本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ

本を読むことは、心と体に栄養を与えること。読むと元気が出る、そして役に立つ、ビタミンたっぷりの“おいしい”本をご紹介していきます。

【書評】『重力とは何か』(大栗博司)

お薦めの本の紹介です。
大栗博司さんの『重力とは何か』です。

大栗博司(おおぐり・ひろし)さんは、素粒子論がご専門の理学博士です。

「重力」とは何か?

誰もが当たり前のように存在を知り、その影響を受けて生活している。
それにもかかわらず、その本質について知っている人はほとんどいない。

それが「重力」です。

重力は、私たちの生活のみならず、宇宙の誕生にも大きく関わっており、最新の物理学を学ぶうえで欠かすことができません。

ただ、重力については、まだ多くのことが未解明であり、この宇宙を支配する法則を知るための重要な鍵とされています。

 私は毎日、重力のことを考えています。そう。私たち自身や私たちの周囲にあるすべての物質――机や机の上のコップや自動車や地面や海水や空気など――が宇宙空間に飛んでいかないよう地球につなぎ止めている、あの重力のことです。
それについて何十年も考え続けている私は、世間から見ると、かなりの変わり者に思われるかもしれません。重力の影響を受けていない人間はいませんし、自分の「体重」については真剣に考える人が大勢いますが、重力についてあらためて考える人はめったにいません。
(中略)
実際、私が専門分野の話をしても、日常生活の役に立つことはあまりありません。それこそ、重力のことを知れば体重が減るというなら、保護者会では私のまわりに人だかりができると思いますが・・・・・。
しかし私自身は、自分が研究している分野について、多くのことを人に伝えたいと思っています。理由は単純。それが、楽しいことだからです。
私たち人類は、この文明を築き始めてから数千年におよぶ歴史の中で、さまざまな試行錯誤を重ねながら、自然界の謎を解き明かしてきました。私たちは身長1〜2メートルぐらいの生き物ですが、いまではその10億×10億×10億倍の大きさを持つ宇宙のことから、《10億×10億》分の1メートルしかないミクロの世界まで、実に幅広いスケールで理解しているのです。
もちろん未解決の問題もたくさんありますが、人間がまさに「身の丈に合わない」世界について理解を深めているとは、なんとも不思議なことです。生存のためだけなら、身長の1000倍(およそ1〜2キロメートル)から1000分の1(およそ1〜2ミリメートル)ぐらいまでの世界が把握できれば事足りるでしょう。これと比べて地球から月までの距離は約4億メートル、最近よく見聞きする「ナノメートル」は10億分の1メートルです。進化論的な言い方をすれば、億がいくつも並ぶような世界のことを理解しなくても、人類が淘汰されることはありません。そんな知性を持つ必然性はまったくないのです。
ところが人間は、生活にほとんど関係のないことまで知る能力を得てしまいました。役に立たないことがわかっていても、好奇心には勝てません。そして私は、そんな人間の営みには素晴らしい価値があると思います。
私自身、一度しかない人生のあいだに、この世界のことをできるだけ深いところまで知りたいと願って、研究を続けてきました。重力は、私たちの生活を支配する身近な力です。しかしその正体はまだ完全には明らかになっておらず、これを理解しなければ、自然界のもっとも奥深い真実に到達することができません。だからこそ重力研究はおもしろいし、その意義を広く伝えたいとも思うのです。

『重力とは何か』 はじめに より 大栗博司:著 幻冬舎:刊

大栗さんは、現在、重力研究はニュートンとアインシュタインの時代に次ぐ「第三の黄金時代」を迎えようとしていると述べています。

本書は、アインシュタインの相対論に始まる過去100年間の研究の発展をたどり、最新の重力理論の描く宇宙像をお伝えする一冊です。
その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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重力は「力」である

