【書評】『自分の小さな「箱」から脱出する方法』(アービンジャー インスティチュート)

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 お薦めの本の紹介です。
 アービンジャー・インスティチュートの書いた『自分の小さな「箱」から脱出する方法』です。

 アービンジャー・インスティチュートは、米国のユタ州に拠点を置く研究所です。
 哲学者のT・ウォーナーが創設メンバーに加わっていたという異色の集団です。
 現在ではビジネス・法律・経済・哲学・教育・心理学の専門家が一同に会し、組織内にある人間関係の諸問題を解決することによって、収益性を高めようという独自のマネージメント研修やコンサルティング業務を行っています。
 ちなみに、アービンジャー(Arbinger)とは、「先駆け」という意味です。

誰もが心の中に持つ、「小さい箱」とは?


 本書は、誰もが心の中に持っている、小さな「箱」についてのお話です。
 印象に残った部分をピックアップしてご紹介します。

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「箱」の中にいるのか外にいるのか?


「箱」とは、「自己欺瞞」のこと。

 つまり、『自分で自分の心をあざむくこと。自分の良心や本心に反しているのを知りながら、それを自分に対して無理に正当化すること』(kotobankより引用)です。

 誰にも、自分にも問題があることを知りながら自分を正当化して、100%相手のせいにした経験があるでしょう。
 そのような時、『「箱」の中に入っている』状態であると考えます。

「箱」に入ってしまっている時、人は物ごとを客観的に見渡すことができなくなります。
 そして、自己中心的で近視眼的な視野しか持てなくなります。

 まさに、「箱」の中に閉じ込められた状態と言えますね。

「(前略) 
 人が他の人にどのような影響を及ぼすかは、行動より深いところにあるものによって決まる。
 箱の中にいるか外にいるかが問題なんだ。
 君はまだ箱について多くを知っているとはいえないが、とにかく、箱の中にいると、現実を見る目がゆがんでしまう。自分自身のことも他の人々のことも、はっきりと見ることができなくなる。自己欺瞞に陥るわけだ。そしてそこから、人間関係のあらゆるごたごたが起こってくる。
 そのことを念頭において、一時までのあいだに、あることをしてほしい。
 ここで働いている人たちについて、もう一度考えてみてほしいんだ。自分の部下についても、それ以外の人についても。
 そしてそういった人々に対して、自分が箱の中にいるのか、外にいるのかを問い直してほしい。
 ただし、相手を一つの集団としてみてはいけない。一人一人について考えるんだ。
 ある人に対しては箱の中にいるが、別の人に対しては箱の外に出ているということもありうる。いいかな」

 『自分の小さな「箱」から脱出する方法』 CHAPTER7 より  アービンジャー・インスティチュート:著 金森重樹 他:訳 大和書房:刊

 この「箱」は、目には見えません。

 自分では、相手に対してオープンな状態で接している。
 そう思っていても、相手から見ると、構えられているように感じられるのは、よくあることです。

 人間関係におけるトラブルは、すべて、この「箱」に入って相手と接したときに発生します。

「箱」の中に入っていることを自覚するためには?


 箱の中に入っているか、そうでないか。
 そのことに気づくには、自分の感情に忠実かどうかを注意深く見つめる必要があります。 

「自分への裏切りがどういったものなのかは、わかったように思います。つまり、わたしたちは人間である以上、他の人たちが必要としているか、どうすればそれを手助けできるかを感じ取ることができる、というわけですね」
「そう、その通り」
 バドとケイトが口をそろえていった。
「で、それを感じていながらその通りにしないと、他の人のためにこうすべきだという自分の感情に背くことになる。それが、自分への裏切りなんですね。
「まさにその通り」
「で、自分の感情に背いたとたん、物事を見る目が変わってくる。他の人、自分、その状況全体、すべてを見る目が、自分の行動を正当化するような形にゆがめられてしまう」
「ああ。自分への裏切りを正当化するような視点で、世の中を見はじめるというわけだ」
バドがいった。
「なるほど。そこで『箱』の登場となる。つまり、自分の感覚に逆らったときに、箱の中に入るわけですね」
「そうなんだ」

