ある感情が表情に出るのは、「平均で約2秒間」です。
 多くの場合、無意識に感情を隠そうとし、表情をすぐにコントロールして抑えようとします。

 ちょっとした相手の表情の変化を見逃さないこと。
 感情を推し量るツールとして知っておくと便利ですね。

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 ハーフェナーさんは、他人をコントロールするテーマに夢中になる人は、まさにその恐れが行動の根底にあるとおっしゃっています。
 自分に自信のある人や充実した人生を送る人は、他人をコントロールしようとは考えません。

 他人に影響を与えるにはどんな方法があり、その方法がどのように使われているのか。
 他人の影響から身を守るには、まずそれを知ることです。

 ハーフェナーさんは、さらに内面的な「強さ」を持つことも大事だとおっしゃっています。
 危険な誘惑を察知する知識と、そこに近づかない意志の強さが何よりも重要ですね。

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