あって当たり前と思われている「重力」。
実は、さまざまな不思議に満ちています。

 そもそも人類はいつから重力の不思議さに気づき、それを科学の研究対象にしてきたのでしょうか。重力は「リンゴが木から落ちるのを見てニュートンが発見した」と言われることもありますが、そうではありません。もっと古くから、人間は物体が地面に落ちる現象を不思議に感じ、その理由を考えてきました。
ただし、最初からそこに何らかの「力」が働いていると考えられたわけではありません。古代ギリシャの哲学者アリストテレスは、物質そのものに「本来の場所に戻る性質」があると考えました。エサを探しにいった鳥が自分の巣に帰るように、いったん上に投げ上げられた石も本来の居場所にである地面に返るというわけです。また、当時は物質には火、水、土、空気の四元素があると考えられており、土の成分の多い物体ほど地球の中心に戻ろうとして速く落ちるとされていました。ヨーロッパでは、この考え方が中世まで続いていたのです。
しかし、この考え方では動きの説明できない物体もありました。太陽、月、星などの天体です。空の上で周期的な動きをくり返す天体は、地上の物体と違って「本来の居場所」を持っているように見えません。そのため当時の人々は、天界は火、水、土、空気ではない「第五の元素」からできており、地上とは異なる法則に支配される別世界だと考えました。
その考え方を根底から覆(くつがえ)したのがアイザック・ニュートンです(下の図2を参照)。
ニュートンはまず、物質に働く「力」を明確に定義しました。それによれば、物体の運動を変えるものはすべて「力」です。力が何も働いていなければ、物体の運動は変わることがなく、同じ速度でまっすぐ動きます(静止している物体も「同じゼロ速度」で静止したままです)。しかし力が働くと、運動の方向や速度などが変化する。たとえば止まっているサッカーボールを蹴ると転がるのは、そこに力が加えられたからです。ニュートンのこの定義によって、物理学は「物体」とそこに働く「力」による現象を記述する学問として確立されました。
すると当然、物体が地面に落ちる現象も、「力」の働きで説明されます。力が作用していなければ、手から離れた石は空中に浮かんでいるはずです。それが地面に向かって動くのは、地球からの引力という「力」によって石の運動が変化するからなのです。
そしてニュートンは、その引力が「万有」であることに気づきました。「リンゴが木から落ちるのを見てひらめいた」というのは後で作られた伝説だと思われますが、ニュートンの考えによれば、その時引力で相手を引っ張っているのは地球だけではありません。リンゴも地球を引っ張っています。
また、「万有引力」という以上、これは物体だけに備わっている力ではありません。ニュートンは、天界の太陽や月や星もお互いに引力で引っ張り合い、それによって運動していると考えました。それこそが、ニュートンの発見の最も偉大な点です。それまで別世界だと思われていた地上と天界が、ここで初めて理論的に統一されました。石やリンゴが地面に落ちる現象も、月が地球のまわりを回る現象も、同じ一つの理論で説明できるようになったのです。

『重力とは何か』 第一章 より 大栗博司:著 幻冬舎:刊

図2 アイザック ニュートン 重力とは何か 第一章
図2.アイザック・ニュートン
(『重力とは何か』 第一章 より抜粋)

リンゴの逸話が本当だったかどうかは別として、重力の存在とその働きを示す法則を導き出したニュートンの功績は、やはり偉大だったといえます。

とはいえ、重力そのもの、重力が生じる仕組みは未解決のままでした。

重力は、なぜ発生するのか。
その難問に答えたのが、アインシュタインでした。

二次元空間に「球」が現れたらどう見えるか

アインシュタインの「一般相対性理論」は、まさに重力の働きを解き明かすものです。

 一般相対性理論は難解だと言われますが、ここから話が難しくなるというわけではありません。まず、「次元の低い」話から始めることにしましょう。本来は四次元の時空を取り扱っている理論を、二次元空間の簡単な場合で説明するので、文字どおり「次元の低い」話です。
ちなみに、「本来は四次元」と聞いて、「空間は三次元では?」と首をひねった人もいると思いますが、この四次元は「空間三次元+時間一次元」のこと。相対論では時間と空間がどちらも伸び縮みするので、両方を合わせて「時空」という概念でとらえます。
時空の次元とは、「位置を決めるためにいくつの情報が必要か」と同じことだと考えるといいでしょう。三次元の「空間」では、縦、横、高さの三つの情報があれば位置が決まります。たとえば京都は街が碁盤の目のようにできているので、住所を見れば平面上の位置はすぐにわかりますが、誰かと待ち合わせするときに「四条河原の高島屋で」と伝えただけでは、何階に行けばいいのかわかりません。「六階の喫茶店で」と高さまで伝える必要があります。
しかし待ち合わせの場合、それだけでは不十分でしょう。縦、横、高さの三つの情報だけでは、何時にそこに行けばいいのかわからない。そこに「午後三時に」という四つ目の情報=時間を加えて初めて、「時空」における位置が決まるわけです。