 『自分の小さな「箱」から脱出する方法』 CHAPTER13 より  アービンジャー・インスティチュート:著 金森重樹 他:訳 大和書房:刊

 普段から、いつも他人のせいにばかりしている。
 そんな人は、「箱」の中でも生活に慣れきって、自分が「箱」の中にいることに気付きません。

 自分の感情や感覚を信じて、それにできる限り忠実に行動する勇気を持つ。
 それが、「箱」に入らないための秘訣となります。

共謀して「ひどい相手」を非難する関係


「箱」の中にいる人間は、自分でも気付かない間に、周囲の人を「箱」の中に閉じ込めてしまいます。

「自分は間違っていない」

 最初からそう決めてかかる相手に対して、相手が防御的な態度をとるのは、当然のことでしょう。

「箱」に入ったまま、お互いにいがみ合っている者同士は、当人達も知らぬ間に、ある種の協力関係を築きます。
 本書では、その関係のことを「共謀」と呼んでいます。

「(前略)
 お互いに、『ほら、あんたにひどいことをすてやるよ、そうすりゃあんたは俺を責められるだろ。そしてあんたが俺にひどいことをすれば、俺はあんたを責められるってわけだ』って、いいあっているようなものなの。
 もちろん、そんなふうにいいもしなければ、考えもしなかった。でも、お互いにやっていることや自己正当化が、あまりに完璧で調和がとれているものだから、まるで共謀しているとしか思えない。だから、お互いに相手に対して箱にはいっている複数の人間がいて、お互いの感情に背き合っている状況を『共謀』と呼ぶの。共謀というのはつまり、互いに相手がひどいことをしていると非難しあっている状態のことなの」
 そのときバドが口を挟んだ。
「しかもこういうことになったからといって、別にそれぞれが自虐的になっているわけじゃない。ただただ、箱の中にいるせいなんだ。そして箱そのものはといえば、ひどい仕打ちを受けたことで得られる自己正当化を栄養にして、生き延びていく。つまり、箱の中にいると、何とも皮肉なことになるんだ。誰かにひどい仕打ちをされたとぼやいてみたり、おかげでとんでもない迷惑をこうむったと嘆きながら、一方でその仕打ちを妙に心地よく感じているんだな。ほら見ろ、あいつらは責められて当然の人間なんだ、わたしはまったく悪くない、とね。ぼやきの原因となっている行動そのものが、自分を正当化してくれるんだ」

 『自分の小さな「箱」から脱出する方法』 CHAPTER14 より  アービンジャー・インスティチュート:著 金森重樹 他:訳 大和書房:刊

 お互いに相手を非難し合って、どっち付かずの状態。
 そのとき、実は、「箱」に入っている人にとって、もっとも都合のいい状態だということです。

 なかなか「箱」から抜け出せない、大きな理由の一つとなりますね。

「箱」から抜け出すためには?


「箱」から抜け出すための手掛かりは、冷静になって自分自身を客観的に見直すことです。

「自分が間違っているのかもしれない」

 そう相手の視点に立って、物ごとを考える必要があります。

「(前略)
 物事をまっすぐに見つめて、感じとっていた。箱から出たとたんに、奥さんを責める必要もなくなったし、奥さんの欠点を大げさにあげつらう必要もなくなった。だから、奥さんのことが前とは違ったふうに見えていた。
 まるで奇跡のような話だが、見方を変えればごくありふれたことでもある。
 日常生活では、こんなことは絶えず起こっている。たいていは、すぐに忘れてしまうようなごく些細なことなんだが。
 目の前にいる人々が常に持っている基本的な『他者性』、つまり相手は自分とは違う一個の独立した人間であるという事実と、目の前にいるのとは別の人たちとともに箱の外に出ているあいだに学んだことが相まって、相手の人間性が、わたしたちの箱を突き通す瞬間があるんだ。
 その瞬間に、自分が何をすべきかがわかり、相手を人間として尊重しなくてはならないということがわかる。
 相手を、自分と同様きちんと尊重すされるべきニーズや希望や心配ごとを持った一人の人間として見はじめたその瞬間に、箱の外に出るんだ」

 『自分の小さな「箱」から脱出する方法』 CHAPTER21 より  アービンジャー・インスティチュート:著 金森重樹 他:訳 大和書房:刊 

 自分に非がないか、客観的に振り返る行為そのものが、「箱」から外に出るという行為です。

 「箱」から脱出するカギは、自分が抱いた怒りなどのマイナスの感情に「偽善」が混じっていることに気づくことです。

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☆    ★    ☆    ★    ☆    ★    ☆

 この小さな「箱」は、誰でも持っています。
 つねに「箱」の外にいることができる人間は、おそらくいないでしょう。

 大事なのは、自分が今「箱」に入っているのか、「箱」の外にいるのかを自覚すること。
 そして、必要に応じて「箱」からいつでも自由に出れるようにすること。
 
「箱」から脱出する方法を身につける。
 それは、どんな相手ともコミュニケーションをとれる方法を身につけることです。

 本書の内容を頭に刻みこみ、いつでも「箱」から飛び出す勇気と謙虚さを持ち合わせられるようにしたいですね。


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