空間が二次元(時空は三次元)の世界は「高さ」のない平面ですから、縦、横、時間という三つの情報があれば位置が決まります。では、空間が四次元(時空は五次元)の世界ではどうなるのか。そこでは、縦、横、高さ、時間以外に、もう一つ別の情報がなければ位置を決められないはずです。
三次元空間で暮らす私たちには想像の難しい話ですが、それを考える上で参考になる小説があります。19世紀イギリスの作家エドウィン・A・アボットの『フラットランド』(日経BP社)という風刺小説です。
その舞台である「フラットランド」では、人々が三角形、四角形、五角形といった平面図形の姿をしています。階級社会を風刺した作品なので、辺の数が多いほど身分が高い設定になっており、下層労働者は二等辺三角形、中産階級は正三角形、紳士階級は正方形と正五角形、貴族階級は正六角形から。最高位として君臨するのは聖職者の円です。
平面なので、お互いの姿は「線」にしか見えません。しかし三次元空間の私たちが右目と左目から見た像を組み合わせて立体的な奥行きを感じ取ることができるのと同じように、彼らも二次元面上の遠近感を把握できるので、それが何角形なのかわかります。
主人公は、正方形の「A・スクエアー」氏。物語のハイライトは、その主人公の目の前に三次元の「球」が出現するところでしょう。「球」はフラットランドの「上」からやってくるのですが、A・スクエアー氏には「上」が見えないので、最初に見えるのは「点」でしかありません。次にそれが横に伸び始め、徐々に幅を広げ、A・スクエアー氏は「これは円が大きくなっているのだな」と認識します(図12)。
たしかに、平面の世界に立体的なものが現れたら、そんなふうに見えるでしょう。そう考えると、私たちの世界を「四次元の球体」が訪れたときの様子も想像することができます。まず、私たちには見ることのできない方向から突如として空間に「点」が現れ、それが徐々に広がって「球」になる。もしそれが私たちの三次元空間を通り過ぎれば、やがて「球」は縮んでゆき、最後はまた点になって消えるでしょう。
「球」と仲良くなったA・スクエアー氏は、一緒に「上」の世界へ連れていってもらい、生まれて初めてフラットランド見下ろしました。彼はそれを「内側が見える」という言葉で表現します。さらにA・スクエアー氏は、次は四次元空間に連れていってほしいと頼んで、「球」を困らせました。
もし三次元空間を「上から見下ろす」ことができれば、立体の「中身」が見えるでしょう。A・スクエアー氏の体験を延長して考えれば、理屈ではそうなります。しかし私たちには、それがどういうことなのか想像もつきません。「球」も三次元空間の住人なので、そんなことを頼まれても困ってしまうわけです。ちなみにA・スクエアー氏自身も、「球」と出会う前に「一次元世界の王」と出会い、二次元世界のことを理解させることができずに苦労していました。
ともあれ、ゼロ次元(点)、一次元(線)、二次元(面)、三次元(立体)・・・・・と空間の方向が増やせる以上、四次元、五次元、六次元・・・・・の空間が絶対にあり得ないとは言えません。事実、本書の後半では「10次元の時空」が登場しますので、いまの「フラットランド」の話を頭の片隅に置いておいてください。

『重力とは何か』 第三章 より 大栗博司:著 幻冬舎:刊

図12 フラットランドに3次元の球が訪れる 呪力とは何か 第三章
図12.フラットランドに3次元の球が訪れる
(『重力とは何か』 第三章 より抜粋)

二次元の世界の住人は、三次元の空間を正しく認識できない。
同様に、私たち三次元の世界の住人は、四次元の空間を正しく認識できないということです。

二次元空間に「球」が現れたらどう見えるか?

特殊相対性理論では、「時間」と「空間」は伸び縮みすることが明らかにされています。
一方、一般相対性理論では、物体の「質量」も空間を歪め、時間を伸び縮みさせると言っています。

大栗さんは、それらの変化が、物体の運動に影響を与える。それこそが、アインシュタインが解明した重力の仕組みだと述べ、以下のように説明しています。

 そう言われても、ふつうは何のことだかイメージできないでしょう。だから話をわかりやすくするために「フラットランドの重力理論」を考えるわけです。もしアインシュタインが「フラットランド」の住人だったら、一般相対論における重力の働きを、どんなふうに説明するでしょうか。
まず、フラットランド上に点が一つあると思ってください。それを中心に円を描くと、当然ながら中心角は1周360度です。しかし、その点に何か重たいものを置くと、その質量によってこの角度が減る、「欠損角」が生じるとアインシュタイは考えました。本来は360度あるはずの中心角が330度や300度になるなど、質量が大きいほどその点のまわりの角度が欠けてしまうのです。
では、このときフラットランドの地面はどうなるのでしょうか。
それは、紙とハサミを用意して実際に「欠損角」を作ってみればわかります。円を描いて、その一部を図13のように扇形に切り取ってみる。仮にその扇形の中心角が60度だとすれば、残った「円」の中心角は300度です。
でも、そのままでは切り取った部分が離れているので、円になりません。それを円にするには、端と端をくっつける必要があります。すると、紙は平らではいられません。魔法使いの帽子のように、とんがった形になってしまいます。
それが「円」と呼べるのか? と思うかもしれません。学校で習うユークリッド幾何学では、円の中心角は360度、三角形の内角の和は180度など、図形と角度の関係が決まっています。でも、それは「平面上」での話。数学の世界には、曲がった平面上の図形について考える幾何学もあります。たとえば地球儀の上で180度より大きくなるでしょう。逆に、馬の鞍のように反り返った曲面では、180度より小さくなる。平面の曲がり具合は、図形の角度を調べることでわかるということです。
ともあれ、先ほど紙で作ったフラットランドは、円の中心角が300度になるような歪み方をしています。質量が欠損角を作ることによって、二次元空間が歪んでしまったのです。
しかしフラットランドの住人は「上」も「下」もわからないので、自分の住む世界が立体的に歪んでいることに気づきません。ボールを投げた場合も、まっすぐに進むはずだと考えます。
ところが実際には空間が歪んでいるので、ボールは円の中心に向かって曲がります。たとえば図14の矢印のように、二つの方向に投げられたボールは、欠損角の中心に向かって「見えない力」に引き寄せられ、再会します。中心に置かれた質量によって「重力」が生じているかのようです。しかし、この「魔法使いの帽子」を切り開いて平面に置くと、各々のボールの軌跡は直線です。そこには、何ら特別な力は働いていません。
ですから、このアインシュタイン理論で考えるかぎり、重力は「幻想」でしかありません。重力という力の作用があるように見えるだけで、その現象の正体は「欠損角」であり、それによって生じる「空間の歪み」なのです。
アインシュタインが一般相対論で示した方程式は、その欠損角と質量の関係を明らかにするものでした。その式によれば、質量が大きいほど、欠損角も大きくなります。それだけ空間の歪み方も大きくなるので、重力が強く働いているように見える。それが、「二次元空間のアインシュタイン理論」のすべてだと思ってかまいません。

『重力とは何か』 第三章 より 大栗博司:著 幻冬舎:刊

図13 欠損角 のまわりでは 2次元面は魔法使いの帽子のようにとんがった形になる 重力とは何か 第三章
図13.「欠損角」のまわりでは、2次元面は魔法使いの帽子のようにとんがった形になる。
図14 2本の矢印に沿ってまっすぐ進んでいるはずなのに 重力とは何か 第三章
図14.2本の矢印に沿ってまっすぐ進んでいるはずなのに・・・・
(『重力とは何か』 第三章 より抜粋)

大栗さんは、重力によって空間の性質が変わるところは、三次元も二次元も同じで、質量によって空間が歪み、それが物体の運動に影響を及ぼしていると述べています。

二次元空間(平面の世界)の欠損角による歪み。
それが三次元空間(立体の世界)の質量による歪み、つまり重力であるということです。

二次元の住人にとっては、欠損角があっても「円」のままに感じますが、実際には円錐状に変形しています。
円錐状になった表面では、物質は真っ平らな平面上とは異なる動きをするため、「何らかの力が加わった」と感じるわけです。

三次元の住人である私たちも、物体の質量による空間の歪みは見ることできませんが、それを「重力」として感じているのですね。

「回転する宇宙ステーション」の中では、何が起きるか?

エレベーターが上方向に加速しているとき、乗っている人は下方向に押しつけられる力を感じます。
この力は質量に比例するため、まるで重力が増えているかのようです。
ニュートン力学では、これを「見かけの重力」と解釈します。

一方、アインシュタインは、これは「見かけの重力」や「重力に似たもの」などではなく、重力の本姓にほかならないと主張し、重力そのものが、実際に増えたり減ったりしているとしています。

この加速運動で生じる見かけの力が重力と同じものであるというアインシュタインのアイデアは、「等価原理」と呼ばれています。

では、場所によって異なる重力が働く場合、その関係はどのように表されるのでしょうか。
大栗さんは、くるくると回る宇宙ステーションを思考実験の場として説明しています。

 アインシュタインの等価原理によると、加速度や遠心力によって生じる引力は、「見かけの重力」ではなく「重力そのもの」です。遠心力と重力は区別されません。回転する宇宙ステーションの中には「本物の重力」があるのです。
そして、この重力は一様ではありません。中心から放射状に広がっているので方向は一つではありませんし、回転速度が外側に行くほど速いので、遠心力(すなわち重力)は内側より外側のほうが強くなります。この私たちの日常とは性質の異なる空間では、いったいどんなことが起こるのでしょうか。
ここでアインシュタインが考えたのは、「この宇宙ステーションで回転部分の円周を測ったらどうなるか」という問題です。学校で教える円周の長さは、「直径 × π」。πは無理数ですが、ここでは3.14だとしましょう。宇宙ステーションの回転部分は円ですが、果たしてその長さは「誰から見ても」直径×3.14になるでしょうか。

では、私が宇宙ステーションに乗り込み、定規を持って直径と円周を測りますから、あなたはそれを宇宙ステーションの外から観察していると思ってください。使う定規はあまり長くないので、何回も継ぎ足すようにして測らなければいけません(たとえば25センチメートルの定規で1メートルを測るなら定規を4回使うことになります)。
図16のように、まず宇宙ステーションのいちばん外側から中心に向かって直径を測りましょう。これは回転運動と直交する方向の作業なので、その影響を受けません。宇宙ステーションが止まっているときに定規を100回使ったなら、回転中も100回になります。外から見ているあなたにとっても、とくに不思議なことは起こりません。
ところが、次に私が円周を測り始めると、とたんにおかしなことが起こります。あなたには、私の使っている定規が、直径を測っていたときよりも短く見えるでしょう。特殊相対論によると、動いている物体は、運動の方向に縮んで見えるからです。
「そんな短い定規で測ったら、直径との比較が正しくできないぞ!」
あなたはそう叫ぶでしょうが、残念ながらその声は私に届きません。
さて、作業が終わりました。あなたから見た宇宙ステーションの円周は、あくまでも直径の3.14倍です。たとえば、直径を測るのに定規を100回使ったのなら、同じ長さの定規で円周を測るのには314回使うはずです。ところが、あなたから見ると、ローレンツ収縮のために、私の使っている定規は短く見えます。たとえば、314回より多い、350回使ったとしましょう。
直径を測るのに定規を100回、円周を測るのに350回使ったので、定規が縮んだと思っていない私は、円周は直径の3.5倍だったと報告します。つまり、宇宙ステーションの上では、重力によって空間の性質が変わり、「円周率=3.14」ではなく「=3.50」となっているのです。
先ほどのフラットランドでは、ある点に重たいものを置いたときには、質量で欠損角が生じて平面が歪み、円の中心角が360度より小さくなりました。当然、そのために円周も短くなっています。つまり、円周率が3.14よりも小さくなったわけです。
それに対して今回の宇宙ステーションの話では、逆に円周率が3.14よりも大きくなりました。欠損角ではなく「余剰角」ができるので、図形は全体的に広がります。たとえば、円周率が3.50なら、中心のまわりの角度は360度ではなく401度。余剰角は41度ということになります。
余剰角を作ってみましょう。図17のように紙に切れ目を入れて、別に用意した扇形の紙をそこに差し込んで貼りつけます。そうすると、中心のまわりの角度が扇型の角度の分だけ大きくなります。この大きくなった分が余剰角です。
紙にあらかじめ直線を引いておいてから余剰角を作ると、直線だと思っていたものが、外側に曲がっているように見えます。つまり、まっすぐ投げたボールが外側に曲がるのです。まさに「遠心力」が働いているように見えるわけですが、空間の歪みが運動の方向を変えているにすぎません。
同様に、加速する自動車に乗っているときに私たちが背中をシートに押しつけられるように感じるのも、加速度(=重力)が空間を歪めているため。いずれも、そこで働く力は「幻想」なのです。
この宇宙ステーションの例では、外向きの人工重力(遠心力)が、余剰角を引き起こしました。これと反対に、ある点に重いものを置くと、内向きの力が働きます。遠心力とは逆向きなので、空間の歪み方も逆になるはずです。余剰角の逆とは、欠損角です。フラットランドの話で、ある点に重いものを置くと欠損角ができたのは、そのためです。
遠心力も、質量による引力も、空間の歪みと関係があることがわかりました。
宇宙ステーションの中の時間や空間には、そのほかにも不思議な性質があります。たとえば、動いているものの時間は遅れて見えるという特殊相対論の効果のために、回転している宇宙ステーションの時間も遅れます。重力を強くするために回転速度を上げると、時間の遅れはさらに大きくなります。重力が強くなると時間の遅れが大きくなることは、重力の基本的な性質で、この後に出てくるGPSやブラックホールの話でも大切な役割を果たします。
また、宇宙ステーション全体で時計を合わせることはできません。あなたと私が同じ場所に立っていて、あらかじめ二人の時計を合わせておくとします。私が時計を合わせる係になって、円周に沿って一定方向に歩きながら、いろいろな場所に立っている人の時計を順番に合わせていき、グルっと回って、あなたの待っているもとの場所に戻ってきます。説明は省略しますが、再会したときには、二人の時計は合っていないのです。
空間の歪み、時間の遅れ、時計合わせの困難。これらはすべて、宇宙ステーションの上の「人工重力」によるものです。アインシュタインは、このような考察から、重力とは、時間や空間の性質の変化のことであると考えるようになりました。

『重力とは何か』 第三章 より 大栗博司:著 幻冬舎:刊

図16 宇宙ステーションの円周を図ろうとすると 重力とは何か 第三章
図16.宇宙ステーションの円周を測ろうとすると・・・

図17 余剰角があると まっすぐに投げたボールが外側に曲がる 重力とは何か 第三章
図17.余剰角があると、まっすぐに投げたボールが外側に曲がる
(『重力とは何か』 第三章 より抜粋)

重力は、一般的には「万有引力」と呼ばれています。
とはいえ、すべての物体に、その質量に応じた重力がつねに働いているわけではありません。

重力は、減らすことができますし、増やすこともできますが、それは見かけの話ではありません。
実際に、その力の大きさに応じて、空間と時間が歪みが変わっています。

重力とは、時間や空間の性質の変化のこと、つまり「歪み」自体を示しているということです。

地球も半径9ミリまで圧縮すれば「ブラックホール」に!

質量が大きくなるほど、重力は強く働きます。
もし、ものすごく重い星があり、光の速度でも脱出できないのであれば、その星は暗くて見えないはずです。

宇宙には、実際にそのような星が存在していて、「ブラックホール」と呼ばれています。

ある星の表面からロケットを打ち上げる場合、その星の重力を振り切って飛び出すために最低限必要な速度があります。
それが「脱出速度」です。

 脱出速度は、その星の質量と半径によって決まります。たとえば地球の場合、表面からの脱出速度は秒速11キロメートル。時速にすると4万キロメートル弱ですから、大変なスピードです。しかし脱出速度は星の質量が大きいほど大きくなるので、仮に太陽から脱出しようと思ったら、その程度では済みません。表面からの脱出速度は、秒速620キロメートルです。
ちなみに脱出速度は、星の質量が同じなら半径が小さいほど(つまり星の密度が高いほど)大きくなります。ですから、光速でさえ脱出できない星があるとすれば、それはきわめて密度が高いものでなければいけません。
では、それはどんな天体なのか。
アインシュタインが方程式を間違えたりしながら苦労して重力理論を完成させた直後に、その方程式を使って、ある計算をした人物がいました。ゲッチンゲン大学の天文台長を務めたこともある天文物理学者カール・シュワルツシルトです。
1914年に第1次世界大戦が勃発し、シュワルツシルトはドイツ軍の砲兵技術将校としてロシア戦線に従軍しました。このような悪条件にもかかわらず、1915年11月に発表されたアインシュタインの論文を読み、ただちに重力の方程式を解いて、脱出速度が光速になる天体の半径を割り出しました。アインシュタインは自分の方程式がそんなに簡単に解けるとは思っていなかったので、戦場から論文を受け取って驚いたそうです。シュワルツシルトの論文は、翌年の1月にプロイセン科学アカデミーで、アインシュタインが代読しています。彼は従軍中にかかった病気のためのその5ヶ月後に亡くなり、その半径は「シュワルツシルト半径」と名づけられました。
その半径は、天体の質量によって決まります。たとえば地球の場合、シュワルツシルト半径は9ミリメートル。地球の質量を維持したまま、サイコロ程度のサイズまで圧縮すると、光が脱出できなくなるのです。太陽のシュワルツシルト半径は、3キロメートル。常識では想像もしにくいほどの密度の高さです。
(中略)
さて、このシュワルツシルト半径はどんな意味を持っているのでしょうか。そんな天体があるとして、そこではどんなことが起こるのか。それを知るために、次のような思考実験をしてみましょう(図21)。
宇宙のどこかにあるブラックホールを、宇宙飛行士の私が調査しに行くとします。私の上司であるあなたは、地球を出てからブラックホールに入るまで1日に1回、必ずeメールで状況を報告するように命じました。
私はその命令どおり、毎日eメールを地球に送ります。出発してしばらくは、あなたもそれを毎日受け取るでしょう。ところが私がブラックホールに近づくにつれて、その連絡が滞るようになります。もちろん、真面目な性格の私がサボっているわけではありません。私は毎日eメールを出しているのに、それが2日に1回、1週間に1回、1ヶ月に1回・・・・・と間が空いていき、やがてまったく届かなくなるのです。
その理由は、ここまでの話からも察しがつくでしょう。前章の「あてになるカーナビ――アインシュタイン理論のテストその四」の節でも説明しましたが、一般相対論によると、重力が強いほど、外から見た時間は遅れます。強い重力を持つブラックホールに近づくほど、あなたから見た私の時間はゆっくり進む。私自身は時間がふつうに進むので、毎日eメールを送っているつもりなのですが、それがあなたには届きません。もし、あなたが望遠鏡で私の姿を見ることができれば、どんどん動きが遅くなっていくので「何をモタモタしているんだ!」と怒鳴りつけたくなるでしょう。まるで黒澤明監督の映画『羅生門』のように、同じ現象が見る人によってまったく違ってしまうのです。
ともあれ、私はeメールが届いていないことも知らずに、そのままシュワルツシルト半径の内側に入りました。でも、そこはもう光が脱出できない場所ですから、あなたは望遠鏡でそれを見ることはできません。見えるのは、シュワルツシルト半径の手前でほとんど動こうとしない私の姿だけです。
もちろん、シュワルツシルト半径の内側に入ると(光=電磁波が出ていけないのですから当たり前ですが)eメールも出ていけません。あなたは私の姿も見えなければ、連絡を取ることもできない。あたかも、私が地平線の向こうに消えてしまったかのようです。
そのため、このシュワルツシルト半径によって区切られる境界線のことを「事象の地平線」と呼びます。地上の地平線なら越えても引き返すことが可能ですが、この「事象の地平線」は、いったん越えたら絶対に戻ることができません。そこから脱出するには、光速という制限速度を超えなければいけないからです。

『重力とは何か』 第四章 より 大栗博司:著 幻冬舎:刊

図21 事象の地平線を調査する思考実験 重力とは何か 第4章
図21.事象の地平線を調査する思考実験
(『重力とは何か』 第四章 より抜粋)

半径9ミリメートルに凝縮した地球、とは想像を絶しますね。
そこでは、光さえ抜け出せない強力な重力が働いています。

ブラックホールの中はどうなっているのか、知るすべはありません。
光でさえ飲み込んでしまうのですから、当然ですね。

宇宙は膨張し続けている!

天文学者のエドウィン・ハッブルは、遠くの銀河ほど、速い速度で地球から遠ざかっていて、その速度は距離に比例することを発見します。
そして、この現象を「ハッブルの法則」と名づけました。

 では、これは何を意味しているのか。一見すると、地球が宇宙の中心にあり、そこからほかの銀河が遠ざかっているような印象を受けます。しかし、地球が宇宙の中心にあるというのは、不自然です。16世紀にコペルニクスは、地球を、宇宙の中心から、太陽のまわりを回る惑星の一つに降格させました。いわゆる「コペルニクス的転回」です。それ以来、天文学では、宇宙には特別な場所はないという考えを基本としていて、これを「コペルニクス原理」と呼んでいます。この原理を信じると、宇宙のどの位置から見ても、同じように「ハッブルの法則」が成り立つはずです。いったいどうしたら、どこからでも、ほかの銀河は自分から遠ざかっているように見えるのでしょうか。
それは、三次元空間の宇宙を簡略化して、図24のように一次元のゴムひもだと考えればわかります。もし手元にゴムひもがあったら、そこに等間隔に点を描いてみてください。それが、星や銀河です。このゴムひもをまっすぐに引っ張ると、点と点の間隔が広がりますよね? その中に、「中心」はありません。どの点から見ても、ほかの点は自分から遠ざかっています。また、たとえば隣の点との間隔を引き伸ばしたとき、「隣の隣」の点との距離はその2倍伸びることになります。「隣の隣の隣」との距離はその3倍伸びます。引き伸ばすのにかかった時間は同じですから、ハッブルの法則のとおり、距離に比例する速さで遠ざかったことになるのです。
ハッブルの発見は、三次元空間の宇宙でもこれと同じことが起きていることを意味していました。つまり、宇宙は膨張しているのです。それを明らかにしたからこそ、ハッブルの発見は天文学の歴史の中でも特筆される偉業となりました。
ところで、銀河の遠ざかる速度が距離に比例するとなると、一つおもしろいことが考えられます。距離が遠いほど速く遠ざかるのなら、あるところから先の銀河が地球から遠ざかる速度は、光速を超えてしまうでしょう。光速を宇宙の制限速度としたアインシュタイン理論に反すると思うでしょうが、あの理論は宇宙の中での移動速度に関するものですから、宇宙そのものが超光速で膨張することまでは禁じていません。
では、超光速で遠ざかっている銀河は、地球から観測できるでしょうか。答えはノーです。膨張が続いているかぎり、その光は地球に届きません。実際、最新の観測結果によると、宇宙の膨張は止まるどころか、100億年ごとに2点間の距離が倍になる勢いで加速しています。このままだと、遠くの銀河はどんどん観測不能になっていくでしょう。
そして、これはブラックホールの「事象の地平線」とよく似ています。そこから先の現象は、光が届かないので見ることができない。もし私がこの「コズミック・ホライズン(宇宙の地平線)」の向こうに調査に出かければ、あなたとは連絡が取れなくなるのです。

『重力とは何か』 第四章 より 大栗博司:著 幻冬舎:刊

図24 1次元のゴムひもが一様に伸びると 重力とは何か 第四章
“図24.1次元のゴムひもが一様に伸びると・・・
(『重力とは何か』 第四章 より抜粋)

宇宙は膨張し続けている、しかも、そのスピードは加速している。
にわかには信じがたいですね。

では、宇宙全体を膨張させている力は、何なのでしょうか。
その正体は不明ですが、宇宙論の中では「暗黒エネルギー」と呼ばれています。

宇宙は超高温の「火の玉」だった!

宇宙が未来に向かって加速的に膨張している。
それが事実なら、過去にさかのぼると、どんどん収縮していくことになります。

極限まで突き詰めていくと、ある一点、潮汐力が無限大になる「特異点」であったと想定できます。

宇宙の始まりを説明するモデルとして有名なのが、ジョージ・ガモフが提唱した「ビッグバン模型」です。

 ガモフらは、昔の宇宙が超高温の「火の玉」のようなものだったと考えました。現在の宇宙には多くの物質がありますから、それを極限まで圧縮すれば超高密度状態になり、温度も上がります。温度も上がります。宇宙はそこから始まって、現在の大きさまで膨張したーーそれがガモフらの主張でした。
実は、それを最初に「ビッグバン」と呼んだのはガモフらと対立する立場の科学者です。イギリスの天文学者フレッド・ホイルらは、ガモフの説に対して「定常宇宙論」を唱えていました。名前のとおり、宇宙の基本的な構造は時間によって変化しないという主張です。もちろん、ハッブルの発見がある以上、ホイルらも宇宙の膨張は否定できません。しかし、宇宙が膨張するにつれて、何らかの理由で空間内の物質量が増えるので、全体の密度は変わらず、温度も昔と現在とで同じだったと考えました。そして論敵であるガモフらの主張を嘲笑するようなニュアンスで「大爆発理論」と呼んだのです。
ガモフをはじめとするビッグバン派は、超高温だった時代の痕跡が現在の宇宙にも残っていると予想しました。第2次世界対戦直後の1948年のことです。ビッグバンのときの光が空間の膨張と共に宇宙全体に引き伸ばされ、それが現在の地球にも降り注いでいる。ただしこのビッグバンの「残り火」は、宇宙の膨張によって波長が引き伸ばされているので、可視光線ではありません。ガモフの協力者の計算によれば、それは赤外線よりも波長の長い「マイクロ波」になっているはずです。マイクロ波と言えば、電子レンジで使用されるもの。ガモフらが予言したマイクロ波は電子レンジよりもずっと弱いものですが、その電磁波で宇宙全体が満たされていると考えたのです。
その予言から10数年後の1964年、アメリカのベル電話研究所の研究員だったアルノ・ペジアスとロバート・ウィルソン(本書の始めに登場したフェルミ国立加速器研究所の所長とは別人です)は、通信衛星からの電波を受信するために設置されていたアンテナを使って、天の川銀河からの電波の強度を測ろうとしていました。しかし、受信した信号に奇妙な雑音が混ざっています。おかしいと思った二人は、プリンストン大学の天文学者ロバート・ディッケに「どうも、あらゆる方向から届くとしか思えないマイクロ波がある」と相談しました。電話を受けたディッケは、共同研究者に向かってこう言ったそうです。
「諸君、どうやら先を越されたようだ」
彼らはそのとき、ガモフらの予言したビッグバンの「残り火」を観測するためにアンテナを設置しようとしていたのです。しかし当のペンジアスとウィルソンは、『ニューヨーク・タイムズ』紙に掲載された記事を読むまで、自分たちが見つけたマイクロ波の意義がわかりませんでした。その後、彼らはこの偶然の発見によってノーベル賞を受賞しています。

この発見で、かつて宇宙が熱い「火の玉」だったことが確認されました。しかし、あのアインシュタインでさえ「宇宙は永遠不変」と信じていたくらいですから、昔の宇宙が小さかったと言われても、にわかには信じられません。
すでにビッグバンが定説となった現在でも、これを考え始めると眠れなくなる人は多いでしょう。おそらく誰もが真っ先に抱くのは、こんな疑問だと思います。
――宇宙が小さな「火の玉」から膨張を続けているとしたら、その「外側」はどうなっているんだ?
ビッグバン=大爆発というと、空間の一点から、爆発物が外向きに広がっていく様子をイメージするかもしれません。そうすると、爆発物がまだ届いていないところはどうなっているのか疑問になります。しかし、宇宙のビッグバンでは、空間自身が膨張するのです。空間の膨張とは「二点間の距離が広がる」ことですから、必ずしもその空間の「外側」は必要ありません。箱が外側に向かって拡張しなくても、箱の内部の縮尺が変化すれば、二点間の距離は広がったり狭まったりします。
宇宙全体の構造はまだわかっていませんが、仮にそれが「無限」の空間だとしても、そこにある二点間の距離を広げることはできます。
たとえば、あなたの目の前に左から右に無限に伸びているゴムひもがあると思ってください。無限なので両端はありませんが、それでも、ゴムが伸びれば二点間の距離は広がるし、縮めば二点間の距離は狭まります。つまり、無限の空間でも膨張や収縮はできます。いまの宇宙が無限だとしたら、ビッグバンの瞬間の「小さな火の玉」も無限だった。ただ、そこでは二点間の距離が極限まで圧縮されていた――高密度だった――と考えればいいのです。

『重力とは何か』 第四章 より 大栗博司:著 幻冬舎:刊

宇宙は、ごくごく小さな「火の玉」だった。
ある瞬間、その火の玉が弾けて膨らみ、今の宇宙が誕生した。

その膨張するスピードは、指数関数的で急激なものでした。
なんと10のマイナス36乗秒からマイナス33乗秒という短時間のうちに、宇宙が10の78乗倍に膨れあがったそうです。

想像を絶する出来事で、まさに「ビッグバン」と言うにふさわしい現象ですね。

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☆    ★    ☆    ★    ☆    ★    ☆

ニュートンが「万有引力の法則」を導き、重力の存在が世に示されたのが300年以上前のことです。

それから200年以上たった20世紀初頭に、アインシュタインの「一般相対性理論」により、重力は質量による空間の歪みであることが明らかになり、重力波の存在が予想されることになります。

そして、一般相対性理論の発表から100年たった2016年、米国にある巨大観測装置LIGOで重力波を直接検出することに成功しました。

ビッグバンやブラックホール、まだその存在すら確かめられていない暗黒物質や暗黒エネルギー。
それらの解明に、重力は重要な鍵を握っています。

重力そのものの性質や仕組みを調べる研究は、まだまだ始まったばかりといえます。
これからどんな驚くべき新事実が発見されるのか、とても楽しみですね。